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雨上がり、君への片道切符

CAST小澤 輝之介小澤 輝之介

作者:みーちゃん

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.05.15

「雨、やまないね」





駅のホーム。





屋根の端から滴る雫を眺めながら、
彼女──桜子がポツリと呟いた。





湿った空気と、独特な土の匂い。





僕たちの制服の袖は、
相合傘のせいで
半分ずつ色が変わっている。





僕と桜子は、家が近所だというだけで、
小学校からずっと一緒に帰っていた。





けれど、そんな日常も
今日で終わりだ。





明日の朝、彼女は
遠くの街へ引っ越す。





サクラコ「・・・ねえ。この雨が止んだら、
私、本当に行っちゃうよ?」





桜子が僕の方を向く。





濡れたまつ毛の先に、
駅の街灯が反射して
キラキラと光っている。





その瞳があまりに綺麗で、
僕は「行くな」という言葉を
喉の奥に無理やり押しこんだ。





僕たちが過ごした時間は、
きっと他人から見れば
なんでもない風景だ。





自販機で買った一本の炭酸飲料を
分け合ったこと。





テスト期間の図書室で、
こっそり教え合った公式。





自転車で坂道を下る時の、
背中に感じた彼女の体温。





そんな、形に残らない思い出ばかりが、
今さら重たく胸にのしかかってくる。





テルノスケ「・・・行ってもさ、
たまには連絡しろよ」





サクラコ「それだけ?」





桜子が少しだけ寂しそうに笑う。





遠くから、電車の走る音が
微かに聞こえてきた。





僕たちの時間を終わらせに来る、
無機質な鉄の音だ。





サクラコ「・・・私ね、ずっと
言いたかったことがあるんだ」





桜子が、一歩だけ僕に近づいた。





雨音に混じって、彼女の鼓動まで
聞こえてきそうな距離。





サクラコ「この雨が、全部
私の涙だったらいいのに。
そうすれば、ずっと
ここにいられる気がするから」





電車のライトがホームを照らし、
ふたりの影を長く伸ばす。





扉が開く直前、桜子は
僕のシャツの裾をギュッと掴んだ。





サクラコ「・・・好きだったよ。
ずっと、君の隣が指定席だと思ってた」





桜子はそれだけ言うと、
逃げるように電車に乗りこんだ。





閉まるドア。





動き出す車体。





窓越しに、彼女が泣きそうな顔で
手を振るのが見える。





その瞬間、僕の中で
「何か」が弾けた。





このまま見送ったら、
僕は一生、
雨が降るたびに後悔する。





テルノスケ「待てよ・・・っ!」





僕は無我夢中で走り出した。





加速する電車。





ホームの端まで全速力で駆けて
僕は、窓越しの彼女に向かって叫んだ。





テルノスケ「桜子!
俺も、俺も好きだ!
遠くに行ったって、関係ない!
週末、絶対会いに行くから!」





桜子が目を見開く。





電車がホームを離れる直前、
彼女が窓を開けて身を乗り出した。





サクラコ「・・・約束だよ!
うそついたら、一生許さないからね!」





遠ざかっていく彼女の笑顔。





でも、さっきまでの絶望感は
どこにもなかった。





ふと空を見上げると、
いつの間にか雨は止んでいた。





雲の切れ間から差しこんだ夕陽が、
濡れた線路を黄金色に染めている。





その輝きは、まるでふたりを祝福する
バージンロードのようだった。





僕はポケットの中でずっと握りしめていた
「青い石のキーホルダー」を取り出した。





次に会うとき、
彼女の指先にこれを渡そう。





遠くから、微かに警笛が聞こえる。





それは、さよならの合図じゃない。





僕たちの、新しい物語の始まりを告げる
ファンファーレだ。





雨上がりの空には、大きくて
鮮やかな虹がかかっていた。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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