消えた初恋、淡い春に。

CAST近藤 藍月近藤 藍月

作者:あめのしずく

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2022.02.08

私の名前は近藤藍月。
中学2年生。





今日は転校初日。
2年生ももうすぐ
終わるのに、
2月から転校なんて
酷すぎる。





藍月(上手くやって
いけるのかな・・・)





転校は今回で2回目。





父の仕事上、
転校になることが
多いのだ。





けれど私は、
友達を作るのが
得意なわけじゃない。





本当は人見知りだ。





お父さんは、
「藍月なら大丈夫」
と言っていたけれど、
私の心には不安しかない。





藍月「はあ・・・」





小さくため息を
つきながら、
私は転校先の
学校の門をくぐった。













○* ニコラ学園で *○





藍月「近藤藍月といいます。
石川県から
引っ越してきました。
よろしくお願いします」





なんとか自己紹介を
済ませて、
指定された席へと向かう。





隣は男子だ。





藍月「あの・・・
よろしくお願いします」





挨拶しないのは
失礼かと思ったから、
とりあえず挨拶をした。





するとその男子は
笑顔になって、





光翔「よろしく!
俺の名前は、戸部光翔」





と、丁寧に
自己紹介してくれた。





先生「それでは
授業を始めますよ」













○* 休み時間 *○





休み時間になると、
私はクラスの女の子たちに
机を囲まれた。





結良「私の名前は
近藤結良!
ダブル近藤だね!」





うさぎのような
可愛い顔が印象的な
結良ちゃんは、
私と同じ苗字らしい。





結珠「よろしくね、
藍月ちゃん!
私は足川結珠。
藍月って呼んでいい?」





次は、透明感のある
白い肌の持ち主である
結珠ちゃん。





その後、藤野有紗ちゃん
という子も
話しかけてきて、
私たち4人は
いつも一緒に
いるようになった。













○* 更衣室へ行く途中 *○





結珠「藍月!
着替え行こー」





藍月「うん。あっ、結良
今からお手洗い行くでしょ。
荷物持って行っとこうか?」





結良「いいの?
じゃあお願い!」





藍月「了解!」





結珠と有紗、そして私は、
それぞれの着替えと
荷物を持って、
ゆっくりと廊下を
歩き始めた。





有紗「今日の体育、
なんだろうね~。
楽しみ!」





藍月「有紗はいいなあ。
体育が好きで・・・」





結珠「私も~」





夢中になって
お喋りをする。





すると、前を
見ていなかったから、
反対側から来ていた人と
ぶつかった。





藍月「あっ、
すみません!」





結珠「って、英人じゃん!
謝らなくていいよー、
藍月」





藍月「え? でも・・・」





英人「いや、
さすがに謝ろうよ。
おい結珠、
お前覚えてろよー!」





結珠「知らないしっ!」





有紗「もう、結珠は
素直じゃないんだから」





結珠「あ、有紗!」





有紗から
聞いたことによると、
さっきぶつかった人は
河島英人という人で、
結珠が片想いしている
幼馴染らしい。





藍月「なにそれ!
いいなー、結珠!」





結珠「もう、有紗・・・」





恥ずかしそうに
顔を背ける結珠は、
本気で怒っては
いないことが分かった。





藍月「やっぱり
バレンタインに
告白するの?」





結珠「えっ!?」





結珠は目を見開いて、
私を見ている。





そんなに
変だったかな?





藍月「ほら、だって
もうすぐ
受験生でしょ?
私たち。
受験生の年は
さすがにしにくいだろうし、
言うなら
バレンタインくらいしか
なくない?」





私が説明すると、
結珠は納得の表情を
浮かべた。





けれどすぐに、





結珠「無理だよ。
普段あんな態度で
上手くいくわけないし・・・」





と、告白しないと
言われてしまった。





私は、もったいないな、
と思いながらも、
それ以上は
口を出さないことにした。













○* 体育の授業中 *○





先生「今日は寒いし、
ドッヂボールでもして
体を温めるか」





先生の言葉を聞いた瞬間、
男子は大きな声を上げて
喜んだ。





有紗も、
「楽しみだねー!」
と言っている。





チームはAとBがあって、
私と結良はAグループ、
結珠と有紗は
Bグループになった。





先生「よーい、
スタート!」





クラスの運動が得意な
男子たちが前線で戦い、
女子は後ろに下がる。





藍月(ふふっ、
小学生みたい)





そんなことを
考えていたら、





男子「よし、残り2人!」





なんとAグループは、
私と戸部君の
残り2人になっていた。





相手は残り4人。
勝つのは
難しいと思う。





それでも戸部君は、
何球ものボールを
受け止めて、
相手を倒していく。





そして、ついに相手も
最後の2人になった。





「行けー、光翔!」





「負けるなー、直哉!」





という、Bチーム
唯一の男子、戸部君と、
Aチーム唯一の男子、
紀田直哉君を応援する声が
聞こえてくる。





私も必死にボールを
避けた。





けれど、ついに
私に向かって、
強そうな球が
投げられてきた。





藍月(当たる・・・!!)





