帰り道の公園で

CAST高比良 由菜高比良 由菜

作者:にこにこ

新二コラ学園恋物語新二コラ学園恋物語2021.10.26

学校からの帰り、
いつも通る道の横に、
公園がある。





私も小さな頃はよく
利用したところで、
滑り台やシーソー、
ブランコなどの遊具が
並んでいる。





人が少なく、しんとした
空気が流れるこの公園は、
若者が来ることも多い。





年に1度、
素敵な出会いをする
男女が1組いて、
彼らには
幸せが訪れるらしい・・・・・・













*家*





冬の朝、私・高比良由菜は、
凍えながら顔を洗いに行った。





洗面所にはすでに
姉の高比良奈菜がいて、
ぱしゃぱしゃと
顔に水をかけていた。





姉がタオルで顔を拭くと、
こちらを向いた。
私はとっさに言う。





ゆなな「おはよう、
お姉ちゃん」





ナナ「ゆななおはよう、
寒いね」





ゆなな「ほんと。
凍えそうだね」





彼氏がいない
お姉ちゃんだけど、
好きな人はいるらしい。





片想いって
切ないだけじゃない、
楽しいことだって
たくさんあるんだよ。





前にお姉ちゃんが、
そう言っていたことがある。





私は、片想いなんて
したことないから、
わからない。





ゆなな「あー、今日も学校かぁ。
英単語テストあるんだよね」





ナナ「いいじゃん、
ゆなな頭いいんだし。
私はナオヤくんに
会えるから幸せ」





ゆなな「もう、ちゃんと
お勉強もしなよ」





ナナ「高校だからこれでいいの。
早くナオヤくんに
会いたいなぁ~」





ゆなな「私のこと言うときは、
ゆななじゃなくて
妹でお願いね。
本名は由菜だし・・・」





私の本名の由菜で呼ぶ人は、
クラスに半分くらいしかいない。
半分は、ゆなな、と呼ぶのだ。





そんなことを話していると、
急にお姉ちゃんが言ってきた。





ナナ「ねぇ、好きな人いないの?」





ゆなな「・・・えっ」





ナナ「気になる人とか、
そろそろできても
いいんじゃないかな、とか」





正直驚いた。
誰もいない。





カップルなら
周りにいるけれど、
羨ましいなんて思わないし。





ゆなな「いないよ、受験生だし」





ナナ「周りより
勉強しなきゃ
ダメだもんね」





ゆなな「えっ?
大丈夫だよ。
成績オール5だし」





ナナ「もう、それより
好きな人は?」





ゆなな「いないって
言ってるでしょ」





周りの人も、あまり
恋愛話はしていない。





顔を洗い、朝ごはんを
作るために台所へ向かった。













*外*





朝ごはんを食べて、
家を出る。





中学校も
お姉ちゃんの高校も
近くにあるから、
私たちは同時に出発する。





ゆなな「行ってきまーす!」





ナナ「行ってきまぁ~す」





お姉ちゃんの高校は、
このあたりでは
頭のいい方だ。





新潮高等学校。





私は、もっと
偏差値の高い、
別の高校を受験する
つもりだけれど。













*家(夏)*





ナナ「新高楽しいのに、
なんで仁木蘭高校なの?」





ゆなな「偏差値高いし、
文武両道だから。
お姉ちゃんに何か
言われる筋合いないもん」





ナナ「偏差値が
70なのは認める。
でも、私と一緒に楽しもうよ」





ゆなな「私のことは
私が決めるの!
仁木蘭高校には、
昔から行きたかったから!」





夏、お姉ちゃんと
進路について話した時、
お姉ちゃんは
新潮高校を勧めた。





偏差値は62で、
そこそこ良い方だけれど、
私は昔からの夢である
仁木蘭高校に行きたかった。





それでちょっと
喧嘩になった。





今ではもう、
私を受け止めてくれている。





そんなお姉ちゃんのことを、
私は大好きだ。













*外*





分かれ道に
差し掛かった。





右は野崎第二中、
左は新高だ。





ナナ「ばいばい、
お勉強頑張ってね」





ゆなな「ありがとう。
ナオヤくんと話せるといいね」





ナナ「そっちも早く
恋人見つけなよ~」





お姉ちゃんと別れてから、
1人で歩く。





横には潮山公園。
学生がベンチで
本を読んでいた。





カップルが年に一度
生まれるところだ。





ふと思った。





そこで恋人を作ったら
どうだろう。





でも、そんなこと
できないか。





すぐに諦め、
私は学校へと向かった。













*学校*





十二月二十一日。
ノートに書いた日付を見た。





もうすぐクリスマス。





明後日からは
冬休みも始まる。





何かが始まる
予感がした。













*新潮西公園*





ゆなな(ふぁ~寒い・・・)





