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きっと、ずっと。

CAST稲垣 来泉稲垣 来泉

作者:メーダー@

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2025.04.28

桜が咲くこの季節。





母「クルミ。
もう帰っていいのよ。
お母さんはだいじょうぶだから。
学校だって大変でしょう?」





クルミ「いいの。
わたしが好きで来てるんだから。
それに帰ってもやることないし」





ここは病院。





お母さんは重い心臓病を
抱えてる。





入退院の繰り返し。





お父さんは、わたしが幼い頃に
交通事故で亡くなった。





だからいつも家では1人。





食事も、テレビも、
寝るのも。





母「クルミ、好きなことぐらい
してもいいのよ」





クルミ「部活だって入りたいのないし、
やりたいことなんてないから
だいじょうぶだよ」





うそをついてる。





部活にだって入りたいし、
たくさん服だって欲しい。





母「そう。いつも1人で
さびしい思いさせてごめんね」





クルミ「さびしくなんてないよ。
今日は、帰るね」





本当はさびしい。





でも言ったらもっと
さびしくなる。





母「いつもありがとね、クルミ」





クルミ「また来るね」















・。・:・・・:・*・:・。・:・・・*・。*





クルミ「ただいま」





私の声だけが
むなしく部屋に響く。





そして、いつもの
ベランダに行く。





マンションの10階の景色は
高くてきれいで





少しは心が安らぐ。





クルミ「はぁー」





何のため息かすら
わからない。





ガラガラ。





え?





隣の部屋には
誰もいないはずなのに。





しかも2部屋ずつ
ベランダは繋がってる。





?「こんにちは。
っていきなりだな。
おれ、今日から引っ越してきた
八神リョウスケです。あ、中3」





いきなりで
よくわかんないけど。





クルミ「稲垣クルミです、
中3・・・」





リョウスケ「同い年じゃん、
よろしくな、クルミ」





クルミ「え、あ、うん。
よろしくね」





なんだろう、この人。





いきなり馴れ馴れしいし。





まぁ、気にしないからいいか。















・。・:・・・*・:・・・・・:*。・・・





やばっ。
学校遅れる。





早くしなきゃ。





ピーンポーン。





もう、こんな時間に誰?





クルミ「はい」





リョウスケ「よっ、朝一緒にいこうぜ。
っていうか、俺学校はじめてだから
案内よろしく」





そうだ、この人
引っ越してきたんだっけ。





今日は始業式。
とりあえず行くか。





クルミ「わかった。でもさぁ、
朝からインターホン鳴らさないで!」





リョウスケ「ごめん、ごめん。
一緒に行きたかったからさ」





クルミ「意味わかんないんだけど」





リョウスケ「そのうちわかるよ。
ほら、行こうぜ」





クルミ「はいはい」





その日は何だかんだ言って
少し楽しかった。





でも、わたしは
気づいていなかった。





お母さんに、
時間がないことを。















・・:・*・:・・・・・:・*・・・:。・・・*





クルミ「ただいま」





母「おかえり」





そこにはいつもいない
お母さんの姿。





帰ってくるはずのない声が
帰ってきた。





クルミ「お母さん、
外出許可もらったの?」





母「1日だけね」





クルミ「よかったね!」





母「うん、クルミあのね・・・
先生か、」





バタッ。





クルミ「お母さん!」





母「うっ、苦しい・・・」





クルミ「お母さん!
ねぇ、お母さん!」





返事が帰ってこない。





クルミ「誰か! 誰か!」





ガラガラッ





リョウスケがベランダから
来てくれた。





リョウスケ「クルミ!
おれ、救急車呼ぶから!」





クルミ「お母さん! 起きてよ!」





いつもは「だいじょうぶ」って
言ってくれるのに。





クルミ「お母さん!」





わたしの声は
届かなかった。





お母さんはその日
かえらぬ人となった。















*・*・・・*・・・*・*





お葬式が終わって、
わたしは本当に
1人になってしまった。





親戚の人に引き取られたけど
そんなの形だけ。





だから、わたしは1人。





でも、リョウスケはわたしのそばから
離れなかった。





クルミ「リョウスケ。
どうしてそんなに
一緒にいてくれるの。ねぇ」





1人ベランダでつぶやいた。





リョウスケ「一緒にいたいから」





そのとき、
聞きたかった声がした。





クルミ「リョウスケ・・・」





リョウスケ「クルミが1人なら、
俺がそばにいる。
そうすればクルミは
1人なんかじゃない」





クルミ「でも、」





リョウスケ「ご飯だって家に来て
一緒に食べれば美味しくなるよ」





クルミ「リョウスケ・・・ありがとう」





ずっと私の手は
リョウスケの手に握られている。





『好き』なんて言葉は
言われてないのに。





リョウスケのやさしくて、
あたたかい温もりが
伝わってくる。















・。:・・・・・:*・:・・・・:・*・・・





ピーンポーン。





リョウスケ「クルミー。
ご飯食べようぜー」





クルミ「うんっ」





リョウスケは、
あのとき言ってくれた言葉を
ちゃんと守ってくれてる。





朝の登校だって、下校だって、
ご飯も、お母さんのお墓参りも全部。





わたしは1人じゃない。





そんな気がした。





『クルミ。ごめんね。
でも1人じゃないよ。
お母さんはずっとクルミの心の中で
生き続けてる』





そのとき、空から声がした。







*fin*

この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

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