君に恋した10日間。―桜のつぼみを咲かせて―

CAST若林 真帆若林 真帆

作者:かき氷のシロップ。

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2018.12.26

私は、後、もって
1ヶ月だと言う。





結局死ぬなら、
今すぐ死にたい。





こんなに苦しいのだから・・・







・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・:*:・。・・・





私、若林マホは、
もうすぐ死にます。





死んだっていい。





私は、失うものがないから。





毎日ベットの上で、
同じ景色を見る。





それ以外、
することがない。





ぼーっと眺めていると、
窓の外に見えた、
ひとりの男の子。





その子は、
肩を震わせて
泣いていた。





男の子はふと
こっちを見た。





その目には
悔しそうな光が
浮かんでいた。













*・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・::・。・・・





看護師「マホちゃん。
リハビリの時間だよ」





マホ「わかりました」





死ぬと分かっているから、
リハビリなんか意味ないのに。





無駄にお金を使うだけ。





私は、看護師さんに
手伝ってもらって、
車椅子に乗った。





いつもは人の少ない広場に、
暗い表情をした人達が沢山いた。





そこには、
さっき見た男の子もいた。





マホ「あの人達は・・・」





私は、車椅子を押していた
看護師さんに聞いた。





看護師「ああ・・・今日ね、
あのご家族の方が
亡くなったのよ」





あの子は、
それで泣いていたんだ。





リハビリが終わって、
1人で車椅子を動かしながら
帰っていた。





車椅子、動かすの
大変だな・・・





ユウヤ「手伝うよ」





と、静かに一言言って、
私の車椅子を押してくれた。





マホ「すいません・・・」





と、後ろを振り返ると、
そこにいたのは、
あの、男の子だった。













・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・:*:・。・・・





結局、
自分の部屋まで
運んでもらった。





マホ「ありがとうございました」





ユウヤ「気にしないで」





男の子は、
優しく微笑んだ。





マホ「あの、お名前は・・・」





ユウヤ「ユウヤ」





マホ「ユウヤ君って
呼んでもいいですか?」





ユウヤ「いいよ。
それと、マホは、
俺と年、一緒ぐらいだから、
タメでいいよ」





名前、教えてないのに・・・





マホ「なんで、知って・・・」





ユウヤ君は、しゃがんで
車椅子のある部分を指差した。





ユウヤ「ここに書いてあったから」





マホ「この車椅子・・・
もうすぐ私のものじゃなくなるから、
その名前消されると思う」





私は、そういうと、
ユウヤ君は
真剣な表情になった。





ユウヤ「それって、
どう言う・・・」





マホ「私、死ぬの。
後1ヶ月ぐらいで」





ユウヤ君は、
私を見つめたまま、
何も言わなかった。





マホ「だけど、
死ぬ日がもう分かっているのなら、
カウントダウンが始まっているみたいで
嫌だから、今すぐ死にたいんだ」





マホ「死ぬ日まで待つなんて、
生きるのが嫌になる」





それを聞いたユウヤ君は
勢いよく立ち上がった。





その顔には、
怒りもあるようだった。





ユウヤ「なんだよ、それ・・・
今すぐ死にたいって、
なんだよっ!!」





大声で叫んだ。





ユウヤ「世の中には、
死にたくなくて死ぬ奴がいるのに、
懸命に生きようとして、それでも、
まぬがれない運命で
死んでいく奴だっているのに・・・」





私は、言葉を出せないまま、
ただ、彼を見つめていた。





ユウヤ「だから、
簡単に死にたいなんて
言うなよっ!!」





マホ「あなたには、
私の気持ちなんてわかんないから、
そんなことが言えるの。
私が、どれだけ辛いか
わからないもの」





ユウヤ「俺にだって・・・
分かる・・・
どれだけ辛いことか・・・」





ユウヤ君は、顔を歪めて
悔しそうに拳を作り
握りしめていた。





その目には、強い光が
浮かんでいた。





ユウヤ「ごめん・・・
俺、行くから」





その時、窓の外の桜の木に
つぼみが出来たのを
私は知らなかった。













*・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・::・。・・・





次の日。





私は、その日、
ベットの上で考えていた。





なぜ、あんなにユウヤ君は
怒っていたのか・・・





その時、
ノックが聞こえた。





私が返事をすると、
入ってきたのは、
ユウヤ君だった。





マホ「そこの椅子に
座っていいよ」





ユウヤ「ありがと」





沈黙が続く。





き、気まずい。





ユウヤ「昨日は、ごめん」





先に口を開いたのは、
ユウヤ君だった。





ユウヤ「マホ、昨日ここで、
窓の外にいた、
俺を見ていたでしょ?」





マホ「うん・・・」





ユウヤ「昨日、弟が死んだんだ。
突然分かった病気で、
治るだろうって俺、必死に
看病続けて・・・
だけど、悪くなるばかりで、
本人は、死にたくないって
言ってたけど、
昨日、力尽きた・・・」





マホ「そんな・・・」





ユウヤ君は、
手を広げて私に見せた。





ユウヤ「あいつ、
まだ5歳だったんだぜ?
酷いだろ・・・」





ユウヤ君は、1番辛い思いを
しているはずなのに・・・





それなのに、私、
あんなこと言っちゃった。





マホ「ごめん・・・私、
すごい酷いこと言っちゃった。
本当にごめんなさい」





ユウヤ君は、
ふっと笑った。





ユウヤ「今、謝ったからいいよ。
それに、俺、病気になったことないから、
マホの苦労わからないから、
マホの言ったことは正しいと思ったし。
俺こそ、いきなりキレてごめんな」





