おたがいに。
作者:みさみさ
キーンコーンカーンコーン
学校の終わりを告げる
このチャイム。
私は、このチャイムを
聞くたびに、
憂鬱な気分になっている。
「部活、遅れるぜ!
早く行こーよ!!」
「美術部の課題
やってきたー?
うちはねー・・・」
と、部活に忙しい人も
いれば、
「ねー! ねー!
今日、渋谷いかない?
新しいショップ入ったんだって!!」
「帰りにスタバ
寄ってこーよ!!」
と、いきなり学校モードから
放課後モードへ
切り替える人たち。
「ごめんね!
今日塾なんだ・・・!」
「英語の日なんだ・・・!
また今度にしない?
ごめんね!」
と、学校で勉強をしているにも
かかわらず、さらに勉強をする
とても優秀な人たちもいる。
私はその中の1つにも
入っていない・・・
ひまなわけではない。
塾へは通っていない。
これはテストで
順位が5位以内だった場合。
今のところ平気そうだ。
私の友達はみな、
部活に友情に・・・
と忙しい。
習い事もしていない。
前はピアノを習っていたが、
月謝が5万と高いため、やめた。
家に帰ってすることといえば、
テストのための復習と予習を
1時間。
長時間やっていると
頭に入ってはこない。
だから1時間で
済ませている。
そのあとは
趣味のピアノを弾いて、
終わり。
ピアノは別にやらなくてはならない、
というきまりは、見つけようにもない。
だから、その日の気分だ。
みんなずらずらぁーと
帰ったり、
部活へ向かう仲間たち。
もう帰ろうか悩んでいる。
私は、優柔不断だ。
服を決めるのに
1時間かかったこともある。
まぁ、前の話。
今となっては、
ただの笑い話。
「ナツミちゃぁーん」
ナツミ「どうしたの?
河村さん」
この子は、河村カホさん。
クラスでもNo.1モテる。
これは・・・いや、
クラスどころではない。
学校で1番モテているに
ちがいない。
背は私よりも少し低いが、
みんなが憧れる体型をしている。
おまけに顔は・・・
もっとすごい。
誰もが見入るような
パッチリした二重。
鼻はすらーっと高く、
うるうる唇。
爪も綺麗だ。
ピッカピカ。
河村さんの良いところを
書いたとするならば、
ノート1冊は軽々こえるだろう。
と言えるくらい優しい。
クラスの人気者だ。
「あの・・・髪の毛
結び直してほしいんだけど・・・」
いつもは自分で
やってるのに・・・
あ、そうだった。
ナツミ「河村さん、
左腕骨折してるんだったね・・・」
痛々しい。
グルグル巻き。
ギプスはとれそうにない。
1週間前、河村さんは
誰かに突き飛ばされた。
今だ、その犯人は
おおやけになってはいないが・・・
クラスのひとたちは
誰が犯人かは
とっくにわかっている。
C組の中山アヤカ。
かの有名な
中山財閥の1人娘で
かつて学校一のモテ女だった。
「かつて」・・・ね。
河村さんが、
学校一モテる男という
河島エイトと付き合い始めた。
またたく間にそれは広がって
中山さんはトップから墜落した。
墜落はいいすぎだが。
「・・・うん。
でもいいや! じゃあね」
ナツミ「ううん! やるよ!」
河村さんは、
とっても可愛い笑顔で
椅子に腰掛けた。
ナツミ「どんな髪型に
すればいいかな・・・?」
カホ「ナツミちゃんが決めてよ!
なんでもいいよ!」
私のヘアスタイルは
基本的にポニーテールだが、
河村さんには似合わない。
編み込みとか・・・?
まぁいいや。
編み込みにしちゃお。
いまいち流行に乗れない私だが、
友達のやっていた
「編み込みカチューシャ」なるものを
やることに決めた。
そんな難しいものでは
なかった。
河村さんは、
春でも
夏でも
秋でも
冬でも
自分磨きはおこたらない。
と言わんばかりの様子だ。
カホ「ナツミちゃんありがと!!
とっても上手だよ!」
ナツミ「ありがと・・・!
じゃ、じゃあ、私いくね!」
カホ「あ、あの!
