君の瞳
作者:めいめい
中瀬梨里。
彼女は、誰も寄せつけない・・・
一匹狼みたいな人だ。
いつも1人ぼっち。
暗いオーラを放っている。
彼女は人と関わることを
拒んでいる。
彼女は、2学期のはじめに
転校してきた。
ほとんどの女子が
彼女に話しかけに行ったけど
彼女は誰とも話さなかった。
みんなが話しかけるのを無視して
黙って本を読んでいった。
誰も彼女に話しかけに
行かなくなった。
「中瀬さん、暗くて怖いよね」
「話しかけてんのに
無視とかありえねー」
「感じ悪すぎ。無理」
彼女がいないとき、
いつもバラバラなこのクラスは
この時だけは団結して
悪口を言い合う。
俺・・・竹内琉斗はその
雰囲気が本当に嫌い。
俺はいわゆる
陽キャってやつだ。
どこにも属さない、グループと
グループを繋ぐ存在だ(自称)。
正直この暗い雰囲気は、無理。
掴みどころのない中瀬とも
仲よくなって、このクラスを
本当の意味で1つにするのだ!
思考の幼い俺は、本気でそれが
可能だと思いこんでいた。
「中瀬さん、
転校してくんないかな~。
あの子まじ無理」
幼なじみの工藤唯愛が
愚痴ってきた。
唯愛は甘い見た目とは裏腹に、
毒々しい一面を持っている。
一軍女子のリーダーだ。
こえっ。
でも、彼女は俺には
甘い面しか見せない。
まあ、幼なじみだから
お見通しだけど。
「琉斗ぉ、何とかしてよ」
甘ったるい声で、体を寄せてくる。
小さい時は、唯愛が
大好きだった。
プロポーズした覚えもある。
まあこれは、黒歴史。
忘れてくれえええ。
でも、今は彼女が怖い存在にしか
思えない。
正直不気味だ。
でも、彼女に惚れこむ男子は
どれだけいるか。
数えきれない。
「唯愛。
陰口とか本当に嫌いだ」
冷たい声で言った。
冷たい声で、口数を少なくすると
困ったことになるのは百も承知だが、
今は正直、かなりイライラしている。
「りゅ、琉斗ぉ・・・
私のこと、嫌いなの・・・?」
ほーら、すぐ
涙目になるじゃないか。
だから苦手なんだよな。
女子ってのは。
俺は、人と関わるのは得意。
大得意。
だけど、俺は数年前に
そうじゃないことを知った。
俺は、女子が苦手。
特に、今まで大好きだったはずの
唯愛が、苦手。
いっしょにいるだけで疲れる。
でも、口に出して言ったら
男女が対立してしまう。
俺は、このクラスを1つにする
役割を担っている(自称)。
そのことに悩んでいた時、
彼女が転校してきたのだ。
漆黒の瞳、漆黒の髪。
その黒い瞳には
悲しみ、怒り、後悔・・・
負の感情をすべて宿していた。
その瞳に吸いこまれた。
初めて、女子に興味を持った。
話してみたい、そう思った。
だから、彼女をけなすことしか
できない幼なじみに腹が立つ。
彼女に何があったのかは
知らない。
でも、間違いない。
彼女は、何か辛い経験をしたこと。
*...・・・*...・・・*
人と関わるのが、大好きだった。
自然も、勉強も、習い事も、
友達も、家族も、ぜーんぶ大好き。
この世界を愛していた。
でも、それが変わった。
家が火事で燃えた。
私以外、みんな死んだ。
残された私を、
叔母が引き取った。
叔母は厳しく、
「私に感謝しなさい」が
口癖だった。
そんな私を救ってくれたのは
大好きな、彼・・・小澤輝之介。
でも、彼も病で死んで。
大事なもの、全部。
大事な人、全部。
なくなった。
私に希望なんかなかった。
はつらつさが消え、
笑顔も消えた私を
クラスメイトは
受け入れてくれなかった。
いじめにあった。
ニコラ中学に
転校してきたけど、
どいつもこいつも瞳の奥に
冷たい光を宿してる。
とても仲よくする気には
なれなかった。
ほんっとに、私の人生
嫌なことばっかだ!
