誰よりも大切な君へ
作者:リヴ
俺の側には
いつも君がいた。
君がいてくれるだけで
よかった。
そのことに気づくのが、
少し遅かっただけなのに・・・
* ――― * ――― *
ナナ「えっと・・・
困ります・・・」
あいつの
心底困惑した声。
またか、と
うんざりする。
男子「お願いします!
ずっと好きだったんです!」
相手側は少し
強引な感じがする。
背も高いし、
小柄なナナからすれば、
威圧的に感じるだろう。
ため息をのみこんで、
声をかける。
タカト「・・・何やってんの」
ナナ「たーくん!」
とろくさい幼なじみが、
ぱあっと花が咲いたように笑う。
相手側の男は、
突然現れた俺に
驚いている様子だった。
タカト「ほら、帰るぞ」
ナナに向かってそう言うと、
案の定、その男子は
反論してきた。
男子「ちょっと、
勝手に乱入しといて
何言ってんの?」
うーん、
めんどくさそうな
相手だな。
ちらっとそいつを見て、
一瞬で品定めする。
ナナ「あのね、たーくんは
幼なじみなんだぁ。
わたしがどんくさいから、
いつも一緒に登下校してるの」
相手の険悪な雰囲気に気づかず、
ふわふわと笑っているナナは
本当に鈍感だ。
男子「別に付き合ってないんでしょ?
だったら、先帰れよ。
おれはナナちゃんに用があるから」
タカト「あいにく、
そうはいかなんだ。
ナナは本当にバカでビビりで、
1人で家に帰ることすら
できないからな」
ナナ「たーくんってば、ひどいよ。
わたし、そんなにドジじゃないもん」
ぷーっと頬をふくらませて、
ナナが抗議する。
なんでこんなお子ちゃまが
男子からモテてんだか、と
1人あきれる。
タカト「ま、ナナに
告白しようなんて無謀だよ。
3日に1回は告られながら、
告白相手をうまくあしらうことさえ
できないんだからな。
そういうことだから、
あんたも帰ったほうがいい」
ナナの手首をつかんで、
無理やり連行する。
ナナは意味がわからないかのように
きょとんとした顔で、
おとなしく俺に手を引かれていた。
タカト「お前さあ」
もうすぐ家に着くあたりで、
俺は足を止めて、
ナナと向き合った。
ナナ「なあに?」
不思議そうな顔をして、
ナナが首をかしげる。
タカト「いい加減、
自分であれぐらい
なんとかしろよ」
ナナ「あれって?」
タカト「告白に決まってんだろ。
さっきの、どう考えても
告られてたろ」
ナナ「でも、罰ゲームかもしれないよ?
最近、男子がそんなくだらない
遊びしてるって
アムちゃんが言ってた!」
得意げに言うナナを見て、
俺は今度こそ我慢せず
盛大にため息をついた。
タカト「本気に決まってんだろ。
バカなのか?」
ナナ「ひどい。たーくんって
わたしのこと
バカにしてるでしょ?」
してるに決まってるだろ、
とは言わないでおく。
第一、話の流れで
バカにしているのは
確定だとなぜ気づかない。
タカト「毎回、お前に
告白してきたやつを、
なんで俺がわざわざご丁寧に
お断り申し上げないといけないんだよ」
ナナ「別にわたしは頼んでないもん。
たーくんが
勝手にしてるだけじゃない」
タカト「じゃあ、
自分でちゃんと
断れるんだな?」
ナナ「で、できるよっ」
そう言いながら、
ナナの瞳は
不安そうに揺れていた。
ふき出しそうになるのを
こらえて、しかめっ面を作る。
タカト「そーかよ。
じゃあ、今後一切
俺は協力してやらないからな」
ナナは悲しそうな顔をして、
おずおずと俺を見上げた。
・・・こういう顔は、
可愛い、かもしれない。
ナナ「えっと・・・
ちょっとだけ、
ちょっとだけだから、
協力はしてほしいかな・・・」
こういう会話は、
今日で13回目だ。
ナナとは
小さいころからの
付き合いだ。
家も隣だし、
今は同じクラスだし、
親同士も仲がいい。
おまけに、ナナは
ほっておけないほど
危なっかしくて、
見ているこっちが
ひやひやさせられる。
だから、ナナの側には
いつも俺がいた。
俺がいて、
見守ってやらないと
いけないという、
使命感があった。
ナナのお守り役は
中2になった今でも
続いている。
ナナ「おはよう、アムちゃん」
もちろん、毎朝一緒に
登校している。
ナナはすぐ迷子になるからだ。
学校ぐらい1人で行けると
思うだろうが、
ナナの場合は違う。
たとえば、
猫を見かけると
その猫を追いかけて、
気がつくと知らないところに
立っていたりする。
1人にすると
とことん
危険な人物なのだ。
アム「おはよ! ナナ、
今日も大倉と一緒なんだ~」
深尾は挑発的に
俺を見つめる。
・・・マジで、
こいつが苦手だ。
深尾アムは、
陸上部に所属する
アクティブ系女子で、
明るくさばさばした性格から
女子から信頼されている。
顔も整っていて、男子からも
人気があるみたいだ。
ぽよんとした性格の
ナナの面倒をよくみてくれることに
関してはありがたいが、
俺がナナを女子として
好いていると勘違いをしている
バカでもある。
そして、機会があれば
俺を挑発したり
からかったりしてくる
イヤミなやつなのだ。
アム「わあ、ナナ、
今日あみこみしてるのー?