ふんわりとしたマフラーを、
もこもこの手袋で掴んで
口まで上げた。





帰りも寒いから、
全身をマフラーなどを使い、
暖かくした。





マフラーには
モテる巻き方がある、と
お姉ちゃんに教えられたから、
それでやってみたけど、
実際はどうなんだろう。





誰もいないから静かで、
休むには最適。





ちょっと寄り道くらいなら
学校は許してくれる。





単語カードを出して、
ぶつぶつ呟いた。





休む時も、
お勉強はする。





ゆなな「since、何々以来。
volcano、火山。
used to、
以前は何々だった・・・」





いつの間にか、
順番がばらばらになっている
単語カード。





中2の頃から
何百回も繰り返した。





今はもう全て覚えた、
この単語たちを
忘れないように、
何日も繰り返す。





ゆなな(・・・あれ?)





足音が聞こえた。
とすん、とすん、とすん。
どんどん近づいてくる。





ゆなな(誰だろう・・・)





目の前に影が現れた。
男子の学生だった。
私より10センチほど背が高い。





ルワ「あ、えっと、
こんにちは」





ゆなな「こ・・・こんにちは」





ドキドキドキ、
少し怖くてうつむく。





ルワ「あの、
崎二中の方でしょうか」





崎二中。
野崎第二中の省略形だ。





ゆなな「はい・・・
えっと、あなたは」





頷きながら、
彼の所属を伺う。





ルワ「僕も崎二中です。
中3なんですが・・・」





ゆなな「あ、私も中3です」





ルワ「そっか。
僕、ルワっていうんだけど、
知ってますか?」





ルワ。
ルワくんっていうんだ。
なんか知って・・・・・・
あっ!





ゆなな「き、紀田ルワくん?
ルワくんじゃない?」





ルワ「そう、紀田ルワ・・・
だったっけ」





ゆなな「えっ嬉しい、
私・・・由菜だよ!」





思い出した。





ルワくんは、
小3になるときに
神奈川県に行っちゃった、
近所のお友達だった。





一軒家が10軒ほど並ぶ住宅街の、
端っこで向かいにいた
お家の同級生。





ルワ「高比良由菜だろ?」





ゆなな「うん!
久しぶり!」





ルワ「僕は、南ルワだよ」





南・・・?





おかしい。
紀田ルワくんなのに。
南って・・・?





ゆなな「どういうこと・・・?」





ルワ「あの時、
親が離婚して。
それで泉ルワになって、
母さんが再婚して南になった」





ゆなな「そっか・・・
でも、久しぶり。
転校、してきたの?」





ルワ「うん。
明日からよろしく」





ゆなな「よ、よろしくねっ」





紀田ルワくんが、
泉ルワくんになったのち、
南ルワくんになって
戻ってきた。





でも、明日から一緒に
学校に行けると思うと、
心が少しおどった。













*家*





今日のことを
お姉ちゃんに話した。





ナナ「へぇ、
よかったじゃん」





ゆなな「うん、
驚いたけど嬉しい」





ナナ「あ、そうだ!」





急にお姉ちゃんが
背筋を伸ばした。
どうしたんだろう。





ゆなな(何かあったのかな?)





お姉ちゃんは
ニコッと笑った。













*学校*





ナナ「ゆななたちが、
あの公園カップル
なんじゃない?」





昨日、お姉ちゃんは
こんなことを言った。





そうかもしれない。
年に1度生まれる、
噂のカップルは、
私たちかもしれない。





そんなことを思うと
胸がドキドキして、
朝は遅刻しそうに
なってしまった。





森先生「ホームルーム始めるよー」





レオン「起立」





ガタガタと椅子を引き、
立ち上がる音。
ドアの向こうには・・・





ゆなな(あっ、ルワくん!)





