私のセカイ
作者:ナッツ類
はろー!
私、橘ユウリ。
私が大好きなのは、学校!
毎日、とにかく学校が
楽しくて楽しくてたまらない。
私のクラスは、みんなが
仲よしなんだ。
今度、クラスのみんなと
遊びに行く約束もある。
あー、楽しみ!
中でも1番仲がいいのは、
村田ユウ。
私は、村ちゃんって呼んでる。
村ちゃんはね、大人っぽくて
やさしくて、しっかりしていて
かわいいの!
私は、そんな村ちゃんが大好き。
今日も一緒に学校に行くよ!
村ちゃんは唯一
私の秘密を知る人だ。
私は、クラスメイトの
今井くんが好きなの。
いわゆる、
一目ぼれってやつ。
見た瞬間、
「かっこいい!」って
なったんだ。
「今度みんなで遊ぶときに、
プレゼント持ってきたら?」
「プレゼント? 何の?」
「当たり前でしょ、今井への」
「今井くんへのっ!?」
「あいつバスケ部だから、
バスケ系のものが
いいんじゃないかな」
「・・・おお・・・」
村ちゃんは私に
すごく親身になってくれる。
こんな素敵な子が
親友であることが、
幸せでたまらない。
「ユウリ。
今日、やるの?」
告白のことだろう。
私は、曖昧にうなずいた。
「・・・できれば」
「やるじゃん」
村ちゃんは、ニカッと笑った。
私には、幼なじみがいる。
リョウくん。
彼はやさしくて
繊細な子どもだった。
でも、今は。
髪色は、くすんだ黄色。
制服は、着くずして。
「知ってる?
八神リョウスケって人」
「あー、うんうん。
ニコラ中学の人、殴ったとか」
「この間は、万引きしたらしいよ」
「やっばー、怖い」
八神リョウスケ。
リョウくん。
私は彼とは小学校が別で、
段々話さなくなっていった。
でも中学で
またいっしょになった。
とはいっても、話すことはない。
だって、私だって。
怖いもん。
別にリョウくんと話さなくたって、
私にはいっぱい友達がいるからいいや。
そう思ってた。
ゲームセンターに行って、
ご飯を食べて、みんなで
わいわいと飲食店を出た。
「あれ、何これ」
村ちゃんが床から
何かを拾い上げた。
床に落ちていたのは
キーホルダーだった。
綺麗な緑の、
私とおそろいのキーホルダー。
リョウくんのだ。
慌てて彼の姿を探す。
いた!
彼は、ムクドナルドから
出ていくところだった。
「あ! ちょっと渡してくる」
「え? 誰の?」
「あー、えっと、
村ちゃんの知らない人だよ」
村ちゃんは、不良のリョウくんのことを
よく思っていなかった。
だから、あえて言わない。
私は慌てて
リョウくんたちを追う。
隣には怖そうな人たちが
いっぱい。
思わず足がすくむ。
でも、相手はリョウくん。
きっとだいじょうぶ。
「リョウくん!」
リョウくんが振り向いた。
「・・・ユウリ」
「これ・・・」
私がキーホルダーを
差し出した瞬間、
彼の顔がパッと輝いた。
「ありがとう」
「何、リョウスケ、彼女ぉ?」
明るい声が響いた。
声の主は、ニカッと笑っている。
やだ、怖い・・・
「ちげえよ。幼なじみ」
「幼なじみか~。いい関係だねえ」
あれ? っと思った。
声は明るいし、
笑顔もやさしそう。
思ったより全然怖くない。
「橘ユウリです・・・」
「ユウリちゃんか、かわいいね」
さらっと気恥ずかしいセリフを
口にしたのは、のっぽの背の高い人。
「いつもうちの八神が
お世話になってますぅ」
「いつもじゃねえし」
みんな気さくでフレンドリーだ。
思っていたのと違う。
「ユウリ、友達かなんか
待たせてんじゃねえの?」
さすがリョウくん。
察しがいい。
私は慌ててみんなを探す。
「あれ・・・」
いくら探しても見つからない。
プレゼント、渡せなかったな。
私はちょっとがっかりしながら
家に帰った。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
次の日。
「おはよー!」
みんなに元気に
あいさつして教室に入った。
村ちゃんの姿を見つける。
「村ちゃ・・・」
「何?」
冷たい声で返事をしたのは
村ちゃんのそばにいた、
私の友達のひとり・泉ユノ。
「ユウリ、村ちゃんに
今までしてきたこと考えなよ」
「・・・へ?」
思わず村ちゃんを見た。
村ちゃんは気まずそうに
目をそらした。
「もうやめたほうがいいよ、
ユウリ」
やさしい声で言うのは、ヒメノ。
「よくそんな笑顔で話せるよね。
信じられない!」
ユノは、大声で私を非難した。
「村ちゃん、今井くんが好きって
気もちを隠して、
ずっとユウリを応援してたんだよ。
この間の席替えだって、
今井くんの横の席が当たったのは
村ちゃんだったのに、
ユウリが強引に譲らせたんでしょ」
「・・・何それ・・・」
強引に譲らせたことなんかない。
村ちゃんに譲れなんて
頼んだことは、一度もない。
何より、村ちゃん、
今井くんが好きって、
どういうこと?
