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CAST泉 有乃泉 有乃

作者:甲子園のマネージャー

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.07.25

図書館でいつも何かを探している
笑顔が素敵なあの人は、
私のことなんて知らない。





図書館でいつも幸せそうな顔して
あの男を見つめているおまえは、
俺のことなんて知らない。





────好き。届いて。
────俺にしとけよ。





【好きな人に好きな人がいても────好き】







―・―・―・―・―・―・―・―





────あっ、いた。





放課後の図書館。
奥から3番目、右から5番目の本棚の前で
真剣に何かを探している男の人。





大学生くらいかな?
いや、高校生?





大人っぽく見えるその人は、
西陽に照らされて、
たまにそっと微笑む。





初めて見かけたのは、今年の春。





『イルマ! 課題手伝って!』
『はぁ? まだやってねぇのかよ』





春の課題が終わらず、
幼なじみと図書館に
来たときだった。





────わ・・・綺麗な人・・・





学ランを着た男の人が
本棚にもたれかかって、
気持ちよさそうに眠っていた。





『おい、泉? ・・・』
『――静かにっ』





多分・・・いや、絶対に
────一目惚れだった。





『あ、すいません!
俺、寝ちゃってましたよね!
本当申し訳ない・・・』





これが、最初で最後の会話。
その日からもう半年になるかな?
毎日欠かさず、ここ(図書館)にきてる。





────あの日以来、学ラン着てるの
見ないなぁ・・・





―――パッ
あの人が不意にこっちを向く。
私は慌てて目をそらす。





「・・・ここの本を探してます・・・?」
「あっ・・・は、はい!」





「あ、じゃあ俺、邪魔ですね!
すいません!」
「い、いえっ!」





────ヤバい。突然すぎる。
歩いてくるあの人が、そっと微笑んだ。





たいして読みたい本もないけど、
そこにあった“ハリーポッター”を
手にしてみる。





「ハリーポッター、好きなんですか?」





後ろから声がする。
あの人だ。





「は、はいっ!」





────嘘・・・ついちゃった。





「俺もハリーポッターは思い出の1冊で、
大好きなんですよ!」





────あ、また笑った。
私に向かって数歩歩いてくるあの人。





「俺、八神リョウスケ。
そこの大学の1年」





「私、い、泉ゆの!
ニコラ学園高等部の1年です!」





「ゆの、ね。了解。
俺、よくここにいるから、
よかったら声かけてよ」





「いいんですかっ!?」





「もちろん!
おっと、バスが出る時間。
じゃあ、また明日。会えたら」





────また・・・明日・・・。





────八神リョウスケ・・・。





図書館から出て行くリョウスケ君は
途中1度だけ振り返って
手を振った。













―・―・―・―・―・―・―・―





「なぁ、泉知らね?」





「ゆのなら、図書館行ったー」





「またかよー」





あいつ、ほんとあの男のこと
好きだよなぁ。





────俺なんて泉に
10数年片思いしてんのに、
いまだ“親友”止まり。





「おい、イルマ!」





「悪りぃ。泉のとこ行ってくる」





────またあいつに
会いに行ってんのかよ。





少しイラつき気味に、
駐輪場まで走る。





────あーっ、イラつく。
あの男!





どうしようもないこの怒りを
チャリにぶつけて、ストレス発散。
坂道を下る。





ま、どーせ今日も
眺めてるだけなんだろうな。





────っ!?!?
俺は目を疑う。





図書館の前に立っているあの男と泉が
手を振り合ってた。
────眺めてるだけなんじゃねぇのかよ!





