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3秒ルールと、溶けない夕焼け

CAST泉 有乃泉 有乃

作者:みーちゃん

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.05.16

図書室の窓際。





オレンジ色の光が、
埃をキラキラと反射させている。





テスト1週間前。





静寂を破ったのは、
隣に座る琉斗の声だった。





リュウト「ねぇ、有乃」





ユノ「・・・何?
集中してるんだけど」





リュウト「さっきからそのページ、
15分くらいめくってないよね」





有乃はビクッとして、
手元の英単語帳を握りしめた。





ユノ「余計なお世話。
・・・暗記してるの」





リュウト「へぇー。英単語って、
一点を見つめて念じれば
覚えられるんだ。新発見」





ユノ「うるさい。琉斗こそ、
数学のワーク白紙じゃない」





琉斗はシャーペンを
くるくると回しながら、
窓の外を眺めた。





リュウト「あー・・・なんかさ、
もったいないなと思って」





ユノ「何が?」





リュウト「この夕焼け。
今、この瞬間の色、
明日にはもう違うだろ?
勉強なんて、
夜に家でやればいいじゃん」





ユノ「・・・琉斗、
それいつも言ってる」





リュウト「だって、
本当のことだし」





逆光で表情は
よく見えないけれど、
少しだけ切なそうな声。





ユノ「・・・何、急に。
青春ぶっちゃって」





リュウト「ぶってるんじゃなくて、
焦ってんの」





ユノ「焦る?」





リュウト「卒業まで、
あと何回一緒に
この図書室にいれるかなって」





ユノ「・・・そんなの、
数えなきゃいいでしょ
リュウト「3秒」





ユノ「え?」





リュウト「今、目が合った時間。
3秒あったら、告白できるって
ネットに書いてあった」





ユノ「バカじゃないの・・・」





リュウト「バカだよ。
でも、3秒以上経ったけど?」





図書室の古い時計が刻む音だけが、
やけに大きく響く。





ユノ「・・・3秒、もう過ぎたよ」





リュウト「・・・だね」





ユノ「・・・続きは?」





リュウト「続きは、
テストが終わった日の放課後。
・・・夕焼けが沈む前に、
ちゃんと言う」





ユノ「・・・忘れたら、
承知しないから」





リュウト「忘れるわけないだろ。
・・・よし、やるか! 数学!」













*...・・・*...・・・*





テスト最終日。





チャイムの音が
「終わり」を告げると同時に





教室は一気に
解放感に包まれました。





でも、私の胸だけは、
重たいテスト期間中よりもずっと速く、
ざわついていました。





約束の場所。





琉斗に呼び出されたのは
図書室ではなく、
「屋上」だった。





重い扉を押し開けると、
そこには風に吹かれながら
柵にもたれかかる琉斗がいた。





リュウト「・・・遅い。
待ちくたびれて、
数学の公式全部忘れた」





ユノ「勝手に忘れてなさいよ。
・・・で、話って何?」





私ははわざと
ぶっきらぼうに言った。





そうでもしないと、
心臓の音が琉斗に
聞こえてしまいそうだったから。





琉斗はゆっくりと振り返る。





そこには数日前と同じ、
燃えるような夕焼け。





リュウト「・・・あの日、
3秒ルールって言ったじゃん」





ユノ「言ったね。
ネットの受け売りだって」





リュウト「あれ、うそなんだよね」





ユノ「え・・・? うそって・・・」





リュウト「3秒じゃ足りない。
・・・本当は、3年間
ずっと言いたかったんだ」





琉斗が一歩、足を進める。





私は逃げ場がなくて、ただ琉斗の目を
見つめ返すことしかできない。





リュウト「有乃。
お前が英単語帳を見つめてる横顔も、
俺が寝てるときに
ペンで小突いてくる手も、
全部好きだった」





ユノ「・・・琉斗」





リュウト「・・・続き、
言わせてもらってもいい?」





私は、ぎゅっと
自分の制服の袖をつかんだ。





ユノ「・・・そんなの、
聞かなくてもわかるよ」





リュウト「いや、ちゃんと言う。
・・・俺と、つきあってほしい。
隣に座るだけじゃなくて、
これからは隣を歩きたい」





風が吹き抜け、私の髪が
琉斗の頬をかすめる。





私は視線を伏せ、
少しだけ間を置いてから、
顔を上げた。





ユノ「・・・遅すぎ。
3年間も待たせて」





リュウト「ごめん。・・・返事は?」





私は、リュウトの胸元を
軽く小突いた。





ユノ「・・・『よろしくお願いします』以外、
言うことないでしょ」





琉斗の顔が、
夕焼けよりも赤く染まる。





彼はパッと明るい顔をして、
私の手をそっと握った。





リュウト「よし!
じゃあ、今からどこか行こうぜ。
お祝いで」





ユノ「お祝いって・・・
あ、ちょっと、
引っ張らないでよ!」





リュウト「いいだろ、
もう『続き』なんだからさ」





ふたりの影が
長く伸びて、重なる。





溶けない夕焼けの下、
新しい日常が
足音を立てて走り出した。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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