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俺の世界には彼女だけ、だった

CAST八神 遼介八神 遼介

作者:ゆず故障

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.06.08

あの時―――――。



『ねえねえ、リョウスケ!』





『何だよ』





『もうすぐ春だよ?
どっか行こうよ!』





『“春だからどっか行く”っていう
概念が分かんねーんだけど』





『ガイネンとか
難しい言葉使わないの!
春と言ったら?』





『難しくねーよ。
俺より年上のくせに・・・
春・・・桜?』





『ピンポーン! お花見!』





『えー・・・』





『文句言わない!
はい、来週行くよ!』





あの時、あの時確かに
俺は恋をしてた。





俺の世界には
彼女しかいなかった。





彼女一色だった。





彼女は、無色だった俺の世界に
鮮かな色をつけてくれた。





―――――でも、彼女はもういない。





彼女は死んだ。





正確に言うと、俺の中では死んだ。





お花見をしようと彼女から
提案されたのに。





俺も楽しみにしていたのに。





それなのに。





彼女は、他の男のところへ行った。











**********





「・・・みくん、
・・・がみくん、
八神くん!」





「あ・・・わりィ、
ぼーっとしてた」





「進路希望、
早く出せって先生が」





「了解、ありがとな」





進路、どうしようか。





彼女がいなくなってから
俺の世界からは色が消えた。





同時に光も消えた。





何をすればいいのか





何をしたらいいのか





誰か教えて欲しい。





・・・とりあえず、今は・・・
眠いかも。





・・・・・・・・・、
俺は机に突っ伏した。





「ルナー、八神くんと
何話してたの?」





「ん? 別になんでもないよ」





「ふうん。八神くんってさ、
かっこいいけど、何考えてるか
イマイチ分かんないよね」





「・・・うん」





「あ、また寝てるよ。
八神くん、学校生活の半分は
寝てるんじゃない?(笑)」





聞こえてますよっつーの。





まあ当たってるンだけどさ。





起きててもすることねーし。













**********





いつも通り、
誰と会話するわけでもなく
家に帰ろうとしたときだった。





「八神くん」





「ん? 俺?」





見知らぬ、いや、同じクラスの
女子が話しかけてきた。





「うん。私のこと分かる?」





「・・・同じクラスの・・・」





「・・・」





「・・・ごめん。
まだ全員の名前、覚えてねーんだわ」





「まあいいや(笑)」





もう12月だというのに
名前覚えてないという、
かなり失礼な俺に対して
怒るわけでもなく





ましてや
がっかりするわけでもなく





からからと陽気に笑う
変なやつ。





「まじでごめん」





「いいっていいって!
私、白尾ルナです。
お昼休みに話したんだけど・・・」





「白尾さんね、了解、覚えた」





「ありがと(笑)
で、用件なんだけど・・・
八神くんって何中だった?」





「えーっと、新潮北中だけど?」





「・・・中3のとき彼女いた?」





「・・・いたよ」





俺を裏切った最低の彼女が。





「私ね、1個上の
お姉ちゃんがいるんだ」





お姉ちゃん?





彼女の話といい、白尾さん、
いきなりどうしたんだ?





白尾さんの用件は
想像もつかないけど





俺は本能的に心の中で
耳に手をあてていた。





「お姉ちゃんね、本当かわいいの。
憧れてる。
でも男グセが悪いんだよね。
そこだけが欠点」





「白尾さん、何が「お姉ちゃんの名前ね、
白尾そのまって言うの」





「!?」





「八神くんの元カノ、だよね」





「な、なんで・・・」





「お姉ちゃん、すっごい後悔してた。
八神くんは特別だったのに
なんであんなことしちゃったんだろうって
いっつも言ってる」





「・・・」





「でも、私は
そんなお姉ちゃん嫌い」





「え?」





「後悔するようなことしちゃうのは
人間だから仕方ないけど
私が八神くんの立場だったら
すっごい怒ると思うし。それに・・・」





「それに?」





「私、八神くんのこと好きなの。
好きだけど・・・
ううん、好きだから
お姉ちゃんとの恋応援してた。
なのに・・・っ」





「・・・」





「勝手なことばっか言ってごめん。
私、お姉ちゃんの代わりでもいい。
つきあってくれないかな・・・?」





「・・・ごめん」





「・・・だよ・・・ね」





「あー違くて。
俺、白尾さんのこと、失礼だけど
今日初めて知ったって言っても
過言じゃない」





「・・・本当、失礼しちゃうよ(笑)」





「ごめん、本当にごめん。
だから、それなのに
もうつきあっちゃうのは
白尾さんに対して不誠実だと思うし
正直自分の気もちも分かんねえ。
だから・・・返事は・・・待って下さい」





「・・・ありがとう・・・っ」





「それにつきあうとしても
おねーサンの代わりとかじゃないから。
代わりなんて出来ないし、
必要だとも・・・思わない」





そう。





ようやく気づけた。





俺はもう彼女のいない世界でも
ちゃんと自分の足で歩いていける。





「分かった、本当ありがとう。
そして、ごめんなさい。
姉妹そろって八神くんを
困らせてばっかりだね」





「いいよ。慣れたしね(笑)」





くるりと白尾さんに背を向けて
一歩踏み出した世界は





鮮やかな色で
目も眩むような光で
輝いていた。





俺は微かに口元を緩めると
確かに一歩一歩歩いていった。







*end*

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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