思わずぎゅっと
目を瞑る。





けれど、ボールは
私に当たることなく、
ぼんっという音を立てて
何かに当たった。





藍月「・・・! 戸部君」





戸部君が
守ってくれたのだ。





光翔「大丈夫?
後ろ下がってて」





そう言って、
また試合は再開する。





しかし、
戸部君の活躍も虚しく、
試合はBグループが
勝った。





「光翔ー!」





「何やってんよ~!」





と、戸部君は
皆にからかわれているが、
すぐに私の方へやってきて、





光翔「ごめんね。
肘、怪我しちゃってる」





藍月「え・・・本当だ」





自分でも
気づかないうちに、
怪我をしていた。





肘からは
薄く血が滲んでいる。





光翔「行こう、保健室」





そう言って戸部君は、
私の手首を掴んで
保健室へと走った。













○* 保健室で *○





保健室に入ると、
戸部君は素早く傷口の
手当てをしてくれた。





藍月「慣れてるの?
すごい早いというか」





光翔「あー・・・、
親が医者と看護師だから」





藍月「すごい!
じゃあ、戸部君も?」





戸部君は少し
微笑んでこう言った。





光翔「なんかさ、親が
2人ともそうだと
嫌でもならなきゃなって
思うんだ。
でも実際なりたいなとは
思うし」





藍月「そうなんだ・・・」





そう言い終わったときには、
肘の怪我は綺麗に
保護されていた。





藍月「ありがとね!
戸部君」





そう言って、保健室を
出ようとしたとき。





光翔「あ・・・あのさ」





戸部君が
引き留めてきた。





藍月「どうしたの?」





光翔「その・・・なんか
近藤さん呼びって
長いからさ、
藍月って呼んでいい?」





藍月「えっ」





どうしようかな・・・





今まで男子とは
苗字呼びだし。





でも。





藍月「いいよ。
じゃあ、私も
光翔呼びしていい?」





光翔「うん。
・・・えっと、藍月」





キュン・・・





藍月(え・・・)





これは、
私の初恋?













○* その後 *○





私と光翔は、
その後の席替えでも
もう1度隣になり、





今では1番の
男子友達として
接している。





しかも最近、
気づいちゃったんだ。





私は光翔が好き。





結珠「まさか相手は
戸部君とはね~」





有紗「ね!
まさかだったよ~」





結良「まあでも
いい人だし
いいんじゃない?」





皆にはこうやって
からかわれるけれど、
実は3人も
バレンタインに
告白する人がいる。





私は光翔、
結珠は河島君、
有紗は野球部の
懸樋大晴空という人に。





明日はその
チョコレート作りをするの!













○* チョコレート作り *○





有紗「まずは湯煎でチョコを
溶かさなきゃだね」





藍月「家庭科部さん
頼んだよー!」





結珠「ええ、私?」





家庭科部の結珠に
教えてもらいながら、
私たちはチョコレート作りを
進めた。





そして数時間後。





3人「できたー!」





私はトリュフ、
結珠はチョコバー、
有紗はチョコチップ
クッキーを
完成させた。





ラッピングも
可愛くできた。





結珠「難なく作れて
良かったよ~」





藍月「そうだね。
ありがとね、結珠!」





有紗「私からも!」





結珠「いえいえ。
マジで告白緊張する・・・」





有紗「うん・・・でも、
せっかくだし
渡したいよね!
結良も協力してくれる
らしいし」





藍月「うん!
よーし、
バレンタインー?」





3人「お~!」













○* バレンタイン当日 *○





私は雑誌を見ながら
ヘアアレンジをし、
ボディミストで
いい香りを漂わせた。





有紗「おはよう藍月。
聞いてよ~、
昨日緊張で
寝れなかった・・・」





結良「皆おはよう。
・・・有紗大丈夫?」





結良が苦笑しながら
言っている。





結珠もやってきた。





結珠「結良~!
もう本当に無理!
ていうか、
いつ言うべきなの?」





たしかにそこまで
考えていなかった。





いつ言うべきだろう。





すると、有紗が
手を挙げた。





有紗「やっぱり
放課後すぐじゃない?」





3人「たしかに!」





結良「じゃあ告白は
放課後すぐだね!」













○* 放課後 *○





ドキドキ。
ドキドキ。





心臓がうるさく
音を立てる。





先生「それじゃあ、
気をつけて帰ってねー」





先生の合図と共に、
皆がザワザワとし始めた。
皆そわそわしているのだろう。





藍月「光翔・・・」





隣の光翔を
呼び出そうとして、
隣を見た時。





藍月(え・・・? 嘘)





戸部君がもういない。





なんで?
もう帰ったとか?





