私の太陽の王子くん
作者:スター
「おっす、皆!」
教室に大きな声で、
大倉空人の声が響く。
「おはよー、空人」
「おっす、空人!」
それで皆返す。
大倉空人はこの教室、いや
この学年、いや
この学校で1番熱い男子だ。
そんな彼のアダ名は、そう
太陽の王子である。
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
「おっす、花南!」
「あ、お、おはよう、 大倉くん」
小林花南、中学2年生。
正直言って、隣の席の 大倉くんが苦手です。
影で静かに過ごしたいのに 入学式からやたらと 絡んでくる大倉くん・・・
ガツガツ系は ちょっと苦手です・・・
「花南~、もう俺のこと 空人って呼んでくれよ~」
「き、気が向いたら呼ぶよ」
「何だよ、 気が向いたらって~」
やっぱり苦手だ。
もう何回も席替えして隣だし、 うんざり。
せめて佳山くんの隣が いいなぁ。
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
「真帆、委員会終わったら
一緒に帰ろ!」
「いいよ!」
この子は若林真帆。
同じく中2で私の親友。
お洒落だし、可愛くて、
相談によく乗ってくれる
自慢の親友なんだ。
「今日も悠我とじゃん、
やったね」
「ちょ、真帆!」
悠我と言うのは、
佳山くんのこと。
同じ趣味を持ってて、
喋ってて楽だし、
一緒にいて楽しいんだ。
それでいつの間にか
好きになってたの・・・
「真帆も、石田くんと
一緒でしょ?」
「まぁね~」
石田くんって言うのは
真帆の幼馴染みのこと。
生まれてからずっと
一緒に過ごしてきたんだって。
でも本当のことを言うと、
石田くんから
真帆の気持ちについて
よく相談されてるんだよね。
だから、2人は
両思いなの。
親友として
めちゃくちゃ嬉しい!
「ま、お互い頑張ろぜ、
花南!」
「うん!」
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
ガラガラッ
あれ、まだ早かったかな? 誰もいない・・・
「小林さん」
「わっ! か、佳山くん、 驚かさないでよ・・・」
「ごめん」
はぁ、いつ見ても かっこいいなぁ。
佳山くん、イケメンなのに 皆大倉くんのことばかり イケメンって言うからなぁ・・・
まぁそれはそれで ライバルが少ないってことだから いいんだけどね。
「あ、佳山くん。 佳山くんがオススメしてくれた本、 すっごく面白かった!」
「やっぱり?」
「うん! 主人公が―――」
「だよね!」
こうやって いつも静かなのに はしゃぐところが キュンと来るんだよね。
「お、2人で 何盛り上がってるの?」
あ、忘れてた・・・
「大倉くん」
「空人、今小林さんと 本について 盛り上がってるんだ」
「へぇ、俺も混ぜて?」
そう言って 真ん中に割り込む。
大倉くんも一応、 図書委員。
図書委員は大変だからって 各クラスから3人選ばれるの。
ちなみに 園芸委員もなんだ。
「あ、小林さん! 実は、この本 続きがあるんだ」
「え!? 読みたい!」
「言うと思った。 明日貸すよ」
「本当? ありがとう」
やっぱり佳山くんが 好きだぁ。
大倉くんとは違うな。
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
「真帆、お待たーーー」
「なぁ、真帆。
今日は一緒に帰らん?」
「え、どうしたん急に」
あ、あれは真帆と
石田くん!
石田くん、
帰りのお誘いか、偉い!
「真帆、ごめん!
図書委員で、まだやらないと
いけないことがあって
待たせるのもあれだから
先帰ってくれる?」
「花南?」
「ごめんね、
じゃまた明日ね!
石田くんも!」
そう言って退散。
いいことしたんじゃね、私?
思わずガッツポーズ。
「何1人で
ガッツポーズしてるの?」
「か、佳山くん」
み、見られた・・・
「いや、嬉しいことがあって」
「そうなんだ、良かったね」
「うん!」
というのは
いいんだけど・・・
1人で帰るのか・・・
「って、雨だし」
傘持ってきてない。
こういう時って、漫画だと
男子が貸して相合い傘、
又は男子が貸して
そのまま走って帰るの2択。
「ある訳ないか」
「あれ、小林さん、
傘ないの?」
「か、佳山くーーー」
「残念でした、
悠我じゃないでーす」
「大倉くん・・・」
なんで、大倉くん。
「やっぱりそうか、
花南は悠我が
好きなんだな」
「は!? え!?」
「いや、バレバレ」
「ち、ちが・・・」
「認めなさい」
「はい、って違う!」
「いや、もういいよ。
分かったから。うん」
どうしよう、
1番バレたくなかった人に
バレた・・・
「か、佳山くんが
ち、近くにいたら
どうするの・・・」
「お、認めたね。
うーん、近くにいたら?
