恋に魔法なんていらない
作者:ユズれもん
はじめまして、
池端杏慈です。
突然だけど、みんなは、
誰かに好きになって欲しい時は
どうしますか?
***
アンジ「はあ~、
今日もかっこいい」
私は、教室で
ある写真を眺めていた。
その写真の中には、
私の推しである、
アイドル兼モデル兼俳優の
内田蓮くんがいる。
まだ高1なのに、
すっごい人気があるんだ。
顔もとにかくかっこよくて、
いっつも元気をもらってるの!
蓮くんの写真を眺めながら
ニヤニヤしていると・・・
ユズ「アンジ、顔がやばい」
アンジ「ユズ!」
写真を見てニヤついていた私に
冷静に突っ込んだのは、
クラスメイトで親友の、
足川ユズだった。
ユズ「アンジ、
絶対いつか
変態扱いされるって」
アンジ「ええっ?!
そんなことないって!!
ユズだって、いっつも
リュウ見てニヤついてんじゃん!」
リュウっていうのは、
クラスメイトの
宮本龍之介のこと。
ユズは、そのリュウと
付き合ってるんだ。
ユズ「は、はあっ?!
そういうことでかい声で
言わないでよ!!」
アンジ「あ、ごめん」
私はヘヘッと笑って
謝った。
ユズ「そういえば、
この間蓮くんが
テレビに出てたんだけど、
自分の理想のタイプ言ってたよ」
アンジ「えええっ?!
マジで?!
どんな子がタイプなの?!」
ユズ「うーん、
ちょっと言いにくいんだけど・・・
雰囲気が天使で、
ガーリーな子。
男子に命令したりしない、
おとなしい子がいいって」
ガーン!!
アンジ「それ・・・、
私と・・・、
正反対・・・!!」
私、どっからどう見ても
天使感ないし
(どちらかっていうと騎士!)、
ガーリーよりはクールだし、
いっつも教室で騒いでるし、
男子によく『早くして!』だの
なんだの叫んでるんだ。
ユズ「ほんと、
アンジと正反対だねぇ」
?「何が正反対なの?」
落ち込んでいる私とは
全然違う、
ケロッとした声。
その主は・・・、
ユズ「エイト!」
うちのクラスの男子、
河島英人だ。
私とエイトは
小学校から一緒で、
休み時間もよく話をしている。
エイト「正反対って?」
ユズ「ああ、さっきの」
ユズは、『言っていい?』と
顔で聞いてくる。
エイトは、『早く教えて』
という目で見てくる。
ううう、
これは言うしか・・・
アンジ「推しのタイプと私が
正反対だったの!
結構ショックだったんだから、
もう何も聞かないで」
一気に言い切ると、
机に顔をうずめる。
エイト「へえ。
推しって誰?」
こいつ、さっきの私の話
聞いてなかったの?
何も聞かないでって
言ったのに!
ユズ「内田蓮くん。
エイトも知ってんじゃない」
ユズがいとも簡単にばらす。
アンジ「ユ~ズ~!」
ユズ「あはは、ごめん~!
言っちゃダメだった?」
アンジ「まあ、いいけど」
エイト「へえ、内田蓮か。
俺友達だわ」
アンジ&ユズ「えええっ?!」
友達?!
エイトが?!
からかってんじゃないよね?
エイト「ホントだって。
駅前で服買おうか迷ってたら、
レンが『これ似合う』って、
教えてくれて、
そっから仲良くなった」
アンジ「へ、へえええ・・・」
すっげ~、
なんて縁があるの・・・!!
エイト「会いたいわけ?」
アンジ「ええっ?! いや・・・」
エイト「会わせてあげようか?」
ええええええっ?!
あの、蓮くんに会える?!
アンジ「う、うん・・・、
でも・・・」
エイト「レンにも
聞いてみるから、
大丈夫」
アンジ「うん、
ありがとう・・・!!」
なんだか、
とんでもないことが
起きそう・・・!!
***
そして、
待ちに待った
その日が来た。
私的には精一杯のおしゃれを
してきたつもりだけど、
大丈夫かな・・・
エイトとの待ち合わせは、
駅前だったっけ。
エイトの姿を探していると、
私に向かって手を振っている、
エイトらしき人物がいた。
アンジ「エイト!」
エイト「おはよー。
迷子にならなくて
よかったわ~」
早速嫌味を言ってくる!
