わたしと雨と君と

CAST若林 真帆若林 真帆

作者:リヴ

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2019.05.25

雨が降ってる。





ここ最近、ずっと
雨が続いている。





雨が続くと、
髪の毛がまとまらなかったり、
なんとなく気分が
どんよりしたりする。





でも、わたしは
雨が好きだった。





雨は私の心
そのものだと
思うから。





マホ「カケルに
会いたいな・・・」





そっとつぶやいた言葉は、
雨音にかき消される。





手でそっと髪を梳いて、
ふっとため息がこぼれる。





マホ「あいつ、
元気にやってるのかな・・・」





ねえ、カケル。





あんたはわたしのこと、
たまには
思い出してくれてんの?





雨宮カケル。





家が近所で、仲良しの
いたずら仲間って相柄が、
いつしか片思いの相手に
かわっていて。





本気の恋だった。





自分でも
笑ってしまうくらい、
好きだった。





マホ「会いたい・・・
会いたいよ、カケル・・・」





あいつにはもう
会えないかもしれない。





あいつは去年の今頃、
渡米した。





自分の夢を叶えるために、
前だけを見て歩いている。





あいつのまっすぐなところに
惹かれたのに、
カケルのまっすぐさを
初めて憎らしく感じた。





置いていかないで。
一緒にいたい。





なんて言えるわけない。





カケルの夢を
邪魔することだけは
避けたかった。





本気の恋だからこそ、
カケルの足かせに
なりたくなかった。





マホ「あんたに
会いたいんだってば・・・!」





会えないかもしれない。





会えるかもしれないし、
会えないままかもしれない。





この中途半端さ加減が
本当に嫌だった。





会えるのなら、
希望を持てる。





会えないのなら、
つらいけれど
吹っ切るしかないと
割り切れる。





どちらともいえない現状が
つらくて、つらくて・・・





マホ「うっ・・・うっ・・・
カケル・・・っ」





ずっと我慢していたものが、
全部あふれ出して、
もう止められなくなった。





顔をぐしゃぐしゃにして、
私は声を上げて泣いた。





お気に入りのドットの傘が、
手からすべり落ちる。





大粒の雨が
私の全身をつつんで、
体中を冷たくぬらす。





泣いて熱を持った瞳を、
優しく冷やしてくれる。





このまま雨と一緒に、
このつらい気持ちが
流れてしまえばいいのに。





マホ「カケルぅ・・・会いたいっ」





カケルカケル。
大好きなカケル。





あんなに近くにいたのに、
今は手も届かないほど遠い。





その時だった。





「バカッ」





懐かしい、
ずっとずっと
聞きたかった声。





もう聞けないだろうと
半分あきらめていた、
あの声。





マホ「えっ」





カケル「このバカ!
風邪ひいたら
どうするんだ!?」





乱暴にびしょぬれの
私を引き寄せ、
自分の傘の中へ
無理やり入れる。





怒った顔で
私を抱きしめる相手は、
ずっとずっと
会いたかった相手で。





マホ「か、カケルぅ!!」





抱きついて、
私は号泣した。





うれしくて、驚いて、
幸せで、私は泣いた。





カケル「ったく、何してんだよ。
あいかわらず、バカだな」





そんな憎まれ口も
懐かしくて、
私は思わず笑ってしまった。





マホ「会いたかった」





ぎゅっと抱きついたまま、
私は素直に伝えた。





カケルの匂い。





全てが懐かしい。





カケル「・・・俺も」





ぼそっと
カケルがつぶやく。





マホ「え?」





カケル「お前ばっかりが、
会いたいって
思ってたわけじゃないから」





マホ「え・・・!」





照れ隠しなのか、
カケルはぎゅっと
わたしの頬をつねった。





マホ「い、痛いよ!」





カケル「まじでお前
なにしてんだよ。
こんな雨の中、傘もささずに
突っ立ってるなんて。
しかも、泣いてたし」





マホ「カケルに会えなくて、
さびしかったんだから。
ずっとずっと、さびしくて、
おかしくなりそうだったんだから」





カケル「なっ・・・」





カケルは顔を赤くして、
うつむいた。





カケル「あんまり
可愛いこと言うなよ・・・」





怒ったように
そう言う。





マホ「なんで、
ここにいるの?」





不思議に思って、
たずねる。





気づくのが遅かったけれど、
カケルはここにいるはずの
人間じゃない。





マホ「ま、まさかっ」





カケル「はい、俺は幽霊です!
・・・じゃねえよ!」





マホ「あ、そ、そか。
よかったあ」





ほっとする私を見て、
カケルは笑った。





カケル「幼稚園児級の想像力は
あいかわらずだな。
なんか、安心した」





マホ「もうっ、
バカにしてるでしょ」





カケル「あ、バレた?」





マホ「バレバレ!」





2人で笑い合う。





カケル「俺がここにいるのは、
やっと長期の休暇が
とれたからなんだ。
もう、こうやって日本に
帰ってくるのは難しい。
もっと本格的に、
演劇を学んでくる」





真剣な声と瞳。





そうか・・・
こうやって会えるのは、
最後なんだ・・・





マホ「もう、会えない?」





カケル「バーカ。ちげーよ。
ただ、マホには
待ってもらわないといけないんだ。
俺、絶対に俳優になって、
俳優といえば雨宮カケルって
言ってもらえるぐらい努力して、
戻ってくる。
だから、また会うのは
何年後になるか
わからないけど・・・
待っててくれる?」





心配そうな、
カケルの声。





私は満面の笑みを
浮かべた。





マホ「もちろんだよ!
待ってる。
きっと、さびしくて、
泣いちゃうかもしれないけど、
待ってるから。
おかえりってカケルに
言ってあげるから
だからさ、
絶対に帰ってきてよ?」





私がそう言うと、
カケルは
うれしそうに笑った。





カケル「ありがと、マホ。
俺、ずっと言えなかったけど、
マホが好きだよ。」





カケルはそう言って、
優しく微笑んだ。





つられて私も微笑む。





マホ「私も。カケルが大好き。
待つよ。
カケルがなかなか帰ってこなくても、
待つからね。
だって、カケルは必ず戻ってくるって
約束してくれたもの。
カケルは約束は絶対守るやつだって、
私が1番知っている」





マホ「とりあえず、
おかえり、カケル」





カケル「ただいま、マホ」





私たちは
微笑みあった。







*END*

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