拝啓少年よ

CAST高比良 由菜高比良 由菜

作者:あいなn

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2022.01.21

僕の名前は高比良由菜。
ニコラ学園女子中等部に
通う3年生。





僕、「ジェンダーレス」
ってやつです。





僕って言い方が安心するの。





由菜「有紗、帰ろ」





有紗「由菜! うんっ!」





この人は藤野有紗。
僕が小学校の時に、
いじめられてたのを
励ましてくれた、
唯一の親友。





僕は生まれつき、
人と話すのが苦手だ。





由菜「僕、今度転校するんだ」





有紗「えっ」





急なことに
有紗は目を丸くしていた。





由菜「僕、『男』として
有紗が好き」





有紗「・・・!」





驚きのあまりに
無言になっていた。





このことを言えば
こうなるとはわかっていたが、
気まずい。





由菜「でも僕は、
有紗を傷つけたくない。
馬鹿にされたくない」





有紗「それは違う!
私は今まであなたに
どれだけ救われたか!」





由菜「ごめん。僕、君と
一緒にいられる気がしない。
だから今回、『ジェンダー』
対応の学校に行く。
他県だけど」





有紗「そんな・・・!」





由菜「有紗は、僕のこと
『男』としては
見れられないでしょ?」





有紗「・・・」





黙ってるってことは、
そういうことだよね。





由菜「ごめん。
変なこと聞いちゃって」





有紗「私ね、今まで
隠してたことがあるの」





急に有紗が泣き出して、
とてもびっくりした。





有紗「実は、実は私ね・・・」





『あなたのことは
好きじゃないの』





なんて言葉でも
いうんのかと思った。





有紗「私、病気なんだ」





思っていた言葉が
全く出てこなかったから、
素直に驚いた。





由菜「・・・そっか」





有紗「・・・うん。
それもね、
目が見えなくなる病気」





由菜「・・・!」





目が見えない。
そういえば!













・*。・ 1週間前 ・。*・





有紗「由菜!
今日私の家で
お菓子作りしよ!」





由菜「うん。いいよ、
でも僕、
不器用だからね(笑)」







・有紗の家・





有紗・母「ゆっくりしていってね」





由菜「失礼します」





有紗「お母さん! これ何?」





有紗・母「それは小麦粉。
これは片栗粉、これは砂糖」





なんでわからないのかと
不思議に思っていた。
書いてあるのに。













・*。・ 今に戻り ・。*・





有紗「学校のものは、
手で、形で覚えた。
皆にばれないように!」





由菜「そんな・・・!」





有紗「私はね、
今のあなたの顔が見えないの。
どんな形? どんな顔?
どんなヘアスタイル?
わかんないんだよ」





涙がボタボタ零れる。





由菜「僕の顔、見えないの?」





有紗「うん。ごめん。
でも私もね、『男』して
あなたが好きだった。
あなたがまさか女の子とは
思わなかったし、
とてもいい人だったから」





由菜「でも僕、
今日で学校は終わり」





有紗「私もね、明後日、
学校をやめる」





有紗「手術をするの。
成功率10%だってさ」





由菜「・・・うわーん!
有紗には、有紗には
死んでほしくないよぉ~!」





ギュっ





有紗「まだそんなの
わかんないでしょ」





有紗「これからも
元気でいるんだよ、由菜」





有紗の涙が
砂利の床に零れ落ちる。





それと同時に、僕の服が
有紗の手で
ぎゅっとつかまれる。





有紗「私の分も生きてね。
由菜」





由菜「フッ、誰だよ。
まだそんなのわかんないって
言ったの」





2人で笑いあう。
目と鼻を赤くしながら。





有紗「それじゃぁ」





由菜「またいつか」





有紗「・・・大好きだよぉ!
生きてね!
絶対! 生きてね!」





由菜「うわぁ~ん!
うん! 絶対! 約束!
有紗の分も絶対、
生きて生きていきまくるから!」





そうして私たちは
自分たちの家に帰った。













・*。・ 2日後 ・。*・





由菜「よし!」





由菜・母「由菜・・・綺麗よ」





由菜「ありがとうお母さん」





カシャっと写真を撮り、
有紗にラインで伝える。





[有紗]超可愛い~!





由菜「フフッ。
行ってくるね。
有紗」













・*。・ 学校 ・。*・





先生「今日から一緒に活動する、
高比良由菜さんです」





美央子「僕と同じタイプ?
よろしく!」





義斗「私も・・・同じ。
いろいろ悩んできたんだね。
よろしく」





由菜「よろしく」













・*。・ 1週間後 朝 ・。*・





プルルルルプルルルル





由菜・母「ごめん!
由菜出て~!」





由菜「もしもし。
はい。はい。え・・・」





由菜「そ、そんな・・・!
嘘、嘘だ!
わぁぁぁ~!」





由菜・母「どうしたの?」





由菜「有紗が、
有紗が死んだってぇ、
わあぁ~!」





それから葬式が開かれた。





有紗・母「由菜さん。
今日はありがとう」





由菜「はい・・・」





有紗・母「これ。有紗が」





由菜「有紗が・・・?」





*・。+ *・。+ *・。+ *・。+
拝啓 少年よ

空はもう見ないのかい
馬鹿にされないように生きないのかい
人間と釣り合わないのかい
いつもそうばかり言うなよ
手をつないで
くずってないで
連絡しあって
手紙を書いて
ありがとう

由菜
あなたという人が
幸せであるよう願う
顔は見えないけれど
あなたはいい人だと、
体が感じる
ありがとう
ありがとう
*・。+ *・。+ *・。+ *・。+





有紗・母「1回目のありがとうを
縦につなげて」





そ・ば・に・い・て・く・れ・て・
あ・り・が・と・う





その言葉がつながった。





目が見えないせいか、
どこかガタガタしている文字。





由菜「ありがとう。有紗」





その言葉を心に刻んだ。











*end*

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