運命の恋物語 ~時を超えた約束~
作者:すぅー
あたし、白水ヒヨリ。
ニコラ学園に通う、
ごく普通の中学2年生。
ある日の放課後、
あたしは校舎裏の壁に
見たことのないドアを発見し、
好奇心から、そのドアを開けた。
その瞬間、あたしは、
気を失ってしまった。
目を開けるとそこには、
いつ時代なのかはわからないが、
みんなが着物をきていて、建物も古く、
2023年ではないことは容易にわかる。
「あたし・・・
学校に居たはずじゃ・・・。
ここどこ? タイムスリップ?」
そんなことを考えていると、
後ろから、
「そんなところに座り込んで、
どうした? 大丈夫か?」
という声が聞こえた。
その声の方を向くと、
着物姿の男の子が立っていた。
「わしは、タスク。
あんたの名はなんだ?」
「ヒヨリ・・・白水ヒヨリ・・・
14歳です」
内心(わしって・・・笑)
と思いながらそう言うと、
タスクと名乗った男の子は、
「年まで聞いてないけど!!笑
ちなみにわしは16!」
と、ニカッと笑って言った。
そんなタスクの笑顔に
単純なあたしは、
恋に落ちてしまった。
それが、タスクとの
運命の始まりだった。
「・・・ところで、ヒヨリは
面白い服を着てるな」
あたしを立たせながら
タスクが言う。
「え・・・?」
あたしが着ているのは制服。
でも、ここの時代の人たちは、
みんな着物を着ている。
「この時代の人たちにとって
制服は、面白い服なのか・・・」
そんなことを思っていると。
「それじゃ動きにくいだろ。
わしの妹の着物を貸してやるから、
それを着な」
と言うと、タスクはさっそく、
あたしを家に案内してくれた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
タスクの家に入ると、
1人の女の子がいて、
タスクはその女の子に、
「着るものを貸してやってくれ」
と言った。
その女の子は、
快くあたしに着物を貸してくれて、
「うちは、ヒメノ!
14歳だよ! よろしく!!」
と笑った。
その笑顔がとても可愛らしくて、
あたしもつられて笑って、
「あたし、ヒヨリ。よろしくね!」
と言った。
それから、ヒメノちゃんと
少ししゃべっていると、
あたしはとんでもないことに気づいた。
そう。
泊まる家がないのだ。
あたしはタイムスリップしてきたから、
いつ帰れるかも分からないし、
もしかしたら、帰れないかもしれない。
そんなあたしに、タスクが、
「ヒヨリ、おまえ家はどこだ?
送ってやるぞ?」
と言う。
あたしは正直に、
「家はないの」
と言った。
タスクは明らかに
「なにいってんだ?」
と言うように、
「え?」と言った。
「じゃあ、ウチに
泊まればいいじゃない!
ヒヨリがいれば、うちも楽しいし!
ね? お兄ちゃん、いいでしょう?
お願い!」
と、ヒメノちゃん
両手を合わせて言う。
「いいけど・・・」
タスクはしぶしぶ
OKしてくれた。
そして、
「ヒヨリはヒメノと一緒の部屋な」
と、笑って言った。
「じゃ」と言って、
家の奥に消えるタスクを見ながら、
ヒメノちゃんに、
「タスク、どこ行くの?」
と聞いた。
「明日のお店の準備だよ」
と言うヒメノちゃんに、
「お店の準備!?
お店なんてやってるの?」
と、思わず大声で言ってしまった。
「うん。煎餅屋だよ。
うちは、お兄ちゃんが
明日のお店の準備をしてるうちに、
夕食の準備をするんだ」
と、ケラケラ笑いながら、
ヒメノちゃんが言った。
「あたしも夕食の準備
手伝ってもいいかな?」
「もちろん!」
あたしの問いに
ヒメノちゃんは笑って答えた。
~夕食~
タスクが煮物を一口食べて。
「この煮物、
ヒヨリが作ったのか?」
「え? うん」
「まずい」
「え!? 嘘?」
「ちょっと! お兄ちゃん!」
「嘘だよ。うまいじゃん!!
料理上手だな」
と、笑って言ってくれた。
その笑顔があたしの鼓動を
速くさせる。
「ありがとな」
タスクはそう言って
微笑んだ。
~ヒメノちゃんの部屋~
「ねぇねぇ、ヒヨリって、
お兄ちゃんのこと好きなの?」
「え!? ・・・うん」
「やっぱり!?
そうだと思ったんだよねー!
応援するよー!!」
「ほんと? ありがとう」
「さっそく、明日、
お店の手伝いして、
好感度アップだ!」
「うん!!」
~次の日~
「いらっしゃいませー!!」
「らっしゃい、らっしゃーい!」
「前川屋の煎餅いかがですかー!?」
あたし達は
朝から煎餅を売ってるけど、
まったく売れる気配がない。
「あー!!