それとも・・・





とある予感が
胸をざわつかせ、
気がつけば
私は走り出していた。





階段を下って、
校舎をひたすら
走り回って。
靴を履いて、
校舎裏を
隅々まで探して。





すると、





結良「光翔君、
付き合ってください!」





藍月「え・・・
結良・・・!?」





なんと光翔は、結良に
告白されていた。





結良「光翔君の真面目で
優しいところが
ずっと好きだった。
よければ
付き合ってくれませんか?」





結良が
右手を差し出す。





藍月「結良・・・」





結良はきっと、
私が好きと言い出してから
苦しい思いをしていたはず。





なのに・・・私は
告白しようと
してたんだ。





そんな私に、告白する
権利なんて
あるわけない。





私は教室へ戻り、
鞄を取った。





そして、家に戻る道を
早足で歩いた。













○* 家に帰って *○





結珠〈直哉と成功しました!〉





有紗〈おめでとう!
私は考えさせてって
言われた・・・〉





皆の嬉しそうな、
そして不安そうな
メッセージを読むと、
余計に告白が
怖くなってくる。





藍月(結良は・・・
上手く行ったのかな)





自分で告白しないと
決めたけど、
後になっては
後悔ばかり。





でも・・・
結良を傷つけたくないし、
仕方がない。





そう思いながら、
私は目を閉じて眠った。













○* 翌日 *○





学校に行くのは
嫌だったけれど、
親に心配されたくないので
学校へ行った。





教室へ入ると、
結珠が心配そうな目で
私を見ている。





結珠「藍月、昨日
連絡なかったけど、
もしかして・・・」





藍月「・・・告白、
しなかったの」





有紗「えっ!?」





結珠「・・・藍月、
理由は知らないけど、
本当にそれでいいの?」





有紗「そうだよ。藍月、
チョコ作り頑張ってたし、
今からでも・・・」





藍月「ううん。
私には告白する
資格なんて、ない。
大切な人を
傷つけたくないの」





結珠「大切な人・・・?」





藍月「うん。
だから、できない」





2人「・・・」





その後は2人とも、
何も言ってこなかった。













○* 1年後 *○





季節は早足で過ぎ去り、
あれから1年後の春。





私たちは全員
志望校に合格し、
今日卒業式を迎える。





有紗「藍月~!
結珠! 結良!
卒業しても
友達でいてね・・・」





3人「当たり前でしょ!」





光翔とは3年生の
クラスは別々になり、
私の初恋は儚く消えた。





校長先生「卒業生卒業証書授与。
3年1組池端杏慈――」





こうして無事に
式も終わり、
その後は皆で撮影会。





私も仲の良かった子たちと
たくさん写真を撮った。





スマホの写真アプリの中に
並べられた写真を見る。





藍月(皆、いい人だったな)





そう思いながら
写真たちを見ていると、





光翔「・・・藍月」





光翔に
名前を呼ばれた。





藍月「光翔・・・」





自然とお互いが
歩み寄る。





頭上には、ピンク色の
桜の花びらが
美しく舞っていた。





光翔「こうやって話すの、
久しぶりだよな」





藍月「うん。そうだね」





それっきり、
沈黙が流れる。





光翔「俺さ。
言いたいことが
あるんだけど、いい?」





藍月「え・・・?
いい、けど」





淡い予感が
胸をくすぐる。





光翔「俺さ・・・、
藍月のこと
好きだった」





藍月「・・・私も・・・、
私も好きだった。
1年前のバレンタイン、
告白しようとした。
でも、結良が先に
告白してたから・・・
だから、
できなかったの」





光翔「そっか・・・
ごめんな、
気づけなくて。
俺は結良の告白は
断ったよ。
・・・藍月、俺は今でも
藍月が好きだ。
今更で申し訳ないけど、
俺と付き合ってください」





涙が溢れる。





でもこれは、
悲しみの涙ではなくて、
温かな涙だ。





藍月「お願いします・・・
私は、ずっと光翔が好き!」





お互い微笑み合った。





差し出された手には、
温もりがこもっていた。











○*END*○

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