普通じゃない私

CAST広瀬 まのか広瀬 まのか

作者:[櫻&USG]

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2021.03.11

「ねぇ、まのかって、
好きな人いないの?」





「えっ・・・」





この質問にいつも
戸惑ってしまう。





なぜなら、
私の好きな人は・・・







* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





私は高校1年生の
広瀬まのか。





高校の入学式で
同じクラスになった
宮本莉乃が
声をかけてくれて、
友達になった。





そして、莉乃のお陰で
狭間佳奈と渡邊美里とも
仲良くなり、
4人で行動することが
多くなった。





席替えで私は
窓側の1番後ろの席となり、
その前には、
運が味方したのか、
莉乃が座っている。





昼休みになると、
佳奈と美里が私たちの
ところに来て、4人で
輪になって話すことが
日課となった。





今日も、4人で
話していた。





その時、莉乃が
私に質問した。





「ねぇ、まのかって、
好きな人いないの?」





「えっ・・・」





この質問にいつも
戸惑ってしまう。





なぜなら、
私の好きな人は・・・
女の子。





つまり、
同性だから。





私は、ちらりと
斜め前に目を向ける。





そこには、
色白な女の子。





こんなに騒々しい
昼休みの教室で、
1人静かに
本を読んでいる。





彼女の名前は、
野川冬。





目立った行動はしないが、
自分の意見は
しっかりと言う。





そういうところに
惹かれた。





私も、彼女みたいに
なれたら・・・





「おーい。まのか?
大丈夫?」





目の前で佳奈に
手を振られ、
私は意識を現実に戻す。





「まのかちゃん、
具合悪いの?」





そう質問する美里の顔は、
本気で心配している。





「えっ、もしかして、
図星?
いるの? 好きな人?!」





美里と真逆のことを聞く
莉乃の目が、
キラキラしていて
私は思わず苦笑いをした。





そのまま、
1番効果的な
返し方をする。





「い、いや。
いないよ~、
好きな人なんて・・・」





どうか、自然に
笑えていますように、
と願いながら。





「そう言う莉乃は、
どうなの?
いるんじゃないの?
好きな人」





すると、途端に莉乃は
顔を赤くした。





・・・成功した・・・





佳奈と美里の興味が
莉乃に向いたところで、
私は1人静かに
ため息を吐く。





そして、莉乃の話に
耳を傾ける。





「えっとね・・・
私の好きな人は、その・・・
中村海斗くん、なの・・・」





「「え~!!!」」





佳奈と美里の声が
見事にユニゾンした。





私は、その答えを
予想していた。





1番後ろの席は
教室全体が見えるので、
莉乃が授業中にチラチラと
中村海斗を盗み見しているのは
一目瞭然だった。





中村海斗。
ざっくり言うと、
イケメンだ。





この学校で、
1番のイケメンだと
言われるほどに。





「海斗くん、
格好良いもんね~!!」





はしゃいだ声を上げたのは、
美里だった。





「頑張ってね!!」





「うん!
ありがと~」





2人が盛り上がっている中、
何故か佳奈だけ
浮かない顔をしている。





「・・・あの。
盛り上がっているところ、
悪いんだけど。
・・・海斗君を好きって、
本気で言ってる?」





私含めた3人が、
きょとんとする。





「え?
そうだけど・・・
どう言うこと?」





すると佳奈は、
とても言いにくそうな
顔をしたが、
やがて口を開いた。





「いや、噂なんだけどね?
・・・海斗君、
すごく性格が
悪いらしくて・・・」





「え・・・」





「具体的に言うと、
なんか・・・
本人がいるところで
その人の悪口を言ったり、
人のことをすごく
下に見たり・・・?」





「本当に・・・?」





苦労して絞り出した
私の質問に、
佳奈はうん、
と冷静に返した。





気まずい空気が
流れ始めた時、
昼休みの終了を告げる
チャイムがなった。





私はほっとする。





その日以来、
私たちの会話に
中村海斗の名前が
出て来ることはなかった。





だが、相変わらず莉乃は
中村海斗を気にしていて、
私もまた本当のことを
言えなかった後悔に
押し潰されそうになっていた。













*。・ 2日後 ・。*





終礼が終わり、
トイレから戻ってくると、
教室には誰もいなかった。





そういえば、莉乃は塾、
佳奈は家の用事、
美里は佳奈について
先に帰ると言っていた。





他の人たちも、
部活だろう。





私も帰ろうと鞄に手をかけ、
何気なく後ろのロッカーに
目を向けると、
オレンジ色のものが見えた。





まさか・・・と嫌な予感を
感じながら近寄ってみると、
案の定オレンジ色のものは付箋で、
“掲示”と書かれてあり、
4月に行った遠足の
振り返りの紙に
貼りつけてあった。





