私が恋を知る日
作者:リヴ
「マナっていいやつだけど、
女子として見れない」
「えーひどくない!?」
初恋の人に、
笑いながら
言われた言葉。
友達としてとしか
見られてないって
気づいていたけど、
実際に言われると
かなりキツくて。
笑ってごまかしたけど、
心は泣いていた。
あたしに
恋はむいてないって、
その時思ったんだ。
カノン「ちょっと、マナ!
どうしよーっ」
マナ「へ? 何?」
カノン「男子たちが
ケンカしてる!」
マナ「またぁ?
もう、とめてくる!」
カノン「さすがマナ!」
あたしはいつまでも
猿みたいな男子どもの間に
割り込んだ。
マナ「ちょっとー、あんたたち!
いつまでもガキみたいなこと
してんじゃないわよ!」
男子A「はあ!?
調子のんなよ、
テメーッ」
うわっ、女子
殴ろうとするとかサイテー。
男としてどうなの?
まったく、
へっぽこなんだから。
へぼ男子のパンチを
華麗によけて、
あたしは見事に
一本背負いを決めた。
男子A「うおっ!?」
マナ「ふーっ。
取っ組み合いのケンカなんて、
あんたたちには百万年早いわよ!」
男子B「うわっ、
ご、ごめんなさいっ」
マナ「あ、逃げた」
全速力で逃げてちゃったよ。
まったくもう。
男子ってほんと
男気ないんだから。
かっこいい男の子なんて、
マンガの世界にしか
いないからね。
カノン「マナ、さすがだね。
まさか一本背負いなんて・・・」
マナ「へへ。
相手がしょぼすぎて、
どこまで手加減すればいいか
困ったよ」
カノン「さすが柔道日本一だね。
マナが男なら、
私はマナと付き合う!」
マナ「ありがと。
あたしもカノンみたいな
可愛い彼女ほしーっ」
あたしは柔道日本一の
スーパーJC。
ケンカで負けたことは
一度もないし、
男子よりも男らしいって
よく言われる。
恋愛対象で見られる
というよりも、
恐れられているって感じなの。
一方カノンは、
小柄で女の子らしくて。
もちろんモテる。
可愛いリスって
感じだよね。
あたしとは
正反対な女の子。
正反対すぎて、
気が合うの。
カノン「でもマナさあ、
男子のこと
バカにしすぎじゃない?」
マナ「バカにしすぎって・・・
あいつらバカじゃん」
カノン「否定はしないけど。
けど、そんなのじゃ
いつまでたっても
恋できないよ?
恋してみたくないの?」
マナ「恋ーっ!? あたしが?」
カノン「そーだよ。
マナって顔整ってるし、
すっごく可愛いもん」
マナ「ないない。
少なくとも、
あたしより弱い男子は
ありえない」
カノン「それは・・・
ちょっと難しいかも。
でもね、ほら、
可愛い系男子っているじゃん?
ほんわかしてて
弟キャラって感じの」
マナ「いないよー。
マンガの世界だけだって」
カノン「夢がないなー」
マナ「夢みてるヒマがあるなら、
柔道の練習!」
恋なんて、
傷つくだけ。
傷つくくらいなら、
恋なんてしないほうがいい。
あたしは強いって
言われてるけど、
ほんとは臆病なだけなんだ。
傷つけられるのが
こわくて、
弱虫が露見するのが
こわくて、
だから柔道をはじめた。
ユウヤ「カノンちゃん、
マナちゃん」
カノン「あっ、ユウヤくん」
こいつはユウヤ。
男子からも女子からも
モッテモテ。
女子よりも女子力高いって
言われてる。
ユウヤ「マナちゃん、
また暴れてたでしょ?
もーっ、女の子は
おとなしくしないと
いけませんよ!」
マナ「ちょっとちょっと。
いつからあたしの母親に
なったわけ?」
ユウヤ「危険なことは
しちゃダメ! ねっ」
マナ「ねっ、じゃなーい!
あんたのかわい子ぶりっ子が、
あたしに通用すると思うなよ!」
ユウヤ「ううっ、
マナちゃんこわーい」
カノン「もう、マナ。
そんなに怒んなくてもいいじゃん。
ユウヤくんは心配してるんだよ?」
マナ「ええっ。カノン?」
ユウヤ「マナちゃん、
もう危ないことしないって
約束して?」
マナ「・・・わかったよ。
できるだけ気をつける!」
ユウヤ「ん、約束ね」
マナ「はいはい」
男子C「おーい、ユウヤ!」
ユウヤ「はーい、何ー?」
ユウヤは男子に
呼ばれてたから、
そっちへとことこ
走っていった。
カノン「ユウヤくんって
可愛いよね」
マナ「はーっ?」
カノン「えっ、可愛いじゃん。
守ってあげたくなる
弟キャラっていうかさ。
母性くすぐられるよね」
マナ「ないない。
あんなひ弱なやつ」
カノン「マナとけっこう
お似合いだけどな」
マナ「もーっ、冗談はやめて。
ありえないから」
ユウヤ「何がありえないの?」
いつのまにか
またユウヤが現れた。
ほんとに神出鬼没。
びっくりさせられるよ。
カノン「ユウヤくんとマナが
お似合いって言ったら、
マナがありえないって言うの」
マナ「ちょっ、カノン!」
ユウヤ「えーっ。
そんな悲しいこと言ったの?
