アイドルでオタクな私たち

CAST八神遼介

作者：M

2024.10.12

（あ、あの人またいる）

「きゃー！」
「きゃー！」
「きゃー！」

俺、八神遼介の
ファンの歓声が飛ぶ中、
今日も最前列にいた彼女（？）に
俺は気がつく。

黒キャップ。サングラス。
黒マスク。

正体不明の謎の熱狂的
俺のファン。

「お疲れ様でした！」

「今日のライブも大盛況！
これからも期待してるよ
カリスマ的人気・
ソロアイドル八神くん！」

マネージャー有坂にうなずくと、
俺は颯爽（さっそう）と
その場をさる。

（急げっ！）

頭の中は、次の予定でいっぱい。

全力ダッシュをしながら、
黒キャップ、サングラス、
黒マスク着用完了！

そして行き着いたところは・・・

「きゃー！」
「きゃー！」
「きゃー！」
「唯愛たーん!!」

今日もゲット最前列！

「みんなー！
今日は来てくれてありがとう！」

超人気２人組アイドル
Nicolan、クール担当麗奈たん。

「今日は盛り上がってこー！」

そして！
センターの！

「唯愛たーん!!
愛してますっっっ!!!!」

俺は、心の底から叫んだ。

（あ、あの人またいる）

私、工藤唯愛は、
今日も最前列にいる正体不明の
謎の熱狂的ファンに気がつく。

（って、そんなことより！）

ファンのみんなに応え
踊っている中、

私の頭の中は
ついさっきのことに
夢中だった。

（ああ八神様・・・!!!
今日も最高でした、愛してます!!）

浮かぶは、さっきのライブでの
彼のキラキラスマイル。

（黒キャップにサングラス、
黒マスクの完全防備で
唯愛ってバレないため
変装してまで行ってよかった！）

彼女は知らない。

愛しの八神様が今、
最前列にいて
愛を叫んでいることを。

彼は知らない。

愛しの唯愛たんが
さっきまでライブにいた
正体不明の謎の熱狂的ファン
だということを。

＊．．．・・・＊．．．・・・＊

そんなある日。

（やばい・・・！
あと２分で唯愛たんのライブが
始まる・・・！）

（やばい・・・！
八神様にみとれて
時間忘れてた・・・
あと２分でライブ始まる・・・！）

遼介と唯愛は、
遼介のライブ会場から
同時に飛び出した。

（（・・・ん？））

目が合う。

（（同類だ））

しかも向かってる先は
どちらもNicolanのライブ会場。

おかげで黒キャップに
サングラス、黒マスクの
謎の不審（？）人物が２人、
同じ方向に全力並走しているという
割とカオスな状況が発生した。

（ああやばいやばい
着いたら５秒で準備しないと！）

唯愛は、到着した瞬間にでも
ステージに立てるよう、
致し方ない、と少しでも
時短するため黒キャップと
サングラス、黒マスクをとった。

（!!!!!）

「唯愛たん・・・!?」

驚いた拍子に、転倒した遼介から
黒キャップとサングラスがとれた。

「八神様!?」

一目で一瞬で確信した唯愛も
立ち止まる。

「「嘘でしょ（だろう）・・・!?」」

見つめあった次の瞬間。

お互いに、興奮しすぎて
愛を叫んだ。

「「愛してますっっっ!!!」」

「と、いうことで
付き合うことになったのっ！」

「ええっ!?」

クール担当の麗奈も、
この電撃発表には
驚いたみたいだった。

「おめでとう・・・
だけど急だね（汗）」

急きょ呼び寄せた
有坂マネージャーも苦笑い。

「・・・じゃあ今日の
Nicolanのライブで
交際発表しちゃう？」

麗奈が提案した。

そして。

「なんと！　今日は
スペシャルサプライズゲストに
来ていただいています。
・・・伝説的人気ソロアイドル、
八神遼介！」

有坂マネージャーの司会に合わせ、
俺と唯愛たんは、腕を組んで
ステージに登場した。

「今日は、
サプライズ発表があります」

「「俺（私）達
付き合うことになりました！」」

しんとした次の瞬間、
割れんばかりの祝福の歓声が
会場を包み込んだ。

「おめでとー!!」

麗奈たんと有坂マネージャーも
笑顔で拍手を送ったのだった。

＊ｅｎｄ＊