あたしは、ヤンキー。

CAST池端 杏慈池端 杏慈

作者:かなで

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2022.09.03

池端アンジ。
ニコラ学園3年生。
特技は喧嘩。





あたしは―――――
この学園唯一の元ヤンキー。





ひざ下20センチ以上のスカート。
ぼさぼさの髪。
ぐちゃぐちゃに着たカーディガン。





今日も、鏡の前を通り過ぎる。
オシャレなんて、無駄。
恋なんて、不必要。





それがあたしの
モットーだった。





「あ、3年3組の池端さんだ」





「なんでも、昔、十数人を
病院送りにしたとか!!」





「毎回、噂が絶えないんだよねー」





あたしが通りすぎた後の廊下を、
教室から出てきた数人の男女が
コソコソと噂する。





人を病院送りにしたことなんて、
ないのにな。





あたしは、学校でも
一目置かれている存在。
その理由は、
「池端アンジは元ヤンだから」
「近づくと呪われるから」
などなど。





昔から、友達なんかいなかった。
幼稚園のころから一匹狼の性格。





だってあたしのことなんて、
誰も気にしないんだから。





元ヤンだってだけで、
恐れられて、嫌われて、
近寄りがたくなるんだから。





もういいの。
大人になるまでずっと、
一匹狼で生きていくの。
もうそれでいいのに――――。





どうして君は、懲りなく
あたしに話しかけるの?







ガララ。





教室のドアを開けると、
明るかった教室の雰囲気が
一変した。





ああ、これが日常だ。
みんなの固い笑顔。
挨拶をしようか、しまいか、
迷ってるのがうかがえる。





いいよ。遠慮しないで。
挨拶なんて、いらないから・・・。





そんな固まった教室の雰囲気を、
壊すのはいつもアイツだ。





「池端! おはよ!」





奥から、1人の男子が歩いてきて、
あたしに話しかける。





「おはよう」





あたしがそう返すと、
アイツはニッコリ笑った。





それから、仲の良い友達に
「昨日のNステ見たー!?」
なんて話題を持ち掛けると、
教室の明るさを取り戻してくれた。





西ユアン。
あなたは、何者?