やっぱりこいつに頼んだのが
間違いだったのかな?
エイト「ほら、行くぞ」
アンジ「わかってるよ」
エイトにしばらく
ついていくと、
突然エイトが止まった。
アンジ「どうしたの?」
すると、エイトが
気まずそうにいう。
エイト「いや・・・俺、
ちょっと用事があってさ、」
アンジ「え?!」
エイト「それに、
俺がいない方が
話しやすいかなーって
思って・・・」
アンジ「え、待って!
私1人で会うの?!」
エイト「そういうことに、
なるかな」
アンジ「はあ?!
そんなの聞いてないよ!」
そう叫んだけど、
エイトはジリジリ
後ろに下がって、
エイト「ほんっとごめん!
楽しんでこいよ!」
走り去ってしまった。
アンジ「エイト?!
ちょっ、待ってよ~!!」
でも、エイトの姿はすぐに
人混みの向こうに
消えてしまった。
ううう、余計に
緊張するんだけど。
もう1回鏡みとこ。
鏡に映る私は、
どこからどうみても
「カッコいい」系女子だ。
ユズが言ってた
蓮くんのタイプからは
程遠い。
アンジ「はあ、
1日でいいから
ガーリーな女の子に
なってみたいな」
?「じゃあ、
ならせてあげよっか?」
アンジ「え? 誰?!」
後ろから声がして、
振り返ってみると、
いかにもふわふわした感じの
天使みたいな美少女が立っていた。
?「初めまして、私はメアリ!
あなた、
可愛くなりたいんでしょ?」
アンジ「え?
あ、はい・・・」
メアリ「なら、
メアリの魔法で
1日だけガーリーな女の子に
ならせてあげる!」
アンジ「は?」
何言ってるんだろ、
この子。
天然?
それとも・・・?
メアリ「私、魔女だから」
女の子・・・
メアリさんは、
そう言い放った。
アンジ「は?
ええええ?!」
何言ってんの?!
私、馬鹿に
されてんじゃない?
メアリ「やっぱ疑うよね~。
じゃあ、
見せてあげよっか。
メアリ~、マジック!!」
メアリさんがそう叫んだあと、
一瞬だけ私は眩しい光に
包まれた。
気づくと元通りになっていて、
目の前ではメアリさんが
ニコニコ笑っていた。
アンジ「あの、どこが魔法・・・?」
メアリ「鏡を見てみなよ!」
アンジ「え?
・・・うわっ!!」
鏡に映るのは、
いつもの私ではなく、
私と同じボブだけど、
メアリさんみたいに
ふわふわした雰囲気をまとう
ガーリーな女の子。
顔は、少しだけ
私に似てるけど・・・
アンジ「誰、これ?!」
メアリ「魔法で変身したあなただよ。
服もちょっと変えてみたんだ!」
慌てて下をみると、
生まれてから一度も
着たことのないような
ガーリーな服を着ていた。
アンジ「ええっ?!
私の服は?!」
メアリ「それは、
家に帰るぐらいに戻るよ。
頑張ってね、
アンジちゃん!」
メアリさんは、私に向かって
手を振って、
人混みに消えてしまった。
アンジ「・・・ええ?!」
結局1人になるんかい!!
でも、頑張るしかない!!
一歩ずつ前に進みながら
蓮くんの姿を探していると・・・
?「あの、
ちょっといいですか?」
突然声をかけられた。
声の方をみて、
私は思わず固まった。
アンジ「え?」
だってその人・・・、
?「初めまして、
内田蓮です」
蓮くんなんだもの!!
アンジ「えっ、やっぱり!!
・・・あっ、あの!
私、約束してたアンジです!」
レン「えっ、君が、
アンジちゃん?
かわいいね」
アンジ「・・・ええ?!」
推しに、かわいいと
言われる日が来るとは・・・!!
レン「あ、そういえば、
エイトは用事だっけ?
さっき連絡あったんだけど。
迷子にならなくてよかったよ」
アンジ「あっ、ありがとうございます!!」
レン「敬語なんていらないよ、
歳あんまり変わんないし」
アンジ「う、うん・・・!
ありがとう!」
それから私と蓮くんは、
駅前のお店をまわったり、
ご飯を食べにいったり、
いっぱい話をしたりした。
気づけば、もう夕方。
アンジ「今日は、ありがとう!」
レン「こちらこそありがとう!
