君のおかげで・・・・・・
作者:苺
彼女はストックを持ち上げ、
最後の力を振り絞り、
ゲレンデを滑った。
☆★☆★ 去年・1月 ☆★☆★
今井ハルト。
中学2年生。
スキー歴10年。
父親の勧めで
4歳のころから
スキーをしている。
俺が通う新潮学園は、
スキーで有名な中学校。
俺はここで
寮生活をしている。
?「ハルト君」
・・・。
ハルト「ヒマリ。どした?」
やたら俺に近づいてくる
国本ヒマリ。
でも、くどいわけでもないし、
いい友達だ。
ヒマリ「あのさ。・・・」
ハルト「どうしたんだよ」
そういえば、
最近部活来てないよな。
ヒマリ「付き合ってくれないかな」
いつもは透き通るくらい白い
ヒマリの顔が、
真っ赤になっている。
ハルト「何で俺?」
意味が分からないので
聞いてみた。
ヒマリ「わかってない。
ハルト君がカッコいいからだよ」
ハルト「カッコいいなんて
初めて言われた」
これはガチ。
ヒマリ「早めに答えだして」
早めに?
ハルト「どうしたんだよ。
それだけか?」
ヒマリ「今は言えない。
言いたくない」
・・・・・・。
何か隠してるのか?
ヒマリ「ご、めん」
ハルト「それより部活来いよ!
男子エースの俺が来ても、
女子のエースが来なきゃな!」
ヒマリが少し微笑んだ。
それを見るとホッとする。
ヒマリ「今日は、
・・・行こうかな?」
ハルト「待ってるよ」
ヒマリは自分の席に着いた。
『今は言えない。言いたくない』
何で俺に隠し事するんだよ!!
☆★☆★ ニコラスキー場 ☆★☆★
ハルト「よっしゃー! 滑るぞ!!」
?「遅れてすみません」
ニット帽から
長い髪がすっと見える。
ハルト「ヒマリか?」
ヒマリ「う、うん!
さぁ、滑ろうよ!
ひ、久しぶりだしさ!」
なんだか
無理をしているように
見えた。
・・・・・・30分後。
ハルト「先生、どうしたんですか?」
先生「国本が、救急車で運ばれた」
ヒマリ・・・
どうしたらいいんだ・・・・・・
先生「まぁ、病気だしな」
ハルト「病気、マジかよ」
スキー板を外し、
スキー靴で走った。
走りにくいなんて関係ない。
ヒマリ・・・・・・
☆★☆★ 病院 ☆★☆★
『国本さんなら、
3階の333号室ですね』
ここか・・・・・・
ガラっ!!
ヒマリ「グスッ。ハルト。
あっ、ごめ・・・・・・」
ギュッ。
ハルト「何で言わねーんだよ!