元ヤンキーという
レッテルが貼られた、
いつも孤独な池端アンジ。





友達も多くて人気のある、
いつも笑顔の西ユアン。





あたしに挨拶するなんて、
普通の人から見たら
相当勇気のいることだろう。
だって、この「THE・ヤンキー」な
容姿だから。





でも君は毎日、
挨拶をしてくれるの。
遠慮も、恐怖もない顔で。





どうして?
挨拶を返すあたしが、
どんなに小さな声だろうと、
どんなに暗い表情だろうと、
君は満足げに笑う。





ねえ、なんで?
それがあたしは、
不思議でならないんだよ・・・。





イスに座ると、
誰にも聞こえないように、
小さくため息をついた。



















○。。・☆。。○。。・☆。。・○。。・☆。。○。。・☆。。○





次の理科は移動教室だった。
チャイムが鳴る5分ほど前に、
あたしは教室を出る。





理科室は席順が
決まってないから、
早めに向かって
1番後ろの席に座る。





あたしの隣にはいつも、
誰も座らない。
それでいいの。
それが、いいの。





ガヤガヤと騒々しい音がして、
振り向くと理科室の扉の前に
3人の女の子がいた。





周りを、男子が取り囲んでる。
あの子たちは、
ニコラのトップスター3人組。





彼女たちは、
あたしと同じクラスだ。





可愛らしくて頼りがいのある
妹キャラ、中山アヤカ。
明るくて笑顔の絶えない
注目のまと、近藤アキ。
清楚で可憐な優等生
みんなのお姉さん、
佐藤ナツミ。





3人でバンドを組んでるから、
よく校内のポスターに載ってる。





みんな、本当に女の子の
鏡のような女の子。





それに3人は、
西ユアンの幼馴染。
あの人気者・ユアン君の
幼馴染が、あの3人。
整いすぎてるよ。





上すぎて、嫉妬なんて
感情が湧かない。





「さすが、この学園の
アイドルだよね!」





あたしの前の席に座る女子生徒が、
後ろを向いてそう語る。





「うんうん。
メチャメチャ可愛い」





「いいよね~。
あの子たちになりたい!
西君とも話せるし♪」





「あーわかるかも!」





そんなたわいない話を小耳にはさんで、
あたしは教科書をペラリとめくった。





今日は、何するんだっけ・・・
理科室の手前の方で、声が聞こえた。





「ねえユアン、一緒に座らない?」





ナツミちゃんが
ニコリと笑ってそう言った。





「ダメ、ユアンはあたしのもんだッ!」





アキちゃんが
少しふくれた顔で言う。





「なんでユアンでケンカするのー?」





笑いながら、
アヤカちゃんは最前列に
ちょこんと座った。
なんだか、大人。





「おい西、一緒に座ろうぜー」





教室に入ってきた
ユアン君の男友達もそう言い、
ユアンの隣争奪戦が始まる。





あたしには、関係ない・・・。
ふと顔を上げると、
ユアン君と目が合った。





少し驚いた顔でこっちを見ている。
普段、顔なんて
なかなかあげないからかな。





みんなと顔を合わせたくないから。
遠慮されるのが、嫌だから。





ユアン君の黒い瞳にドキッとして、
慌てて教科書に視線を戻す。





なんで彼、こっちを見てたの・・・?
そんなことを考えながら。





「とゆうわけでユアン、
ここに座って!」





みんなと勝手に話を進めていた
アキちゃんが、
ユアン君に席を用意した。





すかさず、周りに
ナツミちゃんを含めた男女が
サッと座る。





「これでユアンの隣ー♪」





アキちゃんは
キラキラした笑顔でそう言った。





本当に、可愛い人だなあ。
不覚にも、そう思ってしまう。





ユアン君は少し会釈した。
やっぱ、その席に座るのかな。





あたしの隣は今日も、空席。
それが日常、それがこの学園の掟。





「じゃ、俺、今日はこっちに座る」





ユアン君の声が遠くに聞こえる。





“こっち”って、どこだろうなって、
少し考えたけど、
どうでもよくなって
教科書に視線を移した。





コツ、コツ、コツ・・・。





静まり返った理科室に、
聞きなれたローファーの音が響く。





その音は、
あたしの近くで止まった。





カタン。





隣のイスが引かれた。
そのイスに腰を下ろす、人影。





え?





その人は「1時間、よろしく」
なんて笑って黒板を向き直る。





嘘でしょ?
ユアン君。
彼が、あたしの隣に座ってる・・・。





アキちゃんたちが、「え?」
って顔をしてる。





最前列に座るアヤカちゃん1人が、
何もかもを知ってるように、
優しい笑みをあたしに向けた。





授業が始まった。





どうしよう。
ユアン君のいる方の左肩が、
すっごく熱い。





そんなことを考えていると、





「おい池端、
問1を解いてみろ!」





突然、先生が
劣等生のあたしには
到底解けないような問題を
出してきた。





わ、どうしましょう・・・。
立ち上がったものの、うーん。





ユアン君のことばっか意識してて、
授業なんて耳に入ってなかったから、
解けるはずがない。





「・・・けはた、池端・・・!!」





隣のユアン君が、
あたしのひじをつついてきた。





え、な、なに・・・・?
彼の指は、あたしのノートを
指さしている。





“12M”って書いて―――ある。
これ、この問題の答え?





「じゅ、12Mですッ!」





必死になって答えてみた。





「せ、正解だ・・・
予習してきたのか?」





先生が驚きの表情を見せた。
席に座ったけど、
ドキドキが止まらない。





“ありがとう”って言いたいのに、
口から言葉が出ない。





ユアン君はこっちをチラッとみて、
ニコッと笑った。
あたしはその笑顔にまた
ドキン、として、
うつむいてしまった。





ひまわりのような、
太陽みたいなキラキラした笑顔。





でも、ありがとう、
その言葉だけが出てこない。





・・・もしかしてあたし、
ユアン君が好きなの?





心臓がどくん、どくん、波打つ。
絶対そうだ・・・。





人生初めての恋に、
あたしは胸の高鳴りが
止まらなかった。



















○。。・☆。。○。。・☆。。・○。。・☆。。○。。・☆。。○





「池端さん、ユアンのこと、
好きでしょう?」





放課後。
理科の時間の後に、
アヤカちゃんに呼び出された。





「放課後、中庭で
話したいことがあるの。
いいかな?」





って。
それで、この質問。





「え・・・・。あ―――うん」





変に嘘をつくのも嫌だから、
素直に答えた。





幼馴染なんだから、
すぐわかるんだろうな。





1番ユアン君に近い存在で、
1番ユアン君を見てる人だもの。
あたしがユアン君のことが好きなのも、
見抜いてないはずがない。





「そっか、やっぱり!!」





怒るのかと思ったら、
アヤカちゃんはあっさりそう言い、
花のような笑顔を見せた。





「そうだ。
あたしは幼馴染だからって言って、
ユアンのことが
好きなわけじゃないからね?
安心して!」





図星をつかれて、
あたしは少し驚いた。





「池端さん・・・
あ、アンジでいい?
あたしのことも、
アヤカでいいから!」





「あ、うん・・・」





「あたしね、ずっと
アンジと話したかったの」





「・・・・え?」





アヤカちゃ、
―――アヤカから、驚きの告白。





あたしと話したかった?
アヤカと正反対のようなあたしに?





