新たな同盟

CAST中瀬梨里

作者：ak@

2025.09.27

私、中瀬リリ。
ニコラ学園中学３年生。

実は私、幼なじみの
葉山ワカナと
「男子を好きにならない同盟」
を組んでるの！

ワカナは男子が苦手みたいだし、
私は昔、告白して
つめたーく断られた・・・

だから私たちは
この同盟を組んだ。

この同盟を破ることには
ならないって、思ってたのにー！

「あ、リリ。あのさ、
ちょっと時間いい？」

私が学校から帰る支度を
しているとき、
ワカナがやってきた。

「え？　いいけど・・・」

ワカナは、恥ずかしそうに
頬を染めながら言う。

「あのね、私・・・
松瀬くんと、つきあってるの！」

彼女の横で
ぺこりとおじぎするのは、
クラスメイトの松瀬ダイジ。

静かでやさしいやつだ。

ワカナが好きになるのも
無理はない。

「ワカナ、
『男子を好きにならない同盟』、
どうしたの？」

「ごめん、リリ・・・
私、松瀬くんに告白されて・・・
彼なら、だいじょうぶだと思って」

男子の苦手なワカナでも
松瀬ダイジならつきあえるのか。

私は、ため息をついた。

同盟を破られたことで
次の日も私はショックで
ぼーっとしていた。

しかし、今日は
日直なので忙しい。

私はクラスの本を
６冊くらい積み上げて、
図書室に向かった。

「ワカナってば、ひどい。
あんなに簡単に破るなんて・・・」

ぶつぶつ言いながら
階段を下る。

途中で足を踏み外した。

「う、うわあっ!?」

落ちる・・・！

と思った瞬間、
私は誰かに力強く腕を引っ張られ、
その人に引き寄せられていた。

その人は、私の本を
３冊ほどとると、
私の腕を離した。

「だいじょうぶ？」

「あ、はい・・・
ありがとうございます」

顔を上げた瞬間、
私は心臓を掴まれた。

彼はやさしそうに
微笑んでいた。

そしてその顔は
恐ろしくかっこいい。

「俺、北島ミサキ。君は？」

「中瀬リリです」

「リリちゃん。かわいいね」

やばい。やばい。

私は今、同盟を破っている。

でも、好きにならずには
いられない。

やばい。

それから私たちは
よく話すようになった。

会うたびに彼が
手を振ってくれるのも
うれしかった。

私たちの距離は
縮まっていく。

同盟を破っても
よかった。

「北島くん、私・・・」

「リリ。俺に言わせてよ。
俺、お前が好きだ」

そして、私はワカナと
新たな同盟を結んだ。

「彼氏を大事にする同盟」

これはぜーったい
破らない。

＊ｅｎｄ＊