無性に腹が立つ。
乱暴にチャリを止めた。





「泉。まだ図書館いたのかよ」





「あ、イルマ!
イルマこそ部活は?」





「あー、サボり。
図書館もいいかなーって」





「そっかぁー! 図書館って
本当いいとこだよね!」





────お前にとってはな。





────好きな奴に
唯一会える場所だからな。





────俺にとっちゃぁ、
嫉妬製作所だよ。





「今日ね、好きな人とね、
話せたんだよ!」





嬉しそうに話す泉。
────ゴメン。応援できねぇよ。





「また明日って言ってくれたんだよ!
すごい奇跡じゃない?!
ねぇ? どー思う? イル・・・」





「へーぇ。すげえじゃん!
おめでとう!」





────俺のガキ。





「イルマ・・・ゴメン。
怒らせた・・・?」





10数年も一緒にいたら、バレる。
俺が本当に祝福してるか、してないかくらい。
少し青くなって、泉は口を閉じた。





────俺が1番ガキじゃん。





「なんのこと? 怒ってねぇよ?」





「でもっ・・・イルマ、目が・・・」





「怒ってねぇっつってんだろ!」





シーンとした図書館に響く怒鳴り声。
我に帰る。





「悪りぃ。ちょっと頭冷やすわ」





────早く、好きな奴の幸せを想えるくらい、
大きい男になりてぇよ。













―・―・―・―・―・―・―・―・―





「ゆのっ」





「リョウスケ君!」





図書館でお互いの名前を知ってから、
2ヶ月も経っていた。





週に4回くらいの頻度で、
リョウスケ君と会えて幸せ・・・
なはずが、





『怒ってねぇっつってんだろ!』





イルマとしたケンカが
もやもやしたまま
心の中で放置されている。





────どうして怒らせちゃったんだろう。





学校でも無視されるんだよ。
他の子とは話してるのに。





もうすぐバスケのウィンターカップだって
始まるっていうのに。
いつもなら、





「ぜってぇ応援こいよ!
こないとキレるからな!」





って笑って言ってくるのに。





────寂しい。
────つまんないの。





イルマのいない生活が、
こんなにもつまらないなんて
思ってなかった。





「今・・・ゆのはきっと、
イルマ君のこと考えてたでしょ?」





隣でリョウスケ君がそっと微笑む。





「最近のゆのは、イルマ君のことばかり
話してるよ」





「そんなことっ・・・」





「いつも俺に、イルマ君のこと
相談してくれるよね。
だからさ、俺も相談していいかな?」





いつもと違う雰囲気に
胸が音を立て始めた。





「なに・・・ですか?」





・・・っ。





「俺、来月に、彼女が住む北海道に
引っ越そうと思うんだ。
彼女、嫌がると思う?」





────え・・・彼女・・・?





「中3の頃から付き合ってるんだけど、
今年から遠距離でさ。
一応、婚約もしてるんだ。
やっぱ、そばにいたいから、
北海道まで行こうと思う。どうかな?」





────なんだ。
思ったよりダメージない。





────どうしてか、心の底から、
────『おめでとう』って思える。





────今までなら、思えなかったと思う。





「ゆの的に、どう思う?」





私は、いつも以上に、
上手く笑えたと思う。





「ナイスアイディアだと思います!
彼女さんもきっと、喜びますよ!」





「最近で1番いい笑顔だね。
俺、知ってたよ。毎日ゆのがここに来て、
遠くから俺を見てたこと。
目が合うと、隠れてたこと。
でも、ゆのが知らないことも俺は知ってるよ」





「え、何ですか?」





「隣に当たり前のようにいた、イルマ君。
考えたことある?
どうして隣にいてくれるのか。
そのケンカで、怒鳴られたのか。
もし、ゆの自身がイルマ君になったら、どうする?」





「へっ?」





よく理解できない。
イルマの気持ちになれってこと?





「イルマ君が、ゆのの前で、
好きな人との話をしたら、どう思う?
それと同じだよ。
イルマ君のそのときの行動と、思いは」





─────っ?!





「遅いよ、本当。
もう、この2ヶ月間で気づくと思ってたのに。
遅いなぁ。
あと、いいこと教えてあげる・・・」





「・・・!?」





────私のせいだ。
もし、この考えが合ってるなら・・・
────イルマ。待ってて。





────もう少しだけ、
────────待ってて。













―・―・―・―・―・―・―・―





「おい、イルマ」





「んだよ!」





「あれはないんじゃね?」





「何がだよ!」





「泉への態度!」





「うっせぇなあ!
輝之介には関係ねぇだろ!」





「俺だって、お前らと幼なじみだから
やりにくいんだよ!」





────最近の俺って、ずっとこうだ。
泉のこと避けて、泉から逃げて、
輝之介に迷惑かけて、
────最低じゃんな。





2ヶ月も経つのに、
俺はガキなまま。





「いい加減にしろよ」





「もう、いいんだよ。これで」





力なく言った俺は、
気がつけば、図書館に来てた。





────いつもここで泉は
あいつを眺めてた。





大人なオーラでカッコよくて、
俺みたいにガキじゃねぇし、
本当正反対な男。





────あー、泣けてくるし。





「イルマ君・・・?」





「・・・あ・・・」





「リョウスケです。
イルマ君で合ってるかな?」





「は、はい」





────うぉぉぉっ! ビビるし!





「あのっ! 泉と、その、
つ、付き合ってるんですか?」





────やべ。
1番聞きたくないこと聞いちまったよ!
いいか、祝福するんだ。
泣くなよ。笑え。笑え、イルマ!