「アンジは1番人を見ていて、
優しい心を持った人だって思ったの。
出会った瞬間にね」





・・・・・。





「だから一度、
話してみたいなあって」





あたしが、心優しい人・・・。
元ヤンキーって恐れられる、
あたしが?





優しく笑うアヤカに、
涙が出そうになる。





「ユアンのことも、
応援してるから!」





アヤカは優しく、
あたしの手を握った。





あれ? でも、
ひとつ引っかかる。





「でも、アキちゃんと
ナツミちゃんは、
ユアンのことが
好きなんじゃ・・・」





「アキとナツミ?
あ、2人はね、
恋愛としてじゃなくて、
友達としてのユアンが好きなの」





よ、よかった・・・。
安堵のためいきをもらす。





あの2人がライバルだなんて、
かなうわけないから。





「だから、大丈夫! それに、」





「それに?」





あたしが聞き返すと、
アヤカは悪戯っぽく笑った。





「ユアンはいつも、
あたしたちに
アンジのこと話してるの」





顔が真っ赤になる。





え? どういうこと?
あたしが顔を赤くするのを、
もう予想していたように
アヤカが次の言葉を口にした。





「なんで話しかけて
やらないんだって、
この前は怒られちゃって」





まいった、とでも言うように、
アヤカはぺろりと舌を出した。





「でもね、ユアンは
それほどアンジのことが・・・
もー言わないッ!」





悪戯っぽい笑みを見せて、
アヤカは「またね!」と言うと
校庭をかけていった。





ユアンくん。
ああ、あたしはやっぱり
君が好き。





告白・・・・・しようかな。
そう決心した。



















○。。・☆。。○。。・☆。。・○。。・☆。。○。。・☆。。○





翌日の放課後。





不審に思われたかもなあって、
今頃ちょっぴり後悔。





っていうのも、今日の昼休み、
久しぶりに自分を鏡で見たから。





見た瞬間は、
「こんなにだらしなかったの!?」
と恥ずかしくなって、
正直、凹んだ・・・





さすがに、昼休み中
ずっと鏡をジロジロ見てたら、
不審に思われるにきまってるのかも。





でも、アヤカに助けてもらって、
なんとかマシな容姿になった。





アヤカは「アンジの髪、サラサラ~」
なんて楽しんでたけど。。





あたしにとって、今日は大切な日。
もしかしたら、
人生で1番大切な日だったりして。





フラれるのかも。嫌われるのかも。
でもね、気持ちを伝えられるってだけで、
こんなに嬉しくなるのは何でだろう。





相手が、君だから?



















○。。・☆。。○。。・☆。。・○。。・☆。。○。。・☆。。○





放課後の教室。
アヤカが、ユアン君を
1人きりにしてくれた。





はあ、緊張する。
心臓が、いつもの倍早く波打つ。





うう~逃げ出したい気分。
1人で教室に向かう。
あと10M先くらいに、
あたしの教室がある。





あと10Mで、
あたしの勇気が試される・・・。
そんな時。





バタバタッ。





と、ローファーが
床を走る音が聞こえて、
振り向いた。





人影は、あたしを追い越して
教室に到着。





嘘。
アキちゃんと、
ナツミちゃん・・・!?





2人は何の悪びれもなく、
教室の戸を開けると、
「ユアンハッケーン!」と
明るく笑い出した。





足が、動かない。
床に硬直するあたし。





そんなあたしを、通行人が
どう思ったかは知らない。
ただ、もう足は動かなかった。





幼馴染。
その言葉が、あたしを苦しめてる。
告白なんて、できないくらいに。





アキちゃんと
ナツミちゃんといるほうが、
ユアン君も楽しいの?





ダメ。勇気が消え失せてくよ。
アヤカ、ごめんなさい。
あたし、勇気が、希望が、
全部消えて行っちゃうよ。





ユアン君の笑い声も聞こえて・・・。
もうやだ。
あたしにはやっぱり無理なの?