ルワくんがいた。
なぜかあとずさりしている。





レオン「気をつけ」





ゆなな(同じクラスだったんだ・・・)





すごい偶然が起きたな。
3年生4クラスの中で、
2組が選ばれたんだ。





そう思いながら
挨拶をする。





レオン「おはようございます」





みんな「おはようございます」





ガタガタ。
みんなが座り終わると、
森先生が話し始める。





森先生「はい、
おはようございます。
ちょっと報告あるんだけど、
何だと思う?」





みんな「えー、先生に
赤ちゃんできたとか?」





みんな「それだったら
もっと真剣に話すでしょ」





報告。
絶対にルワくんのことだ。





私は1番前の列に
座っているから、
先生の方を向いて言った。





ゆなな「転校生ですか?」





森先生「由菜珍しいね。
当たってるし」





みんな「えーーーーーー!!!」





森先生「ルワ、
こっち来ていいよ」





ざわざわする教室の中に
入ってきたルワくん。





男女ともに、ちょっと
イケメンじゃん先生、
と嘆いている。





ルワ「えっと、南ルワです。
今日から吹奏楽部で活動します。
仲良くしてください、
よろしくお願いします」





ちらっとこちらを見る
ルワくん。
どうしたんだろう。





拍手が終わり、
あ、と呟く彼。





そして、
こんなことを言った。





ルワ「由菜とは仲が良くて
好きなので、
そこ関係でも友達を
増やせたらいいなと思います」





えっ?





どういうこと?





ゆなな「ルワくん?
今何て・・・」





ルワ「仲良いし
由菜を好きだから、
そこで友達も増やしたいって」





・・・・・・・・・・・・





みんな「え~~~~!
やっば!
公開告白じゃん!」





みんな「ルワだっけ、
勇気あるね」





みんな「てかゆなな、
どーいう関係よ?」





は、恥ずかしい!





さっとうつむく。
心臓が壊れそう。
ドキドキ、ドキドキ。
胸はもう限界を迎えている。





ルワくん、
一体どうして・・・?





森先生「ルワも由菜もほんと?
ていうか静かにして」





ゆなな「ちょ、ちょっと、
次進めてください!」





ルワ「はぁ~、
ドキドキする・・・」





ゆなな「ならやらないでよ・・・!」





その日は1日中
ドキドキした。













*新潮西公園*





リミ「公開告白?」





ゆなな「うん、
そんな感じかな」





放課後、公園で
リミちゃんと勉強会をした。





なんか顔赤くない?
とリミちゃんに聞かれたから、
正直に出来事を
話しているところだ。





リミ「で、その後
どうなったの?」





ゆなな「へっ?」





リミ「ルワくんに
お返事したの?」





あまりに真剣な表情で
リミちゃんが聞くから、
ちょっとこわばってしまう。





そして肝心のお返事は、
まだしていなかった。





ゆなな「ううん、してない」





リミ「えー、ルワって人
悲しんじゃうよ」





ゆなな「悲しむ・・・?」





そんなこと、
考えもできない。





だって、あんな大勢が
見ている場面で、
OKもNGも言えないよ・・・!





リミ「そうだよ。
きっとすごく
勇気が必要じゃん。
返事をする機会なんて、
またすぐにくると思うよ。
その時頑張って、
同じ分の勇気を
返してあげなきゃ」





リミちゃん・・・・・・





そうだよね。
ルワくん、
ドキドキした、
って言ってたもん。





勇気、たくさん
使ったんじゃないかな。





私は決意をした。
ルワくんと
ちゃんと向き合おう。





リミちゃん、
ありがとう・・・!





ゆなな「そうだね、
リミちゃんありがとう。
私も頑張る」





リミ「好きって気持ちは
ちゃんと伝えなきゃね」





ゆなな「あ・・・」





ゆなな(そうだ、
私、好きかどうか
はっきりさせてなかった・・・)





ゆなな「私、ルワくんのこと、
好きなの?」





リミ「きっとそうだよ。
今決意できたんでしょ?
ルワくんのことを
思っているからじゃ
ないかなって思うよ。
胸がドキドキとか、
絶対そうだよ」





ドキリ。





心臓が鳴った。





ドキドキ。
この気持ちは、
恋なんだ・・・・・・!





ゆなな「リミちゃん、
私、頑張る!」





リミ「そう、頑張って!」





ゆなな「ありがとね、
リミちゃん」





その日は
遅くなったから、
それで解散した。













*家*





母「由菜、コンビニで
お水買ってきてくれない?
1Lを2本お願い」





ゆなな「はーい、どこで?」





母「1番近いのって
ファミラだよね。
お母さんあんまり
コンビニ行かないから、
わかんないんだよねー」





ゆなな「坂下りたとこのね。
わかった」





母「ありがとー」





そのコンビニは、
新潮西公園のもうちょっと
奥にあった気がする。





ルワくんにあうのが怖い。
でも、断るわけには
いかなかった。













*外*





ゆなな(ルワくんに会ったら・・・
どうしよう。
まだ心の準備ができてないのに)





