初恋 ~君と過ごした半年~
作者:あお
こんな自分がいるなんて、
知らなかった。
君に会うまで――――――――
・*・―――・*・―――・*・
野崎菜奈、
ニコラ女子中学
バスケ部3年。
太陽の日差しが
突き刺さる7月。
昨日、
部活を引退した。
先生「全中に行けなかったのは、
俺の責任だ。
お前らはよく頑張った。
本当にすまない・・・」
試合後、
先生の涙を、
初めてみた。
決勝、
2点差で負けた。
あの時、
フリースローを
落とさなければ、
あの時、
あの時・・・
先生「野崎、
大丈夫か?」
菜奈「・・・!
すみません・・・!!」
今日は先生と
個別面談。
先生、ごめん。
なんも聞いてなかった。
先生「進路は
もう決めてるのか?」
菜奈「具体的には
決めてないですけど、
バスケは続けます」
先生「そうか、嬉しいな。
だがわかってると思うけど、
うちは進学校だ。
いくら強豪とは言え、
商業高校には推薦が出せない。
まあ俺も商業高校は勧めないな」
菜奈「そうなると、
普通科の強豪て
北ニコラ第一高校
だけですよね?
そこは推薦ダメですか?」
先生「ダメではないけど、、
北一はスポーツ推薦に
あまり積極的じゃない。
一般も視野に入れておいた方が
安全だろ」
菜奈「まじですか、、」
北ニコラ第一高校、
通称「北一」は
部活はほとんど全国レベル、
なのに偏差値72の
超エリート校。
県内唯一の国立高校のため
設備がすごい。
大大人気の高校だ。
私が通うニコラ女子中学、
通称「ニコ女」は
県内1の偏差値をもつ
女子中学校。
でも私は、スポーツ推薦で
入ったため、、
もう言わなくても
わかるだろう。
ということで私は、
塾に入ることになった。
これが、私の運命を
大きく変える
出来事だったなんて
この時は知らなかった。
・*・―――・*・―――・*・
塾講師「野崎さんの成績で
一般で北一に入るには、
相当努力しないとね・・・」
私は、水曜日に国語、
土曜日に英語の授業をとった。
学校から
そのまま塾に行き
夜の10:00まで
開いている自習室に
毎日残ることに決めた。
もちろん、
甘い生活ではなかった。
北一コースは
圧倒的に男子が多い。
女子校の私にとっては
かなりきつい。
周りはガリ勉系の子
ばっかり。
運動部系の子は
1人もいなくて
気が合いそうな子もいない。
夕飯は1人で
冷たいおにぎり2つ。
10:00近くになれば
ほとんど人なんかいない。
夜は1人で
電車に乗って帰る。
今までずっと
部活をしてたから
気づかなかったけど、
1人って、こんなに寂しいんだ。
こんな生活を
3週間程続けてたころ、
1人新しい塾生が
入ってきた。
背が高くて、
手足がスラッとした、
短髪の男の子だった。
体育着には
「ニコラ中学バレー部」
と書いてあった。
たしか、ニコラ中の
バレー部って
めっちゃ強いんじゃ
なかったっけ・・・
唯一の運動部に、
私は勝手に
シンパシーを抱いた。
彼も1人みたいだった。
休憩時間も
ずっと勉強していた。
夕飯も1人で
細々と食べていた。
10:00近く、
彼も残っていた。
菜奈「あ、シャーペンの芯がない」
今日は9:30であがろう。
・*・―――・*・―――・*・
菜奈「本屋から改札まで
遠すぎや!!」
危うく、いつもの電車に
乗り遅れるところだった。
1時間に1本しかない。
乗り遅れたら
この世の終わりだ。
「あの、」
菜奈「はい、?」
!!!
え?!
ニコ中バレー部の子?!?!
「定期、
落としてましたよ」
菜奈「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ、
塾一緒だよね?」
菜奈「はい、
北一コースに
いましたよね?」
「うんいたいた、
俺、バカだから
ついてくのに必死w」
菜奈「私もなんですよ笑
1ヶ月前くらいに
引退したばっかりで、、」
「え?
結構遅くない?
部活何?」
菜奈「ニコ女のバスケ部です」
「強いんだよね?!!」
菜奈「ニコ中バレー部には
敵わないよ笑
全中でしょ?
