俺と君が花開く

CAST南龍和

作者：るな

2022.11.11

立ち入り禁止の看板を
無視して屋上に出た。

雲ひとつない空。

思い浮かんだのは
コハナだった。

・＊。・　小学生の頃　・。＊・

コハナ「どうしたの？
私は、コハナだよ。
あなたの名前は？」

ルワ「俺は、ルワだよ」

コハナ「ルワくんって言うんだ。
なんで泣いてたの？」

泣いている俺を
見つけてくれた君は、
花のように
綺麗に笑っていた。

コハナ「そっかー。
なら、私と遊ぼ！」

＊・＊・＊・＊・＊・＊・
＊・＊・＊・＊・
＊・＊・

今は、どこにいるかも
わからないけど、
気持ちは変わらない。

君ともう一度会えるのが
一番の願いなのかもしれない。

でももう、
俺は限界なんだ。

ありがとう、コハナ。

ありがとう、家族。

ありがとう、この世界。

さようなら。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

ここは、
病院のベットだ。

ダメだったか。

カレンダーは、あるかな？

２０１５年！

驚いてあたりを見回すと
有坂心花という文字が見えた。

「あー」

コハナの声だ。

つまり心の声や
考え方は俺だけど、
声と体は、コハナってことか。

でもなぜ
入れ替わってしまったのだろう。

死の直後だから、
もう一度飛び降りれば
戻れるってことか。

でも、コハナの体だから
傷つけたくはない。

じゃあまず看護師さんに
どのくらいで戻れるかを
確認しよう。

そうして、
学校に行けるようになれば
俺が存在しているかが聞ける。

そういえばこの年に
コハナが倒れて
亡くなりそうになったことが
あったな。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

コハナ「おはようございます」

フタバ「コハナ久しぶり！
もう大丈夫なの？」

コハナ「うん。
元気になったよ」

誰かに聞かれると
めんどくさいから
廊下で聞こう。

コハナ「ちょっと来て」

フタバ「何？」

コハナ「この学年に
南龍和って人いる？」

フタバ「知らない。
そんな名前
聞いたことない」

まじか。

この世界に
俺はいないってことか。

どうしたら元の自分に
戻れるだろうか。

時間で解決されていくことも
あるだろうから
ちょっと待ってみよう。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

先生「じゃあ、
帰りの支度してください」

俺はロッカーの前で
立ち止まった。

どうして、俺の姿が
見えるんだ？

しかもその俺は、
みんなから
見えていないようだ。

他人の体に飛ぶような
不思議なことが
起きているんだから、
幽霊だとしてもおかしくない。

みんながいなくなったら
話しかけてやろ。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

コハナ（自分）「ねぇ」

ルワ「家に帰った後
新潮公園に来い」

コハナ「え、なんで？
ちょっと！」

一言言って
消えてしまった。

俺の幽霊がいるなら
コハナの魂は
どこに行くんだ？

何かわかるかもしれないから
公園に行こう。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

公園に足を踏み
入れると、
俺が見えた。

俺「きたか。
今から言う
２つの選択肢から選べ」

たくさん
質問したいことがあるのに。

俺「『元に戻れるが、
コハナの存在がなくなる』
『このままだが、
ルワの存在が消える』
それを来週までに決めろ」

コハナ「え。ちょっと！」

そんなの無理だよ。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

ありがとう、コハナ。

ありがとう、家族。

ありがとう、この世界。

??「まって!!」

コハナの声？

コハナ「私の話を
聞いてからにしてよ」

君はまた、花のように
綺麗に笑った。

コハナ「終わるまで
９０年くらいかかるよ」

ルワ「ずっと言いたかった。
コハナのこと好きだよ」

コハナ「私も」

～ＥＮＤ～