キミの君

CAST八神 遼介八神 遼介

作者:Horn

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2023.07.11

キミの歌声を
初めて聴いた
12歳の夏。





キミが突然
いなくなってから
目覚めた恋心。





それから約4年後に
再び再会したキミと俺。





だけど
俺の大好きな歌声は
2度と聴けなくなっていたんだ。





俺の青春は
キミの歌声で幕を開けた――――













*・.*・.*・.*・.*・.*





ボールが宙に舞う。





そして俺、八神リョウスケの
真上を通りすぎていった。





?「おい、
どこに投げてんだよ!
ダイジ」





ダイジ「あ、ごめーん。
リョウスケー」





あいつ、
どんだけ遠くに
飛ばしてるんだよ。





渋々飛んでいった方向に
探しに行く。





リョウスケ「あれ?
この辺だと
思うんだけど・・・」





なかなか
見つからない。





くそー。





なんで俺が
探してるんだ?





「~♪」





イラついてた時
綺麗な音が聴こえた。





音楽の授業が嫌いな俺でも
ずっと聴いていたいと
思ったほどだ。





あっちの方から
聴こえる・・・!





その音が聴こえる方へ
歩み出した。





あ、いた・・・!!





そっと物陰に隠れて
様子を伺う。





ひとりの女子が
楽しそうに歌っていた。





遠くからで
よくわからないけど
そうとう楽しいみたいで
くるくる回っていた。





その姿がすごい印象的で
もっと近くで見たいと思って
ついつい前に出てしまった。





そのせいでザワっと
草の音を
させてしまったんだ。





あ、ヤバイ・・・
見つかった。





リョウスケ「ど、どーも」





何、俺挨拶してんだよ!





そんな焦ってる俺に
彼女が口を開いた。





?「探してるのって、
これ?」





風鈴のような
綺麗な声。





白い細い腕の手には
探していたボール。





リョウスケ「そうそう。
ありがとー・・・」





ボールを受け取ろうと
近くに歩み寄った。





そのついでに
チラッと顔を見る。





あ・・・!





ダイジが
すごい美少女って
騒いでた子だ。





たしか、名前は
川原ミアン。





初めて見たけど
ダイジの言う通り
綺麗だった。





女子にあまり関心のない
俺でも納得するほど、
可愛い子だったんだ。





ミアン「あの・・・大丈夫?」





ずいぶん俺は
見惚れてたみたいだ。





リョウスケ「へ!? あ、大丈夫」





ミアン「そう?
あ、はい。これ」





リョウスケ「あ、ありがとう・・・」





俺は思いきって
1つ頼んでみた。





リョウスケ「あの、
さっき歌ってた歌。
もう1回歌って?」





ミアン「いいよ。
えーっと・・・」





リョウスケ「俺は、八神リョウスケ!
リョウスケって呼んで」





ミアン「私は、川原ミアン。
ミアンでいいよ」





ミアン・・・





改めて聴く名前。





綺麗な声の彼女に
ピッタリな名前だ。





ミアン「じゃあリョウスケも
一緒に歌おう!」





リョウスケ「え!?
俺、オンチだよ?」





ミアン「オンチとか関係ないよ!
楽しければ
それでいいんだよ」





楽しければいいか・・・





ミアン「じゃあ、いくよ!」





やっぱり俺はオンチで
ミアンの歌声を台無しにしてる
感じがしたけど、





ミアンは全然
気にしてないみたいだった。





むしろとても
楽しそう。





そんなミアンの姿に
俺も楽しくなる。





歌い終わると彼女は
優しく微笑んで
駆け出していった。





のぼせたみたいに、暑い。





ボールを受け取った手が
真っ赤で汗が出ていた。





きっと夏のせい・・・





そう誤魔化してたけど
あの時にはもう
気づいていたと思う。





俺は、恋に落ちたんだ――――













*・*・・・*・・・*・*





その日から、俺の世界は
キラキラ輝いた。





学校で会えるかもしれないと
考えると、ドキドキだった。





いつもどーでもいい服も
慎重に選んだ。





学校に向かう足も
自然に速くなった。





無意識に昨日
ミアンと歌った歌を
口ずさんでいた。





学校に行けば
ミアンに会える。





早く会いたい!





