真剣勝負 ~2020の本気の恋~
作者:ユモfl&picc
突然ですが、
みなさんに質問です!
次のうち、
「カオス」という言葉に
最も当てはまると思う
状況はどれ?
1、いきなり異世界に
ぶっ飛ばされる
2、極度の運動音痴なのに、
謎にオリンピック代表になる
3、好きな人を巡って、
いきなりテニス勝負を挑まれる
まあ、どの選択肢も、
それなりに突っ込み
ポイントはあるよね。
これは、これら
みっつのカオスを、
いっぺんに体験しちゃって、
思わず、「カオス!!!」と
叫びたくなってしまった、
そんじょそこらの
中1女子のおはなし。
・*・―――・*・―――・*・
カホ「な、なんじゃこりゃ~~~!?」
私はいま、
宙に浮いている。
周り中、ピンクの
モフモフだらけで、
どっちが上なのかも
まるでわからない。
冷静に解説してるけど、
わりと混乱中!
ども、河村カホ。
中1です。
いやね、私、
学校にいたんだよ?
授業も終わって、
さあ帰ろうって時に
急に眠くなって
気づいたらこんなことに・・・・・・
って、私
どうしたらいいの!?
なんてあたふたしてたら、
目の前にモニターが現れた。
???「ど~も~、
初めまして!」
!?
カホ「何もんですか
あなた!」
???「まあまあ落ち着いて?
ゆっくり説明しますから~」
カホ「落ち着けるわけ
ないでしょ!?」
モニターに写る女の子は、
ほほ笑みを絶やさずに、
自らの長い髪を
指先に巻きつけながら答えた。
???「私の名前はユラ。
この、『ラブ・スタジアム』の
スタッフです~」
カホ「ラブ・スタジアム?」
ユラ「この世界はほら。
見ての通り、
あなた方の暮らす世界から
かけ離れた空間なのだけど、
恋にまつわる様々なシステムが
揃っているのです~」
カホ「・・・なんですか
システムって」
ユラ「あなたがたの
暮らす世界では、
度々恋に関するトラブルが
起きているでしょう?
例えば・・・、
三角関係とか?」
ドキっ
ユラの言葉に、
無駄に心臓が
跳ね上がる。
ユラ「そんな時、つい人は
感情を抑えきれなくなるのです~。
なかなか気持ちに
蹴りをつけるのって、
難しいことなのです。
そこで、気持ちにケリを
つけられるようにするために
作られたのがここ、
ラブ・スタジアムです~。
ここで、思いっきり
スポーツで勝負すると、
恋のトラブルに
スッキリかたがつけられる
・・・と言われているのです~」
はあ・・・
ユラ「と、いうわけで、
早速参りましょう!」
カホ「・・・はい?」
私が、変な声を上げた途端、
周りの景色が
目まぐるしく回りだした。
カホ「ちょ、参るって何!?
何が始まるの!?」
ユラ「そりゃあ、
ここに来たからには、
勝負してもらう
ほかないですよ~。
それにいま、
2020年じゃないですか。
ほら! あなたの国・・・
ニホンでしたっけ?
もうオリンピックで
大騒ぎでしょう?
ここもなんです。
今年のオリンピックの会場の
1つなんですよ。
あなたは、
このラブ・オリンピックの
選手に選ばれたんです~」
カホ「いやいやいや!
私、超運動音痴だから!
オリンピックとか
縁もゆかりもない人間だから・・・」
ユラ「大丈夫ですよ。
なんとかなりますって」
ええええええええええ
驚く私を気にもとめず、
ユラは言い放った。
ユラ『レディース&ジェントルメーン!
ラブ・オリンピック2020の
開幕ですよ~!』
視界が完全に開けた。
見えたものは・・・
カホ「・・・テニスコート?」
いや、わりとフツーの
テニスコート。
てか、ええっ!?
服がユニフォームになってる!
ラケットなんか
握っちゃってるし!
ユラ「本日のゲームは、
テニス!
選手紹介をしまーす!」
審判の席に座るユラが
アナウンスを入れる。
ユラ「まずは・・・、
河村カホさーん!」
なぜか盛り上がる会場。
こんなにたくさんの人に
囲まれると、緊張する・・・
ユラ「そして・・・、
彼女に挑戦を挑んだのが・・・
吉岡ユナさん!」
カホ「えっっっっっ!?」
これには驚かずには
いられなかった。
コートの先に
立っているのは、
吉岡ユナ。
私の幼馴染。
ユナ「やっほー、カホ」
ユナは軽く
手を振ってくる。
カホ「え、なんで!?
なんでユナまでいんのよ!?」
なんでそんな
平静を保てるわけ!?
ユナ「なんでっていってもなあ・・・
それは、私が、カホを
ここに呼び出したからだよ」
カホ「・・・え?」
どういうこと?
ユナ「まあ、
聞いてなって」
ユナはユラの方を見た。
ユラ「今回の争点は・・・、
ジャジャン!
『幼なじみである
戸部コウショウ君への思い』!」
・・・コウショウ!?
ついに、我が幼馴染の名前が
勢ぞろいしたところで、
私の混乱は頂点に達する。
戸部コウショウは、
私とユナの幼馴染。
今でも3人仲が
いいんだけど・・・
私は、コウショウに
恋心を抱くようになった。
・・・ちょっと待った。
タイトルから察すると・・・
ユナ「わかった?
