無言なキミが気になって
作者:rina
君はいつも無言。
周りに人はいない。
同じクラスで
喋ったことある人0人。
同じクラスなのに、
誰も声をかけない。
声を聞いたことがない。
そんな人
初めてだった。
逆に興味がわく。
加藤咲希、今日
話しかけに行きます!!
友達からは呆れられ、
男子からは馬鹿にされ
それでもいい。
でも、君の声が
聞いてみたいから。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・。
「あの・・・」
あたしは一歩前へ
踏み出す。
「ねえねえ、懸樋くん」
喋らない男、
懸樋大晴空に
声をかけた。
懸樋くんは
あたしを見て、
すぐにスマホに
目を通す。
無視ですか?!
「懸樋くん!!
これ、教えてよ」
あたしは目の前に
数学の教科書を出す。
これで懸樋くんも。
え・・・?
無視ですか・・・
「ほら、咲希ってば!
喋らないじゃん。
もうおいで」
あたしは友達に
回収されていく。
「なんで懸樋くんに
声かけてんのよ。
ほんとバカ」
はあとため息をつく友達を
ほっといて
あたしは懸樋くんを見る。
「喋りたいな・・・」
あたしの声は
クラスメートの声に
かき消された。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
・大晴空 side・
なんだあの女は。
俺は休み時間
目の前に来た
バカそうな女を思い出す。
俺に喋りかけてくる
やつとか初めて。
俺は人が苦手。
昔色々あって
騙されたりしたことが
あるからだ。
もうこんな目に
あいたくない。
そう思って
友達を捨てた。
いらないことにした。
ほんとは寂しいとか
思うこともある・・・
でも、そう思うたび
親友だった最低なやつの顔が
出てくるから。
授業が終わり
帰る支度を始める。
「ねえねえ懸樋くん」
またあの女。
毎時間の休憩になると
俺に声をかけてくる。
鬱陶しい。
邪魔。
俺はそう思いながら
その女を睨んで
廊下へ出る。
「咲希ー
またやってんの?」
あいつは
咲希というのか。
俺は初めて知ったが
だからなんだ。
さ、帰ろう。
俺は家に向かって
歩き出した。
それからというもの
咲希とかいう女は
毎日のように
俺に声をかけてくる。
それでも俺は無視。
どうしてそんなに
俺に声をかける。
無視すればいいのに。
空気だと
思えばいいのに。
俺はカバンの中から
教科書を出しながら思う。
「あ・・・」
やってしまった。
1時間目の
数学の教科書忘れた。
俺は盛大なため息を溢す。
今日は特に悪い1日だ。
「じゃあ教科書p23開けてー」
先生の話を聞かず
空をボーと眺める。
「懸樋!!」
そう言って、
頭に衝撃が走る。
俺は驚いて見上げると
数学の先生だ。
「教科書は?」
目の笑ってない笑顔に
俺は負け呟く。
「忘れた」
「はああ?! たく、
あ、加藤隣だから
見せてやって」
そういうと、その人が
机をくっつけてくる。
「懸樋くんが
忘れるなんて珍しいね」
それは紛れもなく笑顔の
加藤咲希だった。
おれ、こいつの隣
だったことに気づき、
最悪だと感じた。
声が出そうになるほど
とりあえず
ため息が漏れた。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
・咲希 side・
教科書忘れるなんて
珍しい。
「ねえ懸樋くん
具合悪いの?」
あたしの言葉に
驚いたように
あたしを見る。
「え? 具合悪いの?
ほんとに」
あたしの言葉に
懸樋くんは
また窓を見る。
さっきの顔の意味は?
どういうことだろう・・・
「加藤!!
答えろって
言ってんだろうが!!」
先生があたしに
向かって叫ぶ。
「うえ?!
は、はい!!
えーと・・・」
聞いてなかったー・・・
すると教科書に
何かを書き始めた
懸樋くん。
そして、
指を指す。
まさか・・・
「__です」
その瞬間クラスから
どよめきが。
「咲希が・・・
数学できた・・・」
「明日は大雨・・・」
酷い人達だ!!
あたしは怒りながら
懸樋くんを見る。
さっきと同じように
窓を見てるだけ。
「ありがとう」
そういうと、
「別に」
返事が返って・・・・
え?!
「しゃ、喋った!!」
あたしは
小声で叫ぶ。
すると顔を赤くして
懸樋くんが
こっちを見ていう。
「今回の借り
もう返したから」
そう言って、
また窓を見る。
なんだ。
喋るんじゃん。
恥ずかしがるんじゃん。
懸樋くんのことが
知れたような気がして
すごく嬉しかった。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
「かけひくーん」
「懸樋くん!!」
あたしはあれから
毎日何かしら
話しに行くようになった。
友達も呆れて
止めなくなったし、
懸樋くんも嫌そうだけど
一言二言
喋るようになった。
「ねえ懸樋くん!!」
授業中ツンツンと叩くと
ノートを書いてた手を止めて
あたしをみる。
「今日放課後数学
「ヤダ」
いつものことながら
即答。
「お願い!!
あたしこのままじゃ
赤点なの!!」
あたしは
頼み込むように
手を合わせる。
「ヤダ」
それしか
言わないじゃん・・・
「分かった!!
奢ってあげる!!
