恋を結ぶキーホルダー

CAST高比良由菜

作者：アヤノ

2021.10.17

夏の初め、
中学３年生のゆななは
いつも通り登校した。

下駄箱で靴を履き替えて、
廊下に一歩踏み出した時に、
１つのキーホルダーが
目に止まった。

「鍵もついてる・・・」

キーホルダーの裏には、
「三年二組星野聖也」の文字。

「えー！　嘘でしょ、
ほ、星野くんのキーホルダー
触っちゃった！」

星野は元から
学校のアイドル的存在で、
高身長に可愛い甘々犬顔、
それに成績も良くて、
高校は地域１番の進学校を
狙ってるらしい。

校内のいろんな女子が
星野を狙っているのに
ゆななはキーホルダーを
触ってしまい、
恥ずかしくなった・・・

―――――ゆななも密かに
星野に想いを寄せていたから。

でも放って置けない性格のゆななは、
キーホルダーをスカートの
ポケットにしまって、
中休みに２組に行った。

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

―――――――相変わらず
星野くん人気者だな・・・

私がこれを届けて
周りから変な目で見られたら
どうしよう・・・

ゆななは意を決して
大きな声を出した。

「星野くんっ！」

２組の生徒たちは
一斉にゆななの方を向く。

「星野のカノジョじゃね？」

クラス中が大笑いする。

内心そんなことあったら
嬉しいって思うけど、
恥ずかしくて泣きそうになる。

―――――私はただ・・・
落とし物を届けに
来ただけなのに。

「んなわけねーじゃん馬鹿。
こんな奴
俺が彼女にすると思うか？」

星野が言う。

ゆななは星野が
そんな言葉遣いをする人だと
思っていなかったからか、
少しびっくりした。

「なんの用？」

「あっ、いやっ。
こ、これ。
昇降口の下駄箱の近くに
落ちてて・・・
星野くんの名前が
書いてあったから・・・はい」

星野は鍵を受け取る。

「ありがと」

それだけ言って
先に戻っていった。

中休みの時間が
余っていたので
トイレに行った。

手を洗って
鏡をふと見ると、
顔が赤くなっていた。
無意識に。

――――――私、星野くんのこと、
好きなのかな・・・

＊　‐‐‐　＊　‐‐‐　＊

数日後、
クラブ活動の終礼が
遅くなってしまった。

急いで玄関で
靴を履き替えていたら、
後ろから名前が呼ばれた。

「ゆな」

ゆななはハッと振り向く。

「星野くん!?
ど、どうしたの？」

動揺が隠せない。

「この間のお礼、
言おうと思って。
ほら、キーケース
届けてくれたやつ」

――――――もちろん覚えてる。

「あ、あー！
なんだそれだけ笑
それならもういいのに。
ほら、ほかにバスケ部のこ
まだいるよ。
一緒に帰らないの？」

「俺、傘持ってきてなくて。
ほら、雷が鳴ってる。
ゆなも傘ないなら
待ってた方がいいよ。
俺の予言」

ゆななは思わず
クスッと笑う。

すると女子たちの会話が
後ろから近づいてきた。

「ゆななってさ、
最近調子乗りがち」

「ほんと、星野くんに
落とし物届けただけなのに
いい気になっちゃって」

「別に彼女でも
なんでもないのにね」

ゆななは必死に
涙を堪えた。

いいことをした
つもりだったのに、
自分が悪い行いを
したみたいで悔しかった。

「彼女になった気って・・・
え。ゆなは
俺の彼女だけど何か？」

――――――は？

「俺の彼女が
俺に鍵届けてくれた
だけだけどダメなの？」

女子グループは
一気に冷めた顔をして
去っていった。

「星野くん、
どういうこと？」

「この前はひどいこと
言ってごめん。
俺、本当はゆなのこと
気になってたんだけど、
恥ずかしくて
素直にありがとうって
言えなくて・・・
本当は・・・
彼女になって欲しい」

「嘘言わないでよ。
星野くんにはもっと
ふさわしい女の子がいるよ」

「本気なんだ。
・・・だめかな」

その後ゆなな達は
お付き合いを始めた。

ゆななは素直になれない
星野のことがまた
可愛くてたまらなかった。

＊ｅｎｄ＊