俺の彼女が可愛すぎる件
作者:Feel your breeze
俺の名前は、黒澤諒。
突然だけど、俺には
自慢の彼女がいる。
「リョウくーん!
おはよー!」
「おはよう、クルミ」
今挨拶してきたのが、
稲垣来泉。俺の彼女だ。
「そういえば、
今日の1時間目は
数学だったな」
「あっ!
小テストあるじゃん」
「なんだよ・・・
勉強してなかったのか?」
「だって・・・
昨日は部活で疲れたし」
そういうとクルミは、
俺の前に回り込んでこう言った。
「ねぇーリョウ君。
お願いだから
テスト範囲教えて!」
ったく・・・
相変わらずおねだりが
可愛いんだから・・・
「しょうがねぇなぁー。
よし、じゃあそうと決まれば
学校まで走るぞ!」
俺はクルミの手をつかんで、
2人で学校まで走って登校した。
「おはよう!
リョウ・クルミ!」
教室に着くと、
先に登校していたソノマに
声をかけられた。
「ソノマー! おはよー!」
挨拶するなり、
ソノマに抱きつくクルミ。
さすが、2人は幼馴染にして
親友なだけあるよな。
「おはよう。リョウ」
今声をかけてきたのは、
俺の親友のユアン。
「ユアン、おはよう。
ところで、朝のホームルームまで
何分ある?」
「あと30分かな」
「クルミ、今から
小テストの勉強するぞ」
「はーい!」
「えーと、ここはこうで、
この問題には
この公式を当てはめて・・・」
「リョウくんって、
いつも教えるのうまいよね!」
「あっ、ありがとう」
こうやって面と向かって
ほめられると、
なんだか恥ずかしい(笑)
「やーだ、
照れてるじゃん(笑)
かわいい」
【お前の方が何億倍も
可愛いんだけどなぁ(笑)】
「ん? なんか言った?」
「いや、なんでもない」
危ねー!
心の声がもれるところだった。
それにしても、
相変わらずクルミは
可愛いよなぁ・・・
朝の勉強があったせいか、
小テストは2人とも
高得点だった。
「リョウくんのおかげで、
赤点にならずにすんだよ。
ありがとう!」
満面の笑みで
感謝してくるクルミ。
可愛い・・・
「次からは、ちゃんと
テスト勉強して来いよ」
「うん」
「ねぇ、リョウ。
ちょっといい?」
その日の放課後、
俺はソノマに呼び出された。
「リョウってさ、
クルミのどこが好きなん?」
どこが好き・・・?
そういえば、クルミを
好きになったのって、
いつからなんだろう?
「分かんないなー。
正直、いつの間にか
好きになったつうか・・・」
「ふーん。そうなんだ」
何か言いたそうな顔をして、
ソノマは行ってしまった。
一体、どういう意味なんだろう?
・*。・ 次の日 ・。*・
「ねぇ、リョウくん」
昼休み、クルミが
神妙な顔つきで話しかけてきた。
「どうした、クルミ?」
「私たち、もう別れない?」
衝撃の発言に、
俺の思考は一瞬止まった。
「えっ・・・? なんで?」
「いや・・・なんか・・・
私たちって、
友達のままの方が
いいのかなって・・・」
なんだよ・・・それ。
俺は言い返したかったが、
言葉が出なかった。
クルミはそう言うと、
そそくさと教室を
出て行ってしまった。
その時の彼女の、
今にも泣き出しそうな顔が
印象的だった。
「おい、リョウ」
放課後、俺は
ユアンに呼び出された。
「なんだよ、ユアン」
「お前さ・・・
クルミちゃんと
別れたんだって?」
いつの間にか、
俺たちの破局の話が
ユアンの耳にも
届いていたらしい。
「なんで別れたんだよ」
「いや・・・なんていうか・・・
クルミが、友達のままの方がいいって
言ってたから」
「ふーん。そうなんだ」
コイツ・・・
人の別れ話なんか聞いて
どうすんだ?
「でも、クルミちゃんは
本当に別れたいと
思っていたのかな?」
「は・・・?
それどういう意味だよ?」
「いや、本気で別れたいのなら、
別れた後あんなに
後悔してたかなって」
聞けば、クルミは
別れ話を切り出した後、
屋上にいたソノマのもとに
向かったらしい。
それをたまたまユアンが
目撃していたとのこと。
そういえば、昨日
別れようといった後、
なぜか泣きそうになっていたな。
あれはどういう意味なんだろ?