なんでも」
そういうと
パッとこっちを見て
少し笑う。
ドキッ・・・
いきなり
笑わないでよ。
ドキッと
するじゃんか。
「じゃあやってやる」
上からですか・・・
「よろしくお願いします」
あたしが頭を下げると、
少し楽しそうに
頭を軽く叩かれた。
何それ、ずるい。
あたしもこのあと
頬が緩みっぱなしだった。
「じゃあねー」
みんなが帰って、
2人だけになり
懸樋くんの机の方に
自分の机を向けて座る。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
・大晴空 side・
「お願いします」
「で、どこが
わからないの」
そう言って、教科書を
めくり始める。
「今回の範囲全て・・・」
「はああ?!」
奢ってくれると
言ったから
教えてるけど。
「なんで
わかんねーんだよ」
「えー」
こいつ
出来なさすぎる。
「他のはできるんだけど、
これだけあまりにも
分からなくて」
逆にそれが
すごいと思う。
出来なさすぎて
頭がいたい。
「これがこうか!!」
「いや、違うから」
これを何度
繰り返したことか・・・
「終わったーーー」
そう叫んだのは
加藤より確実に
俺の方が早かった。
「ありがとう!!」
「ほら、帰るぞ」
そう言って
荷物を片付ける。
「どんだけ奢って
欲しいのよー」
まあそれもあるけど
もう20時。
流石に早く帰らないと
加藤の親が
心配する気がする。
「今日はほんとに
ありがとう」
そう言うと、
ニコニコしながら
俺の隣を歩く。
「でも、ほんとに奢るの
これでいいの?」
加藤が指差すのは
たい焼き。
「いいよ。これで、
俺が好きだから」
「そっか」
そう言って
楽しそうに俺をみる。
「沢山喋れたね」
そりゃあ4時間もいれば
喋るだろう。
「大晴空くん」
え・・・?
「へへ・・・
呼んでみたかっただけ」
そう言って
無邪気に笑う加藤。
「別にいいよ
大晴空で・・・・
咲希」
すると、咲希は
驚いたように
目を見開く。
「うん!!」
そして
嬉しそうに笑う。
どうしてだろう。
女子なんか嫌いで、
近づいてきて
ほしくないのに。
こいつは・・・
咲希だけは
何か違う気がする。
「あれー
大晴空じゃーん」
聞き覚えのある声。
そして、
聞きたくなかった声が
いきなり耳に響く。
俺は嫌々振り向くと
そこには・・・・
やっぱり最低な
やつだった。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
「あれー大晴空じゃーん」
チャラそうな声が
後ろから聞こえて
振り返る。
そこにはガラの悪そうな
金髪男子と
スカートが超短い
化粧のケバい女の集団だ。
こわっ。
てか、大晴空の知り合い?
「なーに? 彼女?」
あたしの方を見て
真ん中の男が聞く。
「違う」
「てか、また
裏切られるんじゃね」
そう言って
下品な笑い方をしている。
「行くぞ。咲希」
そう言って
手を引こうとする
大晴空。
「へー逃げんんだー
嫌われ者」
その声にあたしの
何かが切れる。
おかしい。
こんなこと言われて
いいはずない。
この人たちが
大晴空を
悪く言うなんて。
「おかしい!」
あたしの叫び声に
みんなが一斉に見る。
「大晴空は
嫌われ者なんかじゃない!!
大晴空は優しくて、カッコよくて
数学教えるの上手で、
口下手だけど喋ると楽しいし、
あたしにとっては大切な人なの。
なのにあんたらは
嫌われ者? 笑い者?
ふざけないで!!
裏切られる?
そんなことするわけないでしょ?
どれだけ大晴空が
あたしにとって大切で
大好きな相手なのかしらないでしょ?!!!
あんた達みたいにそんな軽い人だと
思われたたくない!!」
はあはあ・・・
あたしは肩で息をする。
あれ?
あたし変なこと・・・
あたしは後ろに
一歩下がる。
「なんだこいつ」
「きもーい」
そう言って笑う。
「面白いから俺にくれよ」
ニヤニヤしながら
近づいてくる男。
やだ・・・!!
なのに声が出ない。
怖い・・・
助けてよ・・・
大晴空。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
「悪いけど。
俺のもんだからダメ」
そう言ってグイッと
あたしの腕を引く。
「ご心配どうも。
いま、俺は
心配されるようなこと
何もないから」
そう言って
あたしの手を引いて
歩き出す。
え・・・? え?
いろいろ頭が
ごちゃごちゃになる。
俺のもの?
それって
あたしのこと・・・
「ごめんな、
変なのに巻き込んで」
そう言って
振り返る大晴空。
「ううん。
大丈夫なの?
大晴空は?」
「俺は、大丈夫。
ありがとな」
そっぽを向いたまま
呟く大晴空。
「大切って思ってくれる
やつなんて初めて」
「うん・・・」
「好きって言ってくれた
やつも初めて・・・」
やっぱ聞こえてたか・・・
あたしは俯く。
わかってる。
嫌われてることくらい。
するとこっちに
足音が近づいてきて
あたしの前で止まる。
「俺も好きかも」
え・・・?
耳元で小さい声で
呟かれた言葉。
小さいけどあたしには
大きく聞こえて。
「も、もう1回」
「言わねーよ」
そう言って
あたしの横を歩く。
「えへへ・・・」
口角が勝手に上がって
笑いが勝手に起こる。
「気持ち悪い笑い方すんな」
そう言って笑う大晴空に
もっと嬉しくなる。
好きかもが
好きに変わる日はくるかな。
凍ったような心は
あたしのおかげで
溶けたかな?
心を溶かして
正直になれば
必ず通じ合える。
ずっとそばにいるよ。
ずっと笑っているよ。
大好きだから。
それから1年後、
大晴空とちゃんと
お付き合いを始めた
咲希でした。
・・・・・・☆・・・・・・☆・・・・・・
END
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