素直になれない。
作者:ちろる
小さい頃から
一緒にいるのに。
背も高くなって、
冷たくなって。
あの頃に
戻れないのかな。
・
・
・
「もうこんな時間!?」
その言葉が野崎家に
響き渡った。
「行ってきます!」
奈菜「大ちゃん
待たせてごめんね・・・」
大晴空「おせーんだよ」
幼馴染みの大晴空、こと、
大ちゃん。
大晴空「なに止まってるんだよ」
奈菜「ごめん、なさい・・・」
大晴空「早く歩け」
そっけない言い方に
胸が痛む。
小さい頃は優しい
男の子だったのに。
いつも私に笑いかけて
くれたのに。
*。・ 電車 ・。*
満員電車なんて
小さい私には
立ってるのなんてやっと。
奈菜「うわっ!」
車両が揺れて
バランスを崩した私は
大ちゃんにぶつかった。
奈菜「ごめんね、
すぐ退くね」
大晴空「邪魔、
こっちに来るな」
奈菜「ごめん、なさい」
*。・ 学校 ・。*
未来実「おはよう!
奈菜! 大丈夫?」
奈菜「未来実ちゃん、
おはよう・・・」
クラスの違う
大ちゃんとは別れて
教室に入る。
未来実「けど、
イケメンの幼馴染みと
登校いいなぁ!」
奈菜「そうかなぁ・・・」
未来実「この前も美人さんに
告白されたんだって!」
奈菜「そうだったんだ・・・」
たしかに大ちゃんは
カッコいい。
不良でサボってるように
見えるけど
成績も高くて、
運動神経抜群、
背も高くて
スタイルいいから、
女の子からモテモテ。
未来実「けど、
断ったんだって」
奈菜「そっか」
未来実「反応遅くない?
懸樋が可哀想・・・」
奈菜「え?」
未来実「まぁこんな可愛い
幼馴染みいたら断るよねー」
奈菜「なんのこと?」
未来実「鈍感だなぁ」
なにを言っているか
わからなかった。
*。・ 放課後 ・。*
大ちゃんは廊下で
待ってくれていた。
奈菜「未来実ちゃん
バイバイ!」
未来実「バイバイ!
懸樋、囲まれてるから
注意ね!」
え・・・?
囲まれてる?
本当だ。
教室を出た瞬間、
大ちゃんは
囲まれていた。
女子「懸樋くん、
このあと暇?」
近づけなくて
遠くから見てた時、
目があった。
大晴空「悪いけど、
手のかかる幼馴染み
いるから」
そう言うと大ちゃんは
こっちに歩いてきた。
大ちゃんのまわりの女子が
一斉にこっちを見た。
女子「うわ、
また野崎奈菜じゃん」
大ちゃんも遊びたかったら
遊べばいいのに。
嫌いなら
ほっとけばいいのに。
大晴空「おい、帰るぞ」
奈菜「へっ、平気だから」
大晴空「なに言ってんだよ」
奈菜「私ひとりで
帰れるから・・・」
大晴空「おい、
ちょっと待てよ!」
私は呼び止める大ちゃんを
無視して走った。
*。・ 公園 ・。*
奈菜「はぁ、はぁ」
逃げてきたけど
怒られないかな。
なんて、私のことは
どうでもいいか。
昔は優しくて
今とは違うのに。
私なにか
しちゃったかな。
「奈菜!」
背後から呼ばれて
振り向いた。
そこには息を切らした
大ちゃんがいた。
大晴空「お前っ勝手に
帰るんじゃねーよっ」
奈菜「ご、ごめんなさい」
まさか追いかけてくると
思わなかった。
奈菜「嬉しい、
性格は変わってないね」
大晴空「は?」
奈菜「なんにもだよ」
大晴空「あっそ・・・行くぞ」
奈菜「うんっ」
*。・ 朝 ・。*
奈菜「お、おはようっ」
大晴空「相変わらず遅い、
行くぞ」
いつもと同じで
ホッとする。
きっと昨日のは
夢だったんだ。
そう思ったとき
肩がぶつかった。
奈菜「あっごめんっ」
大晴空「お、おい
気を付けろよっ」
なんでだろう。
大ちゃん顔真っ赤。
奈菜「大ちゃん
顔真っ赤だよ?」
大晴空「うるせー
見んなよ」
奈菜「そっか、
ごめんね」
*。・ 部活練習 ・。*
未来実「懸樋の人気すごいね」
奈菜「ほんとだっ」
部室から見える
サッカーをする大ちゃん。
運動なんて、
苦手な私には無理。
それに比べて大ちゃんは、
すべてが得意。
幼馴染みでもこんなに
差がつくなんて・・・
女子「懸樋くん頑張れ!」
その一方、
未来実ちゃんは
私を真剣な目でみた。
未来実「奈菜、
懸樋のこと
どう思ってるの?」
奈菜「へっ?
幼馴染みだとっ」
未来実「そうじゃなくて!
恋愛として」
奈菜「そっそんなこと、
考えたことっ」
未来実「そっかぁ、
意識してみたら?」
奈菜「あ、ありがとっ」
*。・ 放課後 ・。*
大ちゃんを
じっと見つめる。
大晴空「なっなんだよ」
奈菜「恋愛って
なにかわかる?」
大晴空「は?
お前どうした?」
奈菜「大ちゃんを意識したら
どうなのかなってっ」
大晴空「そっそれは
待ってろよ」
奈菜「どういうこと?」
大晴空「いいから、
早く行くぞっ」
なんで動揺
してるんだろう。
変なこと
聞いちゃったかな・・・
*。・ 朝 ・。*
奈菜「お、おはよう」
大晴空「あ、あのさ、
サッカーの大会
来れない?」
奈菜「え?」
大晴空「それで
もし勝ったら
言うこと聞いてほしい」
奈菜「あっうん」
真剣な眼差しの
大ちゃん。
応援行ってみよう、かな。
*。・ 大会 ・。*
未来実ちゃんは
用事で行けないって
断られた。
1人で大丈夫かな。
大晴空「奈菜、
来てくれてありがとう」
奈菜「ううん、
サッカー頑張ってね」
なんか緊張してきて
声が震える。
試合もしない人が
なんで緊張するんだろう。
大晴空「行ってくるなっ」
大ちゃんは私に
頭をポンポンと触れた。
奈菜「なんか
恥ずかしいってば」
1人で大ちゃんの
背中に呟いた。
*。・ 大会終了 ・。*
大ちゃんは
試合に勝った。
大晴空「あ、のさ、
言うことなんだけどさ」
奈菜「うんっ」
大晴空「小さい頃から
ずっと好きだった。
俺は奈菜がいるからこそ
今があると思う。
冷たくして悪かった。
付き合ってください」
奈菜「うふふっ」
大晴空「なんで笑うんだよ」
奈菜「大ちゃんらしいなって」
気づけば大ちゃんは
私を抱きしめた。
大晴空「返事はどう?」
奈菜「お願い、します」
そして私たちは
見つめあって笑った。
冷たい君でも優しい君でも
どんな君でも。
一生一緒に
過ごしていきます。
*end*
野崎 奈菜
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