叶わないから美しい
作者:あめのしずく
「初恋は叶わないから美しい」
いつか聞いた
この言葉は、
私にも
起こりました。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
高校1年生、
野崎奈菜です。
最近周りは
バレンタイン一色。
実は私にも
片思い中の人がいます。
?「あ、卵焼きだ」
そんなことを
考えていると、
お弁当に入っていた
卵焼きを
前に座っている男子に
食べられてしまいました。
奈菜「ちょっと龍和!
何勝手に人のもの
食べてんの~」
彼の名前は南龍和。
私の片思い中の人で・・・
初恋の人。
?「龍和ったらまた
盗み食いしてる!」
?「飽きないね~」
それを呆れたように
注意するのは、
親友の林芽亜里と
広瀬まのか。
?「なんか騒がしいな(笑)」
そこにやってきたのが
丸太怜音。
私を含めたこの5人は
いつメン!
お陰でとっても
高校生活は楽しい。
恋も、友情も。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
ある日、こんな話を
聞きました。
「1組の八田大翔と、
3組の阿部ここはが
付き合った」と。
2人はこの学年では
男女それぞれで
トップの人たちで、
性格もいいことで
知られている。
この日はその話で
持ちきりでした。
まのか「いいなあ~
男女それぞれのトップが
付き合うとか漫画じゃん!」
龍和「でた、
脳内少女漫画人間」
まのか「おい(笑)」
芽亜里「私も憧れるな~。
ここはとは中学で
仲よかったけど、
今では天と地の差だよ・・・」
怜音「でも俺らも
負けてなくない?」
芽亜里「そうなのかな・・・?」
まのか「奈菜はどう思う?」
奈菜「私? えっと、
すごくお似合いだと思う!」
龍和「そういえばさ、
女子らはもうすぐ
バレンタインだけど
どうすんの?」
まのか「あ、そっか。
バレンタインか」
私は「バレンタイン」
というワードを聞いて、
自分の耳が
熱くなっていくのが
分かりました。
芽亜里「あれ・・・奈菜、
耳赤くない?
もしかして好きな人いるの!?」
龍和「え、まじで?」
まのか「誰!?」
怜音(え、誰だろう)
奈菜「無理無理!
絶対言えない!」
まのか「まさかこの中とか!?」
まなかの言葉に、さらに
耳が赤くなって
しまいました。
芽亜里(どうしよう・・・
怜音が好きだって言われた・・・
ライバルになっちゃう)
怜音(龍和だよな・・・多分)
龍和(好きなやついたんだ、
意外。
でも・・・俺はまのかが
好きなんだよな)
まのか(これはどっちか
分からない)
奈菜はまだ、
怜音が自分のことが
好きだということに、
そして龍和はまのかが
好きなことに
気づいていない。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
昼休み。
私は芽亜里とまのかに
質問攻めにされました。
芽亜里「奈菜・・・
好きな人って誰?」
まのか「絶対どっちにも
言わないから!」
諦めずに粘り続ける2人に、
ついに負けてしまった。
奈菜「・・・龍和」
芽亜里「・・・龍和か。
良かった・・・!」
奈菜「え?
どういうこと?」
まのか「知らなかった?
芽亜里の好きな人って
怜音だよ」
奈菜「ええー!?」
まのか「ならライバルにならずに
済んだじゃん!
良かったね!」
奈菜「う、うん」
まのか「それで?
バレンタインは
どうするの?」
芽亜里「私は・・・告白する。
失敗したら慰めて(笑)」
奈菜「すご・・・!
私は、勇気出ないな・・・」
まのか「大丈夫だって!
もしあれなら私が
バレンタインの朝にでも
龍和の好きな人
聞いてあげるよ!」
芽亜里「それいい!
お願い奈菜、
私1人じゃ心細くて・・・」
2人の瞳が、
「告白しなよ!」
と言っている。
奈菜「じゃあ芽亜里、
絶対だよ?」
芽亜里「うん!
ありがとう!」
クラス中の人の
目を奪うほど
美人な芽亜里なら、
きっと成功すると思う。
でも・・・
私はどうだろう。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
家に帰ってから私は、
中学時代に読んでいたニコラを
書店に買いに行きました。
ページを開くと、
昔よりもずっと
新しくなった流行が
たくさん載っていて、
私はその中の
メイクページを開く。
メイクやお菓子作りが
好きな私にとって、
バレンタインほど
いいイベントはない。
だから、バレンタインに
告白できなかったら、
きっと次告白することは、
ないと思う。
そのくらい
大きなイベントです。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
次の日。
龍和に少しでも
振り向いてもらいたくて、
ヘアアレンジをいつもと変えて
行きました。
まのか「あ、奈菜の髪型
変わってる!
