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これは満月の日のこと

CAST久野 渚夏久野 渚夏

作者:スター

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2026.07.16

「かぐや姫」
誰もが知ってる物語。
それは、悲しい恋愛物語である。





最後に月に帰ってしまうかぐや姫が
とても印象的だ。





まるで君と同じだな。





あなたは今、どこにいますか?









* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





俺は、久野ナツ。





平凡でつまらない
学校生活を送っている、
高校2年生。





学力も平均、スポーツも平均、
顔も平均、ルックスも平均の
普通男子。





だから、ちやほや
されることもないし、
悪口言われることもない。





な、俺に、なぜこの女は
かまってくるのだろう。





「ねぇ、ナツ」





彼女は、崎浜りこ。
1週間ほど前に転校してきた。





秀才、スポーツ万能、
美人、スタイル抜群。
まさに天使。いや、神だ。





毎日のように
人に囲まれている。





おまけにやさしいし、天然だから
みんなから愛されていて
悪口すら言われない。





「ねぇってば」





今は学校からの帰り道。





「ナツー」





正直言ってうざい。





「しつこいな」





「やっとしゃべってくれた」





パッと明るい顔になり、
世間話を持ちかける。





「今日ね、りりとね
初めて屋上に行ったのー」





ちなみにりりとは
りこの親友のことだ。





だが、俺にはどうだっていい。
だから無視。





「ナツー」





「俺もう、家だから」





と、強制的に話を終える。
まぁ会話もしていないんだが。





「あっ本当だー。じゃあねー。
また明日!」





と言い、小走りで
隣の家へと向かう。





りこは隣人だ。
1週間ほど前に引っ越してきた。





それから、毎日のように
話しかけられる。





うん、うざい。
でも、彼女が嫌いなわけでもない。
好きでもないんだが。





ぼんやりと外を眺めていると、
ガラガラっと音が鳴った。





「ナツー」





ナツ「何だよ」





「あのね、」





ナツ「わざわざここで
世間話はないだろ」





「今日ね、」





りこは、変わらず世間話をする。
雑誌を読もうとした。





「告白されたの」





「えっ、ふーん」





少し動揺した。
まぁ興味ないんだが。





だって、りこは人気者。
俺とは真逆の世界にいる。





そんなの分かってるのに。
何だろう。この哀しい感情は・・・
辛い・・・













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





翌日。





ドアを開けたら案の定、
りこが立って待っていた。





「おはようー!」





「おはよ」





朝は静かに登校したい。
が、りこがいる限り無理だ。





「でね、でね」





ほらまた世間話。
興味がないから、音楽でも聴こう。





鞄のなかに手を突っこむが
それらしいものはない。





しまった。
机の上に置いてきた。





戻るのも面倒くさいから
しかたなく彼女の話を
聞くことにした。





「昨日の続き」





「は?」





「ほら、告白されたって話!」





ズキッ、





「興味ないし」





昨日と同じ痛み。





「聞いてよー。昨日なんて
言おうとした瞬間
どっか行っちゃったじゃん!
寂しいよー」





「だから興味ない」





「ケチー」





「ケチでけっこう。
勝手にしゃべってろ」





「分かった。でね、」





こいつというやつは。
カマチョか。





でもそれより、さっきからの痛み。
心臓に病気でもあるのか、俺は?





「私ね、輝之介くんに告白されたんだー」





ズキッ、まただ。





「でもね、断った」





ホッ





えっ、何、『ホッ』って。





え、何、それ聞いて安心してるの?
え? は?