私も、コウショウのことが
好きなの」
私の恋心は
お見通しだったかのように
ユナは言う。
ユナ「カホがコウショウを
好きなのも知ってる。
だからこのままだと、
うちらの関係は崩壊すると思う。
それで悩んでいたら、
ラブ・スタジアムの
存在を知って、
カホを指名したんだ」
カホ「・・・」
真剣に語るユナを
見ているうちに、
私はだんだん正気を
取り戻す。
ユナ「私は、この勝負に
決着をつけたい。
だから・・・」
ユナ『勝負を、申込みます』
真っ直ぐに、
私を見つめるユナ。
そっか、ユナは
本気なんだ。
カホ「受けて立つよ」
親友をたたえて、
力強く返事をした。
ユラ『ゲームスタート!』
こうして、
私たちの戦いが
始まった。
・・・は、いいんだけど。
カホ「私、テニス
やったこと
ないんだけどー?」
ユラ「今回は2人共
初心者ということで、
5点先取の
ミニゲームとします!」
うへえ、
5点先取。
あっというまに
やられる可能性も
あるじゃないか。
おまけに、ユナって
運動神経いいんだよね。
ユラ「先制サーブは、
ユナ!」
ユナはボールを高く上げて、
ラケットを振り下ろす。
うわあっ!
どうするどうする!?
ボールはまっすぐ
飛んできた。
とりあえす振る!
パコーン!
両手で力任せに
振ったラケットは
偶然ボールに命中。
ユナの真横を
すり抜けた。
ユラ「カホ VS ユナ
1‐0!」
ふー、なんかもう疲れた・・・
って、サーブサーブ!
やったこと
ないんだけど・・・
へなちょこに投げて、
へなちょこに打った私の
へなちょこサーブ。
やば。
絶対チャンスボールだ。
でも、ボールはまたもや、
ユナの右側を抜ける。
ユラ「2‐0!」
え! なんか
いい感じじゃない?
そのあとのサーブも
はいって3‐0。
まさかの
ストレート勝ち?
そううかれてたら、
ユナが言った。
ユナ「なかなかやるじゃない。
でも、カホは
このゲームの真髄を
理解してない」
カホ「・・・どゆこと?」
圧倒的不利状況で
微笑むユナを見て、
冷や汗が流れる。
ユナ「このゲームは、
身体はもちろん、
頭脳、心、
すべてを活かして戦うの。
・・・いま、私は0点。
テニスでは0のことを・・・、
ラブって言うんだよ」
つまり・・・?
ユナ「カホは3点をとって、
私は0
――――ラブを3回も重ねたの」
ユナはユラの方をむく。
ユラ「プレイヤーユナ。
ボーナスポイント」
「3‐4」
そんなばかな!
そんなのありですか!
ユラ「ユナ
マッチポイント」
なんやかんやで、
後がなくなってしまった。
ピンチ!
ユナは頭脳を使って、
点を入れてきた。
ユナは本気で、
コウショウを
好きなんだ。
でも・・・、
それは私も同じ。
ユナが頭脳なら、
私は・・・・・・
ユナからの勢いのある
サーブが飛んでくる。
やっぱりさっきまでのは、
わざと打たなかったんだな、
と痛感するほどの
無駄のない素早い動き。
精一杯手を伸ばして、
叫ぶ。
カホ「私は! 諦めない!」
かろうじて跳ね返ったボールは、
ギリギリでユナのコートに届く。
ユナは私の突然の行動に
面食らっている。
しかしすぐさま
ラリーを続けてきた。
さっきよりも心なしか
体が軽くなったような
気がした私は、
素早くボールの
落下地点に走る。
カホ「たとえ相手が!
ユナでも!」
ユナはまた、
素早いボールを返す。
カホ「これだけは!
譲れない!」
思いっきり
振りかぶったボールは
ジャストオンライン。
ユラ「4‐4。
次に点を入れたほうを
勝ちとします」
なんでだろう?
最高に疲れているのに、
自然と力が湧き出る。
真剣勝負なのに、
最高に楽しい。
カホ「これが・・・、
最後!」
もう迷いはない。
ボールはラケットの
中央にあたる。
ユナも応戦する。
カホ「私は!
きっちりと!」
「ケリを!
つけるの!」
「相手が!
ユナだからこそ!!!」
私は・・・・・・、
心で戦うんだ。
もう、記憶に
残らないくらい
全力で動いた。
それはユナも
同じだったはず。
だって、清々しい
笑顔だったから。
最後は・・・、
心のこもったショットが、
ラケットが届くわずか前に、
パコーンと地面を叩いた。
ユラ「5‐4
ゲームセット!
勝者河村カホ!」
ユナ「はあ、はあ、・・・
負けちゃった」
残念そうな言葉とは裏腹に、
笑顔を浮かべるユナ。
そして、まっすぐ
向き直った。
ユナ「すっごく悔しいけど、
カホがどれだけコウショウを
大切に思っているか
よくわかった。
・・・カホになら、
譲ってもいいと思えた」
カホ「・・・ユナ」
はにかみ笑顔を浮かべる
ユナにかける言葉を
探していると、
ユナが私を抱いた。
ユナ「ありがとう、カホ
これからも、
親友でいてくれる?」
カホ「・・・もちろん。
ありがとう、ユナ」
その瞬間、ぱっと光が
私たちを包んだ。
お互いを知るきっかけを
与えてくれた、
私たちのゲームは
幕を閉じた。
ユラ「そう。ここは、
本心をぶつけ合うための場所。
本気で語り合えたら、
きっと、理解が深まって
納得できる答えを
みつけられるのです」
ひと仕事終えたユラは、
ふたりの姿を見て微笑んで、
次なる依頼人を
探しに出かけた。
その後、現実世界に
戻った私たち。
あれから1ヶ月ほど経ち、
テレビはオリンピック三昧で、
日本中がオリンピックモード。
でも、幼馴染の彼氏と、
最高の親友と見上げる
2020の空は、
真剣に戦う選手たちと同じくらい、
キラキラと輝いていた。
*end*
河村 果歩
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