アンジちゃんって、
いい意味でギャップ
あるんだなって思ったよ」
アンジ「ギャップ?」
なんだろ。
レン「いや、
見た目はすっごい女の子、
っていうと変か。
THE 女子って感じだけど、
中身は結構サバサバしてて
話やすいし。
いい友達ができたな~、って思った」
アンジ「えっ!!」
友達?!
ってゆうか、知らない間に
学校での自分が出てたのか?!
レン「ほんとに、楽しかったよ。
あと・・・」
蓮くんは、何かを
言いかけたあと、
周りをキョロキョロ見回した。
アンジ「どうしたの?」
レン「いや、その・・・
俺、アンジちゃんが好きだ!」
アンジ「えええええっ?!」
蓮くんが、
私を、好き?!
推しが、
私のことを・・・?!
レン「いや、1日でとか、
バカだけど・・・」
アンジ「いや、
そんなことないよ・・・
私・・・」
も、と言いかけて、
私は口を閉じた。
蓮くんが好きなのは、
私じゃなくて、
メアリさんの魔法で変身した
私なんじゃないの・・・?
アンジ「あの、私の、
どこを好きに、
なったん・・・ですか・・・?」
レン「えっ?
いや、それは・・・
すっごいみっともないけど、
一目惚れ・・・
雰囲気で、一目惚れして・・・
なんていうんだろう、
フワフワした、感じの・・・
それから、
中身を知っていくたび、
どんどん好きになって・・・」
そっか。
でも、私がその雰囲気に
なればいいし、
そもそも推しと付き合うなんて
奇跡以上だよね?!
なら、『私も』っていえば・・・
そう言おうと思って
口を開きかけたけど、
なぜか、胸がチクンとした。
そして、気づいたら
こう言っていたんだ。
アンジ「ありがとう・・・
でも、ごめんなさい!」
レン「・・・」
私はガバッと頭を下げた。
アンジ「蓮くんが好きって
言ってくれるなんて、
奇跡みたいだなって思ったの。
でも、今の私は本当の私とは
違うから・・・」
レン「そっか。
うん、わかった」
アンジ「でも、ほんとに
今日は楽しかった!
ありがとう!」
レン「俺も、楽しかった。
じゃあ、またね!」
アンジ「うん、また!」
蓮くんは私に手を振ったあと、
公園から出て行ってしまった。
アンジ「はあ~。あーあ。
どうしてこうなったんだろう・・・」
目頭が熱い。
気づくと、どんどん
涙が溢れていた。
?「おい、
大丈夫か?」
突然、聞き覚えのある声が
聞こえた。
顔を上げると、
そこにはなんと、
エイトがいた。
アンジ「エイト・・・?」
エイト「ええっ?!
アンジかよ!
って、お前どうした?」
アンジ「えっと・・・」
私は、今日あったことを
全てエイトに話した。
メアリさんのことは
絶対信じてくれないと
思ってたけど、
すんなり信じてくれた。
エイト「そんなことが・・・」
エイトは、
少し下を向いてから、
真剣な顔で顔を上げた。
エイト「なあ、俺が、
代わりになれないか・・・?」
アンジ「・・・え?」
エイト「好きだ。
魔法で変身してても、
そのままでも、
俺は、アンジが好きなんだ」
初めてみる真剣な顔の
エイトを前に、
私は胸の鼓動が
速くなるのを感じた。
* * *
エイト「アンジ、おはよう」
校門をちょうどくぐった時、
後ろからポンと肩を叩かれた。
アンジ「エイト、おはよう!」
エイト「今日、数学って
小テストあったよな。
勉強した?」
アンジ「えええっ?!
やってない!
そんなの聞いてないよ?!」
エイト「ちゃんと聞けよ」
エイトはそう言ってから、
少し笑った。
エイト「教えてやろうか?」
アンジ「ありがとう!
お願いします!」
蓮くんと会って、
エイトに告白されてから
1週間。
私は、エイトと
付き合うことにした。
エイトに告白されたあと、
気づいたらずっと
エイトのこと意識してて。
ユズにも相談したら、
「好きなんじゃない?」って。
推しと付き合えるのは、
たしかに奇跡的だと思う。
でも、ありのままの自分で
恋する方が、
もっと素敵だから。
*END*
池端 杏慈
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