仲直りできて、良かった。





ユウヤ「でも、さ、
死にたいなんて、言わないでよ。
絶対、周りの人が悲しむ」





マホ「悲しむ人なんていないよ。
お父さんは、生まれた時からいなかったし、
お母さんも、病気で亡くなったし、
兄弟だって、友達だっていないし・・・」





だから、いつ死んだって誰も・・・





ユウヤ「もう、俺ら友達じゃん。
いないなんて言わないでよ」





友達・・・





ユウヤ「あ、もしかして、
友達だと思ってたの、俺だけ?
すんげぇ悲しいよぉ」





マホ「そんなことないよ!
ユウヤ君が友達なの嬉しいよ!」





ユウヤ「嘘っぽー!」





マホ「本当だって!」





すると、ユウヤ君は、
ニカッと笑って言った。





ユウヤ「じゃあ、
今日から友達だ!」





すごく、嬉しかった・・・





マホ「うん!」





ユウヤ「てか、ここからの眺め、
めっちゃいいじゃん!」





と言って
窓の外を見つめた。





マホ「そう?
毎日同じ景色で
飽きるけど・・・」





ユウヤ「あっ!!」





急に大声を出すから
びっくりした。





マホ「ど、どうしたの?」





ユウヤ「あの桜の木、
つぼみが出来てる!」





マホ「えっ! どこっ!」





ユウヤ「ほら、あそこ!」





私は、なかなか
見つけられなかった。





ユウヤ「そっちじゃなくて、
こっち!」





と言って、私を自分の方に
グッと寄せた。





ユウヤ「ほら!
あるでしょ?」





マホ「うん・・・
見つけたよ・・・」





私は、ユウヤ君の
横顔を見つめながら、
思った。





桜のつぼみより先に・・・





ユウヤ君を想う、
気持ちを見つけた・・・





私の心にも、1つ、
つぼみが出来た。





ユウヤ「あの桜の蕾が咲くの
一緒に見ようぜ!」





マホ「私、それまで
生きてるかな・・・」





ユウヤ「大丈夫だ、
俺が死なせない!」





と言って、笑い
私の手を握った。





私は、いつのまにか、
死にたいなんて、
思ってなかった。





それよりも、
ユウヤ君のために、
もっと生きたいって思った。





ユウヤ君のあの笑顔を
ずっと見ていられるように・・・





でも、
別れは思った以上に
早かった・・・













・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・:*:・。・・・





ユウヤ君と出会って5日。





その日は立ち上がれないほど、
強い痛みが私を襲った。





ユウヤ「マホ、大丈夫か?」





マホ「ユウヤくん・・・」





ユウヤ「俺は、帰ったりしないから、
安心して、楽にしてていいよ」





マホ「ありがと・・・」





私は、辛いはずなのに、
なぜか、微笑むことができた。





それは、きっと、
ユウヤ君が
そばにいるから・・・













*・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・::・。・・・





ユウヤ君と出会って7日。





私は、痛みを抑えるための
薬の副作用で
苦しんでいた。





それでも、ユウヤ君は、
私の隣にいてくれた。





ユウヤ「マホ、あの蕾、
もうそろそろ花咲くよ・・・
絶対、一緒に見ような・・・」





私は、かすかに
首を縦に振って、
ユウヤ君を見つめていた。





私の体は、
日に日に弱っていく。





それに、
喋れなくなっていく。





それでも、変わらず
話しかけてくれるユウヤ君・・・





私は、





ユウヤ君のことが
大好きです。