・*。・ 1週間後 ・。*・
俺とクルミは、破局してから
一度も話したことはなかった。
それどころか、
一度も顔すら合わさなかった。
「リョウ、ちょっといい?」
またソノマに話しかけられた。
「クルミのことなんやけど・・・」
聞けば、ある日ソノマとクルミが
恋バナで盛り上がっていた時、
ソノマが俺の好きなところを
クルミに聞いたらしい。
クルミはすらすらと答えた後、
俺にも同じ質問をしてほしいと
ソノマにお願いしていた。
俺がクルミの好きなところを
答えられなかったと伝えたら、
相当ショックを受けていたとのこと。
「だから、別れたいといっていたのか」
「クルミ、ホンマは
こんなことしたくなかったんやと思う。
でも、リョウがクルミの好きなところを
答えられんかった時に、
本当は自分のことを
好きじゃなかったんじゃないかって
思ったんやって。
だったら、無理して付き合うのは
自分にとっても、リョウにとっても
苦しいだけなんやと思って、
こういう行動に出たんやと思う」
どうりで、別れようといった後に
泣きそうになっていたんだな。
クルミに申し訳ない気持ちを
持つとともに、
彼女にこんな思いをさせて
しまった自分を責めた。
・*。・ 放課後 ・。*・
その日、
俺は日直当番だった。
黒板をきれいにして、
教室の隅々まで掃除した。
「よし、これで終わりっと」
仕事が終わった俺は、
ふと自分の席に座って、
窓から見える景色を眺めていた。
燦燦(さんさん)と夕日が
教室を照らす外の景色を見ながら、
俺はクルミとの日々を思い返した。
「クルミの好きなところか・・・」
俺が好きになったきっかけは、
たしか隣の席になった時に
めっちゃ笑顔が可愛かったのを見て、
一目惚れしたんだっけ。
でも告白したときは、
「ずっと前から好きでした。
付き合ってください!」
としか言ってなかったと思う。
カレカノになってからは、
毎日2人で登校して、
長期休みに遊園地にデートしに行って、
テスト期間は俺の家で
2人で勉強してたんだよなぁ。
【笑顔が可愛い。
おねだりしてくるところが可愛い。
しっかり者なのに、
たまに抜けてるギャップが可愛い】
頭の中でクルミの好きなところを
想像しながら、
ふと気がついたことがある。
「俺、可愛いしか言ってないやん」
そんなことを思っていたら、
急に背中をポンと叩かれた。
「どうしたんだよ、リョウ。
もうすぐ下校時刻だぜ」
声の主は、ユアンだった。
時計を見ると、
仕事が終わってから
かれこれ1時間半近くたっていた。
「よし、帰ろうか」
教室を出て学校を出ようとした時、
あるポスターを目の当たりにした。
「そういえば、
もうすぐ学園祭か・・・」
うちの学校の学園祭は、
毎年土日関係なく
10月31日にやるのがお決まり。
「あれ?」
見ると、今年はなぜか日付が
11月4日になっていた。
「あぁー。なんか今年は、
学校設立50周年だから、
学園祭も2部制でやるってさ」
「2部制って・・・
じゃあ今年は11月なん?」
「今年は11月3日と4日に
やるらしい。
あと4日は、なんかテレビの取材が
来るらしい」
「テレビの取材?」
「ほら、テレビでやってた、
未成年の何とか・・・ってやつ。
あれをうちの学校でやるらしい」
「へぇーそうなんや」
そういえば、あれって
屋上で何言ってもいいんだっけ。
俺も応募してみようかな・・・
・*。・ 文化祭の日 ・。*・
今日は学園祭の2日目。
昨日は学生と
一部の学校関係者のみということで、
ほぼ非公開だったが、
今日は学校のメモリアルイヤーということ、
さらにはテレビ取材もあるということで、
例年の倍近いお客さんで
あふれかえっていた。
「いやー! にしても
すごいお客さんじゃねぇか」
俺の隣でテンションMAXのユアン。
それもそのはず、この間
彼女ができたらしい。
「あぁ、そろそろ
例のイベントの時間だよな」
「なんだよリョウ(笑)
めちゃくちゃ緊張してるやん」
「うるせーな(笑)」
そう、これから行われるイベントに、
俺も立候補している。
「クルミ・・・
俺の思いが届いてくれ・・・!」
心の中でそうつぶやいて、
俺はユアンと別れた。
「皆さーん、こんにちはー!
生徒会長の工藤唯愛です!」
「副会長の八神遼介です!」
「皆さーん!