可愛い~!」
芽亜里「どうやってやったの?
私、不器用すぎてできない(笑)」
怜音「あれ、髪型変えた?
・・・可愛いじゃん」
いつもはそんなこと
言わない怜音に、
不思議な感覚を覚えました。
奈菜「? ありがとう」
なんでそんなこと
言ったんだろう。
一方で芽亜里は、
それが引っかかった。
芽亜里(もしかして・・・
怜音、奈菜が好き・・・?)
まのかもそれを
無言で見ていた。
何かを察したように。
そこへ龍和も合流する。
まのか「あ、龍和見て。
奈菜の髪型
変わったでしょ?」
龍和「なんかすごい
難しそうだな!
俺の妹も毎朝なんか
やってるわ」
奈菜「龍和、妹いるの?
いいな~!」
龍和「いいことないって。
毎日洗面所占領されて
困るわ(笑)」
まのか「あ、それ私も
お兄ちゃんに言われる(笑)」
まのかに
笑いかけられると、
龍和はその瞬間、
鼻をこすった。
しかもそれは、
奈菜(え・・・
龍和が鼻こするときって・・・
照れてるとき、だよね)
奈菜は
何も言えなくなった。
怜音(!)
怜音も何かに
気づいたような
表情をした。
龍和「あれ、奈菜が
フリーズしてる(笑)
おーい、戻ってこい」
奈菜「え、あ、うん・・・
ごめん、
ぼーっとしてた」
場が静まりかえる。
そして、
授業の始まりを告げる
チャイムが鳴った。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
授業の後の20分休み、
奈菜は芽亜里と
屋上へ向かった。
まのかは
次の授業の予習を
している。
奈菜「私、気づいちゃった。
・・・龍和、多分
まのかのこと好きだ」
芽亜里「!
やっぱり・・・」
芽亜里は
しばらく黙った。
そしてこう言った。
芽亜里「でも・・・
気持ち伝えなくていいの?
もしかしたら奈菜のこと
好きなのかもしれないし。
それに私は・・・」
それを遮るように
奈菜は言った。
奈菜「私・・・龍和のこと
諦めようかな。
芽亜里はきっと両思いだし」
私は俯いた。
芽亜里が羨ましい。
だって、芽亜里は
絶対好きな人
両思いなのだから。
しかし芽亜里は、
怒ったように言った。
芽亜里「なにそれ・・・
奈菜は鈍感すぎる!!
怜音は私のこと
好きじゃないもん!!
怜音は・・・怜音は・・・」
奈菜(え・・・なんで
芽亜里が怒るの!?)
奈菜「なんでよ・・・
きっと両思いじゃん!
そんな芽亜里に
わたしの気持ち
分からないよ!」
芽亜里「! 奈菜!」
私は早足で屋上を出た。
芽亜里「・・・どうしよう」
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
家に帰ってから、
私はたくさん泣きました。
どのくらい経ったか
分からないほど。
しばらくしてから
カレンダーを見ると、
あっという間に時間は
過ぎ去ったようで、
もうバレンタインデーの
3日前。
奈菜「・・・後悔したくないよ」
でも・・・
勇気が出ない。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
翌日、芽亜里は
学校に来なかった。
先生によれば、
軽い風邪らしい。
奈菜(放課後、
お見舞い行こうかな)
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
放課後、私は
芽亜里の家に
お見舞いに行きました。
奈菜「おじゃまします」
芽亜里母「あら、
お見舞いかしら?
ありがとうね」
奈菜「はい」
芽亜里の部屋へ向かう。
芽亜里「ケホッ、ケホッ」
芽亜里は
咳をしている。
奈菜「・・・芽亜里、
お見舞い来たよ」
芽亜里「な、な・・・?
なんで」
奈菜「先生から聞いた。
なんで風邪ひいたの?」
芽亜里「・・・昨日、
遅くまで家帰らずに
外にいたから」
奈菜「そっか」
2月の真冬の夜まで
外にいたら、
体は芯まで冷えるだろう。
奈菜「昨日は・・・
きつく当たってごめん!」
芽亜里「私も、奈菜は
悪意なかったんだろうけど
イラついちゃってごめん!」
奈菜「ううん・・・って、
あれ?