・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・:*:・。・・・





ユウヤ君と出会って10日。





私は、ほとんど
寝ている状態だった。





ユウヤ「マホ、
窓の外を見て・・・」





私は、1人で
起きられない状態だった。





ユウヤ君に
手伝ってもらって、
桜の木を見た。





マホ「・・・綺麗・・・だね」





そこには、あのつぼみが
ちゃんと桜の花として
咲いていた。





ユウヤ「ほら、言っただろ?
一緒に、桜、見れただろ?」





マホ「ありがとう・・・。
ユウヤ君」





ユウヤ「俺、マホのこと好きだよ」





マホ「私も・・・好き。
大好きだよ」





ユウヤ「だから・・・
俺のためにも、
生きてよ。
一緒に生きていこう・・・」





マホ「うん・・・約束・・・」





と言って、
小指を差し出した。





ユウヤ君も、
小指を伸ばした時、





ユウヤ君と、
手が触れる前に、





私の手は、
ベットに落ちた。





意識も・・・
遠くなって・・・













*・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・::・。・・・





私は、酸素マスクを
つけられていた。





隣には、ユウヤがいた。





ユウヤ「マホ・・・」





私は、今まで、
1番苦しかった。





それは、ユウヤ君より、
先に死ぬこと。





マホ「ユウヤ君・・・」





ユウヤ「生まれ変わっても、
俺らは、会えるから。
絶対、巡り会うから・・・!」





と言って、私の手に
淡いピンク色の花びらを握らせた。





私は微笑んで、





マホ「・・・待ってる・・・よ」





ユウヤ「ああ、また会おう・・・」





ピーーーーー





絶対、会えるよ。







待ってるからね。













・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・:*:・。・・・





○○年後の春の日。





友達「マホー! 大丈夫?」





マホ「ちょっと
骨折しただけだよ」





友達「もー!
心配したんだから!」





マホ「ごめん、ごめん!
ちょっと、トイレ
行ってきていい?」





友達「車椅子、押そうか?」





マホ「大丈夫だって!」





私は、タイヤを回した。





車椅子、
動かすの大変だな・・・





「手伝うよ」





と、静かに一言言って、
私の車椅子を押してくれた。





マホ「すいません・・・」





私は、後ろを振り向いた。





と、そのまま、
私と、その男の子は、
瞬きもしなかった。





まるで、運命の人に
あったみたいに。





マホ「私、若森マホですけど」





ユウヤ「俺、石井ユウヤ」





マホ「私達、
どっかであったことある気が
するんですけど・・・」





ユウヤ「俺も、なんか
そんな気がする・・・」





マホ「ユウヤ君って
呼んでもいいですか?」





ユウヤ「いいよ。
それと、マホは、
俺と年、一緒ぐらいだから、
タメでいいよ」





私、なんかこの会話・・・
知ってる?





まぁ、いいや。





ユウヤ「マホ、よろしく!」





マホ「ユウヤ君、よろしく!」





この瞬間、





私達の心に、
蕾が1つ、できた。







*・゜°・。・::・。・・・・。・:・゜°・・・・::・。・・・END

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