親友=ライバル
作者:rina
好きな人ができた。
友達と思っていたから
好きになるなんて
全然思っていなかった。
それに
彼は好きになっては
いけない人だった。
だって
親友の彼氏だから・・・―――
*・*・・・*・・・*・*
「かなみ、帰ろー!」
授業終わり、
真帆があたしを呼んだ。
そうだ
今日は部活もないし
放課後一緒に買い物をする予定
だったっけ。
「いま行く!」
そう言って
真帆のいる廊下に
出ようとした。
その時、
ガタンッ
誰かにぶつかった。
「ご、ごめんっ!」
顔をあげると
目の前には
大好きな侑也がいた。
ドクン
相手が分かった途端
心臓がむやみに高鳴る。
「頭打ったよね?
大丈夫?」
侑也は心配そうに
あたしの頭を撫でた。
ダメ・・・っ
もっと好きに
なっちゃう・・・!
「大丈夫、大丈夫!
じゃあバイバイ~♪」
あたしは顔も向けず
教室をあとにした。
「かなみ、
どうしたの?
顔がずいぶん赤いけど・・・」
廊下に出ると真帆は
目をまん丸にして
駆け寄ってきた。
「ちょっと
顔面ぶっちゃって・・・」
とっさに
そう嘘をついた。
そういえば
真帆に嘘をつくなんて
初めてかもしれない・・・
「大丈夫?!
とりあえず
冷やした方がいいよっ!
保健室行こう!」
「へ、平気だよ!
たいしたことないからさ。
それより買い物行こう?」
そう言って笑うと
真帆は、
「そう・・・?
痛かったら言ってね」
と最後まで
心配してくれた。
真帆はいい子すぎる。
あたしの親友だなんて
もったいなすぎるくらい。
だから
傷つけちゃいけない。
あたしは絶対に真帆を
失いたくない・・・―――
~♪~♪
ファミレスで食事中、
真帆のケータイが鳴った。
真帆はケータイを開くと
急に笑顔になっていく。
「・・・侑也でしょ」
「まあね・・・っ♪」
幸せそうな顔。
これが
恋のチカラかあ・・・
「2人は
いつもラブラブだよね」
「そうかな?」
確かに
侑也と真帆は
誰が見てもお似合いだ。
同じ吹奏楽部で
一緒に楽器を吹いていたのを
たまたま見てから、
ずっと思っていた。
だから
あたしが入る隙間なんて
どこにもないんだろう。
それに
侑也の方から
告白したって聞くし、
あたし、
どうしたら
諦められるんだろう・・・?
まだ
好きになったばかりなのに。
*。・ 次の日 ・。*
部活終わり、
たまたま教室に
忘れ物をして
取りに行ったら。
「おつかれさんっ♪」
帰ろうとする
あたしの頬に
何やら温かいものが触れた。
振り向くと
声の主は侑也だった。
「はい、あげる。
4月つったって
まだ肌寒いもんな~」
そう言って
彼は二カッと笑う。
あたしは
そんな侑也の笑顔に
ドキドキしながら
差し出されたココアを
受け取った。
「そういえば・・・
最近かなみって
俺のこと避けてない?」
「そ、そんなことないよ。
気のせいじゃない?」
あたしは動揺しながら
傍にあった椅子に
腰をかけた。
そしてココアを
口に入れる。
「ほんとに~?」
突然そう言いながら
侑也があたしの顔を
覗き込んだ。
ち、近い・・・っ!
バシャッ
「あ・・・っ」
びっくりしたあたしは
同時にココアを
服にこぼしてしまった。
ドクン・・・っ
ドクン・・・っ
「こりゃ大変だ・・・
ちょっと待ってて?」
侑也はそう言うと
あたしを残して
どこかへ行ってしまった。
戻ってきた侑也の手には
濡れたタオルがあった。
「侑也・・・?」
「いーから座ってて!」
すると侑也は
前に片膝をついて
あたしの服についたシミを
取り始めた。
「え・・・ちょっと侑也・・・」
「すぐ取らないと
シミ残っちゃうからな~。
こんなかわいいカーディガンが
汚れたらもったいないでしょ」
侑也はニカッと笑うと
まかせて、と
真剣な表情に戻っていった。
優しすぎるよ・・・
侑也。
彼女以外の子に
そんなこと
言わないでよ・・・
「・・・なんで
シミとりなんて知ってるの?
侑也が出来るなんて意外」
「あー・・・
真帆に教えてもらったんだ。
前に飲み物こぼした時
こうやってとってくれて・・・」
真帆・・・
こんな時にまで
彼女の名前が出るなんて。
今はあたしだけ
見てほしいのに・・・
「・・・侑也っ!」
気づけば彼の名前を
口にしていた。
侑也は
ん? と言って
あたしの顔を見上げる。
「あ、あのさ、
今日一緒に帰らない?
