振り向いて! シャイボーイ
作者:綾音
「おはよう、今日も
良い天気だね!」
「・・・」
・・・無視?!?!
こんにちは、
果歩です!
実は私・・・
ずっと前から、
好きな人がいます。
バスケ部の、
南龍和くん。
すごーく
カッコよくて、
学校でよく噂になる
素敵な人。
・・・なんですが。
なぜか、私にだけ
いつも無視するの。
ほら、向こうの
下駄箱で、
可愛くて有名な
芽亜里ちゃんと
普通に話してるし・・・
やっぱり私のこと、
嫌いなのかな。
でもハンカチを
落としたら
拾ってくれたり、
黒板を消すのを
手伝ってくれたり、
休んだ日
学校からの手紙や
宿題を届けてくれたり・・・
いろいろ、優しく
接してくれたこともあって。
ありがとう、
と言っても
目合わないけど。
・・・よし。
河村果歩、
まだ諦めません!
この気持ちが
届いて叶って、
振り向いてくれるまで、
頑張るしかない!
・・・まずは。
秀才キャラ
なんてどう?
眼鏡を装着、
長い白衣に
白ひげつけて。
「おはよう南くん。
今日も晴れで良いですな」
「・・・」
やっぱり無視!
・・・いやちょっと
この格好はおかしいか。
ならば!
「南殿、
お早うございます。
今日は雲1つ
浮かばない天気で
よろしゅう
ございますね」
「・・・」
はい、無視っ!!
それにしても
重い・・・着物、
疲れた・・・
いや、まだ!
まだ諦めない!
「南、オハヨー!
気分乗らない感じ?
アゲてこー!」
「・・・」
「南くん、おはよう・・・
あのね、
・・・
オススメの本があるの・・・
聞いてくれる?」
「・・・」
「おはようございますですわ
南くん。
今日は雨ですわね・・・」
「・・・」
「・・・果歩。
大丈夫?」
「へへ、はは・・・
大丈夫、だよ・・・」
「てか、何その格好・・・
縦巻きの金髪ウィッグに
ドレスで
こってこての赤リップ。
どうしたの」
ボロボロになった私に
話しかけたのは・・・
結良。
私の幼馴染で、
突っ走る私を
いつも冷静に
止めてくれるの。
これまでの経緯と
私の作戦を伝えると、
結良はうーん・・・と
唸った。
「南の好きなタイプで
挨拶したら、
返事をしてくれるかもしれない、
と・・・」
「どうかな。
良い作戦だと
思うんだけど」
「あのね、
単刀直入に言うね。
やりすぎ」
ウィッグを乱雑に
取られた私は、
親友に少し呆れられて
ガーン・・・と
なってしまいました。
教室の花の掃除。
黒板消し、
欠席者の確認、
配り物の配布。
ほぼ日課のこの仕事を
こなしていると、
結良が隣で
手伝いに来てくれた。
「ごめんね果歩・・・
落ち込まないで。
果歩の案は悪くないの」
「ううん、大丈夫!
確かに、
おかしい人だし・・・
南くんにもっと
嫌われちゃったかな」
花瓶を棚の上に戻して、
にこっと微笑む。
「でも、果歩のそういう
頑張り屋で一生懸命なとこ、
いつか南は
絶対気づくと思うよ」
「ありがと、
結良・・・
ん?」
なんか、
視界の端に、
羽が・・・
髪に何か
止まってる?
この羽は・・・
虫・・・
トンボ?!
なんで教室に?!
なんで私の髪に!!
「ひゃぁあ!」
「わりー
入っちまった!」
窓の近くで
遊んでいた男子が
そう叫ぶ。
もう・・・
何やってんのー!
「ゆ、結良、
取って・・・」
「む、ムリムリ!
虫苦手だから!」
そんな、
ちょっと・・・
誰か、助けて!
・・・不意に、
私の前に誰かの姿。
その人は綺麗な白い手で
私の髪に止まったトンボを
何事もなかったように
ひょい、と摘み、
窓の外に逃がした。
「びびりすぎ。
大丈夫だって」
「え・・・
南、くん・・・?」
見上げると、
整いすぎた素敵なお顔。
今、私に話しかけた・・・
よね?
ばちり、と目が合った。
かと思ったら。
ばっ!!
・・・っと
反らされた?!
「え、待って、
ありが・・・」
そう口を開いた時には
もう南くんの姿はなく。
どうしたんだろう・・・
光のような速さで
消えてしまった。
教室は、いつもどおりの
賑やかさに戻る。
「ひゃ、南男前~。
果歩、頑張った報い
じゃない?」
「うん・・・そうかも」
南くんが
走って行った方向を、
じっと見つめる。
もっと、
話してみたい。
笑い合ってみたい。
それで、私の思いに
気づいてほしい。
もっと、
頑張ろう!
・。・。・。・。・。・。・。・。
それから私は、
毎日毎日頑張った。
可愛くなるために
顔のマッサージをして、
頭が良くなるために
予習復習を欠かさず、
運動音痴を克服するために
ランニング。
結良が
「頑張りすぎだよ」
とちょっと心配顔を
してたけど、
平気! と笑って
返した。
・。・。・。・。・。・。・。・。
それから
少し経って。
今日は
体力測定の日。
運動神経バツグンの
南くんは、
走る姿までもが
カッコいいの。
友達と楽しそうに
話していて、
自然と頬が緩む。
よし、私も早く
走れるよう
精一杯頑張るぞ!