でもその気持ちは
学校に着くと
すぐに消え去った。





ミアンは
転校してしまったのだ。





急なことでもあって
校内中その話で
いっぱいだった。





なぜ急に転校したのか。





なぜ誰にも
黙っていってしまったのか。





色々謎が残るものの、
日がたつにつれて
その騒ぎは収まっていった。





だけど俺は
収まることはなく
むしろ気持ちが
膨れ上がっていく一方。





もうどこにも
ぶつけられない
この気持ち。





俺は、後悔した。





ミアンに会わなければ
良かった。





ミアンに恋をしなければ
良かったんだ。





それからは
無理にしまいこんで
忘れようと頑張った。





前々から
自慢じゃないけど
女子から告白されることが
度々あった。





だけど恋愛が
よくわからなかった俺は
毎回断っていた。





だけど、
新しい恋をしようと
告白された子とは
とりあえず付き合ったりした。





ミアンの代わりの
可愛い子を探すようにした。





だけど全然
忘れることなんて
出来なかった。





頭の中であの歌声が
永遠にリピートされる。





もしかしたら
忘れる気なんて
最初から
なかったのかもしれない。





俺の彼女が
コロコロ変わっても





可愛い子を見つけても





密かにミアンを
探していたんだから。













・*。・ 約4年後 ・。*・





月日が流れても俺は、
いまだに頑張っていた。





リョウスケ「♪~」





?「リョウスケ! その歌、何?」





リョウスケ「よぉ、フタバ。
これは俺のお気に入りの曲♪」





フタバ「え~!
曲名教えてよー」





おかげで周りからは
すっかりチャラ男扱いされていた。





そんなまさに青春を
謳歌してたとき、





突然彼女、
ミアンは現れた。





俺の奥底で眠っていた
ミアンとの思い出が
溢れ出た。





再びミアンと
あの頃の様に話したいと思い、
俺はミアンに話しかけた。





リョウスケ「久しぶり、ミアン!」





ミアン「・・・・・」





俺の言葉に
一度は立ち止まったものの
その後何も言わず
歩いていってしまった。





そんなミアンに
俺は違和感を感じた。





あの時の1回、
喋ったきりだから
俺のことを
覚えてないだけかもしれない。





だけどあの頃の
ミアンの面影がない。





まるで別人みたいだ。





でも、外見や名前は
あの頃のままだから
ミアンのはずなんだけど・・・





ダイジ「おっす! リョウスケ」





リョウスケ「ダイジ」





ダイジと俺は
小学校からの仲。





俺が変わってしまって
周りから女好き扱いされても
ダイジは昔から
変わらず接してくれるんだ。





ダイジ「あの転校生って
川原ミアンだよな?」





リョウスケ「あぁ。
さっき声かけたけど
無視された」





ダイジ「・・・・・」





リョウスケ「俺のこと
覚えてないのかもな・・・」





ダイジ「あ、あのさ、リョウスケ・・・」





リョウスケ「ん? どーした?」





ダイジ「実は川原は・・・」





俺はダイジから
驚きの話を聞いた。





まさか、そんな・・・





その日の放課後。





俺は帰り道に
本屋に立ち寄った。













・゜・・゜ 翌日 ・・゜・*・゜





あー眠っ・・・





でも、これも
ミアンと話すためだ。





頑張ったよ、俺!!





あっ、いた・・・!





リョウスケ「ミアン!! おはよー」





ミアン「・・・!!」





通じたかな・・・?





緊張する・・・





ミアン「(おはよう。リョウスケ)」





よっしゃ、通じた!!





しかも、俺のこと
覚えてくれてる!