お願いがあるんだけど・・・」
ナツミ「な・・・なに?」
カホ「探ってほしい人がいるの・・・
どういうことなのか・・・って」
どういうことなのか・・・
って。
意味がいまいち
わからない。
ナツミ「うん・・・って、
なんで私?」
カホ「ナツミちゃん、暇そうだし・・・」
暇そうだし・・・か。
心にぐさっときたが
実際のところ図星だ。
ナツミ「わ・・・わかったよ。
で、誰?」
カホ「懸樋オオゾラ・・・って
言うんだけど・・・」
ナツミ「懸樋君のこと?」
カホ「そう。
なんか・・・最近、
元気なくって・・・」
ナツミ「幼馴染とかなんか?」
カホ「うん、幼稚園からの・・・
だけど、1回悲しいことが
あってね・・・」
ナツミ「悲しいこと・・・?」
カホ「オオゾラ、5年前・・・
両親を事故で亡くしちゃって・・・
なんか変わっちゃったのよね」
ナツミ「わ、わかった!
探ってみる、明日から!」
カホ「そう言ってくれると思ってた!
ありがと! ナツミちゃん」
そのまま私は教室をでた。
―― 翌日@放課後 ――
時間は、止まっては
くれない。
とうとう来てしまった。
そう、放課後。
探るって
言っちゃったけど・・・
何、すればいいのかな。
まず、話しかけるか!
ナツミ「懸樋君!
サッカーボールのキーホルダー
知らない?」
女子なのにサッカーボールとか・・・w
と散々、笑われたが
私はサッカーが好きだ。
やるわけではない。
見るがわだ。
でも、サッカー観戦が趣味と
言えるほどのものではない。
オオゾラ「サッカーボールか・・・
や、違う。しっ知らねーよ!
あっち行けよ!!」
いきなり
冷たく返されて・・・
意気消沈。
下駄箱のかげから
のぞくのは・・・
やっぱ、河村さん。
ナツミ「そっ、そーだよね!
ごめんね! なんか・・・」
オオゾラ「ちっ、違うよ!」
そんな声が聞こえたが、
私は河村さんのところに
ダッシュした。
ナツミ「あの・・・
懸樋君って、何が好きなの?」
カホ「サッカーだよ!
だからさっきの
やってくれると思ったんだけどなぁ」
なるほど・・・。
懸樋君はサッカーが
好きなんだ!
ナツミ「好きな選手とかは、
いるのかな・・・?」
カホ「日本代表は、
内田レン選手で・・・
ニコーラ・ニコラ選手も好きだよ?
あ、ニコラ選手は外国なんだけど・・・」
ナツミ「本当?」
私、どっちも好きなんだ!
ってなに熱くなってんの?
私。
もう・・・。
よし!
もう1回話しかけよ!
あ!
校門出ちゃってる!
急がなくちゃ。
ナツミ「懸樋君ー! きゃぁ!」
ズコッ。
わ・・・///
恥ずかしいぃ・・・
いやいや、
目を開けると・・・
幸い、懸樋君しか
いなかった。
いや、幸いではない。w
オオゾラ「ったく、
危なっかしいんだよ!」
ナツミ「ご・・・
ごめんなさい・・・」
オオゾラ「それより、
キーホルダーあったの?」
ナツミ「あ! うん!
ありがとう!」
オオゾラ「何がありがとーだよ」
ナツミ「ね・・・ね、ね、ぇ!
聞きたいんだけど・・・
内田選手と、ニコラ選手・・・」
私が、この2人を好きか
言い終える前に懸樋君が。
オオゾラ「お前、好きなのか??
この2人・・・おい!」
ナツミ「うん! 試合とかも
見に行くんだ!!」
オオゾラ「ま・・・まじで!
俺も!
意気投合だな! 俺ら!」
ナツミ「うん! 嬉しー」
あ、なに言ってんの。
これは依頼なんだから。
―― 2週間後 ――
私と懸樋君は
さらに仲良くなり、
サッカーのこと
話したり・・・
一緒にグッズ
買いにいったり・・・
それが楽しかった。
でも河村さんに頼まれた、
なんで性格変わっちゃったのか
ってこと。
何1つわかってない。
今日、聞いてみよう。
オオゾラ「ナツミー! 帰ろーぜ!
あのな? 内田がな?」
ナツミ「ねぇ。懸樋君。
聞きたいことがあるの・・・」
オオゾラ「なに?」
ナツミ「なんで、
性格変わっちゃったの?