私はげんなりする。





別に私は、
掲示係ではない。





だが、係の仕事が遅いと、
先生が、面倒くさいのだ。





あの永遠と続く説教を
受けるのは、
絶対にごめんだ。





私はため息を吐いて
紙の束を手に取り、
ロッカーによじ登った。





3分の1ほど
貼り終わった時、
突然教室の扉が開いた。





私は驚いて振り向くと、
そこには、同じく
驚いた顔をした冬が
立っていた。





私の、好きな人が・・・





先に口を開いたのは、
冬だった。





「まのかちゃん、
それ1人で
やっているの?」





「え・・・うん」





「大変・・・
私も手伝うよ!」





そう言うと冬は、
持っていた2つの段ボールを
近くの机に置き、
ててて・・・と
ロッカーまで
走り寄って来た。





そしてぴょん、と
ロッカーに登り、
ニコッと私に笑いかけた。





私たちは、プリントを
半分に分けて、
黙々とそれを
貼りつけていった。







・数分後・





「「終わった~!!」」





2人同時に声を上げ、
顔を見合わせて
また同時に吹き出す。





・・・幸せだな・・・





私は少し、
切なくなった。





「あ、私、あの箱
準備室に持っていく
途中だったんだ」





私が口を開いたのは、
ほとんど無意識だった。





「わ、私・・・
手伝うよ・・・」





その途端、冬の顔が
ぱっと明るくなった。





「ほんと?
ありがと!!」





2人同時にロッカーから
飛び降り、段ボールを
1つずつ持った。





準備室に着き、
段ボールを置いたところで、
冬が質問した。





「まのかちゃんって、
好きな人いないの?」





私は、固まる。





「あんまり男子と
話しているところ、
見たことないからさ~」





冬の屈託ない声が続く。





私は、冬が“男子”と
制限したことに
ショックを受けた。





「あんまり男子のこと、
好きじゃないの?」





私の中で、
何かが切れた。





もう、いいや。





「あのさ!!」





自分が思っていたよりも
大きな声がでてしまった。





冬が驚いた顔をする。





「・・・私の、好きな人は、
冬ちゃんだよ・・・?」





時間が、
止まったような
気がした。





冬は、目を見開いたまま
固まっている。





その中に、戸惑ったような
表情を見つけ、
私はやっぱりな、と思う。





どれだけ口でLGBTQは、
理解しなければならない、
差別してはいけないと言っても、
いざ自分がその場に直面すると、
固まってしまうわけで。





LGBTQは、
“異常”なままで。





冬が、何かを言おうと
口を開きかけた時。





ガタンっと
準備室の扉が
音を立てた。





私たちは驚いて
扉のほうを振り返った。





入った時にきちんと
閉めたはずの扉が、
今は少し開いている。





私は扉に駆け寄って
廊下を覗いた。





廊下には、誰もいない。





だが、遠くの方で
誰かが走り去って行く
足音が聞こえた。





・・・まさか、
聞かれた・・・?!





「あの、まのかちゃん・・・」





冬の声で我に返った私は、
何が何だか分からずに、
その場から走り去った。













*。・ 翌日 ・。*





・・・学校に行きたくない。





でも、欠席日数を
増やしてはいけない。





それに、
冬の様子も気になる。





私は深呼吸をすると、
教室の扉を開けた。





その途端、
教室が笑いの渦に
包まれた。





・・・ほら、やっぱり。





あの時の告白は、
聞かれていたんだな、と
私は冷静に状況を理解した。





笑い声の出所は、
教室の真ん中あたりで
かたまっている男女
10人ほどだった。





その中心にいるのは、
中村海斗だった。





あの美しい顔を歪めて、
人を見下すように
笑っている。





莉乃は・・・
グループに入らず、
佳奈と美里と固まって、
心配そうな顔で
私を見ている。





あのグループの中に
入っていない。





それだけで私は、
救われたような気がした。





「お前、女のことが
好きなんだってな?」





「マジでキモいんだけど」





「人間じゃないんじゃない?」





「それなー」





「こいつと同じ
人種になるのは、
マジ勘弁」





・・・もう、やめて。
これ以上、莉乃のことを
傷つけないで。





好きな人が平気で
悪口を言う人だと
知った時の絶望感を、
私は知っている。





私が反論しようとする前に、
別の声が割り込んだ。





「ねぇ」





それは、決して
大きな声ではなかった。





だが、なぜか教室内に
響き渡った。





声を上げたのは、
冬だった。





「ねぇ、何がおかしいの?」





中村海斗率いる
グループの面々が、
目をパチクリさせる。





と、中村海斗が
吹き出した。





「ははははっ!!
何言ってんだ、
こいつ!
もしかして、
こいつもやばいやつ?
めちゃめちゃ
ダサいんですけど!!!」





それをきっかけに、
また笑い声が生まれる。





「うるさいっ!!!!」





冬が、中村海斗に
負けないくらいの
大声で叫び返す。





今度は、空気が凍った。





私も、信じられなかった。





まさか、
冬が叫ぶとは・・・





「何がおかしいんだよ!!
なんで好きな人を
あんた達に決めつけられなきゃ
いけないんだよ!!
そうやって人のこと下に見て、
平気で悪口言うあんた達のほうが、
よっぽどダサいよ!!!」





中村海斗は、ダサいと
言われたことにプライドを
傷つけられたのか、
怒りの表情で
教室から出て行った。





その後をグループの
人達が追いかけて行く。





グループの人達が
出て行って、
静まり返る教室。





その中で、最初に
口を開いたのは、
またしても冬だった。





やっぱり、
この子は、強い。





「ごめんなさい。
こんなことに
なってしまって」





「えっ、なんで謝るの?」





「そうだよ!
冬の行動は、
正しかったんだよ」





「格好良かったよ!」





私の疑問に、
教室に残っている人達が
賛同する。





そのことが、
嬉しかった。





「みんな、
ありがとう」





私の言葉にみんなが
優しい顔をする。





「これが、当たり前に
ならなければいけないんだよ」





莉乃がぽつりと
呟いた言葉に、
みんなが深く頷いた。





と、冬が何かを
思い出したように
手を打った。





「まのかちゃん」





「うん?」





「私も、まのかちゃんのことが、
好きだよ」





思いがけない言葉に、
私の脳は理解不能になる。





みんなが
冷やかして来る。





そして、
みんなで笑った。





いつか、
みんなが差別なく、
笑顔で過ごせる日が
来ることを、
私は願っています。







*end*

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