すごいよ」
「いやいや、
あれもしかして
電車一緒?」
菜奈「そうみたいだね笑」
「どこ?」
菜奈「西駅だよ」
「俺その次だ」
男の子と、、
久しぶりに
話しました。
こんなに弾むもん?
名前、、
何ていうんだろう。
・*・―――・*・―――・*・
学校帰り、
今日も、急いで
塾に行った。
え!
もういる!
ニコ中バレー部の子!!
自習室カードが
貼ってあった。
・・・まるた、、
れおん?
丸田怜音くんて
いうんだ。
そして、
また帰りが
一緒になった。
怜音「結構自習室、
みんな早く帰るんだね」
菜奈「それ思った!」
怜音「俺らはさ、
部活で遅くなるの
慣れてるけど、
やっぱ慣れないと
この時間は怖いよね笑」
俺ら・・・・・・
菜奈「そうだね。
北一の推薦ねらってるの?」
怜音「期待はしてない笑」
菜奈「なんで?!
全中でしょ?」
怜音「北一今いいセッター
いるんだよなー、
あ、俺セッターなんだ」
ぽい、、
派手なアタッカーじゃなくて、
一見地味でも、陰で輝く、、
っって、!
何考えてんのわたし、笑
怜音「野崎さんは?
推薦狙い?」
菜奈「期待してないから
塾に来てるの!笑」
怜音「同じく笑」
こうして、
2人で帰ることが
多くなった。
これが、唯一の
楽しみになってた。
・*・―――・*・―――・*・
・9月・
夏休みも終わり、
学校が普通にはじまる。
毎日学校に来ることには
変わりないけど、
やっと、やっと
みんなに会える、
嬉しいな。
クルミ「ねえ! なな!!
最近、男子と
帰ってるでしょ?
ニコ中の子がdmしてきた!!」
菜奈「は??!!!!?!
な、なんで知ってんの!!」
クルミ「ニコ中いいじゃん!!
ニコ中ニコ女ペアなんて
誰もが憧れるよ?」
そう、ニコ中は男子校で、
簡単に言えば
ニコ女の男子版で、
お互いの学校は見えない
何かで繋がっている。
クルミ「まさか菜奈がね~、
あの菜奈がね」
菜奈「そんなんじゃない!!」
クルミ「何部なん?」
菜奈「・・・バレー」
クルミ「うっわ、かっこよ!!
強いんでしょ!!
バレー部」
菜奈「みたいね、、」
クルミ「ここはー!
ニコ中のバレー部
誰か知らない?」
菜奈「ちょ!」
ココハ「えー、
あんまわかんないけど、、
丸田怜音くんて子は有名かな。
来年の国体メンバー候補生の
集まりに呼ばれてたよ」
菜奈「え?!?!!?!」
クルミ「え?!
まさかその人?!?!」
ココハ「え?
なにがなにが?」
菜奈「・・・いや、
その、いやちがう、
ていうか」
クルミ「ビンゴだわ」
ココハ「だからなにが!!」
そんなすごい選手
だったんだ、、
塾の丸田くんは、
ちょっと勉強苦手で、
数学嫌がってて、
自習室でたまに
寝ちゃってて、、笑
バレー、
頑張ってたんだ。
すごいんだ。
・*・―――・*・―――・*・
・12月・
塾の先生に
私と丸田くんが呼ばれた。
塾講師「来週、
推薦入試ですね。
実技試験がメインとなると
思うんですけど、
調子はどうですか?」
そう、推薦入試には
実技試験がある。
このために、
最近は塾に来てなくて、
丸田くんと会うのは
とっても久しぶりだった。
今日は久々に
2人で帰った。
怜音「いつから
バスケ始めたの?」
菜奈「小4だよ」
怜音「結構遅めの
スタートなんだね」
菜奈「そうなの、
だから小6になるまで
全く試合出れなくて、」
怜音「え? まって、
ニコ女は一般?」
菜奈「なわけ!!笑
スポーツ推薦だよ」
怜音「すっごいなー、
だってほぼ1年しか
試合経験ないのに
スポーツ推薦出せたんでしょ?」
菜奈「、、うん。
チームが強くて
たまたま県選抜に
えらばれたんだよね、
それでだと思う」
怜音「相当努力したんだね。
すごいわーー」
、、
はじめてそんな風に
言われた。
私のミニバスは
強豪だった。
私の代は1人で
自動的に
試合経験もない私が
4番になった。
正直、チームが勝てたのは
私のおかげではない。
だから、
私の県選抜の抜擢は、
他チームはもちろん、
チーム内でさえ、
「ラッキー選抜」
と言われ続けた。
それが悔しくて悔しくて、、
ずっとずっと頑張ってきた。
菜奈「バレー本当に
すごいんだね、
バレー部の子が言ってたよ」
怜音「いやー、
俺は小1からはじめて
長くやってるからだけだよ」
菜奈「そんなことないよ!!