そうだな、謝罪かな」
「あなた、本当に
大倉くんですか?」
「大倉空人だよ!」
「いや、やけに
真面目なこと言ったから
別人かと・・・」
「本物ですー」
「でも絶対に言わないでね!
絶対にだよ?」
「どうしよっかな?」
「お願いだから!」
「分かったよ」
「ありがとう!」
まさか大倉くんが
こんなにイイ人だったとは。
「じゃあ、俺帰るわ」
「え・・・」
「傘は悠我にでも
借りれば?」
「え、あ・・・」
「じゃあな、花南」
。・::・’°☆ 悠我side 。・::・’°☆
「あれ、小林さん、
傘ないの?」
「か、佳山くーーー」
「残念でした、
悠我じゃないでーす」
「大倉くん・・・」
ん、空人と小林さん?
「やっぱりそうか、
花南は悠我が好きなんだな」
「は!? え!?」
???
え?
「いや、バレバレ」
「ち、ちが・・・」
「認めなさい」
「はい、って違う!」
「いや、もういいよ。
分かったから。うん」
え、小林さんが
俺のことを好き?
「か、佳山くんが
ち、近くにいたらどうするの・・・」
「お、認めたね。
うーん、近くにいたら?
そうだな、謝罪かな」
「あなた、本当に
大倉くんですか?」
「大倉空人だよ!」
「いや、やけに
真面目なこと言ったから
別人かと・・・」
「本物ですー」
「でも絶対に言わないでね!
絶対にだよ?」
本当に俺のこと
好きなんだ・・・
「どうしよっかな?」
「お願いだから!」
「分かったよ」
「ありがとう!」
「じゃあ、俺帰るわ」
「え・・・」
「傘は悠我にでも借りれば?」
「え、あ・・・」
「じゃあな、花南」
めちゃくちゃ嬉しい。
。・::・’°☆ 花南side 。・::・’°☆
帰っちゃったよ、
大倉くん。
これで佳山くん来なかったら
私、明日風邪かな。
「あれ、小林さん、
傘ないの?」
「佳山くん」
今度は正真正銘の
佳山くん。
「うん。天気予報じゃ
雨降らないって言ってたから、
忘れちゃって」
「俺の入ってく?」
「え?」
え?
「あ、いや
嫌ならいいんだけど」
「いや、全然嫌じゃないです。
でも、佳山くんは・・・」
「俺も嫌じゃないよ」
まじか!
「じ、じゃあ
お言葉に甘えて」
「どうぞ」
これって相合い傘だよね?
漫画の世界でしか
出来ないと思ってた。
「小林さん、もう少し
中に入らないと濡れる」
「で、でも佳山くんが
濡れない?」
「俺は別に大丈夫だから」
と、佳山くんが
私を引き寄せた。
心臓の音
聞こえてないかな?
顔赤くないかな?
どうしよう、私
佳山くんと帰ってる。
しかも相合い傘で。
ヤバイしか
言いようがない。
「花南」
「え?
今、花南って・・・」
「花南って呼んでもいい?
俺のことも悠我でいいから」
「え?」
「嫌ならいいけど」
「よ、呼びます。
よ、呼ばせてください!」
「アハハハハハ、
呼ばせてあげますよ、花南」
「ゆ、悠我、くん?」
「アハハハ、
いいよ君づけでも。
でも、いつかは呼び捨てで
呼んで欲しいな」
「う、うん」
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
「送ってくれてありがとう」
「ううん、 こちらこそ楽しかった」
「じゃ、じゃあ また明日悠我くん」
「うん、また明日花南」
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
それからは席替えをしても
大倉くんの隣には
ならなくなったし、
大倉くんも大人しくなりました。
「花南、この本さ」
「うん!」
幸せで平和な毎日です。
「花南、良かったじゃん
悠我と」
「ちょ、ちょっと真帆!」
相変わらず真帆とは
こんな感じ。
「ま、真帆も石田くんと
付き合うことになったじゃん!」
「まぁね~」
そう、あの帰り道の後、
石田くんが勇気を振り絞って告白。
そして見事
結ばれました。
「でも、あんなに
騒がしかった空人は
大人しくなっちゃったね」
あまり絡まれなくなってから、
大倉くんとは会話をしていない。
あの日からずっと。
さすがに心配になる。
「今だから言えるけどさ、
空人、花南のこと
好きだったんだよ」
「え!?」
「え?