ナイスクラップの
ふろくトートを持って、
ドキドキと胸を鳴らしながら
道を歩く。





コンビニはすぐそこだ。
ちょっと小走りで行った。





お水を買うと、
トートはずしりと
重くなった。





2L分のお水が
入っているから、当然だ。





新潮西公園に
たどり着いてしまった。





ちょっと休憩、
と言い訳しながら、
ベンチに座った。





ポケットに入れておいた
単語カードを取り出し、
ぶつぶつ言いながら
めくっていく。





そろそろ行こう。





2分ほど経って、ルワくんが
来るかもしれないことを
思い出した。





会うかもしれない、と思った。





もう行かなきゃ、
行かなきゃいけないのに。





そう思っても、
なぜか足が動かなかった。





泣きそうになった。





怖くて、怖くて、
心臓はもう壊れかけていた。





告白がこんなに
勇気がいるものだったなんて、
知らなかった。





知らなかったからこそ、
すごく怖かった。





ルワくんに大変な思いを
させてしまっていたことに気づき、
自分が嫌だと思うと同時に
足音がしたその主は・・・・・・





ゆなな「ルワくん・・・・・・」





なんで。
なんで、ルワくんなの。
リミちゃん、私、無理だよ。
言えないよ・・・・・・!





ゆなな(偶然にも程があるよ・・・!
私、ルワくんを悲しませといて、
言わないとだめだって
気づいたばっかりで。
まだ心が決まってないのに。
なのに、なんで・・・)





ルワくんがこっちに
向かってくる。





たどたどしい動きをしている
ルワくんに、
また、怖くなった。





ルワ「由菜・・・
何してるの?」





ゆなな「お、おつかいの帰りだよ。
えっと、お、お水が重くて・・・
休憩、してた」





ルワ「そっか。
手伝おうか?」





ゆなな「えっ」





手伝うなんて
言われてしまった。
そんな状況じゃないのに。





ゆなな「えっと、
大丈夫だよ。
ルワくんこそ、
な、何してるの?」





ルワ「・・・えっと・・・・・・」





なんで黙るんだろう。
もっと怖くなるじゃん・・・





ゆなな「言いにくいことなの・・・?」





5秒、間が空いて。





ルワ「由菜のことが好きなんだ」





ゆなな「・・・・・・・・・・・・え」





ルワ「好きだから、
それをもう1度ちゃんと
伝えるために、
探そうと思って。
この公園は、
思い出のところだから。
小さい頃もよく通っただろ。
この間会ったのもここだからさ、
きっといるだろうなって思って
来てみたんだ。
そしたら、いた」





ゆなな「・・・・・・・・・・・・え」





ルワ「だから、しっかり
由菜の気持ちを聞かせてほしい。
さっきはごめん、
変でかっこ悪い態度取って。
好きだから、
こっちに戻れると思った時は、
ほんとに嬉しかった。
昔から好きだったから。
でも手紙じゃなくて、
言葉で伝えたくて、
本当に戻ってきたこの時に
言ったんだ」





好きだ、と言われた。





そんなに好きでいて
もらっていて、
しかも私も好きだと
自覚していて、
嫌な言葉はかけたくない。





私も伝えたい。
正直に、素直に、
いかなければ。
だから。





ゆなな「私、ルワくんが、
好きです」





ルワ「・・・ほんと?
ほんとに・・・?」





ゆなな「うん・・・ずっと、
言うの怖かったけど。
でもこの気持ちは
本当だって気づいた」





ルワ「ありがとう、由菜。
伝えてくれて・・・!」





ドキドキドキドキ、
胸の高鳴りは止まらない。
でも、それは嬉しい方の
ドキドキなんだ。





ルワ「付き合おう・・・/////」





ゆなな「うん・・・・・・!」





その後、私たちは
クラス公認カップルになった。





今も毎日、幸せな生活を
送っている。





ルワくんなんて、道徳の授業で
隣の人のいいところを
10個言う発表の時、
こんなこと言ってるもん。





ルワ「優しい、可愛い、
・・・家庭的。
由菜、愛してるよ」





ゆなな「・・・・・・私も。
ルワくん、大好き/////」





みんな「きゃああああ!」





先生「えーやばくない?
ちょっと、落ち着いてよー/////
カップルだったなんて/////」(←男)





後で改めて
気づいたけれど。





あの公園が、私たちを
きゅっと繋いでくれたんだ。













*7年後*





私たちは、何度か
淡い喧嘩をしたけれど、
結婚が決まって。
今、式をしているんだ。





夢みたいなことが
起こっているんだよ。





神父「あなたたちは、
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
お互いを愛することを誓いますか」





ゆなな「誓います」





ルワ「誓います」











*THE END*

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