33回目の正直
作者:ゆず故障
「常盤、好きだよ」
放課後の教室。
教室にはあたしとあいつだけ。
あたしはあいつに
真剣な眼差しで見つめられ、
告白された。
まるで少女漫画のようで
女の子なら誰でも喜びそうな
シチュエーション。
でも、あたしは
全ッ然うれしくない。
「ふーん。あのさ、
そのセリフ何回目?
聞き飽きたんだけど」
「32回目」
「多っ! てか数えてたの!?」
「当たり前じゃん。
同時に俺が振られた回数だもん」
「そっか・・・って
遠回しに皮肉じゃん」
へへっと笑うあいつは
あたしに振られたことなんか
全然気にしてないみたいで。
あたしはますます
あいつの気もちが分からなくなる。
あいつ・・・川上リヒトは、
入学早々、あたしに一目惚れをしたとかで
入学式から1ヶ月経った今でも
毎日のように告ってくる。
正直、あたしは自分に自信がない。
容姿? まあ平凡、かな。
あたしよりかわいい人なんて
沢山いる。
成績?
悪くはないけど良くもない。
スポーツ? 成績と同じ。
性格?
特にやさしいわけでもなければ
積極的なわけでもない。
本当に普通なの。
それなのに。
あいつは余裕で
イケメンの部類に入るぐらい
格好いいのに。
それなのに、どうして?
どうして、あたしなの?
そんな不安を抱いたまま、
あいつの告白を受けることなんて出来ない。
冗談だったら恥ずかしいし。
あいつに
告られるたびに
あいつに
見つめられるたびに
あたしの胸は、これでもかってぐらいに
ぎゅうーって締めつけられる。
あたしがこんな思いしてるなんて、
あいつはきっと知らない。
*...・・・*...・・・*
あいつから32回目の告白を受けた
次の日のことだった。
「ねーねー、川上くんってさ、
なんで常盤さんなんかが
好きなのかなあ?」
あたしなんかですみません。
・・・・・・困ったな
・・・出られない。
あたしはトイレの個室の中。
あいつのことが好きと思われる女子は
洗面所で化粧でも直しながら
友達と話して(主にあたしの悪口)
いるっぽい。
明らかにあたしが出てったら
気まずい感じになるじゃん。
「知らなあい。
川上くんぐらいになると
好みも想像こえてくるんじゃん?」
ギャハハハハと笑う彼女たち。
楽しそうですねー・・・
あたしの苦労も知らないで・・・!
・・・・・・ちょっと待って?
もしかしてあたしのせいで
あいつの評判落ちてる?
・・・・・・もしかしなくても、そうだよね。
あたしのせいで―――――。
そんなの絶対に嫌。
ムカつくけどあいつには
格好よく輝いていて欲しい。
あたしの彼氏じゃなくていいから。
・・・・・・てか、あたしはっ!
別に不細工じゃないっ!
*...・・・*...・・・*
「常盤、好 「33回目、だよ」
「知ってる」
ニカッと満面の笑みを浮かべるあいつは
自分の今の状況を理解してないのかな。
「川上も懲りないね」
「それだけ常盤のこと
好きってことですから。
お分かり?」
「・・・・・・分かんないよ」
「はあ・・・っ、
どうしたら俺の常盤への
この大きな愛が伝わるんだろう」
演劇のように
大げさに手を胸にあてて
うなだれるあいつ。
いつもなら、ばーかと
さんざん笑うところだけど
残念ながら今は笑えない。
「川上・・・
あたしと関わんない方が良い」
「なんで?」
今までとは、うってかわって
今まで見たことのない
真剣な表情を見せるあいつ。
その目はまるでナイフのように鋭く光り、
あたしの気もちを
見透かしているような気がした。
「川上の評判が、下がるから」
言ってはいけない、気がした。
「なんでそんなこと
常盤が気にするの?」
「なんで、って・・・あたしのせいだから。
川上があたしに告るたびに、
周りの女子は、なんで常盤なの?
って思って 「周りの女子なんかより!」
「常盤が好きだからに決まってんじゃん」
思わずクラッとしそうになった。
今までのどんなセリフより
なんて言うか
あいつの本気が詰まっていた。
「川上の好きな子がかわいければ
周りの女子も納得するの。
でも、あたしは別にかわいくないから、
だから、 「関係ねーつってんだろ!」
あいつが初めて怒鳴った。
目をぱちくりさせるあたしを前に、
いら立ちの中に、どことなく
悲しみ混ぜたような表情を浮かべるあいつ。
・・・・・・そんな表情は反則だと、思う。
「周りからの評判なんて俺は知らねー。
てか、関係ねーよ。
俺が知りたいのはお前からの評判」
「・・・」
「なー、今回は誤魔化さないで答えてよ。
・・・・・・頼むからさー・・・」
「・・・・・・好きだよ。
どうしようもないぐらいに川上が好き」
「やっと言ってくれた」
泣き出しそうな顔で笑う川上。
愛しい。
愛しいってこういうことなんだな、
って初めて思った。
「川上・・・泣いてんの?」
「ばーか。
泣いてんのはまうみだろ」
不意に頬を伝う涙。
その涙を拭ってくれる川上に
いちいちドキドキするあたしは
かなりの重症かも。
川上は、顔が真っ赤に染まった
あたしの耳元でそっとささやいた。
「周りのやつらから
何か言われても気にすんな。
俺がまうみを守るから」
あたしはもうあいつの言葉、
ひとつひとつに失神寸前。
*end*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
常盤 真海

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