気づかなかったの?」
「う、うん・・・」
嘘、そんな。
「席替えでいつも隣でしょ?
不思議に思わなかったの?」
「う、うん」
「あれ、花南の隣の人と
くじ交換してたんだよ」
「え!?」
「図書委員も、
花南が好きだから
本なんて全く興味なかったのに
入っちゃてさ」
「え・・・」
「気づかなかったの?」
「うん」
「何か空人に言った?」
「言った」
「何て?」
「悠我くんのこと
バレて、言った」
「まじか。
そりゃああなるわ」
ど、どうしよう・・・
「空人、入学式で花南に
一目惚れしたんだよ」
「え!?」
そ、そんな・・・
私が鈍感なせいで・・・
「謝った方がいいかな?」
「え、バカ?」
「え?」
「普通、
そこで謝ったら逆効果。
謝らないで無視」
「そ、そう?」
「うん」
そ、そっか。無視か。
「空人は花南と
縁がなかったってことよ」
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
「花南」
「ゆ、悠我くん」
「一緒に委員会行かない?」
「行く」
悠我くんとは ちゃくちゃくと 距離が縮まってる。
大倉くんとは 距離は離れてってる。
「花南?」
「え?」
「どうかした?」
「ど、どうもしてない!」
「そう?」
「うん! 元気、元気!」
嬉しいはずなのに、 何か気分が悪い。
。・::・’°☆。・::・’°☆。・::・’°☆
「大倉くん」
「花南?」
「私のこと避けてるよね?」
放課後、
委員会のあとの教室。
「いや、避けてないよ」
「避けてる」
「避けてない」
「避けてる」
「避けてない」
「避けてる。
絶対に避けてる!」
大倉くんが
何も言わない。
「避けてるよね?」
私が言った。
「避けてるよ、
花南のこと」
「あの日から
ずっとだよね?」
何も言わない。
「悠我、いい奴だから
花南にはお似合いだよ」
「なんでそんなこと言うの!」
「え?」
唖然とする大倉くん。
「じ、じゃあ俺が
花南に好きだって言ったら
どうすんの?
花南は悠我が好きだから
振るだろ、俺のこと」
チクッ
「だから、なんで
そんなこと言うの・・・」
「花南?」
「悠我くんのこと好きだよ。
でもいつの間にか
私が好きなのは
大倉くんになってた!」
「は!?」
「大倉くんのせいだよ!
大倉くんが同じ態度取ってれば
悠我くんのことが好きだった。
でも大倉くんが急に態度変わって
どんどん大倉くんのこと
考えるようになって・・・」
「え・・・」
「大倉くんのせいだよ!」
ガバッ
「お、おくらくん?」
「花南、好きだ」
「うん、私もだよ」
「え、待って。
じゃ、じゃあ
悠我の気持ちは?」
「前に告白されて断ったよ」
「え?」
。・::・’°☆ 回想 。・::・’°☆
「花南、話があるんだけど」
「うん、何?」
「あのさ・・・」
図書室に向かう前の中庭。
「俺、花南が好きです」
「え・・・」
「俺と付き合ってくれませんか?」
ゆ、悠我くんが
私を好き?
「あ、えっと、
ごめんなさい!」
「うん、だと思った」
「え?」
「花南が好きなの、
空人でしょ?」
「え・・・」
「空人いい奴だよ。
俺が保証する」
「なんで・・・」
「見てたら分かるよ」
「え・・・」
「花南は態度でバレバレ」
「え!?」
「これからも普通に
友達として接してくれると
ありがたいな」
「う、うん」
。・::・’°☆。・::・’°☆。・:*:・’°☆
「え、そうなの?」
「うん。でも大倉くんが
悠我くんの気持ちしってたのは
ビックリした」
「俺ら、割りと仲良いから」
「そうなんだ」
沈黙。
「な、名前!
空人って呼べよな」
「え・・・」
「えじゃねぇよ、
俺だってずっと花南に
空人って呼ばれたかったんだからな」
「た、空人、くん」
「もう1回」
「空人くん」
「もう1回」
「空人くん」
「やばい、恥ずかしいし、
めっちゃ嬉しい」
「アハハハハハ」
顔を覆う空人くんの
頭を撫でる。
「え・・・」
「空人くん、
これから宜しくね」
「うん、宜しく花南」
*END*
小林 花南
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