俺は昨日ダイジから
ミアンが両親を亡くしたショックで
声を失ったことを知った。





なんとかミアンと
話す方法を考えた結果、
手話で会話することを
思いついたんだ。





早速、その日の放課後
本屋に立ち寄り、
手話の本で練習したのだ。





リョウスケ「12歳の時に
何で急に転校したの?」





1番知りたかったことだ。





ミアンは一瞬、目を伏せて
話し始めた。





ミアン「(あの時に事故で
両親が死んじゃって
親戚の家に行くことになったの。
それで親戚の近くの学校に
転校したんだ。
それからは親戚の家を
転々としながら
転校を繰り返してて)」





そーゆー
ことだったんだ。





リョウスケ「ごめん。
嫌なこと
思い出させちゃって」





ミアン「(大丈夫だから
気にしないで。
それよりもリョウスケ
手話上手だね!)」





リョウスケ「ありがとう」





楽しい!





ミアンと話せることが
嬉しい!!





それからはミアンと
手話での話の日々が
続いた。





毎日が楽しかった。





お陰ですっかり
俺の女癖はなくなり
昔の俺に戻っていった。





でも周りはそんな俺を
認めてくれなかったんだ。





コハナ「ねぇ、リョウスケー?」





リョウスケ「触るな」





フタバ「どうしちゃったの?
リョウスケ」





リョウスケ「もう、
昔の俺じゃないんだ。
ほっといてくれ」





フタバ「・・・ねぇ
リョウスケが変わった原因って
川原ミアン?」





リョウスケ「なんだよ、それが」





フタバ「ふーん・・・
そうなんだー」





リョウスケ「フタバ。
何企んでるんだ」





フタバ「別にー。
何もないよー」





嫌な予感がする。













・*。・ ミアンside ・。*・





私、川原ミアンは
声を出せません。





けど、リョウスケが手話で
会話してくれるから
毎日が楽しいです。





リョウスケ「ミアン!!」





ミアン「(どうしたの? フタバ)」





リョウスケ「フタバには
近づかないようにしろよ」





ミアン「(え!? なんで?)」





リョウスケ「いいから!
フタバには近づくなよ」





ミアン「(うん。わかった・・・)」





どうしたんだろ。
リョウスケ・・・





フタバさんって
確か・・・





リョウスケといつも
一緒にいる子。





お互いに下の名前で
呼びあっている。





すごく仲良さそう。





ちょっと
モヤモヤするな・・・





ダメダメ。





私はリョウスケと
話せるだけで十分!





だけど1つだけ
わがままを言えるなら・・・





私以外の女の子と
仲良くしないでほしい・・・





?「川原さん。
ちょっといい?」





その時、突然現れたのは
同じクラスのミオコちゃん。





ミオコちゃんの
手にあるノートには、
『ちょっといい?』という文字。





何の用だろ。





フタバさんじゃないから
いいよね?





縦に顔を振ると
ミオコちゃんは
『ついてきて』と言うように
歩きだした。





その後を
私はついていく。





着いた先は、校舎裏。





そこにはリョウスケが
近づくなと言っていた
フタバさん。





思わず一歩下がる。





フタバ「川原さん、はっきり
言わせていただくわ。
あなたのせいで
リョウスケは変わった」





え!?
どういうこと?





フタバ「前のリョウスケは
皆に優しかったのに
今は皆に冷たくなってしまった。
唯一優しくされてるのは
あなた、川原さんだけよ」





私の・・・せい?





フタバ「そーゆー訳だから
川原さん。
これからはリョウスケに
近づかないで」





そう言って
フタバさんは
去っていった。





私のせいでリョウスケは
皆から愛される存在じゃ
なくなったってこと?





そんな・・・





私のせいで
リョウスケに被害が出るなら
私は・・・













・*。・ リョウスケside ・。*・





なんだかミアンに
避けられるようになった。





何で?
俺、なんかした?