涙がとめどなく溢れ出して、
床を濡らす。





すると。





「アンジ! どうしたの!?」





奥の教室から、アヤカが
息を切らして走ってきた。





あたしはしゃがんでしまって、
前もろくに見えない。





足がすくんで、動けない。
体が、教室に入るのを
拒絶しているみたい。





アヤカの声を聞いて、
教室から3人が出てきた。





「「池端さん!?」」





アキちゃんと
ナツミちゃんの声が重なった。





2人に悪気はない。
あたしが、勇気をなくしただけなんだ。
それでも涙は止まらない。





「池端!?」





焦ったユアン君の声。
やだ。放っておいて。





あたし、いいよ。
元ヤンキーだろうが、
人を病院送りにした人だろうが、
なんだろうが。





でも、ユアン君だけには
そう思われたくないの。





彼の前では、あたし、
女の子で居れたから・・・。





ふいに、大声が聞こえた。





「西ユアン!!!!!」





え? アヤカの声。





声に怒りがこもってるのがわかる。
みんなが固まる。
アヤカ? どうしたの?





「いい加減にしてよ!
言いたいことあるなら、
言いなさい!!」





アヤカっぽくない、
怒りに任せた声。





どういう、こと?
言いたいことなんて、
ないでしょ・・・?





嫌だ。
何も聞きたくないのに。





あたしは立ち上がって、
教室とは反対方向に走り出した。





「アンジ・・・逃げちゃダメ!」





切羽詰まった
アヤカの声が聞こえる。





そう、逃げたらダメ。
勇気を出す。





昼休みの鏡前で、
アヤカと約束したこと。
でも、振り向く勇気なんてない。
勇気なんて・・・。





「あのさ、池端」





ユアン君の、
いつもより大きな声が
校舎に響いた。





その声はもちろん、
あたしの耳にも
ハッキリと届いた。





そして、
その次に続いた声も・・・。





「好きだよ」





時間が、止まった気がする。
1秒が、1時間に
感じられるくらいに。





すぐに、アヤカが
あたしのところに飛んできて、
抱きついてきた。





あたしはまだ、
状況が理解できないまま。





アヤカは、
涙を流しながら笑ってた。





次に、教室の前にいた
アキちゃんとナツミちゃんが
やってきて、





「池端さん~!!」





と言い、2人とも、
ぎゅっと抱きしめてくれた。





不思議。
さっきと感情が全然違うのに、
涙が止まらないの。





ユアン君が、
あたしを、好き?





ありえないのに、
嬉しくて。





信じられないのに、
驚いて。





想いが実るのは、
何よりも泣けて、
何よりも嬉しいことだって
知ったの。





「・・・ンジ、アンジ!」





気が付くと、
アヤカがあたしを呼んでた。





へ? なに、何?





「返事!
池端さんの、返事!
ユアン、待ってるよ」





ナツミちゃんが優しく笑う。
こんな時でも、
ナツミちゃんが綺麗に見えちゃう。
でも、本当に綺麗な人。





「池端さんなら、大丈夫だよ?
頑張れッ!」





はじけた笑顔で、
アキちゃんがそう言う。





う、そんな可愛らしい顔で
励まされたら、
頑張るしかないです・・・。。





すくっ。
あたしは立ち上がった。





目の前に、
好きな人が立ってる。
西ユアン。





大きく息を吸い込んで、
あたしはこういった。





「あたしも・・・
ユアン君が好き」





緊張よりも、嬉しさが
込みあがってくる告白。





ユアン君は、笑った。
あたしの大好きな、
ひまわりみたいな笑顔で。





ああ、疲れたなって、
その瞬間に思った。





後ろから、再び3人が
抱きついてきて、
「アンジ~!!」とか、
「池端さん、よくやった!」とか、
口々に褒めてくれた。





出会った瞬間から、
君が好きだった。





気づいてなかったけど、
君に惚れてた。





こんなあたしだけど、
君は笑ってくれた。
話しかけてくれた。





くしゃっと笑う、
あたしの大好きな君の笑顔。





あのさ、ユアン君。





―――あたしも、
出会ったその時から、
君がずっと好きだったよ。







☆END☆

*ニコ学名作リバイバル*
この作品は過去に投稿された作品をアレンジしたものです。

Like

この物語に投票する

池端 杏慈が主人公の物語が主人公の物語

NEWS!NEWS!

nicola TVnicola TV

物語募集

「ニコラ学園恋物語」では、ニコ読の
みんなが書いたニコモを主⼈公にした
オリジナルラブストーリーを⼤募集中!

応募する

主人公別 BACK NUMBER主人公別 BACK NUMBER

  • nicola TV
  • 新二コラ恋物語 恋愛小説を大募集!