文化祭楽しんでますかー!?」
「イェーーーイ!」
「さぁということで、
大盛り上がりの文化祭ですが、
ここからは今日のメインイベント、
未成年の宣言をやりたいと思います!」
「今日はテレビカメラも
入っているということで、
多くのお客さんが
ステージに集まってくれましたね」
「ちなみに、八神くんは
何か宣言したいことはある?」
「そうですねー。
えーっと、あのー、
特にないです(笑)」
「ないんかい(笑)」
「さぁ、ではさっそく、
始めていきましょうかね!」
この「未成年の宣言」は、
宣言したいことがある人が
1人ずつ屋上に立ち、
普段言えないことや
この際言っておきたかったことなどを
大声でいう、とある番組の企画の
パロディ版である。
そして俺も立候補して、
なんと順番は最後になってしまった。
「今からー、
全力で
クレヨンしんちゃんの
モノマネを
やりたいと
思います!」
「僕はー、
この学校の
どうでもいい話を
したいと思います!」
そんなこんなで
1人ずつ宣言していき、
気づけば俺の順番が回ってきた。
「それでは、最後の宣言者、
黒澤諒くん、お願いします!」
工藤さんの司会に促され、
俺は壇上に上がった。
会場は人でいっぱいのはずなのに、
そこにいるクルミを、
俺はなぜか一発で見つけた。
「えー今日は、
11月4日、
いい推しの日ということで、
俺は最愛の推しに、
言いたいことが
あります!」
「なーにー?」
「俺は今まで、
ずっと一緒にいて、
何1つ彼女の好きなところが
見つけられませんでした。
だから、
この間フラれて・・・
でもあれから、
彼女の好きなところを
ずっと考えていました。
優しいところ、
真面目なところ・・・」
そこで俺は1つ、
深呼吸をした。
「いやでも、
やっぱり1番好きなところは、
笑顔が可愛い、
おねだりしてくるところが可愛い、
しっかり者なのに、
たまに抜けてるギャップが可愛い、
俺は彼女のそんな可愛いところが、
ずっと大好きです!」
そこで俺は、
クルミの方をまっすぐに見た。
「クルミ!
俺はクルミのことが好きだ!
だからもう一度、
俺と付き合ってくれ!」
全力で言い切って
悔いはないはずなのに、
返事を聞くのが怖すぎて
下を向いていた。
しばらく
無音の時間が流れ、
「あぁ・・・
やっぱり無理かもな」
と、心の中で半ばあきらめかけた
次の瞬間
「リョウくーん!
私もリョウくんのことが
好きだよ!」
クルミの返事があった直後、
海上から割れんばかりの悲鳴と
歓声と拍手が巻き起こった!
「えっ・・・!?」
一瞬信じられなかったが、
クルミがOKしてくれたことだけは
分かった。
うれしさのあまり、
自分でもなんと表現していいか
わからない気持ちが込み上げてきた。
壇上からおりた俺は、
一目散にクルミのもとに駆け寄った。
「クルミ・・・あの・・・」
「リョウくん、
かっこよかったよ!」
「えっ・・・?」
「私、変なことで意地張っちゃって、
ソノマにそのことを指摘されて、
あんな行動に出たのを後悔してたの」
「そうだったんだ・・・」
「リョウくん、モテるでしょ?
だから、もう付き合えないかな・・・
って思ってたの」
「バカ。
俺が好きなのは、
クルミだけだよ」
「うれしい!」
「じゃあ改めて、
俺の彼女になってくれませんか?」
「はい!」
今までで1番の笑顔で、
クルミは答えてくれた。
「おめでとう!」
その瞬間、どこからか
聞き慣れた声が聞こえてきた。
ソノマとユアンだった。
「リョウ、お前かっけーよ!」
ユアンにそう言われ、
恥ずかしさのあまり
言葉が出なかった。
「まったく・・・
最初から両想いなんやから、
2人で話つけてくれば
よかったのに(笑)」
半ばあきれた感じではあるが、
ソノマも祝福してくれた。
「ありがとな、ソノマ」
ふと俺は、気になったことが
あったので聞いてみた。
「そういえば、
どうして2人でおるん?」
「あれ?
言ってなかったっけ?
俺たち、この間から
付き合ってるんだけど」
「マジで!?」
まさかユアンとソノマが
いつの間にか
付き合っていたとは・・・
「じゃあさ、これから
ダブルデート行こうぜ!」
「全部リョウのおごりでね(笑)」
「おい(笑)
ちょ、待てよソノマ」
「やったー!」
こうして、俺たちは
ダブルデートに行くことにした。
「ねぇ、リョウくん」
「どうした、クルミ?」
「私たち、これからもずっと
一緒にいようね」
「当たり前だろ。
俺はクルミのことが
好きなんだから」
改めて、俺の彼女は
世界一可愛いと思ったのだった。
~終わり~
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。