俺の友達を好きな彼女
作者:しろ
古川龍太郎、中学3年生。
ごくフツーの男子中学生。
もちろん、彼女なんて、
いやしない。
好きな人は、
いるけどね。
でも・・・
ノノ「懸樋くん、おはよう!」
オオゾラ「あ、ノノじゃん。
おはよー」
彼女は、青井さんは、
俺の友達のことが好きでした。
ノノ「あ・・・
古川くんも、おはよう」
リュウタロウ「青井さん、おはよう・・・」
オオゾラのついでみたいで、
少し悲しい。
多分、俺は
オオゾラの友達、としか
見られてないんだろうな・・・
でも、挨拶ができるだけで
幸せなんだ。
*。・ 教室 ・。*
俺の席は真ん中の列の、
前から3番目、
という微妙な位置。
窓際をチラッと見てみれば、
前後の席で楽しそうに
しゃべっている、
青井さんとオオゾラ。
リュウタロウ「はぁー・・・」
思わずため息が漏れる。
今日は、太陽がまぶしくて、
青井さんの髪が
キラキラ光って見える。
きれいだなー、
と見とれていると、
先生「おい、古川!
よそ見をするな!」
リュウタロウ「あ、すみません」
授業中だったのを、
すっかり忘れていた。
みんなから
笑われている。
あ、青井さんも
笑ってくれてる・・・
こんな状況でも、
笑顔が見れたのが
うれしくて、
つい、ニヤニヤしてしまう。
先生「古川!
何度言ったらわかるんだ!」
リュウタロウ「あっ!
はい、すみません・・・」
でも、笑ってくれるからって、
ダメなとこばっか見せてたら
ダメだよな・・・
そんなことを考えながら、
ウトウトと眠ってしまう。
また先生が
怒ってる気がするけど、
いいよね・・・
夢を見ていた。
青井さんの隣には俺がいて、
一緒にしゃべりながら
歩いていた。
たった、
それだけなのに、
すごく幸せだった。
そこで、目が覚めた。
もう授業は終わっていた。
まだ、ボーッとする頭で
青井さんの方振り返ると、
リュウタロウと楽しげに
おしゃべりをしていた。
あーあ。
寝起きで
ほんとに良かった。
はっきりは、
見たくないから・・・
机に、突っ伏す。
ほんと、だっせー・・・
話しかけることも
できないくせに、
ヤキモチだけはやいて。
オオゾラは
顔もかっこいいし、
いいヤツだし、
青井さんが好きになるのも
わかるけど。
マンガだったら、
付き合うのは俺なのになー、
なんて思ってみたりする。
もう、あきらめて、
青井さんの恋を
応援するべきなのかな・・・
誰か、教えて・・・
*。・ 数か月後 3月 ・。*
卒業式。
結局、思いは
伝えられていないまま。
なのに、思いは
大きくなるばかりだった。
ずっと、ずっと、
逃げてきた。
けど、今日で
会えるのは最後。
このままじゃ、
ダメだ。
振られるかもしれないけど、
思いだけは伝えて、
こんな片思いの日々からも
卒業しよう!
さっそく、
青井さんを探し始める。
リュウタロウ「あ、濱尾さん。
青井さん、知らない」
サキ「あ、さっき、
校舎裏に行ってたよ。
オオ・・・」
リュウタロウ「ありがとう!」
聞くなり、
すぐに走り出した。
サキ「オオゾラくんと一緒に・・・
って、もういないのか。
・・・はあー、
どうなるのかねー」
全力で走った。
とにかく、
「会いたい」
「伝えたい」
という気持ちが
最優先だった。
*。・ 校舎裏 ・。*
走ってきたせいと、
緊張で心臓が
バクバクしている。
キョロキョロと
青井さんを探した。
リュウタロウ「っっ!!」
咄嗟に、近くの
倉庫の後ろに
隠れてしまった。
そこには、青井さんと、
オオゾラが2人でいた。
疑問がたくさん浮かんだけど、
すぐに解決してしまった。
そっか、告白、
してるんだろうな。
そっと、
顔を出して、
2人を見てみる。
青井さんは、
笑っていた。
それも、今まで
見たことないくらい
幸せそうな顔で。
すごく、可愛くて、
きれいだった。
もう少し、
見ていたい。
そう思うのに、
なぜかはっきり、
見えなくなった。
リュウタロウ「あれ?
なんで・・・?」
涙が出ていた。
どうして。
振られることくらい
わかっていたはずなのに。
泣いていることに
動揺して、
少し動いてしまう。
パキッ。
ノノ「えっ!?」
音を出してしまった。
やばい・・・
ノノ「誰か、いるの?」
オオゾラ「その、
倉庫のとことか?」
やばい・・・!
見つかる!!
ノノ「えっ!
古川くん!?」
オオゾラ「は?
リュウタロウ?」
リュウタロウ「あ、えっと、
ははっ・・・」
思いっきり、
泣いてるし、
笑うしかなかった。
びっくりして、
涙は止まったけど。
ノノ「古川くん?
どうしたの?」
リュウタロウ「あ、えーっと、
その・・・」
その時、オオゾラが
ニヤッとしたのが見えた。
オオゾラ「ああ、そういうこと。
ノノ、俺、先、行っとくね」
ノノ「えっ!
カケくん!?」
ヒラヒラと手を振りながら、
オオゾラは行ってしまった。
残された、青井さんも
戸惑っている。
なんで、オオゾラが
2人にしてくれたのかは、
分かんないけど。
付き合ってるんだろうけど、
思いを伝えるくらいなら・・・
チャンスって、
思って、いいよね?
リュウタロウ「あの、青井、さん」
ノノ「なに?」
リュウタロウ「ずっと、
好き、でした」
ノノ「えっ!?」
リュウタロウ「オオゾラが
好きだってことは、
知ってるけど
伝えたくて・・・」
ノノ「えっ? 待って!?」
顔が少し赤くなっている
青井さんが、
顔の前で手を振っている。
ノノ「私の好きな人は、
カケくんじゃないよ!」
リュウタロウ「え?」
つい、ポカンとしてしまう。
どういうことだ・・・?
青井さんが、
恥ずかしそうにうつむく。
青井さんの手が、
そっと、
俺の袖を握る。
ノノ「私が、好きなのは、
古川くん、だよ」
リュウタロウ「え・・・マジ?」
ノノ「マジだよ!
カケくんには、
相談にのってもらってたの」
リュウタロウ「はあー。
マジか・・・」
ヘナヘナと
しゃがみこんでしまう。
なんか、力、抜けた。
見上げてみれば、
目をそらしている、
青井さん。
その姿が可愛くて、
リュウタロウ「ふふっ」
つい、笑いがもれる。
そして、
青井さんの首に、
両腕を回す。
ノノ「え、」
リュウタロウ「俺のだ・・・やった」
ノノ「・・・うん」
青井さんも、
キュッと腕だけ
つかんでくれる。
ずっと、勘違いをしていた
恋だったけど。
今、俺の隣には
ずっと、好きだった子がいる。
いつか見た、
夢の通りに。
*end*
古川 龍太郎
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