夜が、終わる。
作者:ヤヌカミ
私の名前は泉ユノ。
高校1年生。
1年前、
私の世界は止まった。
恋人だったハルトを失い、
私の心は暗闇に
閉ざされたままだった。
夜が明けないように、
私の中に光がさすことはないと
思っていた。
そんな時、
黒澤リョウと出会った。
黒澤くんは
同じクラスの男子。
背が高くて、
ちょっと冷たそうに見えるけど、
不思議と目を引く人だった。
私はあまり話したことも
なかったけれど、
ある日、校庭の片隅で
ひとり泣いている私を
見つけた黒澤くんが
声をかけてきた。
「何かあった?」
私は驚いたけど、
すぐに首を振った。
誰にも過去のことを
話すつもりはなかったから。
でも、黒澤くんは
私の隣に座りこんで、
静かにこう言った。
「無理に言わなくていいよ。
でも、ひとりで抱えこむのは
しんどいだろ」
その言葉に、
不覚にも涙があふれた。
誰かにこんな風に
やさしくされたのは
久しぶりだった。
それから、少しずつ
黒澤くんと話すようになった。
彼は無理に
踏みこんでこないけど、
いつも私のそばにいてくれた。
ある日、私は初めて
黒澤くんに
ハルトのことを話した。
笑顔が素敵で、
私を幸せにしてくれた人
だったこと。
でも、突然いなくなって
しまったこと。
話し終えた私に、黒澤くんは
真剣な顔で言った。
「その人がどれだけ大切だったか、
すごく伝わった。
でも、泉が前に進むのを、
ハルトくんもきっと願ってると思う」
黒澤くんと一緒にいる時間が
増えるにつれて、
心の中の重たい扉が
少しずつ開いていくのを感じた。
彼のやさしさや
強さに触れるたび、
私は過去にしばられる自分を
少しずつ解放していった。
夕暮れの日、
黒澤くんが不意に言った。
「俺さ、泉が好きなんだ」
心臓が大きく跳ねた。
ハルトを失ってから、
こんな風に誰かに想われるなんて
思わなかった。
「でも、私・・・」
「いいんだ。
無理しなくて。
俺は、、、俺は、
ユノのペースでいい」
その言葉に
救われた気がした。
黒澤くんといると、
暗かった私の夜に
少しずつ星が灯っていくようだった。
そしていつしか、
夜が終わるのを恐れていた自分が、
朝を待ち望むようになっていた。
黒澤くんは、
私の世界を照らしてくれた。
「リョウ、私も・・・
あなたが好き」
その瞬間、止まっていた時間が
静かに動き出し、
私の夜が終わりを告げた。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。