侑也、方向一緒でしょ・・・」
こんなこと言ったのは
きっと初めてだ。
いつもなら
真帆を理由にして
侑也から離れてるのに。
「えっとー・・・」
侑也は下を向いて
何か言いかけていた。
それは
とても困った表情で
服についていたシミは
いつの間にか
綺麗にとれていた。
ガタッ
他の生徒達の声で
ガヤガヤする廊下に
ひと際大きい音が響いた。
それはどうやら
ドアの方からのようで
不思議に思った後輩の奈菜が
ドアに近づいた。
「真帆先輩っ!?」
・・・真帆?
その言葉を
理解出来ずにいると、
ドアの向こうから
真帆が姿を現した。
「あはは・・・
来ちゃった」
真帆は
そう苦笑いをする。
・・・聞かれた。
さっきの会話。
真帆に聞かれたんだ。
「実はさ、今日、
部活終わったら
一緒に夕飯食べる約束
してたんだよね」
・・・そっか、
そうなんだ。
だから
言葉に詰まったんだ。
侑也
優しいから
でも今は
それどころじゃない。
どんな顔をすればいいの?
なんて言い訳したらいい?
「・・・あ!
真帆さえ良かったらさ、
かなみもご飯一緒する?」
何も知らない侑也は
いつもの明るさで
そう誘ってくる。
「いい・・・っ。
いいよ。
2人で約束してたんでしょ?
邪魔しちゃ悪いって」
あたしは必死で断った。
真帆の顔を
一度も見ないで。
「・・・おいでよ、かなみ。
いつも断ってばっかじゃん。
あたしも話したいからさ」
その真帆の言葉は
あたしの心に
鋭く突き刺さった。
話って・・・
何だろう。
*・*・・・*・・・*・*
あたしは結局
真帆からの誘いを
断れなかった。
2人はあたしの前で
楽しそうに歩いている。
それだけで
自分の恋が惨めに思えた。
あたし・・・
なにやってんだろう。
告白することも出来ず
親友にも黙ってて
でも
こんなこと
言えない・・・
「俺、注文してくるね」
「ありがとね、侑也」
ファーストフード店に着くと
侑也はあたしと真帆を残し
席を去って行った。
沈黙が流れる。
こんなに気まずいの
今までになかったのに
真帆となら
いつも話が絶えなくて
・・・あたしだけなのかな。
でもこんなのやだ。
侑也は好きだけど
真帆のことは
もっと好きなのに。
ちゃんと本当の気持ち
真帆に伝えなきゃ。
「あのさ・・・
「かなみ」
まるであたしが話すのを
分かっていたかのように
真帆の声がかぶさった。
「好きなんだよね?
・・・侑也のこと」
聞かれた。
言う前に
聞かれてしまった。
真帆は
どんな顔をしてる?
怒ってるかな、
それとも泣いてるかな。
「実はこないだから
そうかなって思ってたんだ。
だってね、かなみってば
侑也ばっかり見てるんだもん」
真帆はもう
気づいていたんだ。
ずっと悩んでいたんだ。
あたしはそんなこと
全然気づかずにいて・・・
「・・・ごめんね」
あたしは
謝ることしか
出来なかった。
許されるのなら
また仲良くして欲しい。
ずっと親友でいて欲しい。
・・・なんて
甘い考えなのかな。
「どうして謝るの?」
「え・・・?」
真帆の口から出たのは
予想だにしない言葉だった。
「好きになっちゃったら
仕方ないでしょ?
だって恋愛は自由だもん。
友達とかそんなの関係ない。
それに、侑也に惚れる気持ち
すっごい分かるんだよね」
真帆はヘヘッと笑う。
「かなみ。
遠慮なんかしないでよ。
あたし、いつでも立ち向かうからね。
侑也を好きな気持ちは
誰にも負けないんだから」
「真帆・・・っ」
涙が止まらなかった。
真帆のその優しさは
あたしの不安を
一瞬で消してくれた。
そして
あたしは真帆に
何度も何度も
ありがとうと告げた。
「お待たせ~・・・
ってあれ!?
なんでかなみ泣いてんの?
俺がいない間に何が・・・」
戻ってきた侑也は
1人であたふたしている。
それを見たあたし達は
同時に吹き出した。
「ふふ・・・っ
侑也のこと褒めてたの!
そしたらかなみってば
感動しちゃってさ~」
「そ・・・そうそう!
侑也って本当
いい人だな~って」
真帆の嘘に
あたしも慌てて
会話を合わせる。
すると侑也は
やっぱりな、と
得意気になってみせた。
その日の帰り、
あたしは真帆に
こう話した。
「・・・真帆、ありがとう。
でもあたし何もしないよ。
今日見てて思ったんだ。
やっぱり侑也と真帆は
お似合いだなって。
それに2人共大好きだから
どちらかなんて選べないよ。
・・・ただ、侑也のこと
まだ好きでいさせてくれる?」
すると真帆は
前ではしゃぐ侑也を見て
優しく笑った。
「あんな人、
そう簡単に諦められないよ。
だっていい人すぎるでしょ?
あたしはいつでも戦うからさ、
ゆっくり恋愛していこうね」
恋する気持ちは
簡単には抑えられない。
だから
やっぱり侑也は
あたしの大好きな人。
でも友達を思う気持ちは
誰にも負けたくない。
だから
真帆は
もっともっと大切な人です。
*end*
小林 花南
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