そう気合いを入れた
その時。
後ろから、噂話が
聞こえてきた。
「ねぇ・・・知ってる?
龍和くんが芽亜里と
付き合ってるって
ウワサ・・・」
「え?
めっちゃ有名じゃん、
その話!
ウワサじゃなくて
本当でしょ?」
「だよね、あの2人
めっちゃお似合いじゃん?
ザ・美男美女って感じ」
わかるー、
という声に、
目眩がした気がした。
南くんが・・・
芽亜里ちゃんと、?
その可能性を
考えたことが
ない訳じゃない。
でも、実際に
聞いてしまったら・・・
「次河村さん、
走ってー!」
「あ、はい!」
どれだけ頑張っても、
笑顔の可愛い
モテモテの
芽亜里ちゃんに
敵う訳がない。
急に足元が
沈んでいくように
重くなって、
視界がフェードアウト
するように暗くなった。
*・。+ *・。+ *・。+ *・。+
目を開けると
視界が白く
もやもやしていて、
身体を起こして
しばらくしてから
ここが保健室だと
分かった。
「体調、どう」
「!」
カーテンの
向こうから
声が聞こえた。
その影は、
早口で喋る。
「先生
もう少ししたら
来るって。
それまで安静にしてろ、
だって。
じゃあこれで」
「あ・・・
ま、待って!」
ベッドから降りて
カーテンを
勢いよく開け、
驚いた顔をした
その人の腕を掴む。
細くて、
でも
しっかりした手。
いつもバスケの練習を
頑張っている手、
私の髪についた
トンボを
取ってくれた手。
「南くん・・・
ごめんなさい、
この前は」
「え?」
「変な格好で挨拶して・・・
おかしな人で、
本当にごめんなさい」
心臓がバクバク
言っていて、
これは、南くんの手を
握ってるから?
今度こそ嫌われる
覚悟をしてるから・・・?
「・・・河村って、
面白いよな」
「へ?」
「教室では、みんなが
やりたがらないこと
全部してくれて、
でもあんな格好することも
あって」
「あ、あは・・・
えへへ」
南くん、
見ててくれたんだ。
嬉しいような
恥ずかしいようなで
はにかんで気づいた。
今・・・普通に、
喋ってくれてる!!
「あ、あのねっ!
南くん、」
「・・・待て。
笑うな。見るな」
「えっ」
どういうこと?!
急に南くんが
私が掴んでいないほうの手で
顔を隠したから、
ひょこっと覗いてみる。
その顔は・・・
林檎みたいに、
真っ赤。
「なんで?!
どうしたの?
わ、私が嫌いすぎて・・・
熱が出ちゃった?」
「そんな訳ないだろ!
嫌いなんて・・・
寧ろ好きだ!」
「だよね、いつも
無視してたし・・・
え? 今・・・」
好き・・・って
言った・・・?
驚いて南くんの顔を
見つめると、
首まで
赤くなっちゃった。
そして
やってしまった・・・
というように
頭を抱え、
床にうずくまる。
オーバーリアクションな
その格好に驚きつつも
ふふ、と笑みが溢れた。
もしかしたら、
南くんは
私がいつも見ている
クールな姿とは別に、
また違った
可愛い一面が
あるのかもしれない。
見てみたいな、
もっと。
これから、
いっぱい。
「私も南くんのこと、
ずっと好きだったよ。
ねぇ、付き合お!」
とびっきりの
果歩スマイルで、
にこっと。
・・・ぼふん!
そんな音がどこかで
響いたような気がして、
気づいたら南くんは
床に倒れて
沸騰していた。
と、いう訳で・・・
「結良、ありがとー!
ついに南くんと
付き合えることに
なりました!」
「えっ! ほんと?!
・・・って、でも私、
何もしてないよ。
果歩が頑張ったから
南は振り向いて
くれたんだよ」
「ううん、結良が
見守っててくれなきゃ
ここまで行動
できなかったもん!」
結良の嬉しそうな顔に、
私も幸せになる。
あれから沸騰南くんに
気になってたことを
聞いてみた。
芽亜里ちゃんとは
付き合ってないこと。
いつも無視していたのは、
「可愛くて・・・
直視できなかった」
とのこと。
ちょっとオーバーな
気もするけど、
好きな人からの
「可愛い」が
こんなにも
嬉しいなんて。
と、そんなことを
考えていたら、
目の前に!
「あ、南くん、
おはよう!」
「!」
その手をぎゅっと
握ろうとしたら、
また光のような速さで
逃げられてしまった。
でも・・・
さっき小さく
おはようって
返してくれた!
それに、
逃げる理由が
分かった今はもう、
幸せでしかない。
照れて話せないなんて、
そんな可愛いことある?
手が繋げるのすら
いつになるやら・・・な
私達だけど、
これから沢山
南くんの一面を知って、
沢山私のことを
知ってもらえますように。
南くんの反応に
え・・・?
何今の・・・?
という顔をした結良の
手を引いて、下駄箱に
向かう。
今日も空は快晴!
果歩、
今日もがんばります!
*end*
河村 果歩

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