「あっ、りり!」





ダッシュで
りりのところへと向かう。





やっとひとりになれた。





うれしいはずなのに、何だろう。
ひどく虚しい気もちになる。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





考えに考えた。





俺はどうやら
頭がおかしいらしい。





「俺、ヤバイかも」





ボソリとつぶやくと、
前にいるイルマが反応して
こっちに向く。





「お前は十分、おかしいぞ」





「ケンカ売ってる?」





「だってよ、
あんな天使みたいにかわいい
りこちゃんに
かまってもらえてるんだぜ?
俺もかまって欲しいー」





「りこは話し出すと、きりがない」





「それでもいいから、
かまって欲しいー!」





「お前って俺より
頭おかしいんだな」





「頭おかしくて
損したことはない!」





「うける」





「真顔で言わないでくれる?」





どうやら俺は、頭がおかしいわけでは
ないみたいだ。





じゃあ何だ?
あの辛い感情はなんだ?





「なぁ、イルマ」





「あ?」





「女子が告白されたって
言ってきたときに感じる
胸の痛みは何だ? 病気か?」





「それは、恋だ!
ナツ、やっと初恋か!」





「は?」





「その女子って・・・」





「りこだけど」





「よし、告白しろ!」





「え、いや恋って
決まったわけではないだろ」





「いーや、恋だ」





「いや、違う。俺がりこを
好きになるはずがない!」





「あっ・・・」





何だよ。イルマのやつ急に
情けない声だしやがって。





「あっ、りこ・・・」





「だから私の話
いつも無視するんだよね」





「えっ・・・」





「ごめんね。
私のこと嫌いなのに
つきあわせちゃって」





「違う」





「これから
関わらないようにするね」





「違う」





「今まで本当にごめんなさい」





「違う!」





「何が違うの!」





「り、りこ?」





初めて聞いた
りこの怒鳴り声だった。





「私は気づいてもらえるように
何度も何度も話しかけて。
でもナツはいつも無視ばっかりして!
もうナツの気もちが分からないよ!」





「りこ、落ち着いて」





りりが、りこの落ち着きを
取り戻そうとしてる。





「触らないで!」





りりの手を振り払った。





瞬間、りこがその場に倒れた。













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





りこは、病気を持っていた。
心臓病だ。





それを先生から聞いたときには
驚きが隠せなかった。





そして、余命1年とまで
言われていたらしい。





「りこ・・・なんで早く
言ってくれなかったんだよ・・・」





俺は今、総合病院にいる。





病室はやけに静かで、
りこも静かだから
やけに落ち着かない。





「目を覚ましてくれよ・・・」





りこは手術を
受けないといけない。





でも受けたからといって
生きれるわけではない。





生きれる確率は、30%と低い。





でも田舎の病院では
手術が出来ないらしい。





だから都会に
行かなければいけない。





りことは、お別れだった。





そして、一刻も早く
手術を受けるために
りことは今日でお別れだ。





「りこ。俺、やっと気づけた」





大きく深呼吸をする。





「りこが好きだよ。大好きだよ。
だから・・・」





涙がポロポロとあふれてきた。





「生きてくれ・・・」













* ‐‐‐ * ‐‐‐ *





あれから10年。俺は社会人だ。





「おっ、きれいな満月」





そういえば、りこと別れた日も
こんなきれいな満月だったな。





りこはあの後、
どうなったのだろう。





あれからりこの親とは
連絡がとれず、俺は上京した。





「生きててくれたら、な・・・」





「何シオれちゃってるの、ナツ?」





「え?」





後ろを振り向くと、





「りこ?」





「正解、正解、大正解!」





うそだろ。
りこが生きてる。





「生きてたんだ・・・」





「うん。あの後、手術に成功して」





「よかった・・・」





ポロポロッ。





「ナツ、泣かないで」





「泣いてないし」





「泣いてるじゃん」





「泣いてない」





「素直じゃないのは、変わってないね」





と、ふたりで笑う。





「りこ」





「ん?」





「好きだよ」





「あの時から気もち
変わってなかったんだ」





「え?」





まさか聞いてたとは。
恥ずかしい・・・





「私もナツが大好きだよ」





今日は、きれいな満月の日。





君と出会い、君と別れ、
そして君と出会った日。





「りこ、月がきれいだな」





ふと笑い、笑顔で彼女は
こう言った。





「だね!」







*END*

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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