ご両親が亡くなったから・・・?
教えてよ・・・」
懸樋君の顔は、凍りついたように
動揺し始めていることが
見ているこっち側でもわかった。
オオゾラ「ふざけるな。
ちょっと仲良くなったからって
調子に乗んなよ!
ぜってぇ教えねーから!」
・・・え?
教えてくれると
思ったのに。
自然に涙が出てきた。
ナツミ「そ・・・そうだよね!
ひっく・・・ごめんね・・・」
靴に履き替えて
急ぎ足で校門から出た。
もう聞かなきゃよかった。
一生、この関係
続けたかったのに。
ごめんね。懸樋君。
もう関わらないように
するね。
ばいばい。
そう心に誓った。
急ぐと鍵はあかない。
涙が落ちる指。
悲しみからくるその震えを
左手で押さえながら
鍵を開けた。
*・*・・・*・・・*・*
自分の部屋。
やっぱり落ち着くんだ。
机の上には、勉強道具や
サッカー選手の写真が入った
写真立て。
意外と整っている。
その机の上に
同じサッカーボールの
キーホルダー。
おそろいで買った
選手のタオル。
色違いで買った
サッカーのボールペン。
他にもシャーペン、
消しゴム。
定規とか。
懸樋君のものは
全て自分の身の周りから
離した。
目に入ると、きっと
苦しくなっちゃうから。
そして写真立ては
ふせた。
もう忘れよう。
でもその前に
河村さんに報告しないと。
最後の仕事だ。
はぁ。
なんでだろう。
なんでこんなに
悲しいんだ。
涙が止まらない。
やっと気づいた。
私の大切なひとを。
―― 翌日 ――
廊下ですれ違っても
授業中、目があっても
どうしても
話しかけられない。
私は話しかけづらいから、
小さい紙切れにメモして
わたした。
――――――――――
放課後、
屋上きてください。
待ってるね。
ナツミ
――――――――――
そういう手紙。
―― 放課後 ――
風のふく屋上、
だけどとても暖かい。
ガチャ。
少し気に障る、
この扉を開く音。
懸樋君がくるから
敏感になっているだけかも
しれない。
今、入ってきたのは・・・
案の定、懸樋君だ。
オオゾラ「話って・・・」
ナツミ「今までごめんね。
しつこくして。もう終わろう」
オオゾラ「待ってくれ。
親のことだって話す。
だから行かないでくれよ」
ナツミ「・・・え?」
オオゾラ「俺の親は・・・5年前、
不慮の事故で死んだ。
親のいない子って
同情されたくなかったんだ」
ナツミ「・・・だから、
変わっちゃったの?」
オオゾラ「冷たくすれば、誰も
関わらないと思ったから・・・」
ナツミ「違う、絶対、違うよ!
みんな同情なんかじゃない!
つらいとき、支えあうのが
うちらのいいとこじゃん!」
オオゾラ「支えあう・・・か」
少し、気持ちが
楽になった。
ナツミ「もう1回・・・
やり直そうよ・・・?
それに私、オオゾラのこと・・・」
オオゾラ「好き」
ナツミ「え?」
オオゾラ「俺、気づいたわ!
今までどれだけナツミが
大切な存在だったかって」
ナツミ「うん」
―― 1週間後 ――
私は、オオゾラ君のこと
全て書いたメモ帳を渡した。
河村さんに。
あ、お互い名前で
呼ぶことにしたの。
書いたことは・・・
一気飲みが
得意なこととか、
サッカーへの情熱とか、
でも、私が最後に
触れたのは、
どうして性格が
変わったかってこと。
同情されたくなかった。
そう記して、
河村さんに渡した。
カホ「これで解決だね」
ナツミ「何が?」
カホ「私は全部
わかってるのよ?」
そう意味深な言葉を残して
帰って行った。
河村さんは手のギプスも取れ、
中山さんと和解し、
普通の生活を送れている。
河村さんと中山さんは
お互いの友情を深め、
さらに強くなると言う決断をした、
と言っていた。
私とオオゾラは
お互いに愛を受けとめ、
支えあって、たがいに
たがいのことを補っていく
と言う決断をした。
これは
愛と友情の物語。
☆END☆
*ニコ学名作リバイバル*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。
佐藤 菜月海

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