王子様の王子様
作者:M
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通学路 はしゃぐ女子
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「キャーッ、イブキ様!」
「今日もかっこいい!」
「もはや男子よりイケメン!!」
「こ・・・これじゃ、
相沢さんに
話しかけられない・・・」
「なにいってんの、ダイジ。
イブキ様は、呼びかけたら
ちゃんと応えてくれるって!」
「ほら、こうやって・・・」
「イブキ様ー!!
こっち向いて!」
「ちょっ松田、
俺の手振るな!
って、わわっ!」
「キャーッ、見たっ?
いまの!
にこっとして、こっちに
手振り返してくれたじゃん~!」
「か・・・かわいい・・・」
「違う!
‘かっこいい’の!」
「ビジュはもちろん、
さばさばしてて、
困ってる女子がいたら
助けてくれる・・・」
「イブキ様は、うちらの
王子様なんだから!!」
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放課後 松田ミユウ
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「ねー、おねーさん、
俺らと遊ばない?」
「楽しいことしよーよ」
「! や、やめてください、
手、離して!」
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すこしミユウから離れた場所
松瀬ダイジ
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「あれ? 松田!?
なんか、・・・不良に絡まれてる!?」
「助けないと・・・!」
ダッ(走る音)
「だいじょうぶか、松田!
・・・って、すでに
相沢さんがいる!?」
「こらっ、その手を離せ!」
「イブキ様~!!!!」(涙)
「え~なに、かわいい子が
なんか来た~」(笑)
「君も俺らと遊びたいの~?」(笑)
「・・・嫌がってるだろ・・・
いますぐ彼女から手を離せ!」
「おーおー勇まし~って、
いてててて・・・!」
「ちょっこいつ、
ちから強い・・・!
小澤さ~ん!」(泣き)
小澤「・・・どうやら、ちょっくら
話さねーと
ダメみたいだな・・・」
手を振り上げる
不良、小澤。
「あ・・・っ、危ないっ!
イブキ様、よけて・・・!!」
パシンッ
「う・・・うそだろ、
おい・・・」
「小澤さんのこぶしを・・・
素手で受け止めた・・・!?」
小澤「・・・!?
テ、テメー
なめやがって・・・!」
「かっこいー!!
さっすが、イブキ様・・・!」
そのとき、相沢さんは
急に表情を変えた。
「あ・・・あれ・・・?
わた、わたわたわたし、
この状況・・・え?」
「イブキ、様・・・?」
「!? 松田さん!?
ええーっと、この・・・
状況は・・・一体??」(困惑)
「そこで・・・
にらんでくるお兄さま方は・・・?」
(何言ってんだ!?)
(───急に・・・雰囲気が、
変わった・・・?)
(様子が、おかしい!)
「ちょっちょっとまてー!!」
(走り出たダイジ)
「おまわりさーん!
ここです、ここ!
ココでけんかが・・・!」
(振り返って呼ぶふり)
小澤「げっ・・・行こうぜ」
子分の不良「はいっす!」
イブキ「・・・///!」
・*。・ 帰宅中 ・。*・
「私・・・二重人格なんだ」
「二重・・・人格!?」
「うん・・・
松田さんが知ってる私・・・
イブキ様は、」
「私の中の・・・
高校1年生の男の子」
「えっ、男子!?
しかも年上っ!?」
「ごめんね、
イメージ壊して・・・」
「でも、本当の、
・・・もう1人の私は、
中学2年生女子の
相沢イブキなんだ・・・」
「臆病で、恥ずかしがりで・・・」
「みんなの知ってる
イブキ様とは正反対な・・・」
「俺と一緒だ」
「え?」
「あ、いや・・・」
「ダイジ、ずっと前から
イブキ様と話したがってたんですよ」
「ちょっ、松田っ」
「でも~おじけづいてばっかりで、
結局いつも1歩離れて
見てるという・・・(笑)」
「そうだったんだ、
じゃ、また学校でも話そ」
「えっ・・・!」
「今日、助けてくれたとき・・・
めっちゃかっこよかった」
「松瀬君のこと、もっと
知りたいっていうか・・・(赤面)」
「イブキ様、顔赤いですよ~。
ってか、確かに、
学校のときとは別人みたい・・・」
「でも、なんか
親近感あるかも!」
「・・・恋愛相談なら、
いつでも乗りますから・・・(小声)」
「あ・・・ありがとう(赤面)」
「? 松田、なんて?」
「べっつにー(にやにや)」
「松田さんの・・・知ってる
私じゃなかったのに・・・
がっかり、しないの?」
「ぜーんぜん!」
「だって、それでも、やっぱり
私からしたらイブキ様は
王子様ですから」
「まっさきに、
私を助けに来てくれた・・・」
「でも、結局、助かったのは
松瀬君のおかげだよ」
「いーえ!
ダイジが助けたのは
私じゃなくて・・・」
松田は、ビシリと
相沢さんを指さした。
「わ、私!?」
「ダイジは、王子様の王子様!」
「・・・でしょ?」
「「えっ・・・!!」」(赤面)
「(笑)2人とも
初心でかわいい~(笑)」
「じゃ、お邪魔虫の私は
消えますかっ。じゃ~ね~」
「「・・・」」
「「あのっ」」
「あっ、先にどうぞ」
「いや、相沢さんから・・・」
───そろそろと、
差し出されようとした手。
迷ったように、微妙なところで
手は止まった。
「・・・帰りましょうか(赤面)」
「そう、ですね(赤面)」
俺は、いまだ微妙な位置で
静止している彼女の手を、
そっと握った。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。