「昨日はすごかったよね。
みんなの前で告るんだもん、
びっくりした!」
「さっすが村ちゃんだよね!
スポーツタオル、
今井くんもほめてた!」
みんなの前で、告る?
さすが村ちゃん?
スポーツタオル?
瞬時に私は理解した。
村ちゃんは今井くんが
好きだったこと。
昨日、私がいなくなったあとに
告白したこと。
私のスポーツタオルを盗んで、
今井くんにプレゼントしたこと。
「私、強引に譲ってなんて
言ってない!」
「うそつかないでよ、ユウリ。
村ちゃんがそう言ったもん」
村ちゃんが、そう言った?
「この大ウソつき!」
私は、思わず叫んでいた。
教室の空気が凍る。
「私は村ちゃんに
何かを譲れなんて言ったことない!
それに、スポーツタオル・・・
私が買ったのに!」
「黙りなよ、ユウリ!」
ユノが叫んでる。
「信じてよ!」
泣きながら叫んだ。
「いい加減にしなよ!」
「うるさい!」
私は、教室を飛び出した。
階段を走って下る。
前なんか見てなかった。
どん!
誰かとぶつかった。
「・・・ユウリ?」
声が降ってくる。
やさしい声だ。
「リョウくん」
「どうしたの? 泣いてるけど」
その声に、ますます涙が出た。
「う、うわーん!」
彼は驚いて目を見開いていた。
やがて、やさしい表情に戻る。
「そっか。
なんかあったのか」
深く聞いてこない
彼のやさしさに感謝した。
涙が止まらない。
「ひとりぼっちに、
なっちゃった・・・!」
嗚咽で、つっかえながら言った。
「そっか。うん」
私は、ただひたすら泣いた。
私はひとりぼっちになった。
完全に孤立した。
仲のいい村ちゃんと
今井くんを見ると、胸が痛んだ。
だけど、それは今井くんが
好きだからじゃない。
村ちゃんが好きだったから。
もう、好きになれないから。
ウソつき。
大ウソつき。
「ユウリさ、ほんとに
今井のこと好きだったわけ?」
リョウくんに軽く聞かれた。
「ちょっとかっこいいって
思ってたのと違うの?」
「ち、違うよ・・・」
でも、よく考えてみれば
そうかもしれない。
「私は、村ちゃんが大好きだったんだ。
でももう許せないし、許したくない」
「それでいいんじゃねえの」
彼はこの世のすべてを
わかってるみたいだった。
私が落ちこむたび、
リョウくんは
励ます言葉を与えてくれた。
その言葉は、甘くはない。
ただやさしいわけじゃない。
時には厳しい言葉。
それでも私は彼に救われた。
私のセカイは彼でできていた。
「ユウリ」
後ろから声をかけられた。
私は無視してずんずん歩く。
「ユウリ、聞いてよ・・・」
「やだ!」
子どもみたいに叫んだ。
「私、またユウリと
仲よくなりたいの!
話を聞いて!」
悲痛な叫びを、私は無視した。
村ちゃんとは
今は話したくなかった。
「でも、お前ずっとこれでいいの?
独り身ってつらいよ」
「独り身・・・
独身みたいな言い方だね」
私は、クスクス笑った。
彼はいたって真面目だ。
「もっとよく考えてみたら?
村田ってやつと仲直りすること」
そっか。
村ちゃんにも
わけがあるかもしれない。
それを聞いたら、
私は許せるかもしれないし、
許せないかもしれない。
今は、どちらだっていい。
「今はリョウくんがいれば
それでいい」
リョウくんの大きい目が
さらに大きく見開かれた。
「それが私のセカイだから」
リョウくんはふっと笑った。
「それが俺のセカイでも
あるかもしれない」
私のセカイは私が決める。
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
橘 侑里

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