幼なじみは問題児。
作者:もこ
ガッシャーン!!!
どこかの教室の窓ガラスが
割れる音がした。
「こらー! 相沢!
またお前か! 待て!」
「待てって言われて
待つ人がどこにいるんだよーだ!」
廊下を猛スピードで
駆けぬける彼女、
相沢伊吹。
俺の幼なじみは、
超がつくほどの問題児。
先生たちから
目をつけられるのは
日常茶飯事。
クラスでは周りが
あきれるほど騒ぎを起こす。
けど、あいつには
不思議な魅力がある。
なんだかんだで
人を引きつけてしまう力が。
今日も、
トラブルのど真ん中。
俺、西優行は、ただ
ため息をついて
見守るしかなかった。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
昼休み、彼女は
職員室から戻ってきた。
「お前、
また怒られてたのか?」
「まぁね。窓ガラスって
思ったより
割れやすいんだよね~」
「お前さ、本気で
感心してる場合じゃないだろ」
伊吹は笑いながら、
机に座って弁当を広げた。
そんな彼女の無邪気な姿に、
俺は思わずあきれる。
けど、不思議と
目が離せない。
「なあ、伊吹。
なんでそんなに
やりたい放題なんだ?」
「やりたい放題って言うなよー。
ただ、つまんないことばっか
やってらんないだけ」
「つまんないって・・・」
「学校なんて
窮屈(きゅうくつ)じゃん。
みんな同じことして、
同じこと言ってさ。
そういうの、私
苦手なんだよね」
伊吹はポツリとつぶやいた。
その言葉には、
いつもの軽さとは違う
重みがあった。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
それから数週間後、
また事件が起きた。
伊吹が、廊下で
他クラスの女子と
激しく口論になったのだ。
俺がかけつけたときには、
彼女の顔に傷がついていた。
「伊吹、お前・・・」
「だいじょうぶ。
優行には関係ないでしょ」
そう言って、
彼女は笑おうとした。
でも、俺にはわかった。
彼女の笑顔の裏に
かくされた孤独を。
その日の放課後、
俺は伊吹を
屋上に連れ出した。
「何だよ急に。
そんなに私が気になるの?」
「ああ、気になる。
お前が笑ってるのに、
本当は泣いてるのがわかるから」
伊吹は驚いたように
俺を見た。
そして、
ぽつりとつぶやく。
「・・・私はさ、
強くなんかないよ。
ずっと、誰にも
本当の自分を
見せたくなかっただけ」
「だったら、
俺にだけ見せろよ。
全部受け止めてやるから」
「・・・そんなこと言ったら、
本当に頼っちゃうよ?」
「ああ、頼れ。
お前のこと、ずっと見てきた
俺にだけは」
伊吹の瞳に、涙が浮かぶ。
「優行・・・ありがとう」
それから少しずつ、
伊吹は変わっていった。
トラブルメーカーの
ままだったけど、
どこか穏やかな笑顔が
増えた気がする。
ある日、
彼女が言った。
「ねえ優行。
あんたのこと、
好きになっちゃったかも」
「・・・今さら?」
俺が苦笑いすると、
彼女はぷいっと
そっぽを向いた。
「何、その反応!」
「いや、俺も好きだよ。
昔からずっと」
彼女が振り返り、
驚いた顔をする。
だけど、いつものように
ニヤッと笑った。
「じゃあ、これからも
よろしくね、優行」
「おう。こっちこそ」
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。