シンデレラ・ガール
作者:ろっか
みんなは、シンデレラって
知ってるよね?
姉妹にいじめられてた少女・シンデレラが
舞踏会に行って王子様に出会って、
靴を落として。
靴を見つけた王子様が
シンデレラを探して
最後には結婚する・・・
っていう物語ね。
でも、もう1つの
シンデレラの物語があるの。
あなたは知ってる?
*...・・・*...・・・*
私、美空。
美空って書いて
“みく”って読むの。
ニコラ学園中学2年生。
私には、2人の義理の姉がいる。
義理なのは
お母さんが死んじゃって、
お父さんが再婚したから。
そのあとにお父さんは
死んじゃった・・・複雑でしょ。
姉のうちの1人は、
1つ年上の梨里お姉ちゃん。
コミュ力がすごく高くて、
人を笑わせるのが好き。
すごくやさしくて、
かわいい。
恋への憧れが強い、
ピュアな中学3年生。
もう1人は2つ上の
花奈お姉ちゃん。
真面目で優等生。
勉強がすごくできる。
すごくやさしくて、
かわいい。
恋愛には疎いけど、
裏ではモテモテの
ピュアな高校1年生。
そして、恋愛に憧れる、
平凡な中2、私・美空。
家族構成は、シンデレラと
まんまいっしょ。
でも、違うのは
お姉ちゃんたちが
完璧でやさしいってとこ。
しかも、お義母さんは
全然意地悪なんかじゃない。
やさしくて、ちょっと厳しいけど
愛がある。
彼女は、私と2人の姉を
対等に扱ってくれる。
私、美空の物語・・・
これがもう1つの
シンデレラ物語。
・。・:・°・。・:・°・。・:・°・。・:・
朝、私は梨里お姉ちゃんと
いっしょに家を出た。
「もうすぐ期末テストやん。
嫌やなあ~」
のほほんとした関西弁で話す
梨里お姉ちゃんは、
のんびり屋さん。
「お姉ちゃんは、頭良くて
うらやましいねん」
「花奈お姉ちゃんは
努力しているからこそ
頭がいいんじゃない」
「それはそうだけどー、
うちは、がんばりたくないんや」
「なら、あきらめれば?」
「美空は、冷たいなあ」
「花奈お姉ちゃんに
勉強教えてもらえばいいんじゃ」
「お姉ちゃんは
スパルタやからな~」
たわいない話をしながら歩く。
両親が死んでしまい、
寂しい思いをしてきた私だけど、
素敵な姉妹がいてよかったなあと
心から思う。
「じゃな」
2年生と1年生は階が違うので、
踊り場で別れる。
「きゃー! やばーい!」
3階に足を踏み入れた途端、
黄色い声が聞こえた。
え? 何? と思いながら
そちらを見ると、
女子が何やら集まっていた。
その中心にいるのは・・・
よく見えないが、かっこいい男子。
「あ! 美空!」
私の名前を呼びながら
走ってきたのは、友達の真海だ。
「あれ、何?」
「転校生。
超絶イケメンって」
「ふえ~」
超絶イケメンってだけで
あんなにモテるのか。
顔さえよければ
苦労しないんだなあと
ぼんやり思った。
「行ってみようよ、美空!」
「え、・・・やだ」
「なんでっ?」
「めんどいわ」
私はあいにくも
ミーハーな女子ではない。
スタスタと歩き出すと、真海が
「ちえっ」と悔しそうに
唇をとがらせた。
「真海は興味あるの?」
「だって、一目見てみたいもん」
「生活してりゃ
そのうち見れるでしょ」
「それもそうか」
どうやら納得したらしい。
数日後、掃除の時間に
ほうきを持ってぽうっとしていると、
後ろから
「なんだよ。どけ」
という、不機嫌そうな
知らない男子の声が聞こえてきた。
「あ、はい、すいません・・・」
ぺこっとしながら後ろを向くと、
そこには興味のない私でもわかる、
超絶イケメンが。
え、これがウワサのイケメン?
口悪くね?
ちょっとびっくりしていると、
そいつはこっちを
にらみつけて歩き出した。
真海に愚痴ったものの、
「ウソだ~」
と笑って聞いてくれないし。
それからも、そいつの私への
明らかに態度の悪い接し方が続いたら。
どうやら認知されたらしい。
全くうれしくないが。
「おい大月、どけ」
どこで苗字を知ったのか知らないけど
今日も態度は悪い。
どうやらそいつの名前は
川上というらしい。
「毎回毎回、失礼にもほどがあります!
もう話しかけないで」
今日という今日は
もう無視してやる。
怒って歩き出すと、
焦った声が聞こえた。
「す、すまん!」
「なんで私に
ちょっかいをかけてくるの?」
にらみながらそう言うと、
川上はいつになく
顔を赤くして答えた。
「え、いや・・・
最初見たときに、かわいいなって・・・」
かわいい。
初めて言われた言葉に
ぽっと顔がほてった。
お姉ちゃんたちのことは
大好きだけど、
私はなんだかんだ身の回りの人から
お姉ちゃんと似てないね、
と言われて育ってきた。
血のつながりはないから
当たり前なのだけど。
そのたびに思いこんでいた。
私はかわいくないんだ、と。
だから「かわいい」という言葉に
弱いのだ。
「お前のこと知るうちに、
もっと話したくなって・・・」
照れること言わないでよ。
顔が熱いのがわかる。
川上は私の顔をじっと見ると、
ぼそっとつぶやいた。
「照れてる美空もかわいいじゃん」
いつの間にか名前で
呼んでくれてるのもうれしかった。
「俺のこと、嫌い?」
ちょっと心配そうな顔。
反則だ。
「ううん」
嫌いなわけない。
だって、私はもう。
「リヒトのこと、好き」
ぱあっと顔が輝いてる。
その顔も反則!
「俺も。大好き」
ますます照れる。
「美空、やっぱかわいいな」
シンデレラ・ガールの私。
川上リヒト・・・
彼氏のおかげで
自信がついたのでした。
お姉ちゃんたちといるのも、
彼氏といるのも、
両方幸せなんだ/////
私のことをかわいいって
言ってくれたリヒトのために、
私はもっともっと、
かわいくなってやる。
お姉ちゃんと同じくらい!
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
大月 美空

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