なんで芽亜里って
イラついちゃったんだっけ」
芽亜里「え、えっと・・・
バレンタインの日に、
分かるんじゃないかな」
この時は芽亜里の
言った意味が
分からなかった。
もうバレンタインは
2日後に迫っている。
明日は芽亜里と
チョコ作りだ。
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
芽亜里「おじゃまします!」
奈菜母「いらっしゃい、
楽しんでね」
芽亜里「はい、
ありがとうございます」
奈菜「芽亜里は何作るの?」
芽亜里「ガトーショコラ。
ちょっと難しいけど・・・(笑)」
奈菜「そうなんだ(笑)
私はチョコレートクッキー」
2人「よし、作ろっか!」
途中で芽亜里が
チョコレートを
ひっくり返すという事件も
起こったけど、
なんとか作ることができました!
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
バレンタイン当日、
私はいつもは
しないけれど
髪をふんわり巻いた。
芽亜里は逆で、
サラストにしている。
まのか「2人とも
気合入ってるじゃん(笑)」
奈菜「えへへっ」
まのか「あ、そういえば
龍和に好きな人聞くの
忘れてた。
今から聞いてこよっか?」
奈菜「あ、それなんだけどね。
やっぱり自分の力で
頑張りたいなって。
だから大丈夫!」
まのか「オッケー。
それじゃあ頑張ってね!」
芽亜里と奈菜「うん!」
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
・芽亜里side・
芽亜里(緊張する・・・
失敗だろうけど、
怜音の前では
絶対泣かない)
呼び出した体育館裏に、
まだ怜音は来ていない。
どうしよう、
来てくれるかな。
そう思ったとき、
怜音「よっ!」
後ろから声がした。
振り返ると怜音がいる。
怜音「えっと・・・
話ってその」
芽亜里「・・・うん。
私、怜音のこと好き」
怜音「・・・ごめん、でも俺」
視界が滲みだす。
芽亜里「奈菜、でしょ?
行って来なよ」
怜音「・・・ごめん」
芽亜里「謝らないで。
だけど・・・
チョコだけは
受け取ってほしい」
差し出すと、
怜音はゆっくりと
芽亜里から受け取った。
怜音「じゃあ・・・
行ってくる!」
芽亜里「頑張れー!!」
* ‐‐‐ * ‐‐‐ *
・奈菜side・
屋上に龍和を
呼び出しました。
来てくれるかな・・・?
龍和「奈菜」
柔らかな声が聞こえた。
龍和がこちらに向かって
歩いてくる。
もう・・・
後戻りはできない。
龍和「あれ、その紙袋・・・」
奈菜「あ、これ?
・・・うん、私ね、
龍和のこと好きなんだ」
龍和「・・・」
龍和は前から
分かっていたかのように
「うん」と言った。
そのまま続けて
龍和が言う。
龍和「・・・言ってくれてありがと。
もちろん奈菜は
いいやつだと思うけど・・・
恋愛対象としては
見てないというか。
あと俺、好きな人いるんだ」
涙が溢れだす。
それでも
私は言いました。
奈菜「分かってる・・・
まのかだよね。分かってた。
・・・聞いてくれてありがとう。
でもこれ・・・
チョコ受け取ってくれる?」
奈菜が聞くと、
龍和はさらにこちらに
歩み寄ってきて、
奈菜の手から
紙袋を受け取った。
龍和「ありがとう。
でもごめん」
奈菜「うん・・・
聞いてくれて、
ありがとう」
龍和が屋上を
出て行った。
涙が溢れて
止まらない。
しばらく、
泣いたと思う。
そして
顔を上げると・・・
怜音「奈菜・・・」
怜音がいた。
なんで。
奈菜「なんで怜音が
ここに・・・?
芽亜里は?」
怜音「・・・断ったんだ。
俺は・・・
奈菜が好きだから」
奈菜「え・・・」
怜音は真剣な顔で
言ってくれた。
怜音「奈菜の
しっかりしてるところも、
抜けてるところも、
頑張って龍和に
振り向いてもらうと
してたとこも全部。
・・・俺が代わりになれない?」
全然気づかなかった。
今芽亜里はどこかで
泣いてるんだろうか。
申し訳ない。
それに・・・
怜音のことは
友達として好きだ。
でも、
奈菜「今は、考えられない。
ずっと友達だと
思ってたから・・・
でも、考えておく」
怜音「うん・・・
ありがとう。
教室でみんな待ってるから、
行こう」
怜音の手を取って、
屋上を後にした。
教室へ戻ると、
泣いた後のような顔をした
芽亜里
切なそうな
顔をする龍和
気まずそうな
まのかがいた。
バレンタインは
私たちにとって
苦い思い出になった。
でも・・・
なんだかその光景は
美しい青春のように思えた。
ああ、
奈菜(初恋って、
叶わないから美しいんだ)
○*end○*
野崎 奈菜

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