私は耳が聞こえません。
作者:もじゃもじゃ
―――好きだよ
そう言いたいのに
―――大好き
そう伝えたいのに
どうしてもできない。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
どうも
私は、星乃アンナ。
なんの取り柄もなく、
幼馴染とすごしてる。
でも私には、みんなと
違うところがある。
それは・・・
耳が聞こえないこと。
手話
私はこれを必要とし、
常にこれを用いている。
ピンポーン。
その音は
聞こえないけれど、
チャイムがなると
家のライトがつくように
なっているのだ。
便利な世の中・・・
本当に
ありがたいですね。
ガチャ
「アンナ、おはよう」
幼馴染の彼、ハルト。
彼は、
「アンナおはよう」
その語だけを
手話でマスターしてる。
「アンナー!
遅刻しちゃうよー!」
心友の国本ヒマリ。
ヒマリは、みんながうらやむ秀才で
頭がよいから、
私の耳が聞こえないことを言ったときも
手話を1週間でほぼマスターしてくれて、
本当にヒマリには感謝してるし、大好き。
もちろん、ハルトも
兄妹レベルに仲良し。
私はうまく話せないし、
いろんなひとに、
いろんなことを言われ、
いろんな目で見られた。
それでも、
ハルトとヒマリは
私のそばにいてくれた。
でもね。
それでもね・・・
みんなは、
受け入れては
くれなかった。
2人がいることで
私は、安心できた。
ハルトとヒマリは、2人とも
クラスが違かった。
クラスの人は、
私の耳が聞こえないことを知って、
のけものにした。
私と目が会うたびに
こっちをジロジロ。
そのとき、
お父さんの転勤が決まって、
遠いところに
引っ越すことになった。
でも、私は
いじめられてたこともあり、
親が気を利かせて
くれたのかもしれない。
私はそれを、
ヒマリとハルトに
言うことにした。
―― 翌日 ――
アンナ「ヒマリ、ハルト、あのね。
私、引っ越すことになったの」
そう伝えた。
ヒマリ「なんで?」
そう返されたから、
アンナ「親の転勤」
ハルトは悲しそうな
目をしてた。
ごめんね。
アンナ「ハルト、放課後
言いたいことがあるの」
ヒマリ「ハルト、アンナが
放課後言いたいことが
あるって」
ハルト「あ・・・うん」
私、気づいたの。
自分の思いに。
きっと伝わらない。
『ハルトが好きっていうこと』
いつもそばに
居てくれて、
それだけで
うれしかった。
だからその思いを
伝えるの。
――放課後――
アンナ「きゅう・・・に
呼び出してご・・・めんね」
ハルト「・・・・・」
アンナ「あの・・・私・・・
ハルトのこ、と・・・す」
なんで?
なんで好きって
言えないの?
―――好き
そう言いたいのに
―――大好き
そう伝えたいのに
どうしてもできない。
ハルトが石を持ってきて、
なにやら地面に書いている。
『俺はアンナが好きだ!』
アンナ「ハ・・・ハルト・・・!」
ギュ
抱きついてきて、
アンナ「私・・・
ハルトのこと・・・
大好き・・・!」
私たちは
しっかりと結んだ手
見つめあった目から
愛を確かめた。
―― 引っ越す日 ――
車で何時間かかるだろうか。
そんな場所へいく。
悲しい。さみしい。
そんな思いがあふれてきて、
涙が数えきれないくらい
あふれてきて、
最後かもしれない友達と
目を合わせられなかった。
でもそんな時、
あの大好きな2人が
来てくれた。
手紙をくれた。
それを読みたくなって、
「バイバイ」した後に、
「ばいばい」したけれど、
手紙を開けた。
――――――――――――――――
アンナへ
転校はしょうがないけど
やっぱさみしいね。
私はアンナのことを
世界一の心友だと思ってるよ。
耳が聞こえなくても
できることはいっぱいあるよ。
最後にでもそう伝えたかったな。
また会おうね!
ぜーーったいだからね!
大好き!
ヒマリ
――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
アンナへ
俺は思い出すと、アンナに助けて
もらった記憶しかないな笑
もっと自分でやらないと。
でも正直なところ、
俺にはアンナが必要なんだ。
これからもいっぱい必要なんだ。
だから絶対会おう。
俺とアンナの約束。だからな。
改めて言う。
俺はアンナが好きだ!
これだけは変わらない。
約束、覚えとけよ!
ハルトより
―――――――――――――――――――
いつの間にか手紙の文字は
にじんでて、
涙が流れてた。
ヒマリの字、芯が通ってて
とってもきれい。
しっかりしてるなぁ。
ハルトはずっと前から
字が汚い汚いって
言ってたけど、
私、たーくさん教えて
すっごいきれいになって
3人で習字の賞
とったことあるなぁ。
なつかしい。
私ね? 思うの。
たしかに、私の耳は
聞こえない。
でもそれって、
悪いことばかりじゃないと
思うんだ。
だからといって
いいことばかりじゃない。
人生は悪いことのほうが
多いのが当たり前。
私もそう。
悪いこと1つ1つを
大切にしなきゃ
絶対いいことは
起きないと思う。
だからこそ毎日、
いつもの日常、
普通の会話までを大切に。
これは、みんなに共通する
人生のこと。
―― 5年後 ――
やっと来た。
さんざん、お世話になった
このニコラ町に。
?「アンナ・・・!」
アンナ「ハルト!」
ほらね。
これが私のいいこと。
*end*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。また、掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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