可愛い!!」
ナナ「えへへ。
似合うかな?」
アム「似合うに
決まってるじゃん!
さすが、あたしのナナ!」
おい、今、
「あたしの」を
強調して言っただろ。
そう思ったが、
何も言わず俺は
自分の席に着いた。
アム「あーもうナナってば
可愛すぎ!」
ナナ「わあっ、
アムちゃんってば、
くすぐったいよ」
深尾はナナが
つぶれそうな勢いで
ギューッと抱きしめている。
そして、俺のほうを見て、
にやりと意地の悪い笑みを
浮かべた。
・・・魔女だ。
アム「あっ、そういえば
大倉って、
告白されてたよねー?」
なぜそれを言うんだ。
舌打ちをしそうになりながら、
俺はポーカーフェイスをたもった。
ナナ「そ、そうだったの!?」
もちろん、ナナに
知らせてなんていない。
当然、ナナは
飛び上がって驚いた。
アム「そうよぉ。
モテちゃって、
ヤな感じだよねー」
ナナ「たーくん、どうして
言ってくれなかったの?」
タカト「言うわけないだろ」
そっけなく言うと、
ナナはますます
頬をふくらませた。
ナナ「どうして?
わたしだってたーくんの
そういう話知りたいよ」
タカト「あと30年後くらいに
教えてやるよ」
ナナ「意地悪!」
もう知らない、と
ぷんぷんしながらナナは
自分の席へ戻っていった。
あんなことを言いながら、
10分後には
「たーくん、聞いて!」
と話しかけてくるのだ。
アム「素直じゃないねー。
いい加減認めればいいのに」
不運にも俺の隣の席は
深尾だ。
からかう気満々の
深尾を無視して、
俺は数学の参考書を開く。
アム「あーんな可愛いナナが側にいれば、
惚れないほうが無理でしょ。
なのに、何をだらだらしてんのよ。
見苦しくてしかたがないの、
わかってんの?」
タカト「大きなお世話だよ」
アム「言っとくけど、
このままだとナナ、
小原くんと付き合うと思う」
打って変わった
真剣な声だ。
驚いて深尾を見つめる。
深尾はいつになく
真面目な顔をしていた。
タカト「・・・で?」
アム「で? じゃないでしょ!
ほんとあんたってバカね。
小原ってどの小原かわかってんの?
小原ユイトだよ?
あのモテモテ男子だからね?」
タカト「だから何だよ。
ナナが誰と付き合おうが、
俺には関係ない」
つめたく言い放つと、
深尾はあきれた顔をした。
アム「あんたって、
ほんとバカ」
そう言うと、深尾は
わざとらしくため息をついた。
* ――― * ――― *
下校中のナナは、
いつになく静かだった。
タカト「・・・なんかあったのか?」
しかたなくたずねると、
ナナは困った顔をして笑った。
ナナ「あのね、
小原くんって知ってる?
隣のクラスなんだけどね」
タカト「・・・ああ」
なんだか
嫌な予感がした。
ナナ「さっき呼び出しされて、
付き合わない?
って言われたの」
タカト「ふーん」
自分でも、つめたい声が
出たと思った。
ナナ「どうしよう」
タカト「どうしようって、
お前はそいつのこと
好きなのか?」
ナナ「嫌いじゃないよ。
小原くん、
たーくんと違って
優しいもん」
イラッとして、
俺は不機嫌に答えた。
タカト「優しくなくて
悪かったな」
ナナ「たーくん、
怒ってる?」
タカト「別に」
ナナ「うそ。怒ってるよ。
それぐらい、わかるもの」
タカト「うるせーな」
低い声で言うと、
ナナはビクッと体をすくめ、
悲しそうな顔をしてうつむいた。
・・・なんで俺は
素直になれないんだろう。
こんな顔、
させたくないのに。
ナナ「・・・たーくんは、
わたしのこと、
きらいになったんだね」
ナナの静かな声を
理解するのに、
数秒時間がかかった。
だが、その数秒が
悪夢をまねく。
ナナはその沈黙を
肯定と受け取り、
目に涙をためてさけんだ。
ナナ「わたしはたーくんのこと、
ちゃんと好きなのに!」
ナナはぱっと駆け出した。
驚きのあまり、
止める余裕なんて
なかった。
ただ、驚愕と幸福が
俺の心の中で
渦を巻いていた。
タカト「おいっ、ナナ!