傷つくなあ。
僕はマナちゃん好きなのに」
そう言って、ユウヤは
にっこり笑った。
あたしは頭の中が
パニック状態。
マナ「は?」
やっとそれだけ言った。
カノン「きゃーっ、ステキ!」
ちょっとカノン、
興奮しすぎでしょ。
こんなのウソに
決まってるんだから。
あたしのこと、
好きになる男子なんて
いないんだから。
マナ「悪いけど、あたし
そういうからかい苦手なの」
できるだけ、
そっけなく言ってやった。
ユウヤ「本気だよ、
って言ったら?」
マナ「信じるわけないでしょ」
冷たくそう言い捨てて、
あたしは教室から出ていった。
*・*・・・*・・・*・*
あれから1週間。
ユウヤのバカは、
あんなことなかったかのように
話しかけてくる。
こっちは
気にしてんだから、
そっちも気にしろよ・・・
気まずい思い
してるんだから。
話しかけられても、
逃げてばかり。
逃げるなんて、
最低にかっこわるくて、
あたしらしくないのに。
ユウヤ「マーナーちゃん!」
マナ「何?」
ユウヤ「昼休み、
屋上にきてほしいんだ」
マナ「なんで?」
そう聞いたとき、
不覚にもドキッとした。
ユウヤは
ほほえんでいたけれど、
瞳はドキドキするほど
真剣だった。
ユウヤ「だめ?」
マナ「・・・別にいいよ」
ユウヤ「わーい。
じゃ、待ってるね」
*・*・・・*・・・*・*
昼休みになった。
あたしは緊張して、
何度も階段を踏み外しながら、
なんとか屋上に着いた。
胸がこんなに
ドキドキしたの、
ひさしぶり・・・
屋上にはユウヤがいた。
1人で景色をながめてる。
その横顔が
うっとりするぐらい
キレイで・・・
って、あたし変態かよ!
ユウヤ「あ、マナちゃん」
マナ「き、来てあげたわよ。
話ってなに?」
ユウヤ「マナちゃんは、
僕のこと、
クラスメイトとしてしか
見れないのかな?」
マナ「な、なに急に」
ユウヤ「1週間前、
僕が言ったこと、
覚えてるよね?」
マナ「・・・一応はね」
ユウヤ「今ここでもう一度
同じことをたずねたら、
あの時とは違う返事をしてくれる?」
マナ「えっ」
ユウヤ「僕は本気だよ。
こんなに本気だったことは
ないぐらい」
ユウヤの顔は
真剣そのものだった。
ちょっと待ってよ・・・
あたしは恋しないって
決めたのに。
なんでその決意を
揺るがすようなこと
言うの?
マナ「・・・あたし、
恋愛にむいてないの」
ユウヤ「むいてない?」
マナ「初恋の人に言われたの。
マナは女子としては見れないって。
友達以上になることはないの。
そういう人間だから。
あたし、かわいくないし」
ユウヤ「そんなことない!
マナちゃんは世界で1番
最高な女の子だよ」
マナ「そんなこと言われても困るの!
こんな気持ち、はじめてで・・・
何をどうしていいかわかんないの!
恋しないって決めたのに、
どうして邪魔ばかりするの?
あんたなんか、全然タイプでも
なんでもなかったのに!」
思わず叫んじゃった。
叫んだあとに、
はっとしてユウヤを見た。
傷つけるようなことを
言ってしまった。
けど、本心でもあった。
こんなこと、
誰かに言うなんて、
今までのあたしなら
ありえなかった。
ユウヤ「マナちゃん、
僕のこと、嫌い?」
マナ「・・・そういう質問って
ずるくない?
否定せざるをえなくなるじゃん」
ユウヤ「男子として、
僕のことどう思う?」
マナ「・・・言わなきゃだめ?」
ユウヤ「うん。
絶対に言わなきゃだめ」
マナ「好き、かも」
ユウヤ「かもはいらないでしょ!」
マナ「もーっ、うるさいな。
認めたんだから、
それでいいでしょ?」
照れ隠しに、
言い返した。
照れてるって
気づかれたかも。
ユウヤは笑って、
あたしの頭を
ぽんぽんとたたいた。
なんだか、すっごく
照れくさい。
ユウヤ「マナちゃん」
マナ「なに?」
ユウヤ「大好きだよ」
マナ「・・・あたしも」
ああ、もうっ。
この気持ちを
知っちゃったんだもん。
もう知らないふりも
後戻りもできない。
マナ「あたし、
恋を知っちゃった」
ユウヤはあたしに
恋を教えてくれた。
かわいくて、かっこいい
あたしの王子様。
*END*
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