「俺、付き合って4年になる
彼女いるよ?」





「へっ?」





「それに、ゆのが好きなのは
俺じゃないよ」





「はっ?」





「2人して遠回りかぁ・・・。
いいね、高校生。青春だ。
イルマ君、応援してる。
もうすぐウィンターカップなんだろ?
ニコ学のエースらしいじゃんか。
スリーがよく入るとかなんとか」





「なんでそれ・・・」





「全部、ゆのから聞いた。
ケンカしてた2ヶ月間、
ゆのが俺にしてたのは、
全部、君の話だよ。イルマ君。
君のこと、ゆのは嫌ってないよ。
怖がってもいないよ」





「嘘だ・・・俺、
あんなにひどいことしたのに・・・」





「―――グズグズしてても変わんないだろ。
ほら、次に何すればいいか考えなよ。
じゃあな」





────・・・っ。





「リョウスケさん!
ありがとうございます!」





「頑張れよ。恋も、バスケも」





────うだうだしてる暇はねぇ。
────ウィンターカップ終わったら・・・
─────伝えるんだ。













―・―・―・―・―・―・―・―・―





「オォー! オォー!
行け! 押せ! ニコ学!」





すごい応援歌が響く応援席。
コートにはイルマが。





あの日、リョウスケ君と話してから
1週間経つ。





あの日まで、ケンカしてても、





『このスニーカー、イルマに似合いそう』
『イルマの制服の裾、縫ってあげないとな』
『部活の試合、どうだったんだろう』
『イルマの誕生日プレゼント、何にしよう』





どこで何を見ても、隣にイルマはいないのに
イルマのことばかり考えてた。





それが───恋───
だと気づいたのは、ついこの前で、
リョウスケ君が教えてくれた。





「あーあ、第4ピリオド、
もう後2分切ったよー!
負けそうじゃね? やばくね?」





隣に座るクラスメイトが、負けを確信。
あと、4点いる。
4点で、逆転、ニコ学優勝だ。





試合は、相手に引っ張られたまま、
時間だけ過ぎていく。
あと1分のところだった。





「お! イルマがボールもったぞ!」





応援席で、誰かが叫んだ。
相手のパスをカットして、
イルマが走る走る。





そして、レイアップを決める・・・
そのときだった。





ピーーーーーッ!
レフリーのホイッスルが鳴る。





────ザッ





「バスケットカウント、1スロー」





――っ!!!!





「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」





一気に、あと2点差に。





この、1スロー入ったら、同点だ。
誰もが『入れる、』そう思っていた・・・
がっ・・・





「────ガシャンっ??」





リングに当たって・・・っ?!
・・・





────ザッ
え・・・?





・・・ピッ
ニコ学の方の電光掲示板に、
2点追加・・・。





「輝之介、ナイスリバウンド!」





もう、客席は、感動の嵐。
試合は1点差でニコ学の勝利。
んで、優勝。本戦に出場決定。





「ねぇ、ゆの。
会いに行かなくていいの?
イルマに」





りりかが聞く。





「うん。落ち着いたら行くよ」





────握りしめていた拳を緩める。
────かっこよかった。
イルマが、イルマじゃないみたいでっ・・・





「・・・泉!」





ユニフォーム姿のイルマが、
人であふれかえっている客席に。
数分前に試合を終えて、
今はインタビューされてるはずじゃ・・・?





「なぁ、伝えたいことある」





逃走したニコ学エースを
マスコミが追いかけてくる。





「待って。私から言うの。
イルマ。遠回りしてごめんね。
聞きたくない話してごめんね。
あのねっ、その、す・・・」





「俺の方が前から好きだから」





輝く、カメラのフラッシュ。
ニコ学の生徒の叫び声。観客の拍手。
私は多分、泣いていた。





「俺、ガキだし、優しくないし、
本とか読まねぇし、バスケ馬鹿だし、
空気読めないけど、
誰よりも、泉のこと好きだ」





「あ、私だって、バカだし、
すぐ泣くし、面食いだし、勘違い多いし、
ヤキモチだって焼くけど、
誰よりもイルマのこと、好きだから!」





「なんだそれ。両思いじゃん」
「ねっ。遠回りしたね」





「こういう時って、どうすりゃいいの?」
「黙って優しくキスするの。
そしたら私、笑顔で抱きついてあげるから」





人目も気にせず、イルマは
触れるだけのキスをした。





シャッター音も鳴り止まない、
カメラのフラッシュも激しく光る。





どんなシチュエーションでもいいや。
イルマの背中に手を回す。





2人の心の中に、『好き』って思いと
もうひとつ。





『リョウスケ君、リョウスケさん、
ありがとう』





───【イルマ君はいつも、ゆののことを見に、
図書館に来てたんだよ】──────────







*END*

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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