名脇役

CAST北川花音

作者：そらにゃ

2021.11.15

君が「どうしたの？」
なんて聞いてくるから、

私は「なんでもないよ」
と答える。

君が主役なら、
私は脇役。

ヒロインになんて
なれっこない。

だからね、
せめて私は
“名脇役”でいたい――――――

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

私はカノン。

どこにでもいるような
普通の女の子だ。

私は今、
恋をしている。

同じクラスの
コウショウくん。

顔がそこそこ良くて、

頭がそこそこ良くて、

運動神経もそこそこ良くて、

女子からそこそこモテる人。

なんでだろうね？

昔は、もっと
理想が高かったのに。

思ったより普通の恋愛、
してる。

それでもね、
好きで好きでたまらないの。

どこにいても、
何をしていても、

君のことばかり
考えてしまうの。

別に、
告白したわけではない。

フラレたわけじゃない。

それならなんで、
こんなに心が痛むの？

それは多分ね、
分かってるから。

もう１人の自分が囁く。

それさえも、
分かりたくないのに。

もういっそ、
忘れてしまいたい。

思い出したくもない。

でもね、
そう思えば思うほど、

体でもない、
頭でもない、

心が、動くの。

困らせないでよ。

苦しくさせないでよ。

そんな風に
優しくしないでよ。

唇を噛んだ私の顔を、

君が覗き込む。

「どうしたの？」

何にも知らないクセして、

そんなこと
聞いてこないでよ。

他でもない“君”で
こんな始末になってるんだよ。

何て言えるわけもない
私はまた、

「なんでもないよ」
と答える。

こんなことばっかを
考えていること、

君が知るのは、
いつになるのかなぁ。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

君が「彼女ができた」
なんて言ってくるから、

私は「おめでとう」
と答える。

いつまでも、
脇役のままで。

主役の１番近くにいる、
名脇役のままで。

＊ｅｎｄ＊そらにゃ