心配するじゃねーかよ!!」
ヒマリ「ごめん・・・・・・」
後から事情をきいた。
ヒマリは、あと数日しか
生きられない。
余命は、1週間。
ガンは、
見つかった時には末期。
それでも、頑張って
学校に来ていた。
給食も無理して
食べていた。
ヒマリ「ごめん。隠してて」
ハルト「ヒマリ。好きだ」
ヒマリ「えっ・・・」
ハルト「俺のこと、転校生なのに
受け入れてくれただろ。
ヒマリしかいないんだ」
ヒマリ「それは友達が少ないから」
ハルト「ばか。
それでもうれしいんだよ。
いいだろ? 付き合おうぜ!」
ヒマリ「グスグス・・・・・・うん」
スキーウェアは汚れていて、
スキー靴はぼろぼろだ。
でも、それでもいい。
あと数日でも、
楽しく生きてほしい。
そして、共に生きたい。
☆★☆★ 次の日 ☆★☆★
学校をさぼって、
病院に行った。
ヒマリ「ちょっと! 学校は!」
さすがにヒマリも
びっくりしていた。
ハルト「なぁ、」
ヒマリ「あのさ」
・・・・・・。
ヒマリ「ハルトからいいよ」
ハルト「言いたいこと言えよ。
わがままも聞いてやる」
・・・・・・。
ヒマリ「スキーしたい」
ハルト「スキー?」
ヒマリ「私さ、小学生のころ、
日本一になったことがあって。
それが理由で恨まれるようになったの」
それが友達のいない理由か。
ヒマリ「そっから、
スキーしかないって思った。
だから、死ぬときはゲレンデがいい。
私はすごいんだぞって、
見返してやりたい」
ハルト「できるよ! 絶対!!」
そして作戦を練った。
☆★☆★ 当日 ☆★☆★
もう、余命宣告から3日。
本当は立てなくなっても
しょうがない時期なのに。
ヒマリ「リフト、一緒に乗って!」
病院のヒマリとは大違いで、
はしゃいでいる。
ハルト「リフト代おごってやる!!」
俺らはリフト券を買って
リフトに乗った。
音楽がきこえてた。
西野カナの
『Dear…』だった。
ヒマリ「いつまでも2人でいたい。
ね?」
ハルト「うん、そうだな」
歌詞が心に響いた。
逢いたくても
会えない時が来る・・・
この曲とは真逆だろう。
でも、2人だけの恋をしたい。
ヒマリ「着くよ?」
リフトを降りると、
真っ先にヒマリは
上級者向けのコースに行った。
俺でも追いつけないくらい、
速かった。
ヒマリ「ハルト君! 遅いですよ!
部長しっかりして!!」
そんなことを言われながら
楽しんだ。
○。。・☆。。○。。・☆。。・○。。・☆。。○。。・☆。。○
すっかり夕方になっていた。
ヒマリはくたくたになっていた。
ヒマリ「滑りたい。
あと1回残ってる」
ハルト「ムリすんなよ!
体のほうが・・・」
ヒマリ「私にはスキーしかない」
目が輝いていた。
そんなヒマリの言葉を
受け入れた。
ハルト「立つの、手伝うか?」
ヒマリ「日本一は立てます!」
彼女はストックを持ち上げ、
最後の力を振り絞り、
ゲレンデを滑った。
その姿は輝いていた。
☆★☆★ 5日後 ☆★☆★
――――――――――――――――――――――
ハルト君
今までありがとう。
私の大好きな人。恋人。
あなたに出会えて幸せでした。
誰とも話せなかったつまらない生活から
抜け出せました。
すべてはあなたのおかげです。
私はとても幸せでした。
あの時、ハルト君がスキー場から
駆けつけてくれたこと
たくさん話したこと
あなたと出会えたこと
ありがとう。
国本ヒマリを忘れないでください。
ちゃんと! 新しい彼女つくってね!
私よりもずっとかわいい、ね?
ヒマリ
――――――――――――――――――――――
こんな時まで・・・・・・
俺のことばっか。
お前よりかわいいやつなんて
いるわけねーだろっ!!
ヒマリ母「これがヒマリの望みだから。
これ、受け取ってくれますか?」
プリクラ。
ヒマリとスキーの帰りに
撮りたいって言われてな。
撮ったよな。
全部あげたのに。
ヒマリ。
ありがとう。
☆★☆★ 全国大会 ☆★☆★
「ただいまより・・・・・・」
リフト券を入れるケースに
プリクラを貼った。
ヒマリを見てると
頑張れる気がする。
「今井・・・ハルト・・・
新潮学園・・・」
3.
2.
1.
0
サ――――――――ッ
俺、ヒマリのために
精一杯生きるよ。
サ―――――――ッ
『ハルト! ハルト!』
少し横を向いた。
ヒマリ!!!!
『がんばれ』
・・・ありがとう
前を向いた。
思いっきり滑った。
ヒマリ、
俺。頑張るから。
ずっと
見守っててほしい。
・END・
*ニコ学名作リバイバル*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。
今井暖大
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