マッスル
作者:M
ニコラ学園・・・
それは日本有数の
名門超能力学校。
私、崎浜梨瑚は
そんな学校では
異端と言っていい存在だった。
「うわっ、でた。ゴリラ女」
「知ってる?
あの子の超能力値
0ですって」
「ええっ、どうやって
入学したんだよ」
「コラっっ、そこっ!
聞こえてるから!!」
ヒソヒソ話すエリートのグループ、
十文字さんたちにガンを効かせたのは、
親友の心花。
「あー、慣れてるからいいよ・・・
でもゴリラは好きだから
ゴリラ女は気に入ってるけど」
「でも、あーゆのよくないっ」
「・・・っって、それより見て!
今井くんだ!」
窓から見かけた彼に、うれしくて
思わず机に手を打ちつけると、
バキッッという音と共に机が割れた。
「・・・やっちゃった」
・・・そう。
私には超能力の才能はない。
その代わり、
この怪力があった。
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俺、今井暖大。
超能力ランキング5位。
・・・俺には、密かに
憧れている人がいる。
彼女の名は、崎浜梨瑚。
(なんだよ、ゴリラ女って。
女の子につけるあだ名じゃないだろ!
というか、崎浜さんは
マッスルでマッスルであとマッスルで・・・
かっこいいんだぞ!!!)
心のうちの思いは
秘めたまま。
俺は、ひっそりと
崎浜さんを見守る日々を
送っていたが・・・
突然、その転機は訪れた。
(なっ、なんだってー!?)
そのとき、俺は
廊下を歩く崎浜さんを
木の陰からそっと
見守っているところだった。
「でも、ゴリラ女の私なんて
きっと眼中にもないだろうし・・・」
「でも!
梨瑚は好きなんでしょ、
今井くん」
「うん」
(さ、さささささ崎浜さんが・・・)
俺のことが好き!?
「きっも、今の聞こえた?」
次の瞬間、背後から響いた声。
・・・十文字陽菜。
超能力ランキング・・・1位。
と、その取り巻きたち。
「ゴリラが恋だって!
ドラミングでもして迫るんじゃない?
ってか、今井くんととか・・・
もしかして身分相応って
言葉も知らない?」
取り巻きたちが崎浜さんを
馬鹿にしたように
くすくすと笑いをもらす。
「なんですって!?」
かっとして言ったのは
崎浜さんの親友、
有坂さんだった。
「心花。いいよ。
・・・私がゴリラみたいな・・・
怪力女なのは事実だ」
何かを我慢したように
でも、気丈に笑顔で
崎浜さんは言う。
「十文字さんみたいな・・・
才能ある可愛い子の方がきっと
今井くんは・・・」
「ちがーう!!!!」
「えっ!? い、今井くん!?」
「嘘!」
思わず木の陰から身を出して
ツッコミを入れてしまった俺は、
驚くみんなに盛大に慌てた。
「あっこ、これは!
別に崎浜さんを見守ってて
話も全部聞いてたとかじゃなくて!!
・・・あ」
「私を・・・見守ってた?」
崎浜さんの声で、
完璧に失言をしてしまったことに
気がつく。
(・・・でも、もう今しか
チャンスはないんじゃないか)
崎浜さんが、俺のことが好きだと
さっき、偶然(?)にも
知ったことを思い出し、
少し心が落ち着く。
俺は、覚悟を決めた。
「崎浜さん。
・・・ずっと、好きでした!」
「えっ」
固まった次の瞬間には
ボロボロと泣き出す彼女に
俺はうろたえる。
「でも・・・私、
落ちこぼれのゴリラ女だよ・・・?」
「そこが好きなんだっ!!」
「・・・え?」
「マッスルでカッコよくて・・・
俺なんか、超能力なかったら
ただのヒョロヒョロだし・・・
めっちゃ憧れるし、尊敬するし
でも、可愛いところもあって・・・
最っ高で最強でうらやましい!」
梨瑚は、今井くんの言葉を
信じられない思いで聞いていた。
(そんなこと、
初めて言われた・・・でも)
「うれしい・・・!!
私も、ずっと・・・
今井くんが好きでした!」
「おめでとー! 梨瑚!」
心花が私に飛びついてきた。
「・・・なによ。
あんた達、もう行くわよ」
十文字さんは、居心地悪そうに
取り巻きを連れて去っていった。
落ちこぼれでも!
ゴリラでも!
怪力でも!
それでも、いい!
だって、私はマッスルで
カッコいいんだから!
*end*
※掲載されている物語はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。