丸田くんが努力家だから、
国体の候補生に
選ばれたんだよ!!」
怜音「え、、」
菜奈「あ、ごごめん!!
偉そうなこと言って・・・」
怜音「いや、ありがとう。
初めてそんなこと言われた。
頑張ろうな、お互い!」
菜奈「うん!!」
・*・―――・*・―――・*・
2週間後、10時に
自習室を出た。
改札には
丸田くんがいた。
怜音「野崎さん、
ここにいるってことは、、
だよね笑」
菜奈「うん、笑」
2人とも、
だめだった。
怜音「あー! 悔し!!!!
まじがんばろ!
ラストスパート!!」
菜奈「だね!!!
3月まであと、
3ヶ月ないのか、、」
怜音「模試順調?」
菜奈「全然。、
前よりはいいけど、」
怜音「俺もだーーー」
いつもだったら
絶対落ち込む。
今日だって
自習室行かなかった。
でもなんでかな、
笑ってる。、
頑張ろうって思ってる。
丸田くんがいるからだ。
一緒に頑張る、
仲間がいるからだ。
・*・―――・*・―――・*・
丸田怜音、
ニコ中バレー部3年。
最近、女の子と
一緒に帰っている。
野崎さんは
本当にすごい。
夜まで残ってる女子なんて、
野崎さんくらいだし
本人は頭悪いって
言ってるけど、
部活も勉強も
頑張ってきたんだろうなって
授業を見てれば思う。
いつも一生懸命で、
すごく刺激されてるんだ。
この前、はじめて
バスケのことを聞いた。
俺はお兄ちゃんの影響で
小1からはじめて、
経験の多さが今に繋がってる。
野崎さんみたいに
小4から始めてたら、、
ここまで絶対
来れてないと思う。
本当に、本当に
努力家なんだ。
あと、野崎さんは優しい。
周りをよく見てて、
すごく気遣いができる。
かける言葉1つ1つが、
トゲがなくて、柔らかい。
スポーツの世界は
競争世界。
幼い頃から
目に見えた上下関係を
強いられる。
きっと、たくさん
悔しい思いをして、
傷ついて、
人の痛みを
知るからこそ
優しいんだろうな。
・*・―――・*・―――・*・
それから私たちは
ラストスパートをかけて
死ぬ気で勉強した。
冬休みも正月も、
ずっとずっと塾で勉強した。
食事以外の時間は
すべて勉強に割いた。
唯一の楽しみは、
帰りの電車だった。
いろんなことを話した。
家族の話、友達の話、
趣味の話、勉強の話、
学校の話、、
クルミ「あーもー
勉強やだーー!
なんで中学も受験したのに
高校受験しなきゃなんないの!!」
ここは「そんなこと言わないでさ、
あとちょっとなんだから
がんばろーよ」
クルミ「なな!
まだ例の彼と一緒に
帰ってんの??笑」
菜奈「例の彼って、、
うん、まあ」
クルミ「あのクルミに
心を開かせたんだから、
さては丸田、
相当なプレーボーイだな」
菜奈「・・・女慣れしてるのかな」
クルミ「あ、いや冗談だよ?」
菜奈「いや違うの、
自分でも、男子とこんな
喋ってるのが
不思議っていうか、
もしかして、あっちが相当、
女慣れしてるんじゃないかって、、
思ったり、思わなかったり」
クルミ「どうなん?
ここは」
ここは「うーん、
女慣れしてるかは
わかんないけど、
小学生のときは
バレー上手いし、
背高いから
かっこいいー!
って言われてたよ」
クルミ「ちょっと、、
黒説、」
菜奈「やっぱモテるんだ、」
クルミ「で、でもさ!
菜奈が思ったことが
1番正解だよ!
楽しいんでしょ?