この世から、自分の存在・・・
中瀬梨里の存在を、
消してしまいたかった。
*。・----。・----・。*
「中瀬さーん。
この問題、わかんないんだけどー」
プリントをひらひらさせながら
彼女に問いかける俺を、
みんな目を丸くして
見つめている。
「教えてー?」
ガン無視。
「なーかーせー、さんっ?」
大声で言ったら、
彼女が鋭い眼光で
こちらを見た。
蛇ににらまれた蛙の気分とは、
このことか。
にしても、彼女の瞳は
キレイだ。
目の半分は長い前髪で
隠されているけど。
彼女は、視線を本に戻した。
今日のところは、あきらめるか。
*...・・・*...・・・*
休み時間に、クラスメイトの
うるさい男子が話しかけてきた。
大声で叫ぶので、イライラして
彼を見上げた。
正直、驚いた。
あんなに美しい瞳を見たのは
久しぶりだった。
両親の愛に満ちた目。
輝之介のやさしさに満ちた目。
名前を知らない彼の、
明るさ、やさしさ・・・
+の感情が詰めこまれたみたいな、
明るいブラウンの目。
直視できなくて、
本に目線を戻した。
あんなキレイな目の人と、
話したくなんかなかった。
キレイな瞳を持つ人は、
みんな死ぬのだ。
私が愛した人は、
みんな死ぬのだ。
*。・----。・----・。*
『毎日必ず1回
中瀬に話しかける』を
目標にして、
俺は毎日、勉強を教えてと
頼むのを繰り返していた。
だって、会話がない。
バックパックには
何のキーホルダーも
ついていないから、
好きなキャラクターもわからないし。
いつも通り、唯愛と帰る。
このルーティン、嫌だな・・・
ちょっと思った。
「あ、あの、琉斗」
唯愛がちょっと
うわずった声で言った。
なんだか嫌な予感がした。
「琉斗って、やさしくて、
なんでもできて、
かっこよくて・・・」
うわあ、来ちゃうのか。
「私をいつも守ってくれて、
大事にしてくれて・・・」
そうだっけ?
お前を守った覚えも
大事にした覚えもねえぞ
とは、言わない。
「好きですっ!」
やっぱりか。
「あのさ、唯愛・・・」
「い、今すぐじゃなくても、
考えて・・・」
「いや、答えは
決まってるから」
真っすぐな瞳で
唯愛を見つめる。
彼女の瞳に、希望の色。
・・・期待すんなよ・・・
「ごめん、無理」
沈黙。
「・・・なんで?」
無理やり声を絞りだすみたいに
言われた。
「好きな人、いるから」
「誰!」
その反応だけは早い。
秘密・・・と言おうとして、
ちょっと考える。
唯愛の反応に興味がある。
「中瀬梨里」
彼女の目は、まん丸だ。
俺はちょっと笑いながら、
その場をあとにした。
*...・・・*...・・・*
「中瀬さんの目って、
キレイだね」
2人きりになったときに
言われた。
私が何の返事もしないのに、
彼はべらべらとよくしゃべる。
「でも、なんか・・・」
「あなたの瞳は、
なんでそんなに明るいんですか」
気づけば聞いてた。
*。・----。・----・。*
「中瀬さんの目って、
キレイだね」
2人きりに
なったときに言った。
これだけは
言っておきたかった。
「でもなんか・・・」
「あなたの瞳は、
なんでそんなに明るいんですか」
初めて聞いた、彼女の声。
小鳥が鳴くみたいな
声だった。
「希望があるからかなあ・・・
自分の希望の数を数えるんだ。
そうすれば気分が・・・」
「私には、希望がない」
「・・・」
希望がない、か。
そんなわけない。
「そんなわけないよ。
誰かしら希望はある。
君が望めば、
なんだってできる」
俺は、静かに言った。
「君は、何を望む?」
「幸せ」
幸せ、か。
彼女が幸せを望むなら、
俺が幸せにしたかった。
どこか惹かれた、あの目。
暗闇に満ちたあの目を、
明るい色にしたかった。
「俺が幸せにしてあげるよ」
彼女の顔は見なかった。
でも、どんな表情をしているかは
想像がついた。
新しい何かが始まる。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。





























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