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ドール・シャノン

CAST伊藤 沙音伊藤 沙音

作者://///かり

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.11.02

ドール・シャノン。





これは私、
伊藤シャノンのあだ名。





私は自分で言うのもなんだけど、
顔立ちが整っている。





だから、小さい時から
お人形さんみたいと
たくさん言われてきた。





それが私が
「ドール・シャノン」と呼ばれる
ひとつの理由。





もうひとつは、
ひどく気が弱いから。





頼まれたことは、
絶対に断れないし、





やりたいことも自分から
言い出せない。





そのせいで、いいように
利用されることもたびたびある。





けれど、みんなのお人形さん、
シャノン。





このポジションを
私は気に入ってる。





だって、1番平和だもの。





笑顔でみんなの言うことを
聞いていれば、
いじめられたりすることはない。





いじめられても、仲のいい子が
守ってくれるし。





私はこの平和を守るために、ずっと
「ドール・シャノン」でいるのだ。





私の友達・・・というか
私を支配するのは、
3人の女子たち。





彼女たちは私を
お人形みたいに扱って、
かわいがってくれる。





陽キャ組の彼女等と
いっしょにいれば、安全。
何も起こらない。





「わー、シャノンの髪
さらっさら!」





そう言いながら
私の髪を撫でるのは
一軍女子のなかの一軍女子・・・
いわゆるボス・ミユウちゃん。





「そう?
ミユウちゃんの巻き髪、
今日もきれいだね」





「えへへ、ありがとー」





お世辞の言い方だって
マスターしてるよ。





「シャノン、リュック
片づけてあげるよ」





私の世話を焼くのは、
みんなのお姉さん・ヒメノちゃん。





ここで「自分のだから私がやるよ」
なんて空気の読まないことは
言っちゃダメ。





こういうときは
「ありがとぉ~。
ヒメノお姉ちゃん!」
と、甘えた声を出すのが正解。





みんな、妹を見るみたいな目で
私を見る。





「シャノン。宿題は?
この間のテスト、
平均以下じゃなかった?」





「あはは・・・やばいよー、
ヒヨリちゃん教えて・・・」





ヒヨリちゃんは、優等生だけど
今っぽいおしゃれ女子。





毎日のようにプリクラや
カラオケなんかで遊んでるのに、
成績はいつも上位。





「シャノンってば、ひとりじゃ
なーんにもできないんだから」





「えへへ・・・
みんなのおかげだよ」





中学の頃、私は
しっかり者キャラだった。





勉強も大得意。





先生お気に入りの優等生。





そんな自分に、
私は満足してた。





でも、聞いちゃったんだ。





「伊藤さん、
優等生ぶってて無理」





「先生のお気に入りで
調子に乗ってんの
うざすぎじゃね」





「ちょっと頭いいくらいで、何?」





「ひとりぼっちで暗いじゃん。
怖い~」





そっか、そんなふうに
思われてたんだ。





瞬時に理解した。





優等生でいたら
嫌われるってこと。





それから私は、クラスで
無視されるようになった。





誰も目を合わせてくれない。





私は平和に過ごすため・・・
高校に入るタイミングで
キャラを変えた。





同じ中学校の人と
同じクラスにならないために、
かなり遠いところにある、
お金持ち高校を選択した。





同じ中学出身の人は、
ひとりだけ。





堀口イブキ。





彼は、つかみどころのない人。





いつもぼーっとしてる。





「オタク」だって
陰口をたたかれてる。





「オタク」って、
悪いことなのかな・・・





ひとつのことに夢中になれるのって、
すごいじゃんって、私は思う。





でも、そんなこと私は言えない。





だって、嫌われちゃうかも
しれないから。





みんなの「ドール・シャノン」じゃ
なくなっちゃうかもしれないから。





「おーい、しゃのーん」





「伊藤さん、あのさ」





「シャノン、おはよー」





私は「ドール・シャノン」だ。





「優等生」を出さないように、





いつもそう言い聞かせて
教室に入るのだ。





「ねえねえ、シャノン。
今度ペットショップ見に行こうよ!」





そう誘ってきたのは、ヒメノちゃん。





「ミユウちゃんが、猫欲しいんだって~」





ミユウちゃんは、超お金持ち。





欲しいものはなんでも
買ってもらえるって
前に言ってた。





「シャノン、猫好き?
今から楽しみだよ!」





ミユウちゃんは、すごく
ワクワクしてるみたい。





「猫とのふれあいは、
ストレスホルモンである
コルチゾールの分泌を抑え、
リラックス効果をもたらす。
研究によれば・・・」





長々と説明を始めた
ヒヨリちゃんを見て、
ミユウちゃんが笑う。





「こんな時まで真面目なんだから!
ってことで、日曜日の1時に
ニコラモールね!」





「あ、ま・・・」





待って、と言おうとしたけど
ミユウちゃんはもう
バックパックを揺らして
走り出していた。





冷汗が流れる。





断りたい。
猫は苦手なのだ。





猫をみんなで見に行くなんて、
冗談じゃない。





きっと、触ったりもする流れに
なっちゃうのかも・・・





でもここで断ったら、
「ドール・シャノン」じゃ
なくなっちゃう。





焦っていると、後ろから
冷静な声が聞こえた。





「お前、猫無理でしょ」





「うっ・・・」





堀口くんだ。





前の学校で私を嫌う女子が
大声でそのことを叫んでいたから、
知っていても無理じゃない。





堀口くんの声、初めて聞いた。





耳に心地いい。





「お前、変わったよな。
今じゃみんなの人形だ。
見てらんない」





「・・・え?」





見てられない?
見苦しいってこと?





「みんなの言いなりに
なってんじゃねーよ。
自分ないのかよ」





ずけずけと彼は言う。





「松田は、誰かをいじりたい。
青山は、世話したい。
白水は、自分の知識をひけらかしたい。
そんなくだらねえ希望
聞いてるだけじゃん、今のお前」





意外に見てたんだなって思う。





「何が、『ドール・シャノン』だよ。
お前は誰かのものじゃない。
お前だけのものだ」





私だけの、もの。





その言葉が心に響いた。





「まっすぐだね、堀口くんは」





初めて彼をかっこいいと思った。





この人には「自分」がある。





「私も、君みたいになるよ」





ペットショップ、ちゃんと断ろう。





3人の前で、素の自分を
出してみよう。





それで嫌われたら、
それでもういいや。







彼のことが、
好きになれた。







*end*

※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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