なんでいつも売れないんだよ!」
休憩中にタスクが
そんなことを言った。
あたしはタスク達のために
出来ることはないか考えた。
「あ!! そうだ!
ねぇ、タスク!」
あたしは声をあげた。
「ん?」
「ビラ! ビラ配りすれば
いいんじゃない!?」
「ビラ?」
「そう!」
「ビラを配って、客足を増やすの!!」
「あぁー!! いい考えだな!!」
「じゃあ、
うちとヒヨリでビラ作りをして、
その間、お兄ちゃんは店番。
で、明日の定休日に
3人でビラ配りしようよ!」
と、ヒメノちゃんが言った。
「いいね」
「いいな」
タスクとあたしは
ハモって言った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
それからあたしたちは
ビラを作って、
次の日、町に配って回った。
そんなビラ配り効果なのか、
格段に客足が伸びた。
「これなら、前川屋も
しばらくは安泰だな!!」
「うん! 良かったー」
「ヒヨリ、ありがとな」
そう言って、
あたしの頭をポンと叩いた。
《・・・タスク、あなたが好きです。
・・・でも、いつか、現世に帰る時が来たら、
会えないんだよね・・・》
そう思うと、
告白なんて出来ないよ・・・。
~次の日~
「ヒヨリ、これやる」
「何これ?」
「今日、あっちの店で見つけてな。
いつも、助けてもらってるから、お礼」
それはピンクの
数珠玉ブレスだった。
「・・・ありがとう」
「・・・ヒヨリ、泣くな」
嬉しくて涙が止まらなかった。
「今日、ヒメノが寝た後、
店の前に来て。
ヒヨリに話がある」
「・・・わかった」
~夜~
「タスク、何?」
「・・・わしは、ヒヨリが好きだ」
「え?」
「ヒヨリはわしのこと嫌いか?」
《そんなわけないじゃん》
「でも、あたしは
この時代の人じゃないよ?
未来から来たんだよ?」
「それでも、ヒヨリが好きなんだ」
涙が出てきた。
「あ・・・
あたしもタスクのことが・・・好き」
そう言った瞬間、
あたしの足が消えかけていることに
気づいた。
「・・・タスク、あたし、
未来に帰る時が来たみたい・・・。
もう、会えないよ・・・」
「ヒヨリ、約束する。
今度はわしがヒヨリに会いに
未来に行く」
「え?」
「絶対、会いに行ってやる。
この数珠玉を目印にして
ヒヨリを未来で見つけるから・・・
だから、待ってて」
その言葉を最後にあたしの意識は、
遠のいていった。
~現代~
「ヒヨリ! ヒヨリ!」
気づいたらそこは、
体育館の裏だった。
親友のアンナが心配そうに
あたしを覗き込んだ。
《あれは、夢だった・・・?
現代じゃ、全然時間が経ってない》
ふと、腕を見ると
ピンクの数珠玉がついていた。
《夢・・・じゃない》
「ヒヨリ・・・? 大丈夫?」
「え? あ、うん!
ごめん。大丈夫!」
「帰るよ?」
「うん!」
《・・・タスク、あたし信じてるよ。
絶対会いに来るって。
待ってるからね》
そう、心の中で空に叫んだ。
~1年後~
「はぁー・・・」
あたしは大きなため息をついた。
「タスク・・・」
あれからというもの、
タスクが会いに来る気配はなくて、
あたしのことなんて忘れてるんだと、
そんなことを考えながら
トボトボ歩いていると、
後ろから、
「ヒヨリ」
と、声が聞こえた。
その声を聞いた瞬間、
涙が溢れた。
ずっと、待ってた。
この声を忘れるわけがないよ・・・。
「・・・タスク・・・!!」
あたしは振り向いて、
タスクのもとへ駆け寄った。
「お待たせ。会いに来たよ。ヒヨリ」
「遅いよ・・・」
「ごめんな」
タスクは笑って
あたしの頭をポンと叩いた。
「ヒヨリ、これからは、
離れないからな」
「え?」
「これからは、ヒメノも一緒に
この時代の人間になるから」
「ほんと?」
「あぁ」
「タスク・・・
ちゃんと、ずっと一緒にいてね?
離れないでよね!」
「もちろん! ずっと一緒だよ。
あ、そうだ。これ。あげる」
「嘘・・・?」
タスクがくれたのは、
小さなピンキーリングだった。
「これ、どうしたの?」
「ちょっと、
そこの店にあったから、
“ずっと一緒”の印。
俺らはずっと一緒でしょ?」
「うん!」
ねぇ、運命ってあるんだね。
神様、あたしとタスクを出会わせてくれて、
ありがとう。
あたし達はこれからも
ずっと一緒です。
・・・・・・・・・・・・fin★
*ニコ学名作リバイバル*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。
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