ミアンに避けられるように
なったのは、
フタバには注意しろって
言った日からだ。





もしやフタバに
何か吹き込まれた?





いやいや。





ミアンも
気をつけてるはずだ。





考えすぎ、俺。





だけど、
もしそうだとしたら・・・





フタバ「リョースケ!」





リョウスケ「フタバ。
触んなって言ったよな?」





フタバ「えー?
そんなこと言われても
フタバは諦めないもん」





リョウスケ「いい加減にしてくれよ。
てか、手離せ」





フタバ「アハハ!!
リョウスケ困ってる~(笑)」





リョウスケ「うるせーな!
って・・・ミアン」





俺らを見たミアンは
一瞬悲しそうな顔をして
向こう側に
走っていってしまった。





リョウスケ「ミアン!!」





ミアンを
追いかけようとした時
後ろから誰かに抱きつかれた。





リョウスケ「フタバ・・・」





フタバ「どうして?
どうしてあの子ばっかなの?
私だけを見ててよ!!」





リョウスケ「フタバ、ごめん」





俺がミアンが
いいんだ!





フタバを振り切って
俺は走り出す。













*・*・・・*・・・*・*





いた!





あの姿は、ミアンだ。





リョウスケ「ミアンー!」





ミアンは、俺の声が
聞こえたのか
スピードを上げた。





そうだった。





あいつ、リレーの選手に
選ばれるほど
足速いんだった。





だけど、俺も負けないくらい
足には自信があるんだよ!!





俺もどんどん
スピードを上げる。





俺のプライドとしても
女に負けるわけにいかないし!





あとちょっとで
追いつく。





リョウスケ「つかまえた・・・」





ミアン「(来ないで!!)」





リョウスケ「ミアン!?」





ミアン「(なんで私に近づくの?
私のせいでリョウスケは皆から
したわれなくなったんでしょ?)」





リョウスケ「もしかしてミアン、
自分のせいって思ってる?」





ミアン「(そうよ!
だってフタバさんから
はっきり言われたんだもん。
私のせいでリョウスケは
愛されなくなったって!!)」





リョウスケ「はー。
やっぱりフタバに
言われたんだ。
良かった・・・」





ミアン「(良かった?
何が良かったのよ?)」





リョウスケ「だって俺はミアンに
嫌われてないって
ことでしょ?」





ミアン「(何言ってるの?
私に好かれるより
皆に好かれる方がいいでしょ?)」





リョウスケ「は!? 俺は皆より
ミアンに好かれた方が
嬉しいよ」





ミアン「(なんで私なんか・・・)」





リョウスケ「そんなの
ミアンが好きだからに
きまってるじゃん」





ミアン「(へ!?)」





リョウスケ「ミアンは俺のこと
嫌い?」





ミアン「わ、私も・・・
す、き・・・」





リョウスケ「ミアン!! 声!」





ミアン「へ・・・?」





リョウスケ「声出てる!!」





ミアン「私・・・声出た?
嘘・・・」





リョウスケ「やったな、ミアン!!」





リョウスケ「嬉しい!!
ありがとう、リョウスケ」





リョウスケ「ミアン。
あれ、歌ってよ」





ミアン「久々だけど
上手く歌えるかな?」





リョウスケ「楽しければいいんだよ」





ミアン「!!」





リョウスケ「・・・ってミアン、
昔言ってくれたよね?」





ミアン「うん!
なら、リョウスケも歌おう!!」





リョウスケ「俺、前より
上手くなったからな!!
見てろよ」





ミアン「わかったよ(笑)
さぁいくよ!!」





俺の青春がこの歌と共に
戻ってきた瞬間だった。













*・.*・.*・.*・.*・.*





この物語は
これでおしまい。





だけどある意味
再スタートなのかもしれない。





これから始まる
新たな物語が
キミの声いっぱいに
溢れますように・・・







☆END☆
*ニコ学名作リバイバル*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。

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