綺麗な花が咲く夜に

CAST宮﨑えみり

作者：さえ

2025.11.18

綺麗な色の花が
夜空に咲き誇る。

私たちの記念日。

＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊

私、宮﨑えみり。
中学１年生。

クラスでは
１番目立たない。

どこのグループにも
入っていないから。

入学早々、風邪をこじらせて、
回復して学校に来た時には
もうどこのグループにも入れなかった。

夏休み前のある日、
クラスで１番上のグループの
ひかるちゃんが
わざと聞こえる声で話していた。

ひかる「ねえ、夏休みに
みんなでお祭り行かない？」

りりあ「いいねー！」

ふうか「さんせーい！」

ひかるちゃんが
私をチラッと見た。

クラスの女子の会話を
よく聞いてみると、
みんな、お祭りの話をしていた。

ひかる「みんな、
お祭り行くみたいだね」

ふうか「せっかくの夏休みだもん。
友達と夏っぽいことしたいもん」

りりあ「そうそう！
友達と遊ばなきゃ、
もったいないよねー」

ひかる「お祭りは絶対、
友達と行きたいよね。
１人でお祭りなんて
つまんないもん」

絶対、私に向かって言ってる。

別にお祭りなんて
行かなくていいし。

＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊

えみり「あーあ、
夏休みってヒマだなー」

図書館からの帰り道。

夏休みになってから、
毎日、図書館で勉強している。

宿題は自由研究以外
とっくに終わってしまって、
時間を持て余していた。

えみり「私も友達いたら
楽しいんだろうな」

本当は買い物行ったり、
プール行ったりしてみたい。
お祭りも行きたい。

？「あれ？　宮﨑？」

えみり「堀口くん・・・？」

クラスで人気の
堀口イブキくん。

めずらしく、１人だ。

イブキ「宮﨑、何してんの？」

えみり「図書館からの帰り。
勉強してたの」

イブキ「えらいな。
あ、そうだ。明日、ヒマなら
俺に勉強教えてよ」

えみり「え？」

イブキ「俺、宿題まだ
やってないんだよね。
教えてくれると助かる」

えみり「別にいいけど・・・」

イブキ「じゃ、明日の朝９時に図書館な！」

＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊

えみり「堀口くん、おはよう」

イブキ「おはよー。
さっそく、いい？」

次の日。
図書館に来た堀口くんは
机に宿題を広げた。

イブキ「あれ、宮﨑は宿題終わったの？」

えみり「うん。自由研究以外は・・・」

イブキ「すごいじゃん。
あ、そうだ」

堀口くんは、いたずらを
思いついた小学生みたいに笑った。

イブキ「自由研究、俺とやらない？」

えみり「え？　いいの？」

イブキ「もちろん」

えみり「何やるの？」

イブキ「花火の研究」

＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊

どうしよう。
すっごく、緊張する。

浴衣なんて初めて着るから、
よけいに。

ひかる「あれ？
宮﨑さん、１人で来たの？」

ふうか「浴衣なんて着ちゃって」

りりあ「１人でお祭りなんて、
恥ずかしくないの？」

おそろいの浴衣を着た
ひかるちゃんが来た。

３人ともすごく
似合っている。

やっぱり、断れば
よかったかな。

あの日、堀口くんは
「花火の研究したいんだ。
だから、お祭り一緒に行こう」
と、誘ってくれた。

自由研究のテーマが
決まっていなかったから
ＯＫしちゃったけど、
浴衣着るなんて。

ふうか「１人なのに浴衣着るって、
自分に自信ありすぎー」

ひかる「ねー。いっつも地味なのに」

からかわれて
うつむいてしまった私の手を
誰かがにぎった。

イブキ「じゃあ、２人だったら
文句ないよね？」

えみり「堀口くん・・・」

りりあ「イブキ!?」

ひかる「どうして、こんな子と？」

あ、そういえば、ひかるちゃんは
堀口くんのこと好きなんだっけ。

イブキ「こんな子って。
宮﨑、お前らに何かしたのかよ。
俺、お前らみたいなやつ、嫌いだから」

強く、手を引かれた。

えみり「ちょっと・・・っ、
堀口くん!?」

＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊．＊

ヒュ～、バンッ、

ドドンッ、ドンッ。

えみり「あ、花火始まった」

イブキ「綺麗だな」

えみり「そういえば、なんで
花火の研究しようと思ったの？」

ぐいっと手を引かれた。

堀口くんの顔が近い。

イブキ「綺麗だから。・・・
いつもマジメで一生懸命な・・・
宮﨑・・・みたいで綺麗だから。
俺、宮﨑と一緒に祭りに来たくて。
だから、花火の研究にした。
そうすれば、来てくれると思ったから」

堀口くんの顔が
耳元に傾いた。

ドキドキする。

イブキ「・・・えみり、好き・・・
俺の彼女になってください」

ヒュ～、バンッ、

ドドンッ、ドンッ。

綺麗な花が夜空に咲いた。

何輪も、何輪も、
咲いては消える。

えみり「・・・よろしく・・・
お願いします・・・」

最後の１発。

大きくて、１番綺麗な色の花が
夜空に咲き誇った。

＊ＥＮＤ＊