止まった腕時計
作者:みかん
カチリ・・・カチリ・・・
カチッ・・・・・・
4月1日(金)
午後4時36分27秒に
わたしの腕時計は止まった。
この時間は、
わたしの大切なひとが
あの世へ逝ってしまった時間。
*・*・・・*・・・*・*
ユア「初めまして!
工藤ユアです!
みんな、仲よくしてね!」
いつものように
明るく自己紹介。
わたしは、
親の都合で引越しが多く、
毎年たくさんみんなの前で
自己紹介をしている。
そのためか、いつの間にか
みんなの前で話すことが
好きになっていた。
わたしは学級代表として、
クラスの中心でがんばっている。
でも、がんばりすぎて
友達を作るのを
すっかり忘れていて、
いまもずーっと1人だ。
ユア「はぁー・・・
今日も友達作れなかったな・・・」
毎日、大きなため息をつく日々。
早くみんなと話したいのに・・・
ガラッ
不意にドアが
大きな音を立てて開いた。
?「あれっ? 工藤?
まだ残ってたんだ」
ユア「あっ・・・岬くん」
この人は、岬くん。
わたしの隣の席の男の子。
岬「仕事残ってる?
手伝おうか?」
ユア「けっけけけ結構です!
暗いし、早く帰ったら?」
やってしまった。
わたしのばかー!
せっかく手伝うって
言ってくれてるのにー・・・
岬「無理するなって。
女の子なんだから。
こーゆーときこそ男頼れよっ」
ユア「あ、ありが、と・・・///」
トクン・・・
えっ?
なに、この気もち。
すごく心がキュッてなる。
これが恋なのかな・・・?
ユア「あっあの! 岬くん!
好きです!!
わたしじゃ、だ、ダメですか・・・?」
岬「おれも、
転校してきたときからユアのこと、
ずっと気になってた。
つきあってください」
今日初めて話した男子に告白。
今日初めて恋をした。
今日初めて
手をつないで帰った。
今日初めて
うれしさを知った。
今日初めて
人の体温を感じた。
しばらく経って
わたしと岬はデートをした。
帰り際にもらった。
ピンクの腕時計。
うれしくってうれしくって
毎日つけてた。
そんな日々がうれしくて。
*・*・・・*・・・*・*
数週間後・・・
いつも通りだと思ってた日々が
ガラリと変わっていた。
わたしはいつも通り
岬の家に迎えに行った。
ピーンポーン。
ユア「岬ー!
迎えに来たよ?」
岬「わるい。
今日学校休むから・・・」
ユア「えっ、そうなんだ・・・
お大事に!」
ただの風邪だと思ってた。
なのに。
どうしてこんなことに
なっちゃったんだろう。
*・*・・・*・・・*・* *・*・・・
*・・・*・*
それから数日経っても
岬が学校に来ることは
なかった。
わたしの心は、岬のことで
いっぱいで。
み((どうしたんだろ・・・
心配だな。
誰かに聞きたいけど・・・))
友達が未だにいないわたしは、
岬の事情を
誰にも聞くことができなくて。
だから。
岬の全てを知れなくて。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムがなり、
帰り支度を済ませ、
校門を出ると
わたしの心みたいに
空は曇っていて。
そんな空を見たくなくて、
下を向き続けながら
歩いて帰った。
家に帰って真っ先に
わたしの元へ来たのは
お母さんだった。
母「ユア! 大変っ・・・
岬くんがっ・・・」
バンッ
母「ユアっ?!」
お母さんの声が聞こえたけど
振り向いてなんかいられなかった。
わたしはなにも
知らなかった。
知ってるふりしてた。
岬のことなんか
なにも分かってないじゃないか。
岬は昔から難病を抱えており、
いま生きてるのが奇跡だという。
だが、最近容体が急変して、
いま病院で手術をしているという。
わたし。最低だ。
岬のこと
なにも知らなかった。
なのに色んなところに
連れ回して。
わがままばっかりで。
走りながら
涙は一向に止まらなくて。
カチリ・・・カチリ・・・
カチリ・・・
腕につけた岬との思い出が
終わりを告げる音に聞こえた。
*。・ 病院 ・。*
ユア「岬ッ・・・岬ッ・・・!
すいません。ここの病院に
岬という男の子いませんか?!」
ナース「えっ?
こっ、こちらです!」
ハァ・・・ハァ・・・
岬・・・岬・・・岬・・・!
ガラッ
岬「ゆ・・・あ?」
ユア「岬ッ!
しっかりして!」
岬「ごめんね・・・
いままで黙ってて。
最低だよな・・・」
ユア「そんなことないっ・・・
なにも知ろうとしなかった
わたしがいけないの・・・!
だからお願い。逝かないで・・・」
カチリ・・・カチリ・・・
カチリ・・・
岬「おれさ、ユアと過ごせて
本当に楽しかった。
笑ったり怒ったり泣いたり・・・
すごくうれしくて・・・」
カチリ・・・カチリ・・・
カチリ・・・
岬「だからさ、最期くらい、
俺のため、に笑ってよ・・・」
ユア「なっ、泣いてなんかっ・・・」
岬「俺の前では
意地はらなくていいんだよ・・・」
カチリ・・・カチリ・・・
カチリ・・・
岬「・・・・・・ユア」
ユア「なに・・・?」
岬「・・・ありがとう」
カチリ・・・カチリ・・・
カチッ・・・
4月1日(金)
午後4時36分27秒――
わたしの腕時計が止まった。
それと同時に
わたしの大切なひとが
あの世へ逝ってしまった・・・
*。・ 数年後 ・。*
ひまり「ユアーっ!!
はーやーくー!」
ユア「あー!
待ってよー!!」
この子は、ひまり!
わたしの大親友!
新しく友達ができたんだ。
ねぇ、岬。
見てくれてるかな?
わたし、楽しい人生
送れてるよ。
岬のために精一杯の笑顔で。
*end*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
工藤 唯愛

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