未練

CAST北川花音

作者：でぎね

2021.11.19

入学式の写真を送った。

少し話した。

それっきり、通知は
切ることにした。

私は高校１年生、
北川花音。

好きな人と話すときは、
会話が続かない。

中学３年生の頃に、
時を戻そう。

私は公立の中学校に
通っているが、
偏差値は７０を超えている。

学校のテストでは
９０点以下は
取ったことはないし、

順位も１桁しか
とったことがない。

模試でも好成績で、
順調に受験勉強は
進んでいる。

このままいけば、
県トップの高校に
行けそうだ。

丸田はすごく優しい。

私には
勿体ないくらいだ。

好きになったのは、
１年の頃。

隣の席のときは
すごく楽しかった。

２年では、
クラスは離れて
ほとんど話さなかった。

３年では、
クラスは隣で、
たまに話す程度。

でも、きっと、
両想いだ。

何かと
気にかけてくれるし、
たまに照れた顔も
見せてくれる。

話してくれた時は、
すごく嬉しい。

だけど、
蛙化現象が
私にも起こった。

すごく好きなはずなのに、
両想いな確信が持ててから、

正直に好きだと思えない。

モヤモヤしたまま、
迎えた卒業式当日。

丸田は、すでに
受験の合格発表を
終えているらしい。

偏差値５０くらいの高校に
合格したんだとか。

私は、明日発表だ。

「なぁ、
受かってたら
ラインしてよ」

「うん。でもそれ
受かってなかったら、
気まずいやつじゃん（笑）」

「どうせ
受かってんだろ（笑）」

「俺は普通の高校行くし、
何も良いところないのに、
北川は偏差値７０の
高校なんて受けて、
それだけでも尊敬だわ。
それなのに、運動できるし、
コミュ力高いし？
なんか、俺とは
釣り合ってない感じするよ（笑）」

「そんな悲しいこと
言わないでよ（笑）
まだ受かってるかも
わからないのに」

告白したり、
されたりはなかった。

でも、両想いなことは
お互い分かっている。

＊。・－－－－。・－－－－・。＊

次の日。

「花音は？
どうだった？」

「受かってた！
あったよほら、
２５８番」

「やったね！
メアリもあった。
３０５番」

でもなぜか、丸田に
連絡は出来なかった。

しようと思えなかった。

そのまま入学式が来た。

入学式の
看板の写真を撮った。

家に帰って、
丸田に送ってみた。

「受かってたのかよ。
心配したわ」

「ごめん（笑）
なんか・・・
勇気がなくて」

「勇気ないってなんだよ（笑）
自信持ってよ」

「（笑）」

「あのさ」

「何？」

「俺たちってさ、
好きだった同士だよな」

「私もそれ思ってた」

「なんか前、好きな人には
すごく優しくなるって
言ってたよね。
私にすごい優しかったし（笑）」

「北川も、好きな人と話す時
会話続かなくて詰むって
言ってたよな。
俺と会話続かな過ぎて
ビックリしたもん（笑）」

「お互い、両思いなことは
わかってたんだよね」

「３年間もね」

「蛙化、バレてた？」

「それってバレるとか
そういう問題なの？（笑）
まぁ気づいてはいたけど。
気づいてから、俺と北川は
釣り合ってないから
北川に悪いなーっと思って、
身を引くようになったというか。
ほら、好きな人には
幸せになってほしいじゃん？
俺みたいな凡人が恋人になっても
何も良いことないだろうし」

「そこまで思ってくれてたのかー。
意外とちゃんと考えてるんだね（笑）」

「以外とって失礼な（笑）
じゃぁ今日はこの辺で。
言い忘れてたから言っとく。
卒業、合格おめでとう」

「有難う。
丸田もおめでとう」

「ずっと好きだからな」

「私も好きだよ」

この言葉は、お互い本心で
伝えたのか、
それは誰にも分からない。

本心にしろ、
そうでないにしろ、
この２人が結ばれることは
ないだろう。

高校１年生の春。
私は好きな人のラインの
通知を切った。

削除はどうしても、
出来なかった。

どうせ話すことは
もうないだろうに。

未練

諦めきれないことの意。

＊ｅｎｄ＊