待てよ!」
俺がそうさけんだ頃には、
ナナはとっくに
姿を消していた。
俺は1人、途方に暮れて
突っ立っていた。
* ――― * ――― *
次の日、いつも通り
ナナを家まで迎えに行くと、
今日はもう家を出ていると
告げられた。
ナナ母「ケンカでもしたの?」
不安そうにたずねられて、
俺は曖昧に笑った。
タカト「まあ、
そんな感じです」
ナナ母「あの子、
変なところで頑固だから、
仲直りするのは大変だろうけど、
見捨てないであげてね」
あの子、タカトくんが
大好きなんだから、
そう言って、
ナナのお母さんは
いたずらっぽく笑った。
学校に着くと、
いきなり深尾が
数学教室に来い、
と短く告げた。
言われたとおり、
数学教室へ行くと、
教室へ入るなり、
深尾が俺に
殴りかかってきた。
タカト「バカッ。
何すんだよ!」
あわてて体をひねって、
深尾の殺意がこもった
こぶしを避ける。
深尾は怒りに満ちた顔で
俺をにらんでいる。
まるでイノシシだ。
アム「あんたねえっ。
ナナがどんなに繊細か
わかってんの!?」
深尾はつかつかと
俺に歩み寄り、
俺の胸ぐらを掴む。
アム「このマヌケ! バカ!
あんたってほんとバカね!
あきれるぐらい、バカ!」
タカト「バカバカうっせーなっ」
深尾の手を振り払って、
にらみ返す。
深尾は腕を組んで、
軽蔑したように
俺を見つめていた。
アム「好きなら、
大切にしなさいよ」
それだけを言い捨てて、
深尾は教室から出て行った。
* ――― * ――― *
むしゃくしゃした気持ちのまま、
時間だけが過ぎていった。
気を紛らわすため、
昼休み、俺は屋上へ行った。
タカト「え・・・ナナ?」
そこにはナナがいた。
屋上のフェンスに手をかけて、
下を見下ろしている。
その顔が、
とても暗い顔に見えて、
俺はあわててナナを
後ろから抱きしめた。
ナナ「きゃあっ。
た、たーくん!?」
タカト「早まんなよ!
このバカッ」
ナナ「ななななななんのこと!?」
タカト「何って、
お前飛び降りようと・・・」
ナナ「そんな怖いことしないよ!
ただ、景色見てただけだもん」
タカト「何だよ・・・
俺の早とちりかよ」
俺は気が抜けて、思わず
フェンスにもたれかかった。
ナナがくすくすと笑う。
ナナ「たーくんって、
昔から早とちりなところ
あるよね」
タカト「うっせーな。
誰だって驚くだろ」
ナナ「私もびっくりしたよ。
いきなり
抱きついてくるんだもん」
タカト「好きな子のためなら、
必死になるに決まってんだろ」
ぼそっとつぶやくと、
ナナは不思議そうな顔をして、
それからかあっと顔を赤くして、
金魚みたいに
口をぱくぱくさせた。
ナナ「いいいいいい今なんて!?」
タカト「好きな子って言った。
一発で聞き取れよ」
ナナ「すすすすすすす好きな子ー!?」
タカト「そーだよっ。
うるせーな!」
照れかくしに
大声で言い返す。
きっと俺の顔も
真っ赤になっているだろう。
ナナは赤い顔のまま、
うれしそうに
ふにゃりと笑った。
ナナ「ありがとう。
私も好きだよ」
タカト「・・・うそつき」
ナナ「うそじゃないよ。
ずっとたーくんだけだもん」
・・・お前、それが
どれくらい爆弾発言か
わかって言ってんのか?
タカト「お前、なるべく
俺以外の男子と話すの禁止」
ナナ「え、どうして?」
タカト「・・・嫉妬するから」
気まずくなってうつむくと、
ナナはまた顔を赤くして、
くすくす笑った。
ナナ「たーくんも
可愛いところあるんだね」
タカト「うるせーよ」
ナナ「たーくんも、
あんまりほかの女子と
話さないでね。
ヤキモチ焼いちゃうから」
タカト「焼いてくれても
いいけどな」
小さなつぶやきは、ナナには
聞こえなかったようだった。
タカト「なあ、ナナ」
ナナ「なあに?」
ぐいっと手を引っ張ると、
ナナはよろけて
俺の腕の中に
すっぽりおさまった。
タカト「俺の彼女になれよ」
ナナ「・・・うん」
大事にする。
小さな体を
抱きしめながら、
俺は心にそう誓った。
*end*
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