2m
作者:まつおゆうは
私、葵かんな!
中学1年生です!
本格的に寒くなってきた、11月。
私は吹奏楽部に入っていて、
最近は唇の痛みとの闘い。
指もかじかんで上手く動かないし、
正直つらいことも多いけど、
ずっと行き続けているのには
ある理由があるの。
かんな「・・・あ」
今日もいた。
少し先に、憧れの人。
中3の川上リヒト先輩。
リヒト先輩は、吹奏楽部で
ホルンのパートリーダーをしていた。
部活見学のとき、
美しい音でソロを奏でる先輩に
私は一目惚れをしてしまった。
先輩は夏に引退してしまい、
今は学校が閉まるまで
勉強をしているらしい。
そんな先輩に憧れて入った
吹奏楽部だけど、
私が入ったのは、
トランペットパート。
いつもいつも、後ろから
先輩の姿を見つめてた。
今だってそう。
先輩はすぐそこにいるのに、
私は距離を少しだけ
詰めることしかできなくて。
その距離は、2m。
ホルンとトランペットの距離。
それでも私は、少しでも
先輩の近くにいたかった。
だから、こうして
部活を休まずがんばって、
先輩と帰る時間を合わせているのだ。
そんなことを言っても、
見えるのは先輩の後ろ姿だけ。
先輩の背中は、見飽きるほど
見てきたというのに、
私には、
近づく勇気がない。
かんな「はぁ・・・」
今日もため息をついて
曲がり角を曲がる。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
先生「今日から冬時間だ」
翌日の部活で、
先生が言った。
冬時間というのは、
日が落ちるのが早くなってきたため、
帰る時間を30分早めるというものだ。
先生「お前ら部活生は、時間になったら
直ちに学校を出ること。
あと、中3は、その時間まだ
勉強をしているから静かに帰ること」
はーい、とみんなから
かったるそうな声が出る。
でも、私は
それどころじゃなかった。
先輩と一緒に
あの道を歩くことは、
もうできないの・・・?
見飽きたはずの背中が
いつにもまして恋しい。
でも、今日から
その背中はない。
ひとりであの道を歩いて、
曲がり角を曲がる。
そんなのヤダよ・・・
・・・ ・*・ ・・・
ミーティングが終わっても
私は頭が真っ白のまま。
しばらくして、いつもより
30分早く部活が終わった。
帰り道に、必死になって
先輩を探すけど、
2m先にあの姿はない。
もっと近づいておけば
よかった。
2mというこの距離を
打破できていたらよかった。
素直に笑って
話しかければよかった。
今になって気づく、
後悔する気もち。
これだけ先輩のことを
想っていたんだという心。
2m。
たったこれだけの距離で
涙が出るほど切なくなるなんて
思いもしなかった。
かんな「・・・リヒト先輩・・・」
そうつぶやいてみても、
先輩はいない。
* ‐‐‐
リヒト「・・・かんなちゃん?」
曲がり角の手前で
ふと聞こえてきたその声は、
まぎれもなく
待ち焦がれていた先輩のもので、
私の目からは
大粒の涙が零れだした。
リヒト「か、かんなちゃん
どうしたの?!」
先輩は困って
おろおろしている。
無理もない、
後輩にいきなり
泣かれたんだから。
でも、仕方ないじゃん。
涙が出るほど、
うれしいんだから。
2m前にいる先輩。
やっぱり
この距離なんだね。
そんなことを思いながら
泣きじゃくっていたら、
当たって砕けるのが
怖くなくなった気がする。
今なら、近づけるよ。
なにもかも、
どうにでもなれ。
だから私は思いきり
先輩に近づいて、
“先輩、ずっと好きでした”
2人の距離は、もう0m。
*End*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。






























伊藤 沙音
青山姫乃
国本 姫万里
松田 美優
白水ひより
星名ハルハ
星乃あんな
工藤 唯愛
佐々木 花奈
白尾 留菜
十文字 陽菜
松尾 そのま
梨里花
稲垣 来泉
崎浜 梨瑚
中瀬 梨里
葉山 若奈
泉 有乃
相沢 伊吹
大月 美空
山本 初華
橘 侑里
常盤 真海
野澤 しおり
大森 ひかる
畠 桜子
西 優行
久野 渚夏
今井暖大
北島 岬
松瀬 太虹
八神 遼介
小澤 輝之介
安藤 冶真
竹内琉斗
堀口壱吹
川上莉人
小林 凛々愛
黒崎 紗良
しゅり
高柳 千彩
宮澤 花怜
上野 みくも