話してて、それが
本当なんじゃない?」
ここは「悪い人では
ないと思うよ。
チャラいって感じでもないし」
クルミ「あーー!
いいな!!!
私も恋したい!!」
菜奈「こ、恋?!?!
そんなんじゃないよ!!!!」
クルミ「え?
好きじゃないの?」
好き、
とかそういうの、、
ここは「ほらあんま
いじらないであげて、笑
菜奈かお真っ赤笑笑」
好き、かどうか
わかんないけど、、
尊敬してる。
すっごく。
・*・―――・*・―――・*・
怜音「受験終わったらさ、
何する?」
菜奈「えー、
そうだなー、、、」
受験、
終わったら、、、
もう、
会えなくなっちゃうんだ、
一緒に、
帰れなくなっちゃうんだ。
早く終わって欲しい、
早く終わって欲しいって
ずっと思ってたけど、、、
終わったら、、
怜音「どうした?」
菜奈「え、いや!」
怜音「疲れてるんだね笑」
菜奈「そんなんじゃないけど、」
怜音「これいいよ」
菜奈「え? なに?
これ、、」
怜音「人形笑
ここ押して」
菜奈「うん、」
ピー。
明日はみんなお坊さん。
菜奈「ふっっ、笑笑笑笑
なにこれ笑笑」
怜音「笑った笑
おもろいでしょ笑」
受験終わったら、、
一緒に遊びたい。
丸田くんと。
・*・―――・*・―――・*・
・3月・
明日は入試だ。
今日は塾で
決起会をした。
約半年、この塾に通って
友達もできた。
ここまで頑張れたのは、
塾のおかげだ。
帰り、最後の丸田くんとの
帰りの電車だ。
怜音「俺らまじ
頑張ったよね笑」
菜奈「うん、
がんばった!!」
怜音「明日、
頑張ろう!!!!」
菜奈「うん!!!」
そう、頑張るんだ。
明日。
そしたら、
終わるんだ。
終わっちゃうんだ、、
怜音「あのさ」
菜奈「ん?」
怜音「合格報告しに
塾いくじゃん、、
一緒に行かない?」
菜奈「え、!
行きたい!! 行こ!!」
怜音「じゃあ、
お互い合格したら、
塾に12:00集合で!」
菜奈「わかった!
じゃあ、
もう降りるね、
明日、、」
怜音「がんばろうな!!!!」
・*・―――・*・―――・*・
今日は合格発表。
北一はネット公開しか
してない。
648・・・
648・・・・・・
あった!!!!
うかった!!!!!!!!!
菜奈「お母さん!!
受かったよ!!」
母「ほんと?、
ほんとに?
頑張ったね、、
頑張ったね菜奈!!」
菜奈「うん、、
ありがとう
お母さん・・・
じゃあ、ちょっと
行ってきます!!」
母「え? どこに?」
菜奈「塾!!!」
はやく、
はやく会いたい、
会って、
受かったよって
言いたい、、
丸田くんに!!
・*・―――・*・―――・*・
塾についた。
丸田くん、
いるかな。
怜音「野崎さん!!」
菜奈「丸田くん!!」
怜音・菜奈「受かった!!!」
怜音「おめでとう!」
菜奈「丸田くんもおめでと!!」
怜音「よっしゃーー、
これで北一で
バレーできる!!」
菜奈「わたしもだー、
よかったーー」
怜音「ね、、、
2つ聞いていい?」
菜奈「うん、いいよ?」
怜音「LINE、、
交換しない?」
菜奈「うん! しよ!!」
怜音「ここまで頑張れたのは、
野崎さんのおかげなんだ。
いつからか、
今日野崎さんと帰れるから
頑張ろうとか、
思うようにななってて、、
半年間、本当にありがとう」
菜奈「そんな、
わたしこそ、!」
怜音「野崎さんが、好き。
一生懸命で、優しくて、
頑張り屋さんの
野崎さんが、好き」
菜奈「え・・・・・・」
怜音「俺と、
付き合ってくれませんか」
菜奈「わたしも、
すきだよ」
・*・―――・*・―――・*・
今日は入学式。
塾で降りてた駅から
2つ先が北一。
新しい制服を着て、
ローファーを履いて
丸田くんと一緒に
学校に行く。
怜音「これからもよろしく」
菜奈「こちらこそ」
~end~
野崎 奈菜
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