笑わないアイツ
作者:へい!
俺のクラスメイト、
橘ユウリは笑わない。
すごく整った顔をしていて、
ド真面目。
でも、笑わないせいか、
みんな彼女に
話しかけることはしない。
でも、俺は・・・・
笑わないアイツが
気になるんだ。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
俺は、北島ミサキ。
ニコラ高等学校3年生。
たぶん・・・・
人気者だと思う。
「ねー、北島くん!
明日空いてる?」
と、明らかにデートに
誘ってる感だしてるのは、
野澤シオリ。
苦手じゃないが、
なんとも話しにくい。
「あーごめん、
習い事の空手が・・・・」
「えーっ、空手やってんの!?
かっこいい、憧れる!」
逆に感心されてしまう。
俺はワッショイ発言が
苦手なのだ、
遠慮してしまうから。
何気なく野澤から離れる。
すると今度は、親友の
西ユアンが。
「ねー、大月と山本が
明後日遊園地・・・・」
「ごめん、苦手なんだ」
「え、2人とも
かわいいじゃん?」
「山本はサバサバしてて
話しやすいけど、大月は・・・・」
「え、ちょっとわかるけどさ、
やっぱかわいいから、いいでしょ」
「・・・・そうか?」
見た目だけで判断しがちな西は
良いやつだけど、ちょっとバカだ。
そもそも大月は明らかに
西狙いだし、
山本はどんくさいから
おそらく大月に誘われ、
まんまと乗せられてしまった
だけだろう。
あー、人間関係って面倒くさいな、
なんて思う。
「じゃあさ、お前は
誰がかわいいと思う?」
にやにやしながら
聞いてくる。
俺は適当に、
「みんな同じようなもんだろ」
と、答える。
すると、西は俺の耳に
ささやきかけてきた。
「お前、最近
好きな人いるだろ」
「・・・・へっ?」
まぬけな声が出た。
西は、面白そうに
口元をゆがめた。
「お前、感情隠すの下手だからなー。
大月ミク、山本イチカ、
野澤シオリ、常盤マウミ、
相沢イブキ、橘ユウリ・・・・」
やばい、顔に出てしまう。
西は、俺に顔を近づけると
ますますニヤニヤした。
「あ、橘さんか!
え、なんで、よりにもよって
あの人なの?
そりゃ美人だけど、
暗くて面白みなくね?」
暗くて面白みがない。
その言葉にちょっと
ムカッとした。
「お前に何がわかるんだよ」
思わず語気を強めると、
西は驚いたように目を瞬いた。
「え? あ、ごめんて。
いや、お前の本気度がわかったよ。
ならさ」
“ならさ”ってなんだよ。
ちょっとイライラしながら
ヤツを見た。
笑ってやがる。
「協力してやろうか」
協力? そんなもん、
「いらねーわ」
俺は、西を無視して
スタスタ歩きだした。
ったく、人の恋愛に
過干渉しやがって。
あれ?
これって、恋愛なのか?
ただ単に、笑った顔を
見たいってだけで・・・・
これが、恋なのか?
でも、恋っていうには
彼女について知っていることが
少なすぎる。
何が好きなのか、
兄弟はいるのか、
趣味は、誕生日は・・・・
彼女について知りたいけど、急に
「好きな食べ物は?」
って聞いたら、それは変な人か
幼稚園児だ。
「どうやったら
仲よくなれんのかなあ・・・・」
笑ってほしい。
クラスのやつがふざけていても、
先生がジョークを言っても、
橘さんは笑わない。
どうしたら笑ってくれるのか?
考えこんで、ぼうっと
スマホを見たら、
ピコンと通信音が鳴った。
ユアン『さっきはごめんて。
まじで手伝ったるから』
手伝うって、何をだよ。
ミサキ『何を?』
ユアン『お前のレンアイ』
“恋愛”をカタカナにすんな。
ミサキ『恋じゃない』
ミサキ『恋だろ』
むっ。
ユアン『俺の元カノ、
橘さんと仲よかったみたいだけど』
仲が良かった?
過去形だ。
そもそも西、
お前、元カノいんのか。
そもそも元カノにそんな軽々しく
女のこと聞けるもんなのか?
ユアン『好きなモンとか、
聞いたるぞ』
それを言われたら弱い。
ミサキ『それ、ストーカーみたいじゃね』
ユアン『ストーカーも悪くないぞ』
ミサキ『いや、悪いだろ』
ユアン『wwwww』
w多いな。
ミサキ『じゃ、頼む』
ユアン『おお、やっと頼ってくれたか、友よ』
アイツのにやける顔が
浮かぶよ。
その元カノって、
誰なんだ?
ちょっとわかる気もするが、
それはどうでもいい。
ユアン『マウミに聞いたんだけど、
橘さんはマンガと本が好きらしい』
ミサキ『マンガ!? 意外だな。
てか、お前元カノの名前
言ってんじゃねーか』
ユアン『あ』
ミサキ『笑』
マンガ、かあ。
でもマンガって
学校に持ってこれないからな。
橘さんはマンガを読んで
笑うんだろうか。
ふと、いいことを思いついた。
少女漫画?
ファンタジー系?
SF?
それともバトル系かな。
ほのぼのしたやつも
ありかもしれない。
俺が思いついた案は、
マンガを描くこと。
単行本ならバレるけど、
ノートに描けば問題ない。
そして、プレゼントすればよいのだ。
*...・・・*...・・・*
一か月の日をかけて、
俺のマンガは完成した。
少女漫画、ファンタジー、
バトル、日常生活、
すべてを詰めこんだ1つのストーリー。
もともと絵は得意だ。
自信作。
「あのさ、橘さん」
緊張しながら声をかけた。
橘さんは、驚いたような顔だ。
ゆっくり顔をあげて
こちらを見る。
「これ!」
恥ずかしさで思わず
ノートを押しつけてしまう。
走って自分の席に戻った。
橘さんは、あっけに
取られていたが、
やがて読みだした。
その表情を盗み見る。
心なしか、ちょっと
楽しそうだ。
あ、笑った!
彼女の笑顔を
見ることができた喜びで、
俺の方が笑顔になる。
休み時間も、俺は
彼女から目を離せなかった。
マンガも最後の方だ。
最後のページには。
『笑顔の君を見てみたくて
描きました。好きです』
最後のページを読んだ彼女は
真っ赤になった。
そして、こちらを見て
微笑んだ。
「ありがとう」
と、口が動いた。
初めて、笑ってくれた。
俺も満